企業分析アナトールの株式投資

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購入株紹介(エーアイテイー:9381)

タイトル通り、先週末に家計の資産運用枠(貯金)で株を買いました。

エーアイテイーという会社の株を単価535円×800株=428,000円也。

今後は535円を下回る度に買い増して行こうと思っています。

 

企業分析を兼ねて、会社紹介していきたいと思います。

事業概要

当社グループは、自ら輸送手段(船舶・航空機・自動車等)を所有・運行せず、顧客(荷主)の需要に応じて、船会社等の実運送業者のサービスを利用し国際貨物輸送を行っております。またそれらの業者は一般的に「フォワーダー(貨物利用運送業者)」と呼ばれています。その中でも特に国際海上貨物を取扱う事業者をNVOCC(注)といい、有償で国際物品の利用運送を行う事を業としています。

さらに、当社グループの行っております国際貨物輸送事業とは、上記の国際貨物輸送に加え、これらに付帯する輸出入通関、貨物の保管・梱包、船積書類等の作成、貨物海上保険の手配、並びに従来、荷主自身が行っていた商品の調達、保管、在庫、仕分け、配送、納品といった一連の物流業務を一括して請け負う3PL業を示しております。

(注)”Non Vessel Operating Common Carrier”の略称であり、自身では輸送手段を所有せず、船会社等のサービスを利用して輸送を引き受ける利用運送事業者を指します。複合一貫輸送業者とも呼ばれます。

この事業内容は有価証券報告書より抜粋したものですが、自社の事業について凄く分かりやすい説明してくれていると思います。個人的には「自ら輸送手段(船舶・航空機・自動車等)を所有・運行せず」という部分もポイント高いです。

固定資産を自前で保有するのは、色々メリットがあるように思われがちですけど、維持、運用に凄く手間とコストが掛かりますし、貨物が減った時のリスクなどを負う必要が出てきます。ファブレス(工場を持たない)のキーエンスやアップルといった会社が台頭していることからも、固定資産はできるだけ保有しないというのが、現代ビジネスで生き残るための鉄則だと思います。

固定資産が無いことの裏付け確認

本当に固定資産を持っていないかの裏付けチェックは必要です。ザルな所だと、事業説明を作っている部署と財務諸表を作っている部署が違って、説明と実態が食い違うような資料を出すなんてことも考えられるため、数値を確認できるものは確認すべきです。

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エーアイテイー有価証券報告書より)

2019年度期末の財務諸表を見てもこの会社の資産は現預金、売掛金受取手形といった、流動資産(設備などと違って現金化されやすい資産)が94.3%を占めており、方針として固定資産を持っていない事が分かります。

他の財務数値

以前の記事で書きましたが、私は主に自己資本利益率と、FCFにも注目します。

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エーアイテイー有価証券報告書より)

自己資本利益率もFCFも問題ありません。非常に優れていると思います。

ちなみに、自己資本比率という数値にも注目です。自己資本比率は使用総資本に対する自己資本の割合なのですが、70%オーバーです。これは企業の中ではかなり良い数値で、経営上必要な自己資本を十分に蓄えているといえます。さらに、貸借対照表を良く見ると、30%弱残っている負債も買掛金や未払金といった、営業上不可欠な負債だけで、銀行からの有利子負債がありません。これもまた、効率的な経営をしている証明と言えます。

 

株主への還元(配当性向・自社株買い)

この会社の特筆すべき点はまだあります。この会社は株主への還元が異常です。以下の配当性向を見て頂くと、かなりの高率です。

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配当性向は20%程度が一般的ですが、エーアイテイーは下手したら利益以上に株主還元しています。また、自社株買い(会社が稼いだキャッシュで自社の浮動株を購入して消却する事で、既存株主の将来的な配当取り分を増やす施策)も行っています。

これだけの株主還元ができる会社になるには2つの条件が必要です。

①FCFが潤沢であること

先ほど見た通り、エーアイテイーは平均してキャッシュを稼ぐ力が強いです。設備投資も必要ないため、売上が上がっただけどんどんキャッシュが貯まり、様々な意図に使えます。

