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【3723】日本ファルコム~有価証券報告書の読み方~

結論

経営の質の高さを感じられ、財務は完璧。完璧すぎて「創業家の貯金箱」状態。ポテンシャルは高いため、社員や株主への還元を強化した上で、高い付加価値を創造するエクセレント・カンパニーになる事を祈る。

 

目次

 

 

事業概要

まずは日本ファルコムの事業についてです。

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日本ファルコムの事業はゲームソフトの企画、制作、開発及び販売です。

凄くシンプルで分かりやすい事業説明です。こうシンプルだと課題が明確で分かりやすいです。要は同社が伸びるかどうかは「コンテンツに魅力があるかどうか」にかかっています。コンテンツに魅力があれば一気に伸びるし、ダメなら苦しくなる。

名作の持続的開発力が同社のキモであると思います。

 

同社のゲームについてはよく知らないので、Wikipedia先生にご教授願う。

日本ファルコム - Wikipedia

主要作品として3作以上が発売されたシリーズ

ドラゴンスレイヤーシリーズ 1984年 - 1995年

イースシリーズ 1987年 -

英雄伝説シリーズ 1989年 -

ブランディッシュシリーズ 1991年 -

ヴァンテージ・マスターシリーズ 1997年 -

 

う~ん。。知らない。。

以前分析したコーエーテクモホールディングのように大衆向きではなく、コアなファン向けのゲームを作っているのかもしれません。

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会社としての規模も60人程度ですから、コーエーモンスターファームとか信長の野望とかみたいなメジャーなヒットをしなくとも、回していける規模感なのかもです。

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逆に言えば固定費が少ない分ヒットした時のリターンも大きいでしょうね。 

 

個人的には、「君の名は。」で超ヒットした新海誠さんが社員だったという所が目に留まりました。

新海誠さん以外は良く知らないですがファルコンは結構有名人を輩出している模様。

tokyo.whatsin.jp

この記事を読んでいると、創業者であり現会長の加藤氏はかなり手堅い経営をされる印象です。

ウチがやっている事業で赤字になっているものはほとんどないです。どんな小さなライブなんかでもすべて黒字なんですよ。そういうルールなんです。グッズ1個でも計算書を出して赤字になったらもう2度とできないっていうルールですから。

Wikipediaにもこう書いてありました。

家庭用ゲーム機への参入が遅れた理由について、当時の加藤社長はのちに「パソコンソフトのほうが家庭用ゲームより単純に儲かったから(利益額ではなく“利益率”が良かったから)」と述べている

かなり経理的な発想の経営者のようです。

こういう価値観をお持ちの経営者は体質的には非常に頼もしいのですが、一方で行き過ぎると小利口にまとまり過ぎて爆発力(創造力)を欠いてしまうリスクもあります。

つまりはAmazonの成長軌跡に象徴されるような短期的に見れば大赤字でも、コンテンツが素晴らしいものに仕上がれば、後から爆発的なキャッシュインが期待できるような成長の仕方が難しくなります。

社員からすると、あまり挑戦的な試みがしにくく、失敗の許容されにくい職場環境ではないかと推測されます。

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待遇も勤続年数や平均年齢から見て、特別良いという印象はありません。こういった職場環境から爆発力のあるコンテンツを作るのは厳しいのではないかな、と思います。

ただ、こういった堅実な価値観があればこそ、日本ファルコムはコンテンツ業界という浮き沈みの激しい業界を、アップルⅡに始まり、次々に端末が変わっていく激動の時代を乗り切って今に至るのではないかと思います。この指針が結果的に爆発力を削いでいたにしても、経営戦略という観点から見れば立派な功績であり、経営者の手腕の賜物ではないかと思います。

 

セグメントの状況

セグメントはゲーム開発・販売の単一部門なのですが、売上を製品部門とライセンス部門の二つに分けているようです。

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とはいえ、事業の説明を見る限りでは、製品部門とライセンス部門はコンテンツの販売チャネルが異なるだけで、あまり性質に差は無さそうです。ここから特に言える事は無いかと。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は43.8%⇒39.9%⇒47.1%⇒54.9%⇒60.0% 

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凄い利益率です。

コーエーテクモの時もそうでしたが、やはり過去から結果を残して生き残っているコンテンツ会社の付加価値率は凄いです。無駄のないビジネスを心がけている証かと思います。

ただ、正直ここまで付加価値率が高いのであれば、もう少し社員の平均給料を高く設定しても良いのではないかな、という気がします。給料を高くすれば効率が上がるというワケではありませんが、社員というのは会社の未来そのものです。

いくら好きな仕事で、好きな会社であっても、一時的に仕事が嫌になる事はあるでしょうし、リフレッシュして新しい刺激を必要とする事もあるでしょう。その時に社員が拠り所とするのは給料です。ある程度充実していなければ、折角育てた才能が去っていく事になりかねないかと。

無論、高い給与はおかしな輩を引き寄せる事になりかねないため、相応の人事制度を設ける必要はあるでしょうが、少なくとも過去から会社に貢献している方にはもっと報いてもよいのではないかな、と思います。

 

人事制度、こんなのどうでしょう。フリエク式365度評価制度です。お試しあれ。

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経営方針

目標とする経営指標は一応「売上高の伸び」になるのでしょうか。

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「既に高水準の利益率を達成してます」と書いているのは凄い自信ですが、事実だと思います。実際、今以上の効率にするのは私も無理だと思います。

