企業分析アナトールの株式投資

企業分析の「正しい答え」を教えるブログではなく、「答えを探して藻掻く姿」を見せるブログ

【3053】ペッパーフードサービス~有価証券報告書の読み方~

結論:超逃げて

 

目次

 

事業概要

先ずはペッパーフードサービスの事業についてです。

f:id:umimizukonoha:20200621121638p:plain

f:id:umimizukonoha:20200621122314p:plain

「いきなり!ステーキ」で有名になり急成長した会社さんです。

事業内容は以下4つです。

ペッパーランチ事業

②レストラン事業

③いきなり!ステーキ事業

④商品販売事業

イメージ的には「いきなり!ステーキ」が大きいのですが、何故か3番目にいきなり!ステーキ事業が来ています。理由を求めて沿革を見てみます。

f:id:umimizukonoha:20200621123520p:plain

f:id:umimizukonoha:20200621123636p:plain

もともと同社はペッパーランチで業績を拡大してきています。

ペッパーランチ事業は元々ステーキレストランを運営していた創業者が、調理技術・味・メニューをベースにしてシステム化し、運営ノウハウをマニュアル化し、フランチャイズ化する事で成長してきたようです。運営システムのフランチャイズ化という意味では、アメリカのマクドナルドやケンタッキーの成功の仕方に似てます。

その後様々な業態をオープンし、その中で大きくヒットしたのが「いきなり!ステーキ」だったようです。

つまり流れをまとめるとざっくり以下

1985年~1993年:創業~業態模索

1994年~2007年:「ペッパーランチ」のフランチャイズ化、世界展開

2008年~2012年:ペッパーランチを維持しつつ新業態模索

2013年~:「いきなり!ステーキ」の登場で急拡大

つまりここでの業務内容の記載順番は登場した業態の順番なのでしょう。

 

では、セグメント別の業績を確認します。

f:id:umimizukonoha:20200621124505p:plain

売上構成

ペッパーランチ事業:13.0%

②レストラン事業:2.0%

③いきなり!ステーキ事業:84.7%

④商品販売事業0.3%

 

やはり、「いきなり!ステーキ」事業がほとんどを占めています。

 

 

 

業績推移

売上高を見ていると右肩上がりなのですが、経常利益率を見てみると、4.3%⇒6.4%⇒6.1%⇒▲0.0%という具合で、低空飛行からの墜落、という流れです。

f:id:umimizukonoha:20200621125203p:plain

2018年には既に純利益が赤字になっている事から、体質がいつ悪化したのかを見るため、さらに過去の2011年~2015年の業績を見てみます。

 

f:id:umimizukonoha:20200621125444p:plain

2.5%⇒1.8%⇒3.9%⇒6.5%⇒4.7%という推移。

元々低空飛行仕様だったのですね。。

沿革から考えて、「いきなり!ステーキ」事業のイケイケどんどん策によって利益体質が悪化した、というシナリオかと推測していたのですが、むしろ「いきなり!ステーキ」事業が始まってからの方が利益率は良化しています。

ペッパーランチ事業のフランチャイズという言葉に利益率が良い期待を抱いていましたが、もともとペッパーフードサービスは経営の厳しい会社のようです。

原因は結局経営体質ではないかと思います。

f:id:umimizukonoha:20200621135440p:plain

利益率ではなく、あくまで規模の拡大を追う経営陣のスタンス。

効率ではなく規模を求めると、維持費というリスクだけが膨らんでいきます。

体質が弱くなるのも必然だと思います。

 

 

 

キャッシュフロー

2015年~2019年

f:id:umimizukonoha:20200621134943p:plain

2011年~2015年

f:id:umimizukonoha:20200621135122p:plain

2012年からフリーキャッシュフローをぎりぎりまで使い切ってます。
いかにもイケイケどんどんな会社の数値です。「金は全て使え」という印象。

確かに資金効率という意味ではそれも正しいのですが、経営というのはいつ悪化するのか分かりません。日頃から厚い利益率を目指し、利益とキャッシュを蓄積する体制を築いておかなければ、一度の売上減でそれまでの歯車が急な逆回転を始めます。

