結論
財務強靭、体質判断は微妙。
誰も救わない伝説の剣とならない事を願う。
目次
事業概要
まずはFFRIセキュリティの事業についてです。
FFRIセキュリティの事業はサイバーセキュリティです。
セキュリティ系だと、過去分析したデジタルアーツと似ているのかな、と。
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ただ、デジタルアーツは過去調べてきた中でも相当レベルの高い会社でした。この分析は主に財務数値を見ながら体質の推測をするだけなので、本当に投資する時は、優秀な会社だけ振り返って精査しようと思っていますが、デジタルアーツは間違いなく候補の一つにあがる会社です。
FFRIセキュリティはデジタルアーツと似た業種なので、デジタルアーツと自然比較してしまうのですが、少々相手が悪いな、という気がします。
アウェイからの逆転があると嬉しいですが。。
ただ、いきなりですがちょっと事業の説明が分かり難いかな、という印象です。
例えば権威あるカンファレンスでの研究成果の発表実績などを記載しているのですが、個人的に、こういう部分で「権威」という単語は持ち出されても良く分かりません。
「権威」などというものは、人によって感じ方が違いますから、あまり信用できませんし、仮に本当に「権威」のある場で研究成果を発表したとしても、企業には1銭の特にもなりません。大学教授や評論家のような個人であれば、「権威」が重要になってくるのはあると思いますから、自己プロフィールに「権威」を入れることはあるでしょう。
ただ、ビジネスはあくまで顧客の課題を解決し、利益をあげてなんぼの世界です。
少なくとも、ただ有名になるだけの学術的な「権威」は事業の内容には無関係だと思います。
他にもセキュリティ・プロダクトについても、販売方式について詳しく説明してますが、この説明って省略するか、もっと分かりやすくかけないものでしょうか。。
そもそも販売方法ってそれほど重要でしょうか。。
いまいちこれを読んでもFFRIの商品の強みとか未来の展望、考え方があまり見えませんでした。なんとなくはぐらかされているという印象。雑音が多すぎる気がします。
セグメントの状況
同社のビジネスはサイバーセキュリティの単一セグメントですが、製品、サービスごとの売上高や地域ごと、主要な顧客ごとの情報を公開してます。
売り先はほぼ日本国内です。
特定の顧客に売上が集中しているのもあまり望ましくありません。その顧客を失った場合の影響が大きく、つまり顧客との関係でアドバンテージを握りにくいためです。
業績推移
売上高利益率の推移は▲36.2%⇒17.6%⇒18.5%⇒17.1%⇒21.3%
この4年間の売上高利益率としては優良だと思います。
5年前赤字だった所やその後の利益額を見ていると、同社の損益分岐点が13憶円くらいっぽいですね。ここから売上を伸ばしつつ、固定費を削ることのできる体質であれば、今後伸びていく期待ができます。
方針にどんなことを書いているかに注目したいです。
経営方針
目標とする経営指標は契約ライセンス数及び、製品の導入割合です。財務数値でいえば売上の絶対値評価になります。
勿論売上を伸ばすのは悪くないですが、経営指標としては少々頼りない気がします。
冒頭の事業の説明の所でも感じたのですが、権威あるカンファレンスの話をしたり、目標に財務数値ではなく、ライセンス数などを置いたりとしている所を見ると、経営トップの方は技術畑の方で、あまり財務やIRに関心が薄いのかもしれません。。
なので調べてみますと。。
創業者2人が思いっきり技術畑っぽいです。
近代で大成功している会社は、技術系の創業者が多いです。京セラ、ホンダ、パナソニック、キーエンスといった日本を代表する企業の創業者はことごとく技術畑です。アメリカではGoogleもFacebookもMicroSoftもそうですね。
(ちなみに財務系で有名なのはロックフェラー、ロスチャイルド、アンドリュー・カーネギーあたりですかね。。確か帳簿書きなどからキャリアをスタートしてます。大分時代を遡ってますが・・・)
なので技術系の創業者でも勿論問題ないのですが、一方で大成功している会社は決して技術一辺倒ではなく、きちんと自身で財務や経営について試行錯誤するか、信頼するブレーンに経営を任せています。
京セラの稲盛氏は独自に勉強してアメーバ経営という独自の経営方法を編み出し、本田宗一郎氏などは藤沢武夫氏という信頼するブレーンがいました。
