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【2477】手間いらず~有価証券報告書の読み方~

結論

財務完璧、驚愕の利益率。

なのに、ヤバい感じしかしない。。

 

目次

 

事業概要

先ずは手間いらずの事業についてです。

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事業内容としては、創業時に始めた「比較ドットコム」というサイトの運営と、ホテルや旅館等の宿泊施設に対して宿泊予約サイトコントローラーのサービス提供があります。

「比較ドットコム」と聞いたときに真っ先に浮かぶのはインターネットメディアのレジェンド「価格ドットコム」です。漢字で書くとわからないですが、「ひかくどっとこむ」と「かかくどっとこむ」では頭文字の「ひ」と「か」しか違わないため、音がほぼ同じです。

沿革によると手間いらずが設立されたのは2003年8月で、その時には既に価格ドットコムの運営会社であるカカクコムは東証マザーズに上場しています。

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さすがに全く同じ業界にいて「価格ドットコム」 を当時知らなかった筈は無いと思いますから、ある程度意図的にこの名前にしたのではないかと思いますが、似せすぎではないかと。。やっている事も全く同じですから、カカクコムのビジネスモデルを丸コピしている印象です。

訴えられないのでしょうか・・・。

どういった経緯で創業者がこの比較ドットコムを始めたのかは分かりませんが、もし価格ドットコムが繁盛しているのを見て比較ドットコムを始めたのであれば、ビジネスのスタンスとして不安です。

後発だからダメだとは思いません。

今や世界的企業のGoogleだって、検索エンジンという意味で言えばYahooの後発でしかないのですから。ただ、Googleは分野こそ後発でしたが、解決すべき課題が明確に見えていました。「それまでの検索エンジン(Yahoo)では望んだ通りの情報が得られないため、最高の検索エンジンでネット上の情報を全て整理する」という明確な課題があり、その独自の課題の解決が多くのインターネットユーザーの心を掴んだため、あれだけの企業になれたのだと私は思います。

「価格ドットコム」が解決できていない課題を「比較ドットコム」が解決するのであれば、飛躍する可能性はあります。ただ、今のところあまり二つのサイトが解決する課題にどんな違いがあるのか見えません。

解決する課題が同じなら、先行者が優位なのは必定であり、後続者は基本的に追いつくことは不可能です。そのあたりを根性論で挑むような経営者だった場合、その会社はかなり危険です。

 

宿泊予約サイトコントローラーの方は、2007年に「手間いらず」を運営・販売しているプラスアルファを買収して拡大した商売のようです。

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なんというか・・・事業そのものが総じてオリジナリティに欠けた印象です。

全部が全部オリジナルである必要は勿論ないと思いますが、他社から買収したサービスや製品は基本的に顧客を引き付けません。差別化が困難で、どうやっても付加価値を出す事が難しくなります。当ブログはある程度、高利益率の事業を選んで分析しているので、手間いらずはある程度高利益率のはずなのですが、少々腑に落ちません。。

 

セグメント別

セグメント別に見ていってみます。

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創業時の仕事である比較ドットコムは売上の2.3%ほどになっています。価格ドットコムの先行優位に追いつけず衰退した、という状況でしょうか。

一方で2007年に買い取った「手間いらず」の進化版が今のメインの売上のようです。そしてセグメント利益は73.7%という先の低付加価値率予想を覆す驚愕の数値です。

 

ただここには二つ理由があると思います。

 

①売上高13.6億円と、上場企業の中では小規模である事

事業規模が小さいと 組織維持のためのコストが最小限で済みます。実際、有価証券報告書の内容はかなりの部分の記載が省略されており、すっきりとした印象でした。

規模が小さいというのはそれだけでかなりの強みで、自然と利益率は高めになります。

 

②従業員給与が低く抑えられている事

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従業員数は35名しかいません。

しかもその中で平均勤続年数が2年は短いと思います。ほとんど新人ではないかと。

平均年間給与も33.1歳で4,326千円というのは決して高い水準とは言えません。

 

 

 

 

従業員の扱い

社の重点項目としては、人材の育成や優秀な人材が必要である事を説いています。

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ただ、勤続年数2年では優秀も何も育成する時間すらない気がします。中途、新卒問わず人を採用しているようですが、従業員推移は以下です。

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増えたり減ったり、といった感じです。

人を増やせばよいというものではないですが、この付加価値を出すのが困難なビジネスをこの人数で回して、しかもこの待遇では、それは社員も辞めるでしょう、という気がします。

給与は高ければいい、というものでもないですが、ある程度、与えられた役割に見合う金額を保証してあげていなければ、人は辞めますし会社の力は伸びません。その点で平均勤続年数は重要な指標です。いつまでこの体制で保つのやら。。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は36.7%⇒51.8%⇒51.8%⇒62.3%⇒65.0% 

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滅茶苦茶凄いんですが・・・裏方の従業員の状況を知っているため、素直に賞賛できません。これだけ利益をあげているのであれば、先ずは従業員に還元しなければ、未来は無い気がします。

 

 

 

経営方針

高い利益率を出しているだけあって、経営指標も売上高営業利益率を重視しています。

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まあしかし、これもまた同様に舞台裏である従業員に対する還元があまりに苦しいように感じます。確かに高い利益率は株主価値を上げる上で重要なんですが、従業員にもある程度還元しなければ、長い目で見た時事業の存続すら危ういんじゃないかと。。
しかも、手間いらずの場合、大株主の状況を見ると。。

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社長が76.57%持っているんです。。これは上場企業ではなかなか見られないレベルなんですが、つまり株主はほとんど社長なんです。

その社長本人が株主価値向上を重視して従業員への還元や育成を軽視している(ように見える)というのは、社長の倫理観が心配です。。

 

 

 

キャッシュフロー

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キャッシュフローも潤沢で手元資金も十分です。

これだけの利益率でしかもIT系ですからキャッシュを稼ぎやすい面はありますが、経営方針で述べられているように、無駄な投資は削減しているものと思われます。その方針は立派だと思います。

ただ削減した分の76.57%が社長の懐に入ると考えると、ただのケチに見えて素直に賞賛することが難しいです。。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現金及び現金同等物は33.5億円(92.2%)という事で、ほぼ資産がお金です。事実上のノーリスク状態ですね。

 

負債、純資産を見てみます。

 

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有利子負債ゼロ、ほぼ純資産の健全な状態です。

文句のつけようがありません。

 

 

 

まとめ

手間いらず。。名前の通り分析が手間いらずな会社さんでした。財務状態は優良で業績も素晴らしいです。ただ、その質的な部分がかなり怖いかと。

会社にとって社員の状況は将来を占う重要なファクターです。その重要な要素の状況があまりに危険です。これで業績が悪いならまだ分かりますが、業績が良いのに社員の状況が悪く、差分のお金は社長の懐に入っていく。。資本家が労働者を搾取する典型構図に見えてしまいます。

個人的にはそういう組織はいつか必ず綻びが生まれ、一気に崩壊すると思います。

今回のコロナ危機でホテル業界はかなり苦境に陥りましたが、手間いらずは一体どうなることやら。。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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