②経営者が株主に対して誠実である事

一般的に経営者というのは色んな理由をつけて株主への還元をしません。何故なら、基本的に株主への還元は経営者にとってほとんどメリットがないからです。株主還元すると自分の権限で使えるキャッシュが減る事になりますし、そもそも経営者は株主還元せずとも、様々な理由をつけて役員報酬を増やす事で、自分もしくは経営陣「だけ」の私腹を肥やす事も可能です。(経営者と協力銀行などで株の半数以上を抑えてしまえば、株主総会で経営者を糾弾、解任する事はできない)実際、会社としては全く利益をあげていないのに、何億という報酬を手にしている経営者もいます。

そういった不誠実な行為を取り締まる事は、少なくとも現代の仕組みではできません。しかしだからこそ、株主還元には基本的に経営者の勇気と株主に対する誠実な姿勢が如実に表れるのです。

その点、エーアイテイーの株主還元率から垣間見える、経営者(経営陣)の誠実性は賞賛に値します。

 

中国・アジア圏を主力としている

中国・アジアはご存知の通り成長著しい国々がたくさんあります。特に中国は世界の向上と呼ばれるほど、輸出に揺るぎない力を握っています。中国は政治的に難しい国ではありますが、国家の繁栄に輸出入が不可欠である以上、一時的にストップする可能性はあっても、長期的に見てこの事業分野が廃れる可能性は低いと言えると思います。

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以上がザックリとしたエーアイテイーの見所かと思います。

かなり有望な案件とは思いますが、しかし当然懸念されるリスクはあります。

①コロナショックに端を発した景気後退リスク

今まさにホットな話題ですが、コロナの影響でアジアの物流が滞る可能性は十分あり得ます。景気後退が始まれば当然物流は滞り、エーアイテイーも無事では済まないでしょう。特に震源地である中国はその影響は免れないでしょうし、以前から囁かれていた中国のバブルがはじけて恐慌が起こる可能性だって否定できません。アジアを中核としているエーアイテイーは甚大な被害を被る可能性があります。

②オーナー創業者の退任リスク

オーナー 創業者の矢倉英一氏は70歳以上と高齢です。ここまでの会社を育ててきた氏が万一退任という事になった場合、エーアイテイー自身がその効率性や事業方針を維持できるかは不透明です。強力なリーダーシップを持った経営者が居なくなって途端に堕落してしまう会社の例は枚挙にいとまがありません。どこまで矢倉氏が「自分がいなくても動く組織」を構築できているかにかかっていると思いますが、こればかりは正直実際に退任してみなければ外部からは分かり得ません。

③2020年2月度に日新運輸株式会社を子会社化するメリットが不透明なリスク

サービスの質の向上を目的に日新運輸株式会社を子会社化しています。ただ、会社の子会社化は簡単なものではなく、特に企業文化の違いや社員間の軋轢が懸念されます。元々エーアイテイーは過去から不必要なM&Aを多用するような会社ではありませんが、だからこそどういった効果が出るのか、そもそも適切な対応なのかといった部分が懸念されます。

 

上記のリスクは私が勝手に心配しているだけではありますが、全く的外れではないと思います。こういったリスクと、リスクに見合うだけのリターンを考えた時に私は、一株500円未満であれば買っても良いな~と考えています。エーアイテイーならばきっと危機を乗り越えて下さると信じております。。

 今後の戦略

しかし、冒頭に書いた通り、既に単価535円で取得しており、今後も下がるようなら、順次50万円づつ買い増ししていくつもりでいます。何故50万かといえば、SBI証券のアクティブプランではその日の約定金額が50万円以下なら手数料無料だからです(笑)

本当に万全を期すなら一株500円未満まで待つのが良い気もしますが、自分の中で1日の購入上限を手数料無料の50万円にしているので、下がり切るのを待つのではなく、段々と購入していこうかな、という感じです。

どうせ底なんて誰にも分からんので、淡々と割安と思える時点で買っていこうと思います。