結論
利益率は優良で堅実な印象。ただ現状では「90点という目標を掲げただけ」感が否めないため、今後の発展可能性はヘルステック事業の急成長に絞られるのではないかと推測。
目次
事業概要
まずはファインデックスの事業についてです。
ファインデックスの事業はシステム開発事業、ヘルステック事業の2つです。
システム開発事業は、医療情報システムとオフィスシステムに分かれますが、オフィスシステムは医療情報システムを応用した事業という事なので、主力は医療情報システムと考えてよいと思います。
この医療情報システムにはいくつもの製品があり、事業の内容で説明しているのですが、長いので割愛しています。(詳細は有報で読んでください)
それらの製品をまとめると、要するに同社は「医療機関内の情報を一元管理」するためのシステムを開発、保守しているようです。情報の一元管理はどこの組織でも重要な課題ですから、品質さえ良ければかなり安定性のあるビジネスであると思います。
ヘルステック事業の方は医療現場へのIoTの導入コンサルやAIを駆使したデータサイエンスのビジネスのようです。ただ、あまり製品の数は多くないですし、今流行りのAI関係ですから、最近始めた新規事業ではないかと思われます。
セグメントの状況
セグメント別の数値を見てみます。
システム開発事業:42.3億円(98.9%、利益率20.2%)
ヘルステック事業:0.5億円(1.1%、利益率▲173.6%)
メインであるシステム開発事業は中々です。予想通り、ヘルステック事業はまだまだ先行投資の段階のようです。本業で稼いだ利益をヘルステック事業に投下して、次の成長を目指す形ではないかと。
業績推移
経常利益率の推移は23.5%⇒22.1%⇒16.5%⇒16.5%⇒17.4%
ファインデックスは2017年12月から連結決算を始めているため、資料が切れております。そして、利益率も連結決算の開始を境に下がっています。これはこのタイミングからヘルステック事業に進出しているためです。
セグメント別で見た通り、ヘルステック事業は現状では大赤字で、先行投資ばかりの状態です。その分はちょっとした宝くじ程度の認識でいた方が良いと思います。
重要なのは本業の方です。
売上は5年前の145.0%と成長していますが、現在のセグメント別のシステム開発の利益率は20.2%で、2015年の経常利益率は23.5%です。つまり売上は伸びているのに利益率は悪化している状態です。
一般的にシステム開発というビジネスは売上が一定を超えてくると利益率が向上していくことが多いです。一度作ってしまえば原価は固定である事が多いからです。
ファインデックスの売上が伸びたのに利益率が下がるという性質から考えられるのは、同社のシステムが一つ一つのカスタマイズが手間なタイプのシステムの場合です。
その場合、新たな顧客ができる度に新しいシステムを作らねばならないため、売上が伸びても同じくらい原価が増えるため、利益率が下がる事があります。
実際事業の内容を見てみると
診療所相手なら、ライセンスを提供するだけですから利益率は高くなるでしょうが、大規模病院では基本的にカスタマイズが必須のようですから原価が嵩みそうです。
大規模病院の方が売上割合としては大きいでしょうから、自然大規模病院の方に売上は偏り、売上が上がっても利益率は下がるという構造なのではないかと推測します。
経営方針
目標とする指標は付加価値率を意味する売上高経常利益率で、具体的に30%という数値目標を掲げています。
実現されていないとはいえ、これは2つの点で良い方針であると思います。
①具体的な目標値をあげている。
目標とする指標はほとんどの会社があげますが、具体的な目標値を示さない会社は残念ながら多いです。例えば「数学のテストができるように頑張ります」という学生と、「数学のテストが常に90点を上回る事ができるように頑張ります」という学生がいたとして、どちらの信頼性が高いでしょうか。
少なくとも私は後者だと思います。
後者は90点以上という具体的な数値を据えることで、そのために何をすべきかが明確に見えているからです。具体的な目標値をあげることで、達成できた、できてないが明確になります。達成できればそれを維持するための方策を考え、達成できなければ達成するための方策を考える。
重要なのは結果それ単体ではなく、その目標を目指すプロセスを回し続けることです。そのプロセスを回すにも、先ずは明確な目標が無ければ何も始まりません。
その点でファインデックスの方針は良いと思います。
②経営理念と財務指標が一貫している。
企業の存在理由は企業理念の達成です。
企業理念を定めていない場合は方針でも構いませんが、とにかく財務目標は同社が進もうとする道を数値に落とし込んだものでなければ意味がありません。
その点、ファインデックスの経営理念は「価値ある技術創造で社会を豊かにする」であり、これを数値に落とし込んだ時、売上高経常利益率という付加価値率を選択するのは的を射ています。
上記2点から、きちんとした理念を持ち、それに沿った具体的な目標設定のできている会社さんなのだな、と思います。
ただ少し現状と目標が遠いので、どうやってこれを近づけるのかをどこまで現実的に考えているのかが重要になります。
キャッシュフロー
投資キャッシュフローがある程度コントロールされていて、フリーキャッシュフローは黒字を維持できていますが、ちょっと営業活動キャッシュフローの増減が激しいのが気になります。
一応直近のキャッシュフロー計算書を見ると、売上債権の増減が大きいようです。
売上債権の増減が多い理由で考えられるのは、売上が特定の大口案件に偏っている可能性です。いくつもの案件が大量にある場合、検収納期が分散するため入金もコンスタントにある筈なので、こういった偏りは起きません。
