企業分析アナトールの株式投資

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【2371】カカクコム~四半期短信フォロー~

結論

優秀な御者が指揮する優秀な馬車という認識は変わらず。だが、列車(コロナ)が登場したら、もはや列車の内容次第。さっさと列車が解体されることを切に願う。

 

目次

 

前置き

読者様より同社の直近短信のフォローも欲しいとリクエストを頂きましたので分析します。とはいえ多分、有価証券報告書よりは薄味で大したことは書けないと思います。 

前の分析

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経営成績

カカクコムの経営成績についてです。

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売上収益が33.2%減に対し、営業利益が65.7%減ってます。

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理由は勿論コロナ影響ですが、価格.com事業自体は巣籠もり需要やEC利用者の増加により増収だったそうです。一方で食べログ事業や旅行・移動領域の事業が減収したとのことです。

確かに事業の内容を見てみると食べログとかフォートラベル、バス比較ナビ、格安移動など、旅行とか飲食に関する内容が多いのですね。有価証券報告書分析では分析が漏れていましたが、各事業の売上(2020年3月期)が以下です。

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価格.com:239.6億円(39.3%)

食べログ:263.7億円(43.2%)

進行メディア:84.3億円(13.8%)

ファイナンス:22.2億円(3.6%)

こうして見ると食べログが占める割合が非常に高いのが分かります。確かに飲食店が軒並みダメージを受けているのであれば、食べログの大ダメージも納得です。

そもそもお店に行かないわけですからPVも下がるでしょうし、広告主が厳しい状況に陥れば当然売上も落ちます。

各事業がどれくらい落ちているのかを見てみます。

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さもありなん、といった所でしょうか。

確かに飲食業の売上は7割以上落ちているところは多いですから、食べログの72.5%減というのは別段驚く結果ではありません。価格.comがむしろ売上が伸びているというのは不幸中の幸いでした。

逆に言えばこの歴史に残るバイオハザードの状況下で、不利な業種を抱えているカカクコムが、四半期の営業利益率が23.2%と、並みの企業のベストスコアより良いという強さはやはり異常だと思います。体質の異常性は健在です。

ただ、食べログというコンテンツから、大幅に稼げるはずだったキャッシュフローが失われたのは間違いありません。株式の価値は稼ぎ出すであろうキャッシュフローの現在価値ですから、投資家にしてみれば株価の適正値は見直す必要はあると思います。もっとも、その見積直しもコロナの状況次第でいかように変わってしまうわけなのですが。。

あと、大幅に状況が変化した事でうっすらとカカクコムの損益分岐点が見えます。

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売上収益が激減している中で、営業費用はほとんど減らせていません。同社の経営陣はスマートな印象なので、このような危機的状況でコストカットを躊躇うとは思えません。となれば営業費用がそれほど変化していないという事は、ここが性質的にほぼ固定費であるため、と推測されます。 ざっくり70億といったところでしょうか。

とすればカカクコムは全体でもう30%ほど売上が落ちれば赤字に転落するという予想ができます。食べログというコロナ化最悪のネック事業が既に70%以上売上を下げている以上、ここからさらに落ちるというのは中々考えにくいでしょう。

ただ、あり得そうにない事が起こるのもまた経済のあるあるなので、心の準備はしておいた方が良いと思います。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現金は減っていますが、同時に営業債権などのリスク資産も減ってます。他は特に変わりなし、です。相変わらず殺風景な資産リストです(誉め言葉)。

 

 

負債、純資産を見てみます。

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負債は税金を払っている以外はほぼ変わっていません。

純資産は配当を出したために減ってますね。この状況でも赤字にならないわけですから原資は十分、余裕の配当です。

 

豆知識:株価の適正金額の測り方

そもそも「株価の適正金額」って何?という方もいると思うので、知られていそうで知られていない、ファンダメンタル派の株価の適正価値の簡単な測り方を簡単に書いときます。

株価の適正価値とは、将来のキャッシュフローの予想値を現在価値に割り引いたものです。

とりあえず「割引現在価値」の考え方は以下を参照ください。

割引現在価値 - Wikipedia

簡単に言うと、1年後に100円のキャッシュを生んで解散する会社があったとして、利回りが5%欲しい人はその株をいくらで買うべきでしょうか、という話です。

答えは100/1.05=95.2円が今購入すべき適正株価です。

得たキャッシュが必ずしも配当にならなくとも、少なくとも理論上100円は株主の持ち分になるわけですから、投資家は1年後に100円(95.2+5%)を手に入れる事ができます。

