以前記事の通り、もう私は正直オルツについては考えるのも辛い心境ですが、今後のためにも第三者委員会の報告書を元に、事件について考えをまとめておこうと思います。
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参考:第三者委員会の調査報告書
(差替え)第三者委員会の調査報告書(公表版)公表に関するお知らせ
いつもの通り、オルツ事件の個人的結論から言います。
結論:このオルツ事件に限って言えば、マーケットの国際的な信頼や今後の模倣犯防止のため、東証並びに主幹事証券会社は、各投資家の買値で証券を買い戻した方が良いのではないだろうか。
多分、この結論に対し、関係者の皆さん思うところあると思いますが、全体の流れを鑑みるとやっぱり私はこうすべきじゃないかと思います。順を追って理由を整理していきます。
目次
①第三者委員会報告からの要点整理
②①を受けての所感+腑に落ちない点
③今後の私自身の内省、どう活かすか
①第三者委員会報告からの要点整理
先ず、オルツ事件の概要を簡単に言えば、世間で騒がれている通り循環取引です。
広告宣伝費、調査研究費でお金を払い、その相手先に売上高を計上することで、お金が戻ってくるスキームのことです。つまり、他社に1,000円を渡して、1,000円を返して貰うだけの取引なので、会計上は意味がないものと見なされます。
実際、当初はこの点について、最初に上場前監査を担当したAW監査法人はそれを指摘しました。

その指摘を受けた社長の米倉氏は、AW監査法人から同額取引であるとの指摘を回避するため、第三の会社の関与させることを提案。(そっちかーい( ゚Д゚))

第三者といってもあまり関係のない会社がそんな怪しげな取引に加わってくれるはずもないので、関係のある会社を巻き込みました。が、既に循環取引に関する疑念を抱えていたAW監査法人はこれを却下。

ならばと、オルツも負けていない(何に?)
広告代理店をA社に統一することでグループ間取引の外観を払拭しようとした。

その後も、認めてもらうために諸々策を弄したものの、結局AW監査法人は循環取引のおそれを払拭できないため、監査証明を出さないことを決定。

シドー監査法人はAW監査法人から循環取引の懸念について引き継ぎを受けて認識していました。

しかし・・・何度もAW監査法人の却下されてきたオルツはもはや百戦錬磨。。それらしい証憑を作成することでシドー監査法人を納得させて乗り切ってしまう。。


ちょっとこの辺りは、どんな監査をしたのかなどが分からないので会計士協会がどう判断するのかを待ちたい所です。
会計士協会、オルツ監査人のシドー「調査し適切に対応」 - 日本経済新聞
ただ、いずれにせよ、オルツは過去のAW監査法人のやり取りから、取引が見えにくくなるように整理し、証憑やら何やら偽造されたら、監査法人だって分かるわけなくなるとは思います。オルツは既に散々会計士とやりあった後なわけで、会計士が欲しがる証憑は概ね把握しているわけです。そんな人たちが本気で騙そうとして、資料を偽造までしてきたらまぁ分からないということもあるわな・・・と。
ここまでは不正の内容と、それに対する監査法人のやり取りの概略を私なりに整理してみました。
あとは、JPX上場審査部、主幹事証券会社AV 、VC 等の株主といった関係者なんですが、色々書いてますが概ね以下のような感じかな、と。
・必要な審査やフォローは行っていたが、懸念事項は監査法人の監査に委ねていた
・オルツから業績について事実と異なる説明を受け、それを信じた
・監査法人交代やその懸念は聞いていたが、それについては解消済みと聞いた

私がざっと読んだ感じ、上記がオルツ事件のポイントではないかと。
②①を受けての所感+腑に落ちない点
この報告書を読んで、しばらく考えてみましたが、正直な感想としてはどの立場に立ってみても「まあ起こりそうな話だな」という気がしています。
今回明らかに罪があるというオルツの経営陣の立場にしても、この辺りはやり方こそ間違えていたけれども心情は理解できます。ベンチャー企業にとって売上こそが生命線で、どんなビジネスだって売上が伸びなかったら銀行も投資家もお金を出してくれないのが現実です。

