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【3092】ZOZO~有価証券報告書の読み方~

結論

創業者のスキャンダラスな印象とは違い、財務体質が良く、ビジネス体質も良好な印象。足元は経常利益率は悪化しているため、競争優位性が保てるかは注視が必要。

 

目次

  

事業概要

まずはZOZOの事業についてです。

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ZOZOはファッションECサイトZOZOTOWN」、ファッションメディア「WEAR」等の運営を主な事業としている会社です。

ファッションに疎い私にとってはどちらかというとZOZOよりも創業者の前澤氏の印象が強いです。お金を稼いだものの、特に使い道が無いのでお金を配る人、という現代の紀伊國屋文左衛門的イメージ。。

 

前澤さん、10億ほど私にください。。起業ネタあるんで。。

 

一般的には、会社よりも創業者の方が目立ってしまうというのは、あまり望ましくない傾向です。本当に優れた創業者は自身の仕事に情熱を持って取り組んでいる事が多いため、自身の時間を事業以外に時間を割く事を望みませんし、事業こそが生きがいという方が多いため、わざわざ自己喧伝して厄介を抱え込むような真似はしない印象です。

うちのブログが最強の企業と位置付けているキーエンスの創業者の名前を知っている人なんてほとんどいないんじゃないでしょうか。

 

何故知られていないかを創業者の滝崎氏自身が語ってます。

私もね、創業時の苦労はしましたから自慢話の一つでもしたいですよ。そういう事のお好きな社長さんもいらっしゃいますよね。でもね、そういうの泥臭いでしょ。ワンマン企業みたいで。若い社員もそんな事いわれたらかなわんでしょう。会社のイメージにもマイナス。だから言わないんです

参照:https://harubou-room.com/keyence2/

 

結局これに尽きるのではないかと。

傑出した体質を持つ会社の創業者は自分がどうとかではなく、会社がどう見られるかまで考え抜いているように思います。自身の行動が他人の目にどう映り、その結果会社が外からどんな風に見られるか、中の社員がその言動をどう思うか、そういった点にまで気を配っているのではないかと。

そういった深謀遠慮をめぐらす経営者だからこそ、一時のブームやノリなどではなく、逆境にも耐えて成長できる、強靭な体質を持つ企業を育てられるのではないかと私は推測します。

 

果たしてZOZOの体質はどうなのでしょうか。。

 

ちなみに、キーエンスに関する考察は以下なのでご参考ください。

www.freelance-no-excelyasan.com

 

セグメント別

ZOZOはEC事業の単一セグメントですからセグメント別の数値はありません。

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ただ経営者の分析のところで、売上高だけならセグメント別を載せてます。

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ZOZOTOWN事業:1,025.2億円(81.7%)

PayPayモール:17.7億円(1.4%)

PB事業:12.5億円(1.0%)

MSP事業:7.5億円(0.6%)

BtoB事業:23.7億円(1.9%)

広告事業:27.2億円(2.2%)

その他:141.5億円(11.2%)

色々やっていますが、売り上げベースで見るとほぼZOZOTOWN事業、さらに受託ショップが占める割合が高いです。事業の説明は以下です。

受託ショップは、「ZOZOTOWN」に各ブランドがテナント形式で出店を行い、出店後の運営管理を行う事業であり、当社グループが各ブランドの掲載する商品を当社の物流拠点に受託在庫として預かり、販売を行う事業形態です。

当事業と買取ショップとの大きな違いは、基本的なマーチャンダイジングをテナント側が実施することと、受託販売形態であるため当社が在庫リスクを負担しないことであります。当事業に係る売上高は、販売された商品の手数料を受託販売手数料として計上しております。

自前で在庫を持たず、手数料だけ計上できるというのは非常にいいビジネスです。

在庫を自前で持つのは資金繰りが大変になりますし、在庫の評価減リスクも抱えることになります。そのリスクを出店する店が負担してくれて、かつZOZOは売れたら手数料だけ貰う、という形なら、ZOZO側は財務的にほとんどノーリスクです。

買取ショップやZOZOUSEDは自前で在庫を持っているようですが、全体の売上の割合から見ると少ないですから、B/Sも健全な可能性が高いです。

それだけのノーリスクビジネスで、しかも手数料だけで873.1億円を売り上げているって凄いと思います。逆に言えばそれだけZOZOに出店したい理由がある、という事なのかもしれません。。

できれば、その理由まで理解したいところです。

 

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は32.9%⇒34.6%⇒33.3%⇒21.7%⇒22.0% 

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手数料売上というので利益率が高いだろうという想像はついていましたが、やはりかなりの利益率です。

ただ、直近の22.0%でも十分凄いのですが、2019年3月期から一気に悪くなってます。売上が伸びているにも関わらず利益が落ち込んでいるためです。

当時のPLを見てみますと、前年対比で販管費が全体的に増えていますが、荷造運搬費、広告宣伝費、その他が特に増えてます。

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理由としては以下の通りのようです。

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荷造運搬費:運賃改定

広告宣伝費:「ZOZOSUIT」を無料配布したコスト

その他:マーカー方式の「ZOZOSUIT」の開発コスト等

 

運賃の改定は給料と同じで一度上げると下げるのは中々困難です。しかも付加価値が上がる要素は低いですから、ビジネス体質としては悪化したと考えるべきでしょう。

ZOZOSUITはあれだけ話題になりましたが、現実には投資したコストに見合うだけの売上が上がらず、利益率悪化の要因になってるのようです。。いくら話題になっても利益率が悪化しては体質としてはマイナスです。

 

 

 