どれだけ堅調な業績で、積極的な成長を目指すにしても、経営者は使えるキャッシュの6~7割程度に抑える慎重さが必要かと私は考えます。

 

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産側で先ず目に付くポイントは以下です。

有形固定資産:104.6億円

売掛金、未収入金:38.9億円

敷金及び保証金:30.5億円

金額が大きいのは勿論ですが、これらの資産は価値の減損ないし貸倒を起こした場合、純資産に直撃します。

(実際、ペッパーフードサービスは2018年:▲12.3億、2019年:▲27.2億という減損を計上して、赤字になってます)

よって、これらの資産価値が減価しても持ちこたえられるだけの純資産があるかを見ておかねばなりません。

f:id:umimizukonoha:20200621142827p:plain

f:id:umimizukonoha:20200621143815p:plain

純資産:6.0億円。
つまり、先ほど挙げた資産の合計、174億円が3.4%ほど減価した場合、債務超過に陥ります。

3.4%くらいの減価は普通にあり得ます。というか通常ベースで、あって当たり前。

となれば帳簿上見えなくとも、現実的に見れば債務超過です。

 

有利子負債は82.6億円。

純資産6億円、経常赤字の会社からすれば金利負担ですら厳しい負担です。

おまけに買掛金は、既に売掛金と機械装置等を担保にしているご様子。

 

f:id:umimizukonoha:20200621145330p:plain

もはや得意先が差し押さえを始めているこの状況。

 

私が経営者の立場なら、もうよだれ垂らして白目向いてる状況なんですが・・・むしろこっから、どうやって巻き返すんですか・・・?誰か教えてください。。

 

 

 

会計方針の変更(減価償却方法)

しかもペッパーフードサービス、会計方針変更してますね。。

f:id:umimizukonoha:20200621155534p:plain

減価償却費というのは固定資産を購入したお金を、数年に分けて費用化する費用です。その手法にはいくつかの方法が認められてます。ただし、年毎の推移比較が難しくなるため、一度適用した方針はめったに変える事はありません。

しかし今回は変更する事によって、利益が395百万円上乗せされているとの事。

これはかなり粉飾的な意味でグレーな案件ではないかと。

理由が「当社の業態に対する需要が増加したと判断した事、出店戦略を見直し出店数が大幅に増加した事、並びに退転の店舗数の割合が減少した事などから、長期間にわたり安定的に事業を営む環境が整ったことを契機にしたもの」って。。

御社はご自身で継続すら危ういって書いてるじゃないですか・・・

f:id:umimizukonoha:20200621204330p:plain

いや勿論、この継続企業の記述はコロナによって後から付け加えられたものですから、2019年中は仕方ないといえば仕方ないですが、それでなくても御社普通に2期連続で赤字続きで、「長期間にわたり安定的に事業を営む環境」は整ってなくないでしょうか。。

この時期での会計方針の変更って、ただでさえ粉飾と取られかねなくて、かなり危ない橋だと思うんですが・・・監査法人的にはこれで大丈夫なんでしょうか。。

 

 

 

まとめ

ペッパーフードサービスが「ペッパーランチ事業」を売却検討しているという話を聞いたので、2019年12月期の有価証券報告書を元に分析してみたのですが、お読みいただいた通り、2019年末時点でかなりの状況です。

正直、ペッパーランチ事業を売った程度でどうにかなる状況なんでしょうか。。

しかもこれ、2019年12月までの状況ですよ?コロナショック前でこれって、コロナショック受けたら減損やら売上減でもっとヤバい状況になっているんじゃ。。

普通に考えたら私は破綻しかない気がするのですが・・・「ペッパーランチ事業」を売却検討しているという話を受けた株式市場の方々の反応。

f:id:umimizukonoha:20200621151703p:plain

https://www.nikkei.com/nkd/company/?scode=3053&ba=1

売却報道からの株価急騰。

買っている方々は本当に勝算があって買っているのでしょうか・・・

私に株買っている友達や就職する友達がいたらこう言うと思います。

「超逃げて」

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

www.freelance-no-excelyasan.com