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【3031】ラクーンHD~有価証券報告書の読み方~

結論

ナニコレ、コワイ。

 

目次

 

事業概要

まずはラクーンHDの事業についてです。

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ラクーンHDの事業は大きく分けて二つ、EC事業とフィナンシャル事業です。

EC事業の中でも「スーパーデリバリー」というアパレル・雑貨のBtoB取引サイトと、「COREC」というクラウド型の発注システムに分かれています。

 

余談ですが、業界こそ違うものの同じことをしている企業さんは多いですね。

 インフォマートさんが飲食業界

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 プラネットさんが流通業界

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当ブログは分析対象を利益率や資本効率で足切りしているため、優秀な数値を出している会社しか分析してません。その中に似たコンセプトの事業がいくつも入っているというのは、そのビジネスのニーズが高いからだと推測されます。

 

もう一つがフィナンシャル事業で、売掛保証、家賃保証、決済代行を行っているようです。いずれもEC事業との関係性を説明してくれています。

ただ、個人的な印象としては家賃保証だけは若干毛色が違うように感じます。元々のECサイトと離れているんじゃないかな、と。

となると自社の理念、つまりアイデンティティが曖昧な空気を感じます。

という事で一応経営理念を確認すると、「企業活動を効率化し便利にする」とのこと。

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理念としては意外に悪くないと思います。若干抽象的ではありますが、「ラクーンが何をすべきでないか」が何となく分かります。

しかしだからこそ家賃保証はこの理念に沿っているのかな、という気がします。事業用家賃保証という意味では企業活動を効率化し便利にする、という理念にはかなっている気がしますが、居住用の家賃保証まで手を広げているため、連想ゲームのように理念から少しづつズレている気がします。

仮に理念は単なるお飾りで、儲かりそうであれば何にでも手を出す、という経営者である場合、将来的に良く分からない分野に進出する可能性もあるので、体質として注意が必要です。

 

セグメント別

セグメント別を確認します。

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EC事業:17.6億円(59.2%、利益率40.5%)

フィナンシャル事業:12.2億円(40.8%、利益率11.7%)

EC事業の利益率が飛びぬけています。

フィナンシャル事業の利益率はあからさまに悪くはないですが、この売上には内部売上高が1.7億ほどふくまれており、この売上は連結で相殺される分なので、その分の利益も消えます。それを考慮すると利益率はさらに低下する可能性もあります。

また、フィナンシャル事業は家賃保証に進出するためにALEMOという会社を子会社化しており、帳簿価額より高い値段で購入したためのれん償却が発生しています。

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先ほど指摘の通り、この買収は果たして理念に沿うものなのか疑問です。高いのれん代を払ってまで、理念に沿わない行動をしているなら、経営陣が気分によって新たな事を始める可能性も考えられるため、今後の戦略が不安になります。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は15.9%⇒16.5%⇒17.6%⇒16.9%⇒18.3% 

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売上が伸びるのとほぼ同じ形で経常利益率も上がっています。売上が伸びつつも経費を適切な水準に抑えられているという事であり、良い傾向だと思います。

 

 

 

経営方針

EBITDAを重視されているそうです。

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何故営業利益でなく、EBITDAなのか、是非理由をうかがってみたいものです。。

個人的な意見ではありますが、EBITDAを指標として採用している人は本当に意味を理解して使っているのか疑問です。私はその数値は全く意味が無いと考えているため、あまり信用できません。

理由は以下記事の業績推移を参照ください。

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キャッシュフロー

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前年までは良い調子だったのですが、当年度に一気にキャッシュフローが赤字になっています。これはかなり気になりますので、内容を見てみます。

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内容を見てみると、営業キャッシュフローが減ったのは売上債権が非常に増えて、預り金が減った事によるものです。投資活動によるキャッシュフローは有形固定資産の取得による支出で大きな赤字になっています。

かなりの異常事態です。

考えられる理由は今年から連結対象になったALEMOです。

しかしこれほどキャッシュフローに悪影響があるとすると、相当ヤバい状態の会社を買ったものと推測されます。

株式取得による会社等の買収(ALEMO)

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同社の買収に費やしたのは2.7億円ですが、発生したのれんの額が3.3億円と増えてます。のれんの算出式=(買収金額-買収先の純資産)ですから買収金額よりのれんの金額が大きいという事は、ALEMOは債務超過と思われます。