循環取引に手を出したのも、売上が伸びているのを見れば、信用がついて、ユーザーも増えて本当に価値を認めてもらえるかもしれないという期待もあったのかもしれません。明らかなサクラ戦略なんですけど、実際、情報商材界隈ではこれに類似した手法をとっている話も耳にします。
・借金で株を買って残高を見せ、お金持ちを演じることで有料コミュニティに導く。
・例えば誰かに100万円を渡し、返して貰うことで、「1秒で100万円の売上」という肩書で情報商材を売る。
⇒いずれも嘘では無いにしても、真実ではない
オルツの場合は最終的に完全な「偽造」という嘘になりましたが、何も考えずAW監査法人に見せている所なんか見ると、最初はあくまで売上という信用をつけるための一つの戦略の積りだったんじゃないかな、と。それが結局本当の売上に繋がらなくて、だけどこのままでは資金が回らず潰れてしまうので、存続のために仕方なく色々偽造しました、という話ではないかと思いました。善悪はさておき、起業を志したことのある人間なら、何がなんでも会社を存続させたい心情は理解できるかと思います。
一方で監査法人やら、JPX上場審査部、主幹事証券会社AV 、VC 等の株主といった、一般投資家に対して企業の質を保証して、上場に関わった方々についても、皆さんオルツから偽造した資料を出され、偽りの報告を受けて、不屈の闘志で挑まれた結果、なんとなく怪しいけど、要件は満たしてるから仕方なく許可した印象です。どの立場にしてもオルツ自身が全力で偽造してくるなら、見抜くのは無理でしょう、というそれぞれの立場も理解できます。
そうしたことを前提においた上で、私が腑に落ちないというか、偶然にしては出来過ぎではないかと思うのが一点。この循環取引の発覚時期です。4月上旬(厳密には4月4日?)にSESC が強制調査に入ったそうです。
そして、実は経営者たちや主要なベンチャーキャピタルたちのロックアップ期間(株を売ってはいけない期間)も4月上旬までです。

この符合って偶然なんですかね・・・?という疑念が私の中で燻ってます。
要は、私が疑っているのはオルツの内情を知っている上場関係者が、自分達だけは損失を回避するため、オルツを上場させた上で、ロックアップ解除の時期を見測り密告して調査に入らせ、混乱に乗じて売り逃げていた可能性はないのか、ということです。
「循環取引の発覚が早過ぎたらロックアップ期間で売れず、かといってロックアップ期間が切れた途端、自分だけが知っている状態で売り抜けたらインサイダー取引に抵触する。だから、ロックアップ期間が終わる直前の4月上旬にSESCに働きかけて査察に入らせることで、一部の人間なら知り得る周知情報にしておいて売り抜ければ、株価は多少下がるものの多少の上場利益を確保できる。しかも他の投資家もこの情報をキャッチすれば売るだろうから自分だけが売って疑われる事はないだろう」
というシナリオを描いた人がいたとしたらどうでしょう。
ぱっと見で違法ではないかもしれませんが、一般投資家からすれば上場しなければ彼らが負うべき損失を、上場するという形で情報の乏しい一般投資家が肩代わりさせられた形(EXITスキーム)になります。何がマズいって、このスキームは再現可能で今後も起こり得るということです。
再現スキーム
・事業が上手くいかないので、不正でもなんでもして不屈の闘志で無理やり上場
・自分たちが売れるタイミングで不正情報を流出させる(計画倒産も辞さず)
・騒動に乗じて売り逃げ(経営者には訴訟できるけど、そこに既に金はない)
根拠はなく、この偶然の一致から感じた、あくまで仮説です。
ただ、それほど上場前から懸念され、社員からもある程度認識されていた不正の発覚が、なぜ8カ月後の上場関係者のロックアップ期間の解除時期と重なるのか。そこに作為的なものを覚えるのは私だけではないのではないか、と。。
そこで、冒頭の結論に戻ります。
結論:このオルツ事件に限って言えば、マーケットの国際的な信頼や今後の模倣犯防止のため、東証並びに主幹事証券会社は、各投資家の買値で証券を買い戻した方が良いのではないか。
この疑念について、個人的にはJPX上場審査部や主幹事証券会社は関与していないと思っています。彼らの得るリターンと今回の事件で負うリスクは、どう考えても割に合わないからです。
さりとて、彼らが今回の件を「知らぬ存ぜぬ」「投資にはリスクが付き物」「投資家の自己責任」といった我関せずの態度を貫いた場合、2つの問題が起ります。
①今回上手く売り抜けた人がいた場合、今後も模倣犯が出る
今回の件、一通り見てみても、今後も十分起こり得る事案のように感じます。つまり、ベンチャーを起業した(或いは投資した)はいいが、収益化できずこのままでは大損しそうなので、不正をして(させて)でも、上場を認めさせて自分達は売り抜けて投資回収するスキームを取る人間が次々に出てくる可能性です。毎度不正を見逃したのは「会計士の責任」の一言で片づけることもできるでしょうが、本気で偽ってくる企業を会計士がどこまで今後抑止できるかはどこまで行っても疑問が残ります。
事前に防ぐのが困難ならば、やるべきは一つで、事が起きた後証券を一旦買い戻し、関係者を徹底的に調べ、こうした市場への信用を失墜させた存在から(そういう存在がいるなら)、きちんと利得を回収して、そのスキームでは絶対に得できないと知らしめる他ありません。そして、それができるのはおそらく損を被った個人投資家ではなく、市場の適正な流通を司る彼らだけではないかと思うのです。
②日本マーケットとしての国際的な立場
日本の証券市場はアメリカの市場に比べて人気がありません。それは当たり前で、アメリカと日本では国土も人口も成長力もアメリカに及びません。そこに属する企業の成長力が劣るのは当然です。ただでさえ魅力の劣る日本マーケットにも関わらず、こうした不正が今後も起こり得る危険があり、しかもそれを司る立場の方々が「私達は適切な対処をしました(=今後も似た事は起こりうる)」で片づけられるなら、果たして世界の投資家は日本に投資するでしょうか。
一方で、もし今回の件について、市場の信用を保つために買い戻すという判断ができるなら、今度こういう予期せぬ不正は許さない、損失補償して断固として当事者に責任追及する姿勢を見せれば、日本というマーケットの信頼に繋がるのではないかと。今回の事は市場全体の規模から見れば大した事例ではないのかもしれませんが、ここで彼らがどういうスタンスを見せるかによって、世界の投資家からの評価は変わるのではないかと。
まあ、色々と書きましたが、要するにこういうことです。