ただ、ここまで言える余裕があるのであれば、社員の給与を引き上げた上で同じことを言って頂きたいです。例えば業界ナンバーワンの報酬を達成した上での利益率を目指すとか。

会社の実働を担う社員の給料がそれほど高いわけでもないのに(少なくともファルコムよりもグループ全体での社員が多いコーエーテクモHDより低い)、経営効率に自信を持たれても、素直には賞賛しにくいです。

資源配分は経営者として最重要の課題です。

「企業」を中心にして「顧客」「社員・協力会社」「株主」の三方に対して誠実に資源を配分できる経営者こそが偉大な経営者であるというのが当ブログの主張です。少なくとも日本ファルコムは「社員・協力会社」の面が足りないのでは、と思います。

 

 

 

キャッシュフロー

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3年前の営業キャッシュフローが妙に少ないですが、基本的にはフリーキャッシュフローは余裕の黒字です。

全体的に異常があるとは思いませんが、一応3年前の理由だけチェックします。

3年前の営業キャッシュフロー

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売上債権が増えた事によるキャッシュの減です。

ただ、この場合は売上が伸びたことによる一時的なキャッシュの滞留が大きくなったのだと思います。

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大口の取引先などは支払サイクルが長かったりするので、期末に大量の売上を計上した場合、こういう滞留はたまにあります。

売掛金の明細を見ると、さもありなん。

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コナミに結構な額の売掛金が残ってます。

特定の売り先に依存するのはビジネス的にはあまり望ましくありませんが、相手がコナミであれば貸倒などの信用問題に関しては問題ないと思われます。

少なくともキャッシュフローの性質に問題があるレベルではないかと。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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手元資金は投資有価証券を合わせて57.1億円(86.5%)、資産はほとんど現金同等物といってしまって良いと思います。これ以上ないくらい低リスクです。

先に書いた通り売掛金7.3憶円(11.0%)に関しては得意先のメンツからしてもリスクはほぼないと思います。

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そして固定資産0.03億円(0.05%)の少なさよ。。

 

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コンテンツを作るための場所と道具のみ。しかも事務所自体は賃貸。

シンプルな事業説明に通じるものがあります。

こういう所に経営への姿勢が表れてます。

良い経営者は物事をシンプルにすることで、無駄な事に一切金を使わず、ネックとなる部分に資金を集中投資します。同社の場合はコンテンツでしょうか。「無駄金は使わぬ」と言わんばかりの節制。

シンプルな事業説明と合わせて経営の質の高さを感じます。

お見事です。 

 

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はゼロ、安定の無借金経営です。

しかも資産はほとんど現金預金ですから、この会社はよほど愚かな経営者がつかない限り、100年経っても潰れない気がします。株主の貯金箱状態です。

 

 

 

大株主の状況&役員の状況

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日本ファルコムの創業者である加藤氏の家族と、おそらく一族の資産管理会社であろう日本ファルコムHDを合わせると過半数を占めているようです。

こうなると、大株主である加藤家の倫理観などが重要になってきますが、役員の状況をみてみると加藤姓の方はいないので、少なくとも「大株主の立場を利用して役員として居座り、無駄に報酬を受け取るのみならず、他の社員に悪影響を与える」という最悪のシナリオはなさそうです。

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これだけしっかりした会社を創業する人ですから、そもそもそんな心配は杞憂とは思いますが、それでもコーエーテクモのように創業家の人間を明らかに優遇しているケースもありますから、油断はできないかな、と。

 

 

 

株主への還元 

株主への還元の姿勢が見える配当政策も正直イマイチです。

f:id:umimizukonoha:20200913213550p:plain優良企業あるあるですが、とにかく会社の存続を重視するために、社外への資金の流出を嫌がります。金額を決めた具体的な方法が一切書かれてません。

絶対過去の流れから適当に決めてるでしょう。。

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配当性向が20%に満たないというのは今の財政状況からしてあり得ない気がします。そんなことを続けていればそりゃあ、資産も現金預金で一杯になります。

日本ファルコムはせめて配当性向を今の倍にするか、自社株買いなどで株主への還元を増やさなければ「株主に対する利益還元を経営の最重要課題として捉える会社」には程遠いかな、という気がします。非常に無駄が多いです。

今のままでは上場企業というより「創業家の貯金箱」状態です。

 

 

 

まとめ

経営体質はさすがだな~という感じでした。こんなしっかりした体質を作れる創業者はそうはいないと思います。

引き締め過ぎても創造性を殺しかねないし、無秩序にしてしまうと採算が取れなくなるというジレンマを常に抱えなければならないのが経営の難しい所です。日本ファルコムはこれだけ高い付加価値率を達成し続けている会社である以上、経営陣はその辺りの匙加減は部外者の私なんぞより心得ていらっしゃるとは思います。

とはいえ、別にゲーム業界の専門家でなくとも同社の社員の給与が全業界の一般的な水準から見て、それほど高くないのは分かりますし、投資家への還元についてほとんど思考停止に陥っているのも文章を読めば推測できます。

日本ファルコムは確かに素晴らしいし、経営の質も申し分ありません。ただ、あぐらをかいて現状を良しとするにはまだ課題が多い気がします。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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