企業分析アナトールの株式投資

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【5967】TONE~有価証券報告書の読み方~

結論

諸々課題は多いが、一番のネックはマンパワー(人員)不足ではないかと。適切なマネジメントが就任し、正しい方針を定め、リソース(人材)を集める事ができれば、大きく飛躍する事もあるのではないか。

 

目次

 

事業概要

まずはTONEの事業についてです。

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TONEの事業は作業工具類及び機器類の製造並びに販売のようです。

非常にシンプルな事業です。

事業構造がシンプルゆえに、会社の業績は製品に依存します。

会社が高付加価値であるためには、製品が高付加価値でなければなりません。

同社の業績から、同社の付加価値がいかほどのものなのかを推測していきます。

 

セグメントの状況

TONEの事業は作業工具及び機器の製造販売で単一事業ですが、国内と海外でセグメントを分けています。

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  • 国内:47.5億円(79.9%、利益率12.1%)
  • 海外:12.0億円(20.1%、利益率27.7%)

国内よりも海外の方が利益率が良いというのも珍しい気がします。

おそらく研究開発費用や本社部門経費といった、各セグメントに負担させにくい経費は国内に集中させているのでこういう構図になっているのではないかと。

主要な設備を確認してみます。

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日本国内には本社、工場、営業所まであるのに、海外はベトナム工場があるだけです。

本社、国内工場、ベトナム工場はセグメントの分類が全セグメント共通になっていますから、本社機能や生産機能の費用はこのセグメント上では販売量とかに応じて配賦されているものと思われます。

一方で国内には販売拠点が複数あり、費用は国内は国内セグメントに負担させているため、国内と海外の利益率の差はその負担にあるのかな、と。

となると、利益率の高い海外を伸ばすべき、というのが自然な発想という気がするのですが、設備投資の計画を見ると、さらに国内営業所を増やすようです。

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何故・・・。

この辺りをどう考えているのか知りたい所です。

経営の方針を見てみましょう。

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ところどころに海外展開を意識している記載はあるんですが、何で設備投資が国内拠点の増設なんでしょうね。。利益率悪化にしかならない気が。。

海外に拠点作ったって売れるとは限りませんが、利益率が悪い国内への投資だけが先に来るというのは、ポートフォリオマネジメントの意識があまりないのかな、と。

海外展開はどこの会社でも確かに容易なものではないです。必要な人材を揃えるのも大変ですしコストもかさみます。ただ、現地に代理店を探すとか、商社に委託するとか、できるだけ低コストで抑える方法が無いわけではない筈ですから、その辺りの戦略を検討する必要があるのかな、と。

少なくとも利益率の低い国内の販売拠点を増やすより、そっちの方が優先度高い気がします。以下は地域ごとの売上高ですけど、マネジメントのやる気次第でまだまだ海外は伸び代があるんじゃないかな、と。

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日本でも製造業で海外売上比率の方が高い会社って結構あると思いますが、このマーケットでは難しいのか、それとも単にマネジメントが商売慣れした日本国内に執着しているだけか。いずれにせよ、あまり現状では海外での飛躍は期待できないのかな、と。

 

 

 

業績推移

利益率の推移は17.2%⇒24.5%⇒18.8%⇒16.5%⇒15.7% 

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海外への売上もあるので為替影響もあるでしょうが、良くて横ばいの業績です。

2017年だけ利益率が妙に高いですね。

理由を確認しておきます。

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売上が伸びたことに加え、粗利が良くなってます。

売上が増えたにも関わらず前年対比で売上原価が減ってます。

おかしな現象ですので注記に理由を求めますと。

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製品評価減がマイナス(利益)になってますね。

棚卸資産というのは会社によっては滞留期間をカウントしており、一定のルールで評価減をしています。私が以前いた会社では会計上、1年の滞留で半減、2年の滞留で1円まで減価する、といった処理をしていました。

と、思ったら経営分析のところに載ってましたね。

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その損が製品評価減であり、本来毎年発生していくものですが、これが大きく利益に振れているという事は、過去に評価減処理していた在庫が一気に捌けたという事かと。

業績の部分で大きく売れた理由を確認して見るとオリンピック需要のようです。

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今となってはコロナによって開催すら危ぶまれたオリンピックですが、当時は大いに盛り上がって需要を生み出していたという事ですね。。

逆に言えばこの盛り上がりが過ぎ去れば、低迷気味の売上が続くのかな、と。

 

 

 

財務指標

TONEの指標は営業利益率の向上ですね。

f:id:umimizukonoha:20210716000451p:plain指標の選択としては間違ってはいない気がしますが、一体いくらが妥当だと思っているのかが見えません。

この指標を達成するためにどのような戦略を採っているのかというと、以下。

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間違ってはいないんでしょうけど、海外に関するアプローチがイマイチ何をしているのか見えないです。セグメントで見る限り、海外の売上構成を増やす事が同社の成長には不可欠。ならば、抽象的な「強化」などではなく、現地法人を作るのか、商社を通してやるのか、代理店を作るのかなどもっと施策に踏み込んだ記載をして、指標に海外売上比率などを含めて、海外に打って出る意思を明確に打ち出して良いのではないかな、と。

それをしていないという事は、つまり今後もやらないのではないかな、と。

 

 

 

キャッシュフロー

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FCFは基本的に問題ないのですが2年前の投資CFが黒字、その前が結構大きな赤字です。

理由を確認します。

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有形及び無形固定資産の売却による収入が3.4億って珍しいですね。

設備の状況を見ると東京営業所の土地を売却しているようです。

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簿価0.4億円の土地を売って3.4億円で差額は特別利益に計上してますね。

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凄い値上がり率です。きっとかなり昔から持っていたのでしょうね。。