このように、将来的なキャッシュフロー額と、自身が望む利回りを決めれば、理論上自分が買うべき株価は算出できます。

 

よって株価の適正価値の算式は以下です。

株価=将来会社から生み出されるキャッシュフローの現在価値/株式発行総数

で算出します。

 

しかしここで問題が一つ。

10年後に潰れる、とか20年後に潰れる前提であれば潰れるまでのキャッシュフローを見積って割引計算できますが、原則として企業は存続を前提としています。

(会計公準でいう所の継続企業の公準という奴です)

永遠に出続けるキャッシュフローを見積もるってどうやるんだ?そして何回割引計算すればいいんだ?という話です。

 

単純に10年以降のキャッシュなんて分かるわけないから10年後に潰れる前提とかで考えても良いんですが、もっと簡単に出す方法があります。

 

それは以下の式です。

将来会社から生み出されるキャッシュフローの現在価値

=将来的に生み出すキャッシュフロー(定額1年分)/欲しい利回り(20%なら0.2)

 

具体的にカカクコムで考えてみます。

以下は有価証券報告書の2017年3月期~2020年3月期

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同社が稼ぎ出すキャッシュは実質的に営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを除いた額、すなわち2020年3月期でいえば、20,039百万円です。

私などは今回のコロナようなトラブルを懸念して、平均値か最も少ない年の数値を将来生み出すキャッシュフローを毎年出すと想定します。

2018年3月のフリーキャッシュフロー額、75.9億円を今後永続的に毎年カカクコムがもたらすと仮定します。

私がもし毎年の利回りを15%を望んでいるとしたら、75.9億円/0.15=506億円が将来カカクコムが稼ぎ出すキャッシュの現在価値になります。

これを総株式発行数206,705,000株で割ってやると、244.8円になります。

 

・カカクコムが毎年75.9億円のキャッシュフローを出し続ける

・自分が15%の利回りを求めている

・総株式発行数が206,705,000株

つまり上の前提条件で考えた場合、買うべき適正株価は244.8円である、と言えます。

まあ、今の株価は2,309円で10倍なわけですから、少なくとも市場はカカクコムが毎年75.9億円以上のキャッシュを生むか、利回りとしてそれほど多くを求めていない、という事になります。

 

この方法を参考にして自分なりの適正株価を算出すると、チャートの動きだとか市場の変動とかに惑わされずに、自信を持って買う事ができるのではないかと思うので、これまでやった事の無い人はやってみると良いと思います。

前提数値でいかようにも変わるので、結局はキャッシュフローの見積精度によってしまうわけですが、だからこそ当ブログで扱うような企業自体の体質、経営陣の性質を見る事が必要だと私は思ってます。。

 

 

 

まとめ

カカクコムは前回の分析で優良という診断をしました。正直これまでブログで扱ってきた企業の中ではトップクラスの優良体質企業だと思います。その認識は今回の短信を見ても変わっておりません。

じゃあなんで減益してんだ、と言われますとぐうの音も出ません。

結局私にできるのは、会社が本来持つ考え方や財務のスタンスから企業、経営者の質を占い、「ベーシックな状況であれば高い成果を挙げ、多少の不況なら跳ね返す事ができる」程度の力を推し量る事しかできません。

コロナのような生活習慣を変えるような事件が起こると乗り越えられるかは分かりません。

簡単な例を出すと、馬車の御者の中で移動タイムや馬の扱いに対する見識の深さから、顧客満足度の高い優秀な御者を選び出す事は可能です。ただ、列車が登場したことで、馬車という概念そのものを破壊される場合、御者の将来的に得られる利益は大きく目減りします。(そういった概念の破壊はビジネスでは往々にしてあります)

もっとも、見識の深い御者の中には列車と競争するのを止めて、馬の見識を有効利用して競馬場ビジネスを始める者もいるかもしれません。できるだけそんな御者を見つけていきたいですが、それも現実的には中々難しい話です。

弊ブログはできるだけ有能な御者と馬を探し続けますが、列車が発明されて大損害を被るリスクは常にある、という点はご了承ください。

 

本記事は短信を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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