ちょっと事業の書き方を見る限りでは、いかにも技術畑っぽい歯がゆさがあるので、もしかするとうまく組織として情報の交通整理や統括ができる人材がいないか、いてもうまく扱えていないのかもしれません。
キャッシュフロー
直近3年も若干営業キャッシュフローが薄い気がしますが、一番気になるのは4、5年前ですね。
5年前は営業キャッシュフローが赤字で4年前は異常に多いです。その後の営業キャッシュフローの金額を見ても全然多いです。
理由を知るために、当時のキャッシュフロー計算書を見てみると
前受収益は、サービスの提供が始まる前に払われたお金になります。
おそらくですが、以下のように将来的な使用権を販売していますから、現金が入った時にそのまま売上を計上するのではなく、顧客が使用権を使っている間に段々と売上計上していくものではないかと。
4年前はその取引が一気に増えたため、キャッシュが一気に増えたのではないかと思われます。事前にキャッシュが貰える商売というのは資金繰りに有利です。
ただ、手元に現金があるからと投資などで使ってしまうと、前受収益は将来的にキャッシュを生まない売上ですから資金繰りが厳しくなるため注意が必要です。
もっとも、FFRIは2年前に投資有価証券を買っている程度しか使っていないようなので、今の現預金水準であれば資金不足で困るという事はあまり想像できません。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
手元資金は20.2億円(79.8%)というのは、かなり手堅いです。。
有形固定資産が0.1憶円(0.6%)と少ないのは好印象です。実に無駄が無いです。
ソフト会社の場合在庫に相当する無形固定資産も0.7憶円と、売上16億円の会社にしてはずいぶん少なく抑えられている印象です。
投資有価証券1.6憶円(6.3%)はリスク資産と言えばリスク資産ですが、全体からみれば軽微ですから、それほど気にする必要は無いと思います。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債はゼロの無借金経営です。
前受収益が結構ある、というのは使用権代をかなり先払いしてもらっているということだと思います。資金繰り的には有利な負債なので、同社に借入が必要になるリスクは低いと思います。
だからこそあれだけ手元資金が積みあがっているのでしょう。
まとめ
財務的には十分強靭な会社だと思いました。
ただ、あまり商売っ気を感じず、いかにも技術系の会社という印象でした。経済環境の分析的な文言が目立ち、「開発」「研究」「技術」という言葉がかなり多かった気がします。時代に合った良いものを作れば自然と売れる、という職人のような雰囲気ではないかな、と。
会社の技術力は勿論重要ですし、場合によっては高名なカンファレンスへの参加も必要な場合もあるでしょう。ただ、ビジネスというのは技術を持っていればよいわけではありません。どれだけ技術を持っていたとしても、その技術をうまく利用して売上をあげられなければ、それはその技術がうまく顧客に伝わっていない(顧客を幸福にできていない)ことになり、単なる自己満足に過ぎません。
一つたとえ話をしてみます。
村に家宝の伝説の剣を持つ男がいるとします。しかし、男は戦う事に興味はなく剣を振る事はできません。毎日毎日その剣を磨いているため、誰が見ても称賛する攻撃力が高く美しい剣です。魔物が村を襲い、村人が次々に怪我をして怯えているのに、彼は今日もせっせと剣を磨きます。果たして誰も救わない伝説の剣に意味はあるのでしょうか。。
技術は誰かの役に立って初めて意味があるのだと私は思います。
ビジネスで言えば、どれだけ人の役に立ち、その技術が浸透しているかは、売上や付加価値率で測ることができます。そういった観点で目標を定め、理念を数値的に捉えて確実に前に進むことができなければ、いつまで経っても剣は誰も救わずに終わりかねないと思います。自分で努力して剣を上手に扱う人になるか、そういう人を見つけて使ってもらう事も考えた方が良いのではないかな、と思いました。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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