結論:財務優秀、体質判断は保留
目次
事業概要
先ずは明豊ファシリティワークスの事業についてです。
色々書いてありますが簡単に言うと、企業さんの工事発注を代わりにマネジメントする事業のようです。
中でも、以下の3つにセグメントを分けています。
①オフィスの移転やらスペースの削減、実行に伴うマネジメント
②生産施設などでどんな工事を行うか、どこに発注するかをマネジメント
③今持っている資産の統廃合などの最適化マネジメント
セグメント売上(業種ごとの売上)の状態も確認します。
直近ではCM事業の売上高の割合が高く、オフィス事業の売上が下がってます。
オフィス事業の売上高は前年比73%くらいに落ちてます。
業績推移①
18年 VS 19年対比だけではフェアではないので、過去の推移を見ます。
しかしやはり違和感があります。
売上高がほぼ右肩下がりなのに、経常利益は増えています。
数値だけでは分かりずらいので、日経ネットからグラフをもってきます。
【明豊ファシリティワークス】[1717]株価/株式 日経会社情報DIGITAL | 日経電子版
2020年3月期はより顕著になってます。
業績に対する経営陣の説明
その理由がこちらです。
同社はこれまで、お得意様から工事全体を請け負うアットリスクCM方式と呼ばれる手法を取っており、その場合、一時的にとはいえ工事原価を自前で負担する必要があります。
それが段々とコンサルフィーだけを受け取るピュアCM方式に移行してきているようです。
これはキャッシュフロー的にはかなりポジティブ情報です。
一時的にとはいえ、工事原価を負担するという事は、その間の資金を自前で準備する必要がありますし、顧客が払ってくれない滞納リスクも抱える事になります。
意図的にこれを進めたとすれば、かなり合理的な判断です。
キャッシュフロー
キャッシュフローに関しては問題ないです。
多少乱高下はありますが、基本的にはフリーキャッシュフローの黒字を保ってます。
自前で工事をやるわけではなく、あくまでマネジメントという立場なので、必要な設備投資等が少ないのもキャッシュフロー的に強いですね。
B/S(貸借対照表)
現金及び預金が潤沢です。
完成工事未収入金というのは、要は工事が完成したら入ってくる筈のお金なので、上記の請負方式の残りなのでしょうね。もし今後ピュアCMが100%になれば消えるのでしょう。
有形固定資産が少ないという資金繰的に強みもあります。
財務的にかなり有利な事業をしていると言えます。
業績推移②
という事で、 上記から明豊ファシリティワークスは売上高を下げてはいるものの、実質的にはキャッシュフローが改善されている会社である事が分かりました。
ただ、そうなると、ビジネスの付加価値の指標である売上高経常利益率の推移があまり当てにならなくなってきます。7%⇒8%⇒10%⇒10%⇒14%と、過去5年間で改善はされていますが、これがアットリスクCM契約からピュアCM契約に移ったことによる、売上計上基準の変更による付加価値上昇なのか、企業としての実力の向上と取るべきなのか、数値だけでは判断がつきません。
単純に経常利益の絶対額が向上している以上、会社としての成長はしていると言えなくはないですが、絶対値だけだと体質評価が困難です。経常利益の増加が好景気によって受注が増えているからなのか、体質が良くなっているからなのか。。
3事業の中で、CREM事業は性質として維持管理をするビジネスモデルのようなので、安定した収益が見込めるのでしょうが、オフィス事業、CM事業については、売上の過去の計上基準が違うと本質的に拡大しているのかどうかが見えません。
もう少しピュアCMに移ってからの推移を見たいところです。
ストップオプション制度
同社はストックオプション制度を導入しています。
これは持論なので賛否あるとは思うのですが、ストックオプション制度を導入している点は良くないと思います。
ストックオプション制度というのは、経営陣や従業員が決まった値段(大抵は市場より安く)で株を取得する権利を与えることです。これにより株価の上昇が経営陣や従業員の利害が株主の利害と一致し、会社を発展させるモチベーションアップに繋がるといわれてます。
ただ私は、少なくとも経営陣は「投資家と同じ値段で市場から買えよ」と思います。
だって上場企業は投資家に株を買ってもらっているわけですよね。
当の経営陣も買わない株をなんで投資家に買わせるんですか?
自社製品を使わない営業マンから製品買いますか?買うわけがない。
自分で買いたくもないものをそもそも人に売るな、という話。。
勿論、そうは言っても投資するかどうかは個人のポリシーの話ではあるから、株を買う事は強制できません。
ただ、安く買う権利まで与えて経営陣に持って貰うのはなんか違うだろ、と思います。
ストックオプション制度はウォーレン・バフェットも痛烈に批判、反対してますが、私も同意見です。
まとめ
明豊ファシリティワークスはかなり合理的な会社だと感じました。
ピュアCMへの移行は、あくまでお客様のニーズにお応えして、という書き方になっていたため、私はイコール経営陣の実力判断には繋げていない(保守的解釈)のですが、素直に見れば自社の効率改善への努力と取れます。
元々は工事の元請という体質から脱却し、コンサルという効率的体質に変身しつつあるのが、今の明豊ファシリティワークスなのかもしれません。
ただ一点不安なのは、オフィス事業、CM事業の景気後退時の影響です。CREM事業は保守なので継続するとしても、オフィス事業、CM事業がどれだけの競争力を持っているのか、利益率が安定しないので判断がつきません。高利益率を維持できるなら競争力を持っているという推測もできますが、売上の計上基準が違うのでなんとも・・・
という事で体質判断は保留とします。
とはいえ、キャッシュが潤沢に回る体質であり、経営陣が賢明な効率改善に積極的であるなら、一般投資家、転職者、新卒者から見ても、十分優れた会社であるとは言えると思います。
本記事は筆者の私的見解であり、適切と思われる指摘等があればいつでも加筆修正致します。
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