結論
財務良好、利益率優秀。
とはいえ課題はあるので将来に期待。
目次
事業概要
先ずはシステム・ロケーションの事業についてです。
ファイナンステクノロジーとか、インフォメーションテクノロジーとか、ビッグデータ解析とか、凄そうな単語が色々と書かれていて若干読みにくいです。
要するに自動車関連事業者向けの業務支援システム開発をしている会社さんのようです。
どういう車がいくらで売れたのか、というビックデータから査定額や残価額など、自動車に関する様々な情報を抜き出し、分析して提供するシステムを作ることで、中古自動車販売店の業務支援を行っているようです。
正直、もっと分かりやすく書けないものかな、と思います。
似たような機能を細かく分けて説明したり、難しい単語を並べるところは、無理に恰好をつけようとし過ぎている感があります。
難しい言葉を使って事業を説明する人は見栄を張りたがる人が多く、その実あまり自分のやっている事業に自信が無いように見えてしまいます。
強い会社さんって事業を説明するのはシンプルだと思うんです。
ウォルマート⇒どこよりも安い小売りです
トヨタ⇒車を作って売ってます
難しい言葉を使う必要はないです。
重要なのは言葉で飾る事では無く、自社のサービスを誰に言っても恥ずかしくない水準まで極めることだと思います。
セグメント別
システム・ロケーションは単一セグメントですのでセグメント別はスルーです。
業績推移
経常利益率の推移は25.7%⇒23.7%⇒35.3%⇒38.7%⇒46.4%
結構な利益率です。ここ最近特に伸びてきています。
直近2年のP/Lと5、6年前のP/L(営業利益まで)を見比べます。
見てわかる通り、販売一般管理費は据え置きですが、売上原価が激減しています。
この理由についてはこれだけでは良く分からないです。
売上原価明細書を見ると、労務費はそれほど減っておらず、経費が減っています。
直近の売上原価明細書
少し前の売上原価明細書
主な内訳の中から賃貸料という項目が消えているようです。何の賃貸だったのか。。
賃貸と言えば設備や建物なので、ちょっと前の主要な設備を見てみると・・・
「入札会ヤード」という単語を見て、ピンときました。
沿革の中でオークション事業から撤退していました。
利益率が改善されてきた時期と、撤退の時期がちょうど符合します。
つまり採算の取れていなかった事業から撤退して利益率が向上したという事です。
これはお見事な経営采配ではないかと。
経営陣の能力に期待が持てます。
従業員の状況
会社によっては従業員の待遇が悪いままで利益率が高い会社もあるので、従業員の状況を確認します。
平均年齢からみると決して高くはないですが、まあ、悪くはない水準ではないかと思います。勤続年数も長くはないですが、それなりですから凄いスピードで入れ替わっている、ということもないのでは、と思います。
一応以前の状況も見てみると
かなり状況が良化しているのが分かります。
元々の待遇はちょっと危うい感じでしたが、業績が上がると共にきちんと従業員の待遇に反映し、還元しているものと思われます。
小規模会社によっては従業員の搾取をして業績改善と呼ぶ会社もありますが、システム・ロケーションは少なくともこの状況だけ見れば、そういった会社ではなさそうです。
経営方針
経営指標はROEを重視しているようです。
ただ、現実にROEの推移を見てみると
それなり、といった感じです。低いわけではないですが特別高い感じもしません。
指標として悪くないチョイスではあると思うので、自社株買い等を実施して、もう少し結果に繋げても良いのではないかな、と思います。
ただ、結構な株数を固定株主が押さえていて、10%ほどしか市場に出てません。
下手に市場から株を買いすぎると市場に出回る株が少なすぎて、上場廃止になってしまいます。
⇒JASDAQは流通している株の時価総額が2.5億円を下回ると上場廃止になります
まあ、現状でもあまり上場している意味が無い感じではありますが。。
キャッシュフロー
キャッシュフローも潤沢で手元資金も十分です。
ただ、5年前に営業キャッシュフローが赤字になっています。利益は普通に出ているので、何かしらの資産が増えたか、負債が減ったかだと思うので見てみます。
仕入債務が大幅に減ってます。何かしらの債務をドカッと払ったためキャッシュアウトしたのだと思われます。ただ、その前の年は逆に負債が積み上がり営業キャッシュフローが大きかったため、単なる年ズレと考えられます。
これが大手企業であればキャッシュの管理能力の問題なので少し心配ですが、同社は売上高が約10億円、従業員は30名ほどの小規模企業なので、それくらいは仕方ないのかな、という気がします。
さらに過去を見ても、その年以外は黒字なので、おそらくそれほど大きな問題ではないと考えます。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現金及び現金同等物は16.1億円(55.6%)という事で、資産の半分がお金です。
投資有価証券も結構ありますが、そんなにあからさまに危なそうではないかな、という気がします。持っている理由も正当なものだと思います。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債は無い無借金経営です。
役員退職慰労引当金が、会社規模の割には積んでいるな、という印象です。
まあ株式の過半数を相当しっかり握っていますから、これくらい積むのは容易い事でではないかと。ただこっからさらに何億とか上積みするようになると、経営者の倫理観が少々心配です。
その他有価証券を持っていましたが、その他有価証券評価差額金がプラスなので、累計で利益が出ている事になります。これならば安心です。
また、純資産が23.9億円あるため、仮に有価証券や売掛金、固定資産と言ったリスク資産が減価したとしても、十分耐えうる財務状況だと思います。
役員の状況
最後にちょっと小ネタです。
役員の略歴を学歴から入れる会社というのも結構珍しいですが、とりあえず慶應率高し。。
意図しているのかは分かりませんが、慶應商学部多いですね。。適当にやってこの同じ大学率は無いでしょうから、何となく学閥があるのではないかと。。
血縁による同族のように、あまり私は学閥も推奨しません。役員の人選が仮に学閥など関係が無く、能力として適切な人選だったとしても、こんな事実を並べられたら、選ばれなかった人間は信じません。モチベーションの低下を招くのは間違いありません。
この有価証券報告書を読んだことにより、慶應ボーイが集まる事を期待しての学歴公開なら仕方ないですが、特段の理由が無いなら、これ見よがしに学歴を書く必要はないんじゃないかな、と思います。
まとめ
財務良好、業績優秀、2017年の事業撤退による全社の利益率向上は経営手腕としてお見事だと思います。
ただ、組織として若干学閥の匂いを感じる部分や、大株主が固定されていて経営者が圧倒的過半数を占めており、独裁経営ができてしまう状況、冒頭の事業説明の印象からして、あまり自由だったりフェアな雰囲気は感じません。
従業員への待遇も、かなり向上してはいますが、まだ高い水準とは言えません。
財務数値としては非常に優秀なので、是非このまま上記の問題を克服してさらなる発展を遂げてほしいな、と思います。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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