おそらくファインデックスの売上先で大口があるのではないかと推測されます。
日本電気に対して3.6億ほど売上げているようです。
これに加えて2018年に売上が伸びた分が2019年で消化され、2019年では大口が無いので期末に売掛残があまり残らず、一気に売掛金が減少したものと思われます。
一応4年前も見てみましたが、同じ理由です。
大口の売上が溜まるとキャッシュフローが厳しくなるみたいです。
とはいえ、こればかりは売上規模自体が大きくならないとどうにもならないのと、相手先がそれほど貸倒懸念の少ない大手ですから、そこまで心配する必要は無い気がします。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
手元資金は19.1億円(55.0%)とかなり潤沢ですすが、これは昨年対比で売上債権が現金化されたのが大きいです。昨年は26.1%しかなかったのが、55.0%になってしまうわけですから変動が激しいです。入金がこれだけ偏っていると、製造業などでは繋ぎ融資とかが必要になったりしますが、大きな投資の必要のないIT系なら、無借金でも乗り切れるのかもしれません。
在庫のソフトウェアが3.6億円(10.3%)ありますが、売上が42.8億ですから、問題ない水準ではないかと思います。
投資有価証券が2.0億円(5.8%)あるようですが、非上場株式のようで、どこの株なのかは分かりませんでした。保守的に見るならリスク性の高い資産として見た方が良いです。
金額的には大した事は無いのですが、敷金の金額が少し気になりました。自己所有の建屋の取得価額は0.5億円です。敷金が0.9億円って事は圧倒的に賃貸物件が多いということになります。
なので主要な設備状況を見てみると
凄いですね。主な建物は全部賃借物件です。
建屋は耐用年数が長く、資金が固まってしまうので、資金繰りが厳しくなります。よって、キャッシュフロー経営という観点からすると、かなりスマートな選択ではないかと思います。システム系の事業は場所を固定する必要もないので、自前のオフィスを持つリスクを避けるのは実に理にかなっています。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債はゼロの無借金経営ぽいです。あれだけ売掛金の入金に波があるのに借入をしないで済むのは、IT系という強みもあるでしょうが、自前の建物を持たず有形固定資産を持たない取り組みをしている点もあると思います。
株式給付引当金1.2億円(3.3%)があるという事はファインデックスはJ-ESOPという制度を導入しているものと思われます。
ストックオプションと同様、従業員に対してその業績に応じて株式を給付する制度です。
ストックオプションと同様、J-ESOPは本当にやめて頂きたい・・・ワケが分からぬ。。
投資家と労働者では役割が違うのですから、会社に対するスタンスが違うのは当たり前で、報酬だけを一致させた所で根本的な改善にはなりません。社員は仕事の質、企業の体質(利益率や資本効率、絶対評価など)に対して報酬を得るべきで、株価の変動で利益を受けるべきではないと思います。
株式市場は企業努力とは無関係に上下します。
2014年1月の株価は1,000円くらいで、2015年1月の株価は2,000円を超えてます。
社員の努力は1年で倍になったのでしょうか。
さらに1年後にはまた1,000円になったという事は、努力は半分になったのでしょうか。
そんなはずがないです。
苦境であれ好況であれ、社員は理念の達成に向けて努力するのであって、株価の上下を目指すワケではありません。
社員の受け取る報酬をプラスして多少投資家と一致させても、社員が働く目的を不純にするだけだと思います。
(ついでにJ-ESOP制度を導入、維持するためのコスト分みんなで損する)
純資産は十分手厚いです。
資産側のリスク資産を集めて暴発させても問題ないレベルです。
まとめ
結論として、利益率は良く、財務体質も良いです。大口取引があるので売掛金が溜まりやすいというキャッシュフローの弱みはありますが、本業の成長に無関係な建屋などに投資せず、賃貸にとどめている点などは、財務の堅実さを感じます。
ただ、P/Lの数値に関してはちょっと不安です。ヘルステック事業が軌道に乗るかどうかは財務的には読めないので仕方ないにしても、それを除いたシステム開発も売り上げが伸びて利益率は減少してます。
利益率の目標を30%と掲げているのですが、その後の分析ではその目標との乖離について触れていません。
折角良い目標の立て方をしているのに、どうやってそれを達成するのかという方法論が無く、抽象的表現ばかりの印象です。
勿論、ここで方法論を挙げたとて、実際達成できるかどうか分かりません。
ただ、これも目標値の設定と同じで、重要なのはうまくいくかではなく、仮説を立てて挑戦し続けるスタンスです。
「数学のテストが常に90点を上回る事ができるように頑張ります」と言ったなら、それを達成するために「数学の問題集を全部テスト前に2回解けば取れるだろう」という仮説を立てます。結果70点だったなら、次回は3回解くか、別の方法を考えれば良い話です。そうして試行錯誤のサイクルを回していけばいずれその学生は90点にたどり着く筈です。
ただ30%という目標だけ立てるだけではなく、もう少し具体的な対策案を書いて欲しいな、と感じました。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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