オチがついたので、事件の考察はここまでとします。
③今後の私自身の内省、どう活かすか
お金を返してほしい、というのは偽らざる本心ではありますが、まあそんなことは私のような小市民が叫んだところで何も変わりはしないでしょう。。
私がこれから考えるべきは、先ずはここから何を学ぶかです。
(失敗に向き合って記事を書こうと思うのに3カ月かかりましたが・・・ホントに)
正直、今回のオルツの失敗は私にとってかなり痛かったです。
勿論、オルツに全賭けしてたとか、信用買いしてたとかいう事はなく、あくまでリスク資産の一部として投資していたので、生活に困るとかそんなレベルではありません。ですが、それでも他に投資していたなら得られた利益(機会損失)含め、結構な利益が吹き飛ぶ痛手でした。。
そこで、これを機会に自分の何が間違っていたのかなーとこれまでの自分の投資行動を割と真剣に考えてみたんですが、私は経理の癖に「数値じゃない何か」に期待して投資すると失敗してきたなーと感じました。要は「将来性」とか「ビジョン」とかですね。その辺りに足をすくわれてきた感じがします。
正直、私にとって財務分析は「あって当たり前」の前提知識で、財務的に優秀な企業はやはりその多くが高い株価(期待値)で取引されていました。だから、あまりそういう企業は無難に感じてしまって投資せず、逆に業績はまだ振るわないけど、分野や事業内容、取っている方針から将来化けるんじゃないか、という「大穴」期待の企業に投資していました。
しかし、少なくともこの数年は実際の所、財務的に優秀と思える企業が順調に成長し、高い株価がより高く、将来性やビジョンが良さげで実績の伴わない企業は下がりっぱなしでした。オルツに至っては粉飾でした(;^ω^)。ここまでの失敗から言える事は、私は財務分析を元に、私自身が「無難」と感じるものに投資すべきなんだろうな、という事です。
少なくとも、まだ実績の伴わない投資については、例えば1銘柄いくらとか、全損してよい範囲に限って投資しなければならないなーと痛感しました。。考えてみれば当たり前のことですが、案外こういうシチュエーションにならないと冷静に客観視できないものだなーと。。
今回は何とも無様で、醜態を晒しましたが、子供も大分大きくなってきたし下を向いてばかりはいられません。今回の失敗を成長の糧にして、いずれ、子供たちに「昔こんな事があって・・・あれは辛かった」と笑って話せる自分を目指します。。
あーしかし辛かった・・・。。