企業分析アナトールの株式投資

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書籍紹介:ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則

 

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

 

 

書籍レベル・・・龍

 

書籍レベル分類については下記参照下さい。

www.freelance-no-excelyasan.com

概要説明

全米1435社の中から選ばれた傑出した業績を長期間持続させることに成功した企業11社をそれぞれの業種で競合関係にある企業と詳細に比較・分析した結果、飛躍した企業に共通する特徴を説明した名著です。

著者のジェームズ・C・コリング氏は前著「ビジョナリーカンパニー」において、輝かしい業績をあげた会社について、営利以外の崇高なビジョンが存在する事を指摘し、企業が適切にビジョンを定義する事の重要性を説いてます。ただ、前著でサンプリングされたのはHP(ヒューレットパッカード)やSONYソニー)といった、できた時から偉大だった企業が対象となっており、経営者からの「普通の企業が途中から偉大になる事は可能なのか」という疑問を聞かされました。その疑問に対して著者は真っ向から調査を開始してまとめたのが本書です。

結論は、「可能」であり、その方法を分かりやすく説明しています。

経営者は必読の書です。

 

私なりにそのポイントをざっくりまとめてみます。

(あくまで私の簡易解釈なので、実際は本をきちんと読んでください)

 

ポイント:人事(人に関する部分)

リーダーの素養

偉大な成果をあげる組織のトップは自己顕示や己の利益を目的としていない。あくまで「偉大な組織」の構築に情熱を注いでいる。なので、偉大な組織を作り、偉大な成果を上げた経営者は無名である事の方が多く、反対に、会社がガタガタになる会社は、自己顕示や己の利益を目的にする経営者がやっている場合が多い。

 

キーエンスの創業者である滝崎氏が前者、日産のカルロス・ゴーン氏が後者の例として直近では合っているのではないかと思います。

 

人を選ぶときに妥協しない

人材採用の時に少しでも疑問があるならば、採用しない。人材を探し続ける。企業の成長の最大のボトルネックは「適切な人々を採用し維持する能力」である。そして、常に合理的な評価ルールを適用し、正しい成果を挙げられない人間に対して厳格な処分を下す。

 

ここで著者は「厳格であって、冷酷ではない」と注意しています。業績のためのレイオフ(リストラ)を冷酷、明確なルールを必ず守る事を厳格、と表現してます。

 

不適切人材の迅速な入れ替え

最高の人材は管理を必要としない。指針を与え、教え、導く必要はある。だが、その人のやる気を引き出したり、能力の不足を補う仕組みを取り入れたり、二度三度とチャンスを与えたりすべきではない。そうして結論を先延ばししたために、適切な人材に対して割けるはずのリソースが割けなくなるのは勿論、不適切人材に対しても、その人が本来輝ける場所を探す時間を奪ってしまう結果となる。

 

日本の会社でもこれができないケースが多いんじゃないかと思います。当人が情熱を注げない仕事をやらせるのは、本人にとっても、周囲にとっても、会社にとっても、得になりません。にも関わらず、「その人のやる気を引き出すのがマネジメントの手腕」とか「目の前の仕事ができなければ、他でもできるわけがない」といった、無茶な教義が蔓延っているのが、これが実行できない大きなネックだと思います。

 

最高の人材は最高の機会追及に当て、最大の問題の解決には当てない

最大の問題の解決は、完全にできたとしても普通の結果にしかならない。最高の人材に最高の機会追及の場を与える事で、企業は偉大な企業となる事ができる。

 

何をもって最高の人材と定義するのかは難しいところですが、私の経験上もこの理論は正しいと思います。問題の解決は言ってみれば後手のトラブルであり、どれだけ優秀な人間が解決した所で大して成果は出ません。しかも、新しい機会の追求に適切とは言えない人材を充てた場合、次から次に新しいトラブルが起こりますから永遠に終わりません。どれだけ大きくとも、雑草を抜く事より、新しい根と茎を育てる方にリソースを割いた方が合理的です。

 

すみません、本当はもっと山ほど価値ある部分があるんですけど、多すぎて全部についてコメントするのは無理でした。後でまた追記するかもしれませんが、とりあえず今回は人に関する部分だけに限定します。

 

書籍レベル評価に関して

この書籍のテーマは「組織運営」であると私は思います。組織とは人の集合体です。人間が1000年経ってもその本質が変わらないように、その集合体である組織の法則性も、基本的には変わりません。この書籍は人間の集合体である組織特有の性質を上手く抜き出し、「優秀」な組織から「偉大」な組織となる変化の方法を明示しています。「組織運営」という意味でこの書籍は時代を超えると私は予想し、評価を「龍」としました。