記事の結論
日本電解の民事再生法申請は外的要因より経営管理の問題ではないのか。。
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日本電解に処分売り殺到、民事再生法申請で上場廃止が決定 投稿日時: 2024/11/28 09:16[みんかぶ] - みんかぶ
上場企業が民事再生法申請、というのは穏やかじゃないので、調べてみました。
有報を見てまずヤバいと思ったのがこの辺りです。
5年間の営業CFに比べて投資CFが圧倒的に多い。
特に23年度がすごいのですが42億円の借入を行い、34億円の新株発行を行い、そのうち66億円を主にアメリカ子会社の有形固定資産の取得に使ってます。
これはかなり異常です。
元々製造業は設備投資から資金の回収に時間がかかる、運転資金が必要なビジネスですから、投資CFは営業CFで賄えるくらいまで抑えなければ、資金が枯渇してすぐに銀行のお世話になってしまいます。
それにも関わらずこのような膨大な投資をしたというのは、あまりにリスク管理が甘いように感じられます。経営者に資金面でのブレーンがいなかったのか、或いはいても聞く耳を持たなかったのか。。というか銀行も止められなかったのか。。
勿論、実は将来もの凄い特需がある事を見込んでいて、うまく予想が当たって波に乗っていたなら凄い企業になる未来もあったのかもしれませんが、民事再生という結果論からすれば「経営管理が甘かった」と言わざるを得ないかな、と。
経営管理の問題と思われる根拠がもう一点。
同社は経営指標にEBITDAを採用してますが、これは悪手ではないかと。
EBITDAは営業利益に減価償却費や金利を加算して(考慮に入れないで)算出しますが、いかなるビジネスでも減価償却費は必要経費です。特に設備投資が重要な意味を持つ製造業がその採算を把握するには必ず考慮に入れるべき経費です。製造業が経営指標にEBITDAを採用してしまったら、採算は絶対に見えません。
「生産設備を多数保有しているため、減価償却費や金利負担等の影響を補正した経営指標としてEBITDAを重視する」というのは理屈が逆で、生産設備を多数保有しているなら、なおさらその採算性の見えないEBITDAを採用すべきではないです。この辺りの謎な方針も、無謀ともいえる投資のバックグラウンドにあるのではないかな、と。
余談
この事件、単に経営の失敗だけで片づけるなら「あー・・・」という残念な感じで終幕ですが、ここまで派手なお金の動かし方をしていると、もしかして意図的なのでは、と勘繰りたくなります。。うがった見方をするなら、不正があった可能性もてできてしまうのではないかな、と。
例えば内部の誰かが業者に払うと言ってアメリカに送金して、実は送り先はダミー会社でモノは何も買ってなくて、そのお金をアメリカの個人口座にプールしてしまうとか、或いは実際に買ってはいるけど割高な値段で、裏で業者からキックバックを受けているが、全部今回の清算ですべてうやむやになり、お金だけはアメリカのどこかに残るなんてシナリオも、悪い人なら書けてしまうかもしれません。勿論、会計士は監査で見ているかもしれませんが、何十億という投資の妥当性なんて、普通の監査ではなかなかわからないでしょうし、海外での取引なら猶更です。日本電解は上場したばかりとはいえ、一般人の株主がいる上場企業で、それが民事再生法を申請したとなると、清算にあたっては何故民事再生に至ったのか、事実関係を第三者機関に確認して明らかにしてもらわないと、この件で損失を被った多くの株主が可哀そうだし、上場企業への信頼という意味でもマズいのではないかなーと思う事件でした。。