企業分析アナトールの株式投資

企業分析の「正しい答え」を教えるブログではなく、「答えを探して藻掻く姿」を見せるブログ

【ニュースに思う事】米マイクロン、自社株買い戦略変更 配当支払い開始へ

本日は雑記です。

以下のようなニュースがありました。

半導体大手のマイクロン・テクノロジーは2日、株主還元策の自社株買いの方法を調整し、株価が安い時に多めに、高い時には少なめに購入すると発表した。また、配当金の支払いも開始する。

マイクロンは、ほぼ全てのコンピューターシステムに使用されるDRAMとNAND型メモリーチップを製造しており、これらの価格は世界の需給状況によって大きく変動する。そのため、ほとんどのメモリーメーカーでは利益や株価が変動しやすい。

マイクロンはこれまで定期的な自社株買いを実施し、2018年以降に約40億ドルを株主に還元してきた。

ジンスナー最高財務責任者(CFO)は、電話会見で「われわれは、機会を狙う方向に自社株買い戦略を変更している」と説明した。

同社はこの日、四半期配当を1株当たり0.10ドルとすることも発表した。10月18日に現金で支払う。

モリーメーカーにとって資本還元プログラムを管理することは、業界に伴う好不況のサイクルの中で厳しいものになることもある。

・・・

実に理に適った株主還元策だな、と。

当ブログの企業分析では、株主還元策は株主に対する会社の誠意が見られる場所、という意味で結構重視しています。

現実問題、株主還元策って会社にとってのプライオリティ(優先度)はそんなに高くないのです。企業にとって重要なのは基本的に以下の順番かと。

  1. 事業を存続する事
  2. 利益を増やす事
  3. 利益を還元する事

当たり前といえば当たり前です。1あっての2、2あっての3であり、多くの会社は1と2だけでヒィヒィ言ってるので、3とかあんまり興味ないんです。ほとんどのマネジメントが興味を持たない場所だからこそ、3まできっちり考えが及んでいるかが、その会社の質の高さのバロメータになるのではないかと当ブログは考えます。

「神は細部に宿る」なんて言葉がありますが、要するにそういう部分にまで気を配れるかどうかが経営の質の高さを匂わせるのかな、と。

 

じゃあどんな還元策が理想なのかというと、個人的には以下のイメージ。

レベル1

無配当、具体的な還元目標なし

レベル2

具体的な還元目標があり、利益ベース(配当性向~%)

レベル3

具体的な還元目標があり、純資産ベース(DOE~%)

レベル4

純資産ベース(DOE~%)での還元目標+自社株買いについて言及

レベル5

自社株買いによる還元と、配当による還元の効率性を鑑みた十分な還元

レベル6:神(バフェット)ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの

配当ゼロ、自社株買いオンリー

 

レベル6は要するに神(バフェット)が経営するバークシャーの事なのですが、あれはさすがに例外とするにしても、通常の事業会社はレベル5の還元方針を目指してほしいです。

 

では、レベル5とはどういう会社か。

まさに今回の記事のマイクロンのように、株価水準が高い時は配当、安い時は自社株買いというように、還元の効率性についてきちんと考えた還元方針を採る会社です。

自社株買いというのは、市場から株式を買い上げて、来年度以降の利益配分の母数を減らす行為です。であれば、そのコストは最小である方が望ましい筈。

つまり自社株買いは株価が安いほど効果が高く、株価が高いほど効果は薄いのです。

しかし現実のほとんどの会社は逆の行動をとります。

景気が良く金回りが良い時期(つまり株価が高い時期)にしか自社株買いを実施せず、逆に景気が悪い時には金をばら撒く(配当する)ことでお茶を濁します。

これは明らかに非合理的な意思決定であると思います。

不景気で株価が沈んでいる時こそ、安く株を回収、償却することで将来の長期投資家の取り分を増やし、好景気になり高値になっている時に配当で還元したり、或いは次の不景気に備えて増資してキャッシュを蓄えるなど、市場を存分に利用するのが、本来は適切な還元策のハズ。

株主還元について、株価水準も意識した還元方針を提示できるマイクロンの経営者は、非常に優秀であると思います。

日本でもPERやPBRといった株価指標をベースに自社の還元策を決められる会社があればいいですが、今までの分析ではお目にかかったことがありません。

これはとても残念な事かと。