企業分析アナトールの株式投資

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証券投資のお勉強④~株主還元編~

先日、ソフトバンクグループ(SBG)が大幅な自社株買いを宣言した結果、連日ストップ高になりました。

ソフトバンクグループ(SBG)(9984.T)は23日、自社株式取得と負債削減のため、最大4.5兆円の保有資産の売却もしくは資金化を行うと発表した。最大2兆円で自社株取得を行い、残りを負債の償還や社債の買い入れなどに充当するという。バランスシートを強化して信用格付けの向上を目指す。今後4四半期にわたって行われる。

参考: https://jp.reuters.com/article/softbank-idJPKBN21A0FN

自社株買いというのは株主への還元方法の一つです。株式市場から自社の株を購入して消却(消す)ことで、将来利益に対する株主の取り分を増やす効果があります。丁度良いので、株主還元について書こうと思います。

株主還元の基礎知識

会社が株主に対して報いる方法は、主に①配当金②自社株買いの二つです。会社によっては優待券もありますが、実質配当金がモノに変わっただけなので今回は割愛します。

①配当金とは

配当金は、株主が株を持つ最終目的です。会社は株主に出資してもらったお金を元手にして商売をして、出てきた純利益の中から一部を株主に還元します。これが配当金です。会社によっては配当金を出さずに利益を全て会社に留保して、成長投資に回すこともあります。この純利益に対して配当に回す割合を配当性向と呼んだりします。

②自社株買いとは

自社株買いとは、会社が自社の株を買い戻し、その株を無かった事にする事です。

具体例で言いますと、時価総額(会社を丸ごと買う時の値段=株価1,000円×発行済株式総数1万株)が1000万円の企業に、100万円の現金が余っていたとします。この100万円はビジネスに必要が無いお金なので、市場から株を買い戻すとします。株価は1,000円ですので、株式総数の10%である1,000株を買い戻す事ができます。

結果的に、会社の現金100万円と発行株式の10%(100万円分)の株式が相殺で消えるため、同会社の時価総額は1,000万円から900万円に下がる形になります。

これだけ見ると単に株主から株式を買い戻しただけの処理にも思えますが、ここでのポイントは、今後この会社の株主は、利益を従来の90%の株主で分ける事になるのです。仮に会社としての利益の総額が変わらずとも、株主は一人当たりの利益(価値)が増える事になるのです。これはお金を払って終わりの配当金には無いメリットです。

特に上場企業においては、純資産価値より安い値段で株価が推移している会社もあるため、そうした会社が自社株買いをした場合、ボロ儲けです。仮に上記の会社の純資産が1000万円にも関わらず、時価総額が200万円(=株価200円×発行済み株式数1万株)で放置されていた場合、100万円の余剰資金で株式の半分を買い戻せてしまうわけです。そうなれば、残っている株の価値はそれだけで2倍に跳ね上がる事になります。

要するに自社株買いというのは、元々の価値に対して低く評価されている時に買い戻すと、株の本質的価値に凄まじい上昇効果をもたらすという事です。

 ソフトバンクグループ(SBG)の施策

その点、SBGの施策は、実に理に適っている行動と言えます。自社株買いが最も効果が発揮されるのは市場が低迷し、投資家達が臆病になっている時、つまり今なのです。

孫正義氏の言葉をそのまま信じるならば、SBGは本来の27%の株価で放置されているため、これを買い戻して消却すれば、残った株式の価値は相当跳ね上がります。自社の価値を信じるからこそできる事だと思います。このあたりの判断は、さすがだな~という気がします。他の上場企業もホントにこういう姿勢は見習ってほしいです。。

ただ、私はSBGの株は買いませんし、買う事を推奨しません。現在のSBGは巨大なベンチャーキャピタルと化しており、投資している投資群をひとつひとつ上手くいくかを個人が評価するのは不可能です。ベンチャーキャピタルはただでさえうまくいく可能性が低い業種であり、もし投資するなら、ほとんど孫氏の「カン」が頼りになります。正直そういった難しい会社に、虎の子のお金を投資していては気が休まりません。(SBGが上手くいかないとは言ってません)

孫正義氏の勇気ある決定には感心しますが、SBGに投資するかどうかは別問題です。

まとめ

株主還元に話を戻します。平凡な会社は不景気になると現金を手元に残すためにちょびっとの配当だけ出して株主に理解を求め、好景気になると高い株価で自社株買いをする、という非合理的な行動をします。不景気になると不安だから資金を手元に残しておきたい、という気持ちは分かりますが、実に勿体ない事だと思います。例えば不景気になった時には配当を停止して、配当分のお金を全て安値の自社株買いに切り替えるだけでも株主還元のレベルが変わる筈です

失礼を承知で言えば、株主還元についての意識を持たず、自社株が純資産価値以下の価格で放置されている会社の経営陣は、市場から「どうせ何もできないだろ」と無能の烙印を押されていると自覚して頂きたいです。

ちょっとした株主還元方針を変えるだけで、投資先として一気に魅力的になる会社がかなりある筈なので、そういった会社さんは是非見直しして頂きたいな~と感じます。