ALEMOの資産および負債を見てみると、資産合計1.5億円より負債合計2.1億円の方が多いため、やはり債務超過の会社のようです。

おそらくこの時に引き継いだ売掛金が増えたことで、一気にキャッシュフローが赤字になったものと思われます。

これは怖いです。普通に債務超過の会社を買うだけでも怖いのですが、2.7億円で買っているという点も、経営陣が本当に勝算があって買っているのかがまったく分からず非常に怖いです。少なくとも私は、ラクーンHDは結構派手に踏み外しているように見えます。

 

本社ビルの取得

ALEMO買収で増えたのは主に流動資産なので、投資キャッシュフローの有形固定資産の増加の説明がつきません。そこで、付属明細表の有形固定資産等明細表を見てみました。

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14.7億円の本社ビル買ってます。。

利益に直結しない本社ビル買うのと、債務超過の会社の買収をほとんど同時期にやるのは普通ではありません。どういう事でしょうか。。

そりゃあキャッシュフローも赤字になります。

 

いよいよもって経営陣の考えが読めなくなって参りました。。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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ちょ・・・資産状況がいよいよカオスです。。

ALEMO買収によるのれん爆弾と、本社ビル購入によって有形固定資産が一気に増えているのは勿論資産の体質悪化で、それだけでも十分憂慮すべき事項なんですが、それ以上に売掛金がヤバい。

売掛金金額が39.7億円(44.8%)ですが、ラクーンHDの売上高は29.8億円です。明らかに1年以上滞留しています。一般的に金回りの良いIT系企業で1年も滞留するなんて普通ないと思います。

さらに怖い事にこの売掛金の積み上げ、ALEMO買収によっておかしな債権を引き受けたからじゃないようです。

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買収前の段階で既に売上1年分以上の売掛金が滞留してます。

一つ浮かんだのは、ラクーンの事業の一つである売掛保証です。売掛金の中に、肩代わりしている売掛金が大量に混ざっているため、滞留をしている、という可能性です。ただし、これについては求償債権、という勘定が別に存在していますし、何よりそんな不履行の可能性の高い売掛金なら、設定されている貸倒引当金の額が少なすぎるように思われるため、この可能性は無いと思います。

別の可能性としては、割賦販売などによって長期で支払われる売掛金も存在しますが、そういった売掛金は通常の売掛金と性質を異にするため、「割賦売掛金」と勘定科目を分ける筈です。となればこれは普通の売掛金の筈。。

そうなると・・・失礼ながら・・・この売掛金、本当に実在するのでしょうか。。

売掛金は結構粉飾などに使われやすい勘定で、有名なのではFOIという半導体会社が9割以上の架空売上、架空売掛金を立てていたという例もあります。

私の乏しい知識ではほかに売掛金が1年以上滞留している正当な理由が思いつきません。ラクーンHDで一体何が起こっているのか。。怖くなってきました。。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債は全部で22.8億円です。

本社ビルの取得、債務超過の会社の買収など、お金を使い負債を増やす取引を連発したので、当たり前といえば当たり前ですが、ただでさえ売掛金が1年以上滞留して資金繰り厳しい筈なのに、さらに借金をしてまで債務超過企業の買収、本社ビルの取得って・・・マネジメント層の意図が本当に読めません。本当にどういう事なのかさっぱり分かりません。

 

 

 

まとめ

このブログはあくまで、ブログ主の乏しい知識の範囲内で有価証券報告書を読み解くだけのブログです。内容についてはあくまで私の勝手な勘違いの可能性がありますし、その場合、その感違いをどなたかが指摘してくだされば、お詫びして即時修正致します。いつでもご指摘をお願いします。

しかし、少なくとも私の理解できる範囲では、ラクーンHDはヤバい匂いしかしません。粉飾等が無かったとしても、売掛金が年間売上より積みあがった状況は明らかに異常ですし、しかもそれが何年も前から常態化しています。

経営指標にEBITDAを使っている点も不気味でしたが、経営陣の考えが私にはわからないので、恐怖でしかありません。

ところが株価を見たところ・・・

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【ラクーンホールディングス】[3031]株価/株式 日経会社情報DIGITAL | 日経電子版

10年来高値更新中です。。

場合によっては空売りも、とか思っていましたが、売掛金の滞留は今に始まった事では無く、過去から続いていたにも関わらず、今10年来高値を更新してきたことを考えると、仮にラクーンHDがおかしなことになっていてもその事実を市場が「今」認めて暴落するとは限らないんですよね。。

 

もうなんか色々怖いので、とりあえず今は静観しようと思います。

 

追記。

ラクーンについて記事書いていたらYahooの広告が以下になりました。

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リスクを最小限に、売上を最大限に「T&G売掛保証」

はい、貴社の財務諸表を見てぞっとしてます。

1年滞留の理由をご教授下さい。。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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