結論
規格外の優良企業。成長途上で体質、業績の変動リスクは不安だが、少なくとも現状の体質は文句のつけようがない。
目次
事業概要
まずは北の達人コーポレーションの事業についてです。
北の達人コーポレーションは、インターネット上で自社オリジナルブランドの健康美容商品を販売する会社です。健康美容商品と聞くと、何となく怪しい雰囲気があります。ビジネスの歴史を振り返ると、「健康に良い」という触れ込みで登場したものの、何の根拠もなかった例は枚挙に暇がありません。あのジャンクな飲み物とされるコカ・コーラですら元々は「健康に良い」という触れ込みで登場しています。
砂糖、カカオ、コーヒーなどそれまで扱われていなかった様々な原料もまた、市場投入される時は珍しい薬として投入されます。こうした新たな取り組みは効果が無かった場合や逆に体に悪かった場合、バッシングを受けたり訴訟問題に発展したりするリスクを抱えています。
秦の始皇帝は長寿のために各地から珍味を集めて食していましたが、その中に水銀があり、始皇帝は水銀中毒で亡くなったという説もあるようです。もし当時に水銀中毒が判明していたら、水銀を持ち込んだ商人は訴訟をすっ飛ばして即処刑されたでしょう。
しかし前述した商品が世界で爆発的にヒットしたように、ツボにハマった場合の利益は大きいです。その辺りは経営者がどのような考えを持ち、どんなスタンスで事業に臨んでいるか、という所を含めて確認してみたいと思います。
セグメント別
同社は単一セグメントなのでセグメント別はありません。
業績推移
経常利益率の推移は18.0%⇒20.0%⇒26.5%⇒22.4%⇒29.0%
かなりの高利益率です。
同社はOEM(original equipment manufacturing )サービスを利用して、自社ブランドの製品を他社の工場で作ってもらうという手法を取っています。自前のブランドを持ちながらも高付加価値の企画と販売のみをやり、自前の工場は持たないビジネスモデルはアップルやキーエンスのような超巨大高付加価値企業も取っている手法です。
こういった手法を取り、なおかつ付加価値の高い製品を生み続ける能力があれば、儲かるのは必然なのかな、と感じます。
経営方針
経営指標としては自己資本比率、自己資本当期純利益率(ROE)、売上高成長率、経常利益率を挙げています。良い着眼点だな、という印象です。
特にROEを重視しながらも自己資本比率を見ています、という部分は、危険なレバレッジをかけずに体質ベースで利益率をあげる事を意味します。もし実現できているとすれば、それは企業体質にとっては理想的な状態で、同社経営陣は財務に対しても相応の理解があると考えられます。
という事で以下が推移です。
素晴らしい数値です。
自己資本比率は負債と純資産の比率で、負債の中には運営上仕方無い負債がありますから、100%にする事は現実的に不可能です。ただ、6~7割という会社は借入等に頼っていない印象が強いです。負債の詳細はB/Sで見ていきますが、おそらく有利子負債などはないのではないかと。
キャッシュフロー
5年前は少々怖い数値ですが、ここ4年は営業キャッシュフローや圧倒的に勝ち越しています。完全にツボにハマっている形ですね。儲かって仕方ない、という印象です。
5年前の営業キャッシュフローだけ少ないのがちょっと気になるので理由を見てみます。
大きなキャッシュアウト要因としては棚卸資産が積みあがっている事と、法人税の支払になります。法人税の支払は利益が出ている以上は仕方のないキャッシュアウトですが、棚卸資産の増加は在庫管理の体質に問題がある可能性があるため、警戒が必要です。
ただ、キャッシュフローに関してはその後4年間圧倒的に黒字となっている事や、さらに過去にさかのぼっても(以下)
その1年しか営業キャッシュフローが減っていない事を鑑みるに、本当に一時的な在庫の積み上がりだったようです。体質的に大きな問題があるようには思えません。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現預金は40.9億円(69.3%)とかなり充実しています。キャッシュフローの所で話題になっていたため一応在庫の水準を見てみますと、棚卸資産/売上高×365日(利益率は分からないので無視)で30日と、まあまあ正常ではないかと思います。
同様に売掛債権も20.3日程度なのでクレジットカード支払い程度の滞納率なので優良な水準と言えます。
資産状況は極めて健全と言えます。
負債、純資産を見てみます。
元々の経営方針が自己資本比率重視という事で、直近では借入金はゼロです。昨年までは長期借入金があったようですが、キャッシュの余裕度からすると「返してもいいけどとりあえず期限までほっといた」程度のレベルと言えるでしょう。無視で良いです。
純資産が43.5億円と盤石です。資産の余裕度も含めて考えると、完璧すぎるといえます。
経営成績の状況
経営成績の状況というのは経営者が、現状の経営状況をどのように見ているのかを如実にあらわしている部分になります。機械的に毎年同じ項目を説明している会社もあれば、一つ一つの項目について詳細に書いている会社もあります。
北の達人コーポレーションはどうかというと・・・
長い・・・
これだけ長い分析も初めて見ました。
分析が長いのには二通りあって、要点をまとめきれてないだけの場合と、事業への愛が深すぎる場合があります。しかしここまで長いと、今回のは後者ではないかと。
商品シリーズの一つ一つの効果やメディア露出まで結構載せてます。
素直で分かりやすいっちゃ分かりやすいんですが、親馬鹿な親の子供自慢を聞かされている気分でお腹いっぱいです。決して悪い意味ではなく。。
毎年数値だけを置き換えているだけの、やらされている感バリバリの企業分析などより、経営者の熱気が伝わってきて余程良いですが、ちょっと落ち着こう、という感じ。
まとめ
財務状態は完璧で、生産はOEMを利用、販売戦略としては「定期購入制度」や「顧客サポート体制」、「マーケティングシステムの導入」など、高効率な施策を次々と導入する事で体質リスクも最小限に抑えられているように感じます。正直、現状以上の体質向上は私ごときには浮かびもしません。
控えめに言って文句のつけようがありません。
健康・美容系は商品の品質が良く分からないのと、若干詐欺臭く危ないイメージがあったためこれまで敬遠していましたが、調べてみるものです。経営者も財務に明るい印象ですし、商品戦略でよほど大きなポカをしない限りは盤石といえるビジネス体質ではないかと思います。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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