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【3668】コロプラ~有価証券報告書の読み方~

結論

任天堂訴訟やVRといった不確定要素多し。新しい分野への好奇心は大切だが、経営資源の投入としては時期尚早ではないか。まずは現状の分野での「仕組み」づくりと地盤確保に期待。

 

目次

 

前置き

分析したガンホーが今の市場環境では有望かつ割安な気がしました。ただ、ガンホーだけが体質として良いのか、それともコンテンツ業界、ゲーム業界は大体凄いのか、その辺りが分からないので、似た印象の会社をピックアップして、何社か寄り道しておこうと思いました。今回は白猫プロジェクトで有名なコロプラを見てみようと思います。

 

事業概要

まずはコロプラの事業についてです。

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コロプラの事業はモバイルサービス事業です。

現在の主力タイトルとしては「白猫プロジェクト」「クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ」「白猫テニス」があります。

国内向けににアプリゲームを展開して売上を立てる一方で、海外に発信する際は配信から広告まで全て自分でやる「自社配信方式」とそういった手間は全て現地のパートナーに任せてロイヤリティを徴収する「パートナー配信方式」があるようです。

経理的視点から言うなら断然「パートナー配信方式」が有利だと思います。それぞれの地域に配信したり広告を発信するという作業は、それぞれの地域の特色に合わせた仕事が必要となる割に、付加価値が低い作業です。よほどのスケールメリットが無ければ自前でやるのは割に合いません。

発信作業は地元の意欲ある代理店に任せ、コロプラ自身はコンテンツ作成に力を入れた方が、確実に高付加価値に繋がる気がします。

 

他にもゲームとしてはVRサービスも提供しているようで、そのためにも35億という結構な金額を投資しているようです。

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VR技術は結構広い範囲で応用が検討されている分野で、その分野に注目するのは判断として「間違ってない」と思います。実際、かつてのコロプラスマートフォンアプリの先を見越してリソースを全てスマートフォンアプリに充てるという施策をして業績を伸ばしていた模様。これは先見の明を感じます。

社長メッセージ | 経営方針 | IR情報 | 株式会社コロプラ

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なので、今回VRに注力するのも同社らしいといえばらしい、という気がします。

ただ、この判断で難しいのは、VRがまだ消費者にとっても未知数の技術であり、そもそもVRがゲームに必要な要素なのか、という点です。(私は現在のリアルすぎる映像すらダメで、ドット絵OKな旧人類なので・・・)

業界の現状としても、ハードもまだ沢山の企業がシェアを競い合っている状況です。もともとゲーム機ハードを提供している任天堂ソニーといった大会社が、その応用を模索してこの段階から投資するのはアリとは思いますが、元々の事業領域がソフト側であるコロプラが積極参入するのは、現状では時期尚早では、という気がします。

研究開発というのは的を外していると、どれだけ金をかけたところで無駄遣いに終わるリスクが高いです。だからこそ、その会社がどれだけ自社の事業領域を明確にし、どんな研究をするのかは絞る必要があります。

その点、コロプラはゲーム以外への展開、つまり元の事業領域から逸脱した投資をしているのではないかと危惧される文言があるため、少々心配です。

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未開拓の分野は魅力も多いですが競争も激しいです。

そんな中で重要なのはスピードや金額よりむしろ、「VR技術で何を実現するか」という明確なビジョンです。コロプラにそれが見えているのかが、VR事業の成否の分かれ目になる気がします。

 

セグメントの状況

コロプラは単一セグメントのため、セグメント別はありません。

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業績推移

経常利益率の推移は36.9%⇒24.7%⇒13.3%⇒4.3% 

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ここ4年で売上は半減、利益率はかなり低迷しています。やはりこのあたりはアプリゲーム業界のサイクルの早さを感じます。定期的なヒットを飛ばさなければ高い利益率を維持する事は難しい気がします。

 

 

 

 

経営方針

目標とする指標はROEです。

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目標に据えるには悪くない指標だと思います。

ただ、実際の実績を見てみると・・・

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あまり芳しくありません。

これに対する経営者の弁が以下です。

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業界としての浮き沈みはあるし、安定した収益をあげるのが難しい環境である事は伝わってきます。

ただ、ここ数年実績を挙げられていないというのは事実。3か年の平均ROEが6.9%というのはお世辞にも良いとはいえません。

そうした否定的観点から見ていると、方針としてのリリース年度ごとの売上高を積み上げていく事で、売上高の安定的な成長を達成っていうのはかなり無理があるのではないかな、と。

コロプラ自身でも指摘している通り、この業界は恐ろしく陳腐化のスピードが早いので、ブームの去ったアプリはすぐに忘れ去られている気がします。そんな中で過去のアプリのプロモーションをするより、開発に注力して一つでも多くビックタイトルを生む事を考えた方が良いのでは、と。

私の意見は「成績悪い」という前提からくる結果論なのですが、少なくとも上記の記述からはROEの成績が悪い事実を、抜本的に改革できるような施策ではない気がします。

 

