結論
業績としては申し分なく、BSリスクもほとんどない。ただし、得られた利益の分配方針に懸念あり。。
目次
事業概要
まずはM&Aキャピタルパートナーズの事業についてです。
M&Aキャピタルパートナーズの事業はM&A関連サービス(仲介、アドバイザリー、オンラインマッチング、データベース提供及びメディア運営など)です。
過去、類似の業種としてM&Aセンターを見ていますが、非常に優れた会社だった印象があります。ビジネスとしても効率の良い業種ですから、M&Aキャピタルパートナーズにも期待したい所です。
セグメントの状況
M&Aキャピタルパートナーズの事業は、M&A関連サービス事業の単一事業ですからセグメント別はありません。
業績推移
利益率の推移は43.3%⇒39.4%⇒46.5%⇒42.5%
エグいほどの利益率です。素晴らしいですね。。
コンサルビジネスは最もシンプルなビジネスですから利益率が高くなりがちとはいえ、ここまでの利益率の企業は滅多にないです。
優秀過ぎて指摘する事が見当たりませんね。。
財務指標
M&Aキャピタルパートナーズは「営業利益率」「M&A成約件数」「コンサルタント数」とのことです。
具体的に利益率の目安を書いていないのは残念ですが、先に見た通り同社はかなりの高収益企業ですから、正直書くまでもないかと。売上ではなく利益率を選んでいる理由をきちんと書いてくれている点も論理的で好印象です。
後は「M&A成約件数」「コンサルタント数」を指標管理とありますが、コンサル業は構造がシンプルなので、もうそれくらいしか管理する部分が無いのだろうな、と。
キャッシュフロー
2017年度と2018年度に大きな投資をしています。
あと、財務キャッシュフローがずっとプラスというのも少々意外です。
コンサル系の事業は基本的にキャッシュが潤沢ですから、貯め込むメリットが少ないので、一般的に配当や自社株買いなどで財務キャッシュフローはマイナスになることが多いです。何らかの意図があるのかな、と。
詳細を見てみましょう。
まずは2017年度と2018年度の投資です。
子会社株式の取得と定期預金ですね。
レコフはM&A事業の老舗ですから、質的に良い買収かと。
余計な事業に進出せずに自らの事業領域に集中している感がありますね。
これは悪くない印象です。
財務キャッシュフローも見ておきます。
配当や自社株買いといった還元が一切見られませんね。
株主還元はどういう方針なのかは後ほど見ていく必要がありそうです。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現金及び同等物が213.6億円(88.8%)とほとんど現預金です。BSのリスクはほぼ皆無と考えて良いでしょう。すごいな。。
のれん11.6億円(4.8%)は先に見た通りレコフ買収時に発生したものかと。
10年償却ってそんなに引き延ばす必要あるのかな・・・。
同社の経常利益は50億円ほどですから、税制上の5年で償却した所で別に問題なさそうですけどね。何なら一括償却でも消化できそう。。
ま~残しておいても同社の場合はベースとしてBSリスクが皆無なので問題ないのですが個人的にはさっさと償却したらいいのに、と思います。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債はゼロ。あれだけ現預金のある事業ですから当然ですね。
ただ、たしかM&Aセンターは潤沢なキャッシュがありながら借入をしてました。
M&Aセンターの場合は地方の金融機関から情報を貰うビジネスモデルになっていたので、戦略的な意図があったのではないかと推測しましたがキャピタルパートナーズはそういった戦略では無いのかな、と。
これはこれで無駄が無くて良いと思います。
従業員の状況、役員報酬
従業員の給与は22.7百万円と凄い高水準ですね。
勤続年数は短いのに、報酬は間違いなく日本ではトップレベルですね。うらやましい。。
一方、役員はどうかと言うと・・・
取締役1人当たり平均93.3百万円ほどです。従業員給与も十分高いので、平均値としては妥当なところかな、と思いきやそのうちの3億円は社長の中村氏向けなんですね(;^ω^)
これは印象があまり良くないです。。
経常利益50億ほどの企業の社長が3億という絶対額を受け取る、というのは個人的にはアリだと思います。業種にもよりますがM&Aキャピタルパートナーズのようなコンサルビジネスは人の能力による部分が大きいのでより能力の高い人間が報われる事自体は悪くないです。
ただ、社長一人がダントツで多くて他の役員とバランスが取れないのは良くないかと。。
報酬というのは本来役割に応じた対価が支払われるべきで、もし報酬に見合う働きをしているのであれば、ワンマンすぎて組織作りへの関心が薄いですし、報酬が役割以上に支給されているなら倫理的な問題です。特に社長はブレーキをかける存在がいないケースが多いので、怖い兆候と言えます。
大株主の状況
創業者で社長の中村氏が45.03%を握っています。
株主総会での権限も握っているのであれば、社長の中村氏にブレーキをかけられる人はいません。中村氏自身がずっと高いパフォーマンスを発揮し続ければ良いですが、暴走すれば一巻の終わりです。中村氏の人となりを知り、ほれ込んだ人なら良いですが、一般投資家からすればリスク要因です。
一応検索しておきます。
社長の哲学/ M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 中村 悟 |転職ならdoda(デューダ)
なんというか・・・あんまりワンマンっぽい雰囲気は無いんですけどね。
数値と印象のどちらを優先すべきかと言われれば数値なんだと思います。
上場企業である以上、たとえ株式の過半数を握っていても、報酬はフェアに配分してほしいところです。
株主還元
成長途上であるために今のところ還元はしない方針とのこと。
はあ・・・既に従業員に対する報酬は2千万円超で、自分への役員報酬は一人だけ3億なのに、内部留保のために還元しないというのはちょっと違和感ありますね。。非上場企業ならいざ知らず、一般株主が株を買っている上場企業で役員報酬は高いのに株主への還元なしって倫理的にどうなんだろう、と。
実質的なROEは悪くは無いですが、同社の従業員に対する手厚さ、役員報酬に比較すると決して高くはありません。
正直、従業員と創業者といった内部への還元意欲が高すぎて、株主に対して還元する意図は薄そうです。
まとめ
業績としては申し分なく、BSリスクもほとんどありません。ただし、得られた利益の分配方針に懸念があります。
企業を見る時に、業績を見る人は多いんですけど、利益の配分方針ってあまり意識されてない人が多い気がします。そしてだからこそ、企業の雰囲気とか経営者の考え方とかが出る気がします。
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