さらに、その前年の大きな投資CFのマイナスはやはり営業所の新築です。

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先の分析で仙台と新潟に営業所を作っていたのが謎でしたが、この東京営業所の売却を見るに、国内の営業拠点の再編をしているのかな、と。

一応沿革を見てみます。

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ん~。。引っ越しと営業所の開設多いっスね。。

なんでしょう、引っ越しが好きなんでしょうか。

これまでがどうだったのかは分かりませんが、今後これ以上国内の拠点を拡充してペイするのかは正直疑問です。。普通に考えたらオリンピック後の日本って需要は頭打ちな気がします。実際、過去5年間でオリンピック景気を除けばTONEの売上はほとんど横ばいのようですし。

何よりこういう傾向があると懸念されるのが、会社の営業方法が思考停止に陥っている可能性です。要は拠点を増やしたり建設したりする事が営業のルーティーンに組み込まれているケースです。例えばレンタルオフィスを利用したりITを利用して投資を抑制するような発想が無い場合、採算の取れない投資が嵩むことになるので、会社の体質はどんどん悪化します。

外部からはうかがい知る事のできない事情があるのかもしれませんが、いずれにしても、よほどの売上の伸びが期待できない限りは、これまで通り次々に営業所の開設をしていけば、体質が悪化し続けるのは想像に難くないな、と。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現金及び預金が9.0億円(11.2%)と工場があるにしても、かなり少なめです。

売上債権は12.4億円(15.4%)で滞留期間は78日ほど。割と回収が早いですね。

棚卸資産は28.9億円(36.0%)で棚卸回転期間は297日 。これは長い。。

先に書いてある通り、滞留した在庫は評価減している筈なので、それを差し引いてこの回転期間は明らかに長いです。

在庫が多いのは、ほとんどの場合、営業部門が売り逃しをしたくないがために大量に持っていようとすることが多いです。在庫が多くなると管理が困難になります。先の営業拠点の開設頻度も含めて考えると、営業組織やその方針に改善の余地が多い気がします。

有形固定資産は18.9億円(23.5%)です。工場保有の割にはそれほど割合が高くないです。在庫が多いのが大きいですね。というか、もしかして営業拠点を作らざるを得ないのって、在庫が多すぎるからですかね・・・。

だとすれば抱える在庫を減らせば拠点と在庫が一掃される筈なので、製品戦略含めて在庫を減らす方法を検討すべきかな、と。。

目先の売上だけ見ている人は、在庫や拠点などできるだけ抱えておいた方が良い、と考えがちですが、在庫や拠点にも維持・管理・移設するためのコストや滞留を維持するための資本コストがかかってきます。また、経営環境の変化によっては大幅な減損のリスクを常に抱える事になります。

ただ、企業において売上を支える営業部門の力は強く、これについて経理が警告を発しても大抵無視されます。もしこれを改革するとすれば、マネジメントがリーダーシップを発揮して号令を発さなければ、変わる事は無いのが現実かと。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債は0.4億円(0.5%)と微々たるものです。

純資産が63.9億円(79.5%)とかなりを占めてます。あれだけ運転資本を必要とする構造なのに有利子負債に頼らないで済むのは、長い歴史で積み重なった純資産の賜物です。ただ、それは同時に資金効率が悪い事を示唆してます。

以下は自己資本利益率

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オリンピック需要がなくなり、利益が減ったことで急激に萎んでいます。

もし同社が在庫を減らし、拠点を減らすことでBSを縮小する事ができれば手元に資金が生まれますから、自社株買いなり配当なりで純資産を削り、ROEの向上もできるでしょうが、現状のようなBSのままではそれも期待薄です。

 

 

 

従業員の状況、役員報酬

給与等はメーカーとしては平均的な水準なのかな、と。

可もなく不可もなし、といった印象です。

ていうか人数少な(*_*;海外の人員9人って無理でしょ。。

これはマンパワー的にもさらなる発展は苦しい気がします。海外販売とか在庫削減にプロジェクト専従する人員を拡充した方が良い気がします。

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一方、役員はどうかと言うと・・・

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取締役の一人当たり平均は28.2百万円です。

決して高すぎる水準ではありませんが、従業員給与との差が若干大きい気がします。ROEの低下や在庫の課題などがそのままになっている点はあまり評価できませんし、成長のための海外への意欲をあまり感じる事ができません。

個人的にはもっと在庫の削減や海外展開などに具体的な施策を打ち出せなければ、マネジメントの役割として給与に見合わないのではないか、と。

 

 

 

大株主の状況

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特定の意思決定権者がいるようには見えません。

そういう意味では経営の自由度は高い筈ですし、資金さえあれば自社株買いも十分できそうです。後はマネジメントの資質次第、という所ですね。

 

 

 

株主還元

株主還元は特に配当性向も書いてませんね。

何をもって最適な利益配当と言えるのか。。

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そして、「最適な」利益配当というのが以下。

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特別売り上げが成長しているわけでもなく、ROEは右肩下がり。にも拘わらず配当性向はせいぜい20%で、残りの80%はさらに純資産を膨らませて資金効率を悪化させる。

最適とはなんぞや・・・ 

 

 

 

まとめ

 

個人的には海外展開や在庫の量がネックの会社だと思います。ただ、製造から販売までやっている会社で132人程度の規模を考えると、マネジメントの能力が足りないとか、株主に対して不誠実なのではなく、純粋にリソースが足りてなくてそこまで手が回っていないのかな、という気がします。

勿論、だから何もしなくていいというわけではなく、足りないなら足りないで人材を入れるのがマネジメントの役割ですから、適切なマネジメントが方針を明確にした上で最適な人材を集めれば、この会社は大きく伸びるポテンシャルを秘めているのではないかな、と感じました。

 

本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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