EDINETが保守点検中につき、この連休中は2021年のFree-EXレポートの下書きしてます。その中の書こうと思っている内容の一部を公開します。
Free-EXレポートは当ブログ筆者の実際の取引とか、企業分析のうちに思ったことを綴った同人誌(有料)みたいなものです。年に一回その年の総括として出そうと思ってます。宜しければどうぞ。
2020年のFree-EXレポートはこちら
Free-EX Report(2020年版)|企業分析アナトール|note
ビジネスの性質評価について
一般的に成長期待が高く、優秀とされながら、当ブログの分析では重箱の隅をつつくような分析をしてしまっている企業があります。具体的には以下のような企業です。
・ステップ
・KeePer技研
・ダイキン工業
これらの企業は一般的に優秀とされており、高い実績をあげ続けている事は承知しています。実際、これらの企業の有価証券報告書を読んだ印象は非常に良いです。
しかし、私はこれらの企業について決して好意的な分析はせず、むしろ懐疑的な分析をしていたように思います。おそらくこれらの会社を支持する投資家の方にとっては不本意な分析記事になったのではないかと思います。
書いた当時は自分でもうまく説明できなかったのですが、企業分析を続けるうちに理由が見えてきたので、ここで整理しておきたいと思います。
結論から言えば、そうした事業は「固定資産を不要とするビジネスモデル」への移行余地があり、かつ検討が急務だと感じたからです。
具体的に言えば以下のような移行です。
学習塾⇒教育動画配信
リアル店舗⇒ネットショップ、フランチャイズ化
工場持ちの製造業⇒ファブレス、現地子会社の独立上場
固定資産というのは、非常に扱いが難しい資産です。
投資の失敗による減損リスクを負う必要もありますし、資金調達、維持管理の人員コスト、税金計算などでも争点になります。
・もし、インターネット上で優れた教育を配信するビジネスが出てきたら?
・もし、ブームが去ってお客さんが減って売上が落ちたら?
・もし、生産量が落ちて工場の稼働率が落ちたら?
そこには維持費だけが残り、固定資産の価値は大きく棄損されます。
経理的観点から言って、固定資産は小さければ小さいだけビジネスとしてリスクが低く、成長に有利と言えます。
ビジネスモデルとして固定資産を必要とするビジネスの経営者は、固定資産を少なくする方法を常に模索するべきだと私は思います。
先のような事例は他にもあります。
飲食店⇒フランチャイズ化、ブランド提供
テーマパーク、遊園地⇒VRゲーム
出版社⇒ブログ、情報サイト、電子書籍
ゲームソフト、ハード機⇒オンラインゲーム、アプリゲーム
この流れは最近始まったものではありません。フランチャイズやファブレスといったアセットレスの考え方は昔からあるリスク管理の王道の発想であり、米国のマクドナルド、日本のキーエンスといった本質を見抜く偉大な会社は、資産を保有する事より利用する事を重視し、昔からアセットレスの方向に舵切を行っていました。
昨今、アセットレスが叫ばれだしのは、IT技術やインターネットの浸透によって、その傾向が様々な業界に波及し、目立つようになってきただけです。
だからこそ、今これだけアセットレス企業の台頭している現状を見てなお、ビジネスモデルの転換が見られない企業に対し、経営者の質的懸念を抱かざるを得ない、というのが私の個人的見解です。
勿論、企業の中では色々検討したり試行錯誤しているのかもしれませんが、現実にビジネスモデルの転換ができていないのであれば、投資家というアウトサイダーの分析者としてはそのリスク(経営者が何も考えていないリスク)を懸念せざるを得ないな、と。
逆に言えば、元々アセットを抱えたまま良いビジネスができている会社が、アセットレスの転換を実現できれば、飛躍的に利益率が向上するのではないかと。
いわば今の彼らは固定資産という重荷(リスク)を負って歩いているような状態です。自らのビジネスの本質を集約させ、固定資産(リスク)部分を何らかの形で分離できれば、そのビジネスはより本質的で強靭なモデルにできる可能性があると思っています。
私は特に日本のようなモノづくりの国の会社こそ、発想の転換一つで大きく飛躍するのではないかと期待しています。私はそうした優れた経営者、或いは体質を持った会社がないか、目を凝らすような分析を今後も続けていきたいと思っています。