企業分析アナトールの株式投資

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【4848】フルキャストHD~有価証券報告書の読み方~

結論

創業者の影が不安なものの、数値は優秀。株主還元の考え方やそれに至るロジックは他社が手本とすべき水準かと。

 

目次

 

事業概要

まずはフルキャストHDの事業についてです。

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フルキャストHDの事業は短期業務系支援事業、営業支援事業、警備・その他事業の3つのようです。

業務範囲の限定された人材派遣業、といった印象です。

正直「短期」派遣という業種に対してはあまりいい印象がないので一応Wikiを調べてみると、やはり2006年~2007年にかけて相当トラブルがあった模様。

フルキャストホールディングス - Wikipedia

しかしながら、それ以降続報がないところを見ると、現在はそれほど問題がないのではないかと推測されます。会社って変われるものなのですね。。

以下のブログでも比較的好意的な意見がありました。

株式会社フルキャストって実はやばい会社?過去の問題や事件について | 【単発バイト】フルキャスト体験記

 

短期的にマンパワーの必要な仕事というのはいつの時代も一定数存在するため、その領域で一定の地位を築くことができればかなり割の良いビジネスになりそうです。

フルキャストがどういった考え方でビジネスを行い、結果としてどのような数値を出しているのか、見ていきたいと思います。 

 

セグメントの状況

フルキャストHDの事業は短期業務支援事業が中核で、その営業支援事業、警備・その他事業が少しある形のようです。

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短期業務支援事業:367.4億円(84.9%、利益率17.1%)

営業支援事業:43.8億円(10.1%、利益率10.3%)

警備・その他事業:21.6億円(5.0%、利益率12.8%)

短期業務支援事業の利益率が一番よいです。

一般的には規模が大きい事業の方が利益率が下がりがちですが、同社の場合は規模の小さい事業の方が悪くなるというパターンです。

メインとなる事業よりも規模の小さい事業の利益率が低い場合、小さい事業は①てこ入れをするか②リストラクチャリングor廃止するか③放置するかのいずれかをすることになるわけですが、ほとんどの場合は③です。

これが①、②の気配などが見られる場合、企業体質として優良といえると思います。

経営者の業績判断等を漁ってみますが、付加価値率の話などは一切出てこない印象です。

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目的をROEの達成に絞り、高配当による自己資本の圧縮と、レバレッジによる達成を目指している印象です。あまり付加価値率の向上を意図的に推進する姿勢は見受けられません。

となると③のパターンかな、と。

 

 

 

業績推移

利益率の推移は11.8%⇒13.7%⇒13.6%⇒15.9%⇒14.3% 

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悪くはないですが十分ではない、といった印象の利益率です。

人材派遣ビジネスは大型の投資が必要のない、比較的利益率の高くなりやすいビジネスです。これくらいの水準で留まっているという事は、短期業務支援業務や営業支援業務といった、労働集約型ビジネスに求められるような人材派遣は単価が低くなのかな、と。

これは事業としての特性という側面が大きい気がするので、低利益率であることが経営陣の評価を落とすものではありませんが、利幅が少ないビジネスは景気後退などで売上が落ちた際の耐性が弱いため、注意が必要です。

 

 

 

経営方針

セグメントで触れましたが、経営上の指標としてはROEを重視しているようです。

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具体的な目標数値を設定し、実際に達成しています。

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これは素晴らしい利益率です。

先に触れたとおり、同社は付加価値率はそれほどではありませんが、高い配当性向を目標とすることで、純資産を無駄に蓄積せず、レバレッジを意識することでROEを高める方針を採っているようです。

本当のところ、ROEを引き上げる王道は売上高利益率の向上なのですが、それができないのであれば、こうした資本政策によって株主へのリターンを向上させようとする姿勢は立派です。これが実行できるマネジメントの質は高いと思われます。

 

 

 

 

キャッシュフロー

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基本的にフリーキャッシュフローは十分ですが、3年前に投資活動のキャッシュフローが大きく出ているため、理由を確認します。

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投資有価証券の取得と子会社株式の取得です。

いずれも事業の拡大がメインのような印象です。

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子会社化したBOD、ミニメイド・サービスの狙いは事業範囲の拡大かと思われます。

同社のビジネスは人材派遣業であり、登録者にとっては選べる職は多い方が満足度が高いのは間違いありません。これは本業を強化するという意味ではよい買収ではないかと思います。金額としても無理のない範囲に収まっているのも好印象です。

