結論:創業者一族企業(推奨せず)
目次
事業概要
先ずは高橋カーテンウォール工業の事業についてです。
事業内容はPC(プレキャストコンクリート)カーテンウォール事業とアクア事業、その他の3つのようです。
そもそも、PCカーテンウォールという単語から分からないので調べてみると。
PC(プレキャストコンクリート)
プレキャストコンクリート (precast concrete) は、現場で組み立て・設置を行うために、工場などであらかじめ製造されたコンクリート製品、あるいはこれを用いた工法。一般にコンクリート構造物は、建設現場において型枠を設置し、コンクリートを打設して造られる。これを場所打ち工法または現場打ち工法と呼ぶ。これに対し本工法では、専用工場においてあらかじめコンクリート製品を製作した後、現場へ運搬して設置を行う工法である。
カーテンウォール
カーテンウォール (curtain wall) は、建築構造上取り外し可能な壁であり、建物の自重および建物の荷重は、すべて柱、梁、床、屋根等で支え、建物の荷重を直接負担しない壁をいう。間仕切り壁と同様の非耐力壁である。
従前の一般的な高層建築では、鉄骨鉄筋コンクリート構造を採用することが多く、外壁は柱や梁と同様、荷重を支えるほか地震や風圧によって建築物にかかる力に対抗する役割を果たしていた。しかし、高層建築がさらに進んだ場合、外壁自体の重量が設計上無視できない問題として浮上するようになってきた。また高層建築で柔構造が採用された場合、地震の際に壁面が変形しそれに伴いガラスが割れ、破片が飛び散ってしまうことも問題視された。
これらの諸問題を解決するために、建築物の荷重を支える構造は柱と梁によるものとし、外壁はそれらの構造物に貼り付けるのみとする工法が開発された。これによって外壁重量の軽量化、建物のしなりによるゆがみの影響を極力小さくすることなどが可能となった。
つまり、主に高層ビルなどの外壁部分を工場で生産して販売、施工するイメージでしょうか。
セグメント売上(業種ごとの売上)の状態も確認します。
売上の水準から言っても同社はPCカーテンウォール事業が97%を占めていて、アクア事業と不動産賃貸業とかはおまけでしょうね。アクア事業と不動産賃貸業は無視して問題ないでしょう。
業績推移
セグメント売上の時点で気づいた方もいるでしょうが、前年対比で滅茶苦茶売上が増えてます。前年対比2.55倍です。
ここまでの増加率だと考えられるのは、どこかの会社を買収した結果、見かけ上の売上が爆上がりした、というのが一般的ですが、どうもそうじゃないようです。
業績に対する経営陣の説明
オリンピック特需増えた売上が、工事の遅れで2019年にまとめて繰り越されてきているということですね。前年の売上が例年に比べても少ない事とも符合しますから、ああ、なるほどね、と腑に落ちます。
オリンピック特需という非常に特別な時期だから致し方ない、という気もしますが、とはいえこれだけの売上が時期ズレを起こすのは、事業としての弱さを感じます。
キャッシュフロー
直近でやはり工事の遅れが起きていた2018年が厳しそうですね。
フリーキャッシュフローが赤字になってますし、現金も大幅に減ってます。
一時的なものとはいえ、利益やキャッシュが滞る状況が生まれてしまうというのは、事業として不安が残ります。
工事の完成がズレ込むのは致し方ないとしても、もう少し頻繁に、未成工事受入金を受け取っておくとかしないと、つなぎ資金の工面だけでも苦労するはずです。
ただ面倒でやっていなかったのかもしれませんが、もしかすると、それを得意先に要求できないような弱い立場なのかもしれません。
いずれにせよ、そのあたりをキッチリできないあたり、体質の弱さを感じます。
B/S(貸借対照表)
2019年に2018年分の資金をまとめて回収しているため、未成工事支出金が一気に減り、現金預金が一気に増えていますね。この増減の激しさは事業としてちょっと怖いところです。キャッシュの管理ができていない気がします。
負債を見てみると、やはりキャッシュの不足を社債、借入金に頼っているのが分かります。2019年は十分キャッシュがあるにも関わらず返済していない所を見ると、一時的な繋ぎのためだけではなく、銀行と継続的に融資取引をしている感があります。
つまり確信犯的、慢性的な借金体質です。
今回のコロナショックのように、事業というのは時として大きな変化に見舞われます。突然お金が回収できなくなることもあるでしょうし、大きな事故が起こることもあります。そういう時に頼りになるのは結局キャッシュです。
キャッシュの回収を毎回工事の都合で変えて、足りない分を銀行から借りていては、いつ何時危機的状況に陥っても不思議はありません。
役員退職慰労引当金
また、貸借対照表を見て、ん?と思われた方もいるかもしれません。
役員退職慰労引当金が跳ね上がってます。
通常、きちんと統制の取れている会社であれば、退職金等は明確に基準が敷かれており、一期でこんなに増えたりしません。
この数値は黄色信号です。
この会社は会社の上層部によって私物化されている可能性があります。
大株主の状況
本来、退職金を急激に上げるのは不公平感がありますし、株主から苦情が来ます。
しかし何故かまかり通っている。
理由は大株主の状況を見ればわかります。
う~わ~。。という感じです。
あからさまに過半数を一族で持っていますね。
ほとんど50%以上ですから、この会社は高橋一族の私的な会社と言っていいですね。
だからこそ、退職金引当額の引き上げなどという、一部の人が得をする決定もまかり通ってしまう。
やろうと思えば、利益を少数株主に回さないために、全部役員報酬にすることだってできてしまうでしょうね。そういう会社も実際あると聞きますし。。
役員の報酬等
役員の報酬に関する方針は無いそうです(爆)
高橋氏が取締役各人別の報酬額を決定するそうです。。
ここまで露骨だと引きますね。
誤解の無いように言っておきますと、株を一族で持つことは必ずしも悪い事ではありません。しっかりと事業に理解ある人が株を管理していれば、買収のリスクも少なくなりますし、迅速な意思決定が可能になります。
ただ、誠実なオーナー経営者は大量の株を持っていても、自ら率先してフェアな規律に定め従う事で会社としての清浄な企業文化を育みます。上場企業はあくまで社会の公器として扱い、公平に自分も一株主として配当という形で利益を受け取ります。
これがまだ非上場会社ならまだ私的な話で済みますが、上場企業として一般投資家に株を買わせておきながら、こういった行為をするのは、倫理的にどうなんでしょうか。こういう所はルールで縛るのは非常に困難な分、上層部の倫理観が試される部分なので、ここが一線を越えているならその会社はNGです。
どんな形であれ、この会社には関わらない方が賢明だと私は思います。
まとめ
高橋カーテンウォール工業はヤバいと思います。投資家は勿論、就活、転職者にもお勧めできません。財務とか体質とか以前に上層部の倫理感がヤバい気がします。
一族が株を掌握している事は別に構いません。
高額報酬を出すのも、相応の働きをして、きちんと会社として利益を出しているのであれば文句を言われる筋合いはありません。
しかしそれまでずっと一定の水準だったものを突然、利益が上がったからといって、ルールを曲げる、あるいは最初からルールがないというのは規律が無いという事です。
そのような会社はこの先、創業者一族の意見一つでどうとでもなってしまうので、信用できません。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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