経営方針

経営指標としては主に2つで、商品取扱高とROEです。

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ROEについては具体的に30%という基準を設けており、ZOZOは軽々超えていますが、一般的に見て数値的にも決して楽な基準ではないですから、良い目標かなと思います。

商品取扱高については、これに手数料率をかけて売上を算出されるため、売上の絶対値評価であると解釈できます。当ブログではいつも、絶対値評価は大抵利益率の悪化を生み、体質を弱くする事が多いという理由で、絶対値による評価方法を悪く言うことが多いです。ただ、同社の受託販売ビジネスは、手数料に対する原価がほとんどなく、売上がほぼ売上総利益になるという異常体質です。

さらに、上記記述によれば販売費および一般管理費すら変動費が多いとの事なので、いちいち利益率に注意を払わなくとも、売上が下がれば原価も下がるというフレキシブルな構造になっている筈です。

となれば、経営陣が利益率は方針に入れるまでもない(不景気になれば変動費がすぐに削れるためそんなに神経質になる必要が無い)という判断をするのはそれほどおかしくはないと思います。

 

ちなみに同社は以下のように5か年分のあらゆる指標を算出しています。

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どれ見ればいいんだろう、という感じですが、私が目を付けたポイントは以下。

BPSが2019年3月期にかなり減っている

・発行済み株式数が減ってる

流動比率が悪化

自己資本比率が低くなっている

・経常利益率が下がっている

ここから推測できるのは、おそらく2019年3月期に自社株買いしてます。

高い値段で市場から株式を買い入れたため、BPS(一株当たり純資産)が減り、発行済み株式数が減っている。

株を買うためのお金を払うために借入をし、なおかつそのお金を自社株買いで使ってしまうので流動比率が悪化。

自社株は純資産のマイナスになるので自己資本比率が低くなっている。

で、この狙いは、一つには経営目標であるROEを改善するためではないかと思います。

経常利益率が下がっているのは業績動向でも触れましたが、2019年3月期から収益性が落ちています。そのまま何もしなければROEも当然下がります。

ただ、この自社株買いを行う事で分母である純資産が減りますから、ROEが向上する寸法です。

この処理をどう解釈すべきか。高ROEにコミットして好業績を維持達成する気概があるとも取れますが、収益性が下がった事を目立たなくするために財務能力を駆使している、とも取れます。

 

 

 

キャッシュフロー

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フリーキャッシュフローがきちんと黒字でしかも安全圏です。実に良い数値だと思います。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現預金は336.0億円(35.7%)です。まあまあ、無難な水準かと思います。

売掛金も315.5億円(33.5%)と多めですが、回収期間は91.7日と3か月ほどなので、それほど滞留しているわけではなさそうです。問題ないと思います。

在庫も少ないので無視で良いです。

物流センターを持っている、という事だったので、有形固定資産が多いかと思いきや、104.9億円(11.1%)とそれほどでもありませんでした。

理由としては、自前で持つだけでなく、リースでも借りている様子。

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金額の大きな建物をリースで借りる事あたり、資金繰りにもきちんとした配慮が感じられます。フリーキャッシュフローが潤沢なのも分かります。財務に優秀な人がいるのかもしれません。。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債が220億円(23.4%)あります。先の推測通り、短期借入金を借りて自己株式を購入したのだと思います。狙いとしては低くなった経常利益率でもROEを高くするために分母である純資産を減らす事(エクイティデッドスワップ)かと。

潰れかけた会社が生き残りのためにやる「デッドエクイティスワップ」はたまに見ますけど、「エクイティデッドスワップ」は初めて見ました。

わざわざこういう結構珍しいテクニックを駆使しつつ、デリバティブとか有限責任投資組合といった方面での本業を逸脱した財テクはしていないので、かなり健全な財務管理能力を持った会社のような気がします。

 

 

 

 

大株主の状況

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2019年9月にZOZOはZホールディングス(ソフトバンクグループ)の子会社化をしました。

また孫さんです。。

業績が良い会社には本当にソフトバンクグループが多いのですが、何でもかんでも支配下に置くのは止めてほしいです。。いや、支配するのはいいんですけど、中途半端に50%にして親子上場とかじゃなく、100%買収して欲しい。

多分親子上場は、親側からすると支配権を持ちつつ資本の柔軟性も確保できる、便利な方法なのでしたいのは分かるのですが、支配する影響力だけ持って責任は半分資本市場に投げる、というのが正直投資する側としては気持ち悪いです。孫さんの食べ残しのお菓子を食べるみたいな気分になります。。

上場企業は他の個別企業に投資などせず、きちんと本業で稼いで、稼いだ資金は株主に還元して貰いたいです。

 

 

 

まとめ

正直、創業者への印象があまり良くなかったので、色々体質良くないんじゃないかと思っていたんですが、少なくとも現状の財務体質は健康そうです。財務に関して運用が安定している印象、かつ本業の利益率悪化を財務対応でクリアしているあたり、財務管理者の能力がかなり高いのではないかと推測します。

ビジネスモデル自体がかなり強力な利益体質を持っていますが、狙ってそのスタイルに持って行ったのか、偶然手に入れた優位性なのかはちょっと分からないです。前者なら考えて実現できた人はかなり凄いです。

ただ、足元の利益率が悪化してきているのは間違いないですし、元々が魅力の多い業種ですから、ZOZOがこのままの地位に居座り続けられるかどうかは疑問です。私はあまり服に興味がないのでZOZOの何が良いのか、優位性がイマイチわかりません。。

投資をされる方はしっかり競合と比較し、ZOZOの優位性が確かな事を確認した上で投資された方が良いと思います。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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