先ずはタイトル別の利益率などを分析し、本当に高付加価値なタイトルを生んでいるのかをチェックする必要があると思います。

以下はIRライブラリから持ってきたコロプラのタイトル別売上推移ですが、新タイトルが売上のほとんどを担ってます。

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ただ、売上だけではあまり意味がありません。直近広告を出しているタイトルは売上が上がるのは当然ですし、プロモーション活動をしているタイトルも単に延命させているだけの可能性もあります。

その辺りを見せた上で、今後どうするのか、という方針が示されなければ、マネジメントとして現状のROEを改善する事にはならないと思います。

売上を積み上げます、ではROE改善施策としては不十分かと。

 

 

 

キャッシュフロー

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売上の減少に伴い著しく営業活動CFが減っていってます。

要因の一つにはVRに対する多額の研究開発費もあるのだろうな、と。

同社は多額の研究開発費が計上されていますが、キャッシュフロー上はスタートの当期純利益で差し引かれています。

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その割に投資有価証券への投資も多く、結構評価損も発生しているという構図です。

現預金を沢山持ってますから、この程度の投資は大した事では無いのかもしれませんが、同社の場合VRのようなハイリスク分野に手を出してますから、その資産性には警戒が必要です。実際連続で評価損が発生してますし。。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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手元資金は554.7億円(74.2%)で十分な額です。営業キャッシュフローがゼロに近いのに、全く不安を感じさせない現預金です。

とはいえ投資有価証券も52.6億円(7.0%)と評価額もしっかり残ってますから注意です。

 

負債、純資産を見てみます。

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コンテンツ業界の良い点はほとんど無借金の会社ばかりという事ですね。負債が無いためバランスシートはどの会社もかなり強靭です。

純資産が695.1億円(93.0%)は凄いです。

 

 

 

大株主の状況

 

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創業者で社長の馬場氏がほぼ過半数を握っています。

という事で、私的な利益を得るような人でないかどうか、馬場氏の身辺も一応チェックしておきます。

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クマ財団という一般財団法人を設立しています。

学生クリエイターの育成を目的とした、給付型奨学金を出す財団で、コロプラという会社の活動に見合った財団です。

 

私腹を肥やす経営者は役員報酬を不当に操作する事が多いため、役員報酬もチェックします。役員報酬は報酬諮問委員会と相談して馬場氏が決めているようですが、諮問委員会側でもきちんと方針を示しているのは好印象です。

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こういう部分は結局表現が抽象的になってしまうため、なんとでも言えます。なので正直あってもなくても変わらないのですが、建前であれなんであれ、方針を明示する姿勢に会社としてのフェアネスの精神が見えます。

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実際、平均してみると3,000万円いかないような報酬額ですから、一般的な役員報酬の水準ではないかと思います。

 

後は関連当事者取引で良く分からない取引をしていたりするリスクですが、それも無さそうです。

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ざっと見た感じでは馬場氏はかなりクリーンな方の印象です。

 

 

 

任天堂の訴訟提起

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コロプラはメインタイトルの一つである「白猫プロジェクト」について任天堂から訴訟を起こされています。

ざっくり内容を知りたい方は以下記事が良さそうです。

任天堂vsコロプラ特許侵害訴訟の経緯を分かりやすく解説

私は訴訟に関する専門知識は無いんですが、記事を読んでいるとコロプラの方が旗色が悪そうな雰囲気ですね。。

白猫プロジェクトは同社のメインタイトルですし、賠償として請求されている44億円もコロプラにとってはかなりのダメージです。勿論、現預金が500億円以上あるコロプラならば倒産などにはならないしょうが、白猫プロジェクト差し止めは入ってくるキャッシュフローも減るので、かなりキツイです。敗訴濃厚となれば、被害はかなり大きくなるリスクがあります。

任天堂VSコロプラ訴訟のその後 ~白猫プロジェクトの仕様変更の裏に何があるのか?

同記事の続編では任天堂コロプラを買収するためにやったのではないか、という推測もされています。これはなるほどな~と思う指摘でした。

敵対的買収の場合、今の株価よりもずっと高い値で行われる可能性が高いので、トレーダーの方なら、この可能性を狙ってフォローしておき、訴訟がある程度確定して株価が織り込んだあたりで買っておくのも一つの手かもしれません。

 

 

 

まとめ

スマートフォンアプリというコンテンツビジネスはヒットしてもブームが続かない性質があり、一つのコンテンツで食いつなぐのは数年が限界と思われます。そうなれば如何に利益率の高いコンテンツを連続量産できるかがネックになってくるわけですが、現状の情報だけではコロプラの意思決定は疑問です。

現金が大量に寝かせてあるため、未だ不確定な分野であるVRに投資したくなるのは心情として理解できますが、正直無謀な気がします。

足元の売上は右肩下がりで大ヒットコンテンツはしばらく出ていません。今は未成熟な分野での博打に出るよりも、既存の分野で売上を安定させられるようなコンテンツを生み出せる「仕組み」づくりの方が重要ではないか、という気がします。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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