マネジメントの資金管理がしっかりしている印象ですね。

信頼できそうな雰囲気です。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現金及び預金が133.1億円(55.6%)と、十分な水準です。

売上債権は56.7億円(23.7%)、滞留期間は48日と問題なしです。

リスクはほとんどないと思われます。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債は全部で10.0億円(4.2%)ですね。全体からすれば微々たるものです。

おそらくこれは方針の部分にデッドエクイティレシオという単語が出てきたことからも、ROEを引き上げるための戦略的な借り入れであると推測します。

多分借金して自社株買いをすることで、ROEを引き上げることが狙いでしょう。

配当政策を見てみるとやはり、配当と自己株式取得、おまけに株主還元にROEの概念も持ち込むという完璧ぶりです。

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 この経営陣の質は、少なくとも株主へのロイヤリティ(忠誠心)はパーフェクトだと思います。

 

 

 

従業員の状況、役員報酬

従業員の給与はあまり良くないです。しかしその割に勤続年数は長いですね。

働きやすい環境なのかもしれません。

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一方、役員はどうかと言うと・・・

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取締役の一人当たり平均は31.5百万円です。確かに同社の方針は素晴らしいですし、実績も上げてます。これくらいは貰っても良いのではないか、とは思います。

しかし一方で従業員との給与に格差があるのは間違いなく、ここの格差をもう少しなんとかならないものかな、と。

当ブログの方針として、著しく役員と従業員の給与に差があるのはあまり評価しません。格差がある場合、役員が己の権力を利用して自身の報酬を高く設定している可能性もありますし、従業員の待遇改善の議論が起こり、将来的に利益率が悪化する可能性なども考えられるためです。

 

 

 

大株主の状況

ヒラノ・アソシエイツという会社さんが37.67%持っています。同社会長兼創業者が平野氏ですから、名前からして平野氏の資産管理会社なのだろうな、と。

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ならば、一応関連当事者取引も見ておく必要があります。

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ディメンションポケッツは2016年に子会社化した沖縄県のインバウンド需要を取り込むためのホテル事業らしいです。

https://www.fullcastholdings.co.jp/dcms_media/other/timelydisclosure_20160805_2.pdf

しかし、2018年には赤字に転落してます。

株式会社ディメンションポケッツの情報 | 官報決算データベース

この会社を2019年にヒラノ・アソシエイツに譲渡してます。

個人的に気になるのは、そもそも事業領域ともずれているような同社をフルキャストはなぜ買ったのか。(多角化とかいってますけど、明らかに他の買収と質が違う)さらに、コロナ禍でもないのに2018年に赤字に転落して、2019年に会長の資産管理会社であるヒラノ・アソシエイツに売却。。

平野氏は2015年から会長職に復帰してます。

平野岳史 - Wikipedia

ディメンションポケッツ買収はその翌年、2016年8月ですから平野氏がこの件を企図したと考えると辻褄が合いすぎる・・・

この売買、結果的には2016年に160百万円でフルキャストが購入し、2019年に168百万円でヒラノ・アソシエイツが購入しているので、フルキャストとしては損はないと思うのですが、復帰した創業者が事業領域から外れた買収を始め、損が出たので自身の資産管理会社で回収、という顛末だとすれば、あまりにお粗末ではないかと。。

こういった意思決定をしていると、正直将来同じような失敗をしそうで心配です。

 

 

 

株主還元

株主還元は先に触れているので省略します。パーフェクトです。

 

 

 

まとめ

リーマンショック以前がどうだったのかはわからないのですが、少なくとも業績の上ではかなり優良で、資金の使い方のうまい会社だな、という印象です。株主還元はとても好印象ですからぜひ継続してもらいたいな、と思います。

数値上は良いのですが、後は創業者の影がちょっと嫌だな、と。

フルキャストホールディングス - Wikipedia

フルキャストの「本件に係るプレスリリース」[8]によれば、住所確認を怠った事が本処分の原因とのことである。また本処分に関し、役員報酬の一部返上が為され、平野も9月期いっぱいで代表権を返上した。

平野氏が代表権を返上して以降、トラブルが起こらなくなり、今のフルキャストの業績としてはとても良好、評判も良くなっている様子。これだけでも平野氏への印象が悪いのですが、関連当事者取引でさらに印象が悪化してます。。

実際のところどうなのか分からないですが、優れた点の多い会社なので、細かな部分は自ずと是正されることを祈ります。

 

本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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