結論
内容として質が高く見える部分が多く、流石はグローバルカンパニーというところ。インド投資の先見の明や大胆な投資を行い、実際に高い海外シェアを取っている実績は凄い。しかし一方でB/Sにあまり頓着していない印象も受け、在庫の滞留も気になる。いずれの課題もインドに繋がっているように感じるが、今後もインドに対して設備投資を続ける方針なのは、経営、戦略の質として一抹の不安が残る。
目次
事業概要
まずは日精エー・エス・ビー機械の事業についてです。
日精エー・エス・ビー機械の事業はPET(ペット)ボトルをはじめ各種プラスチック容器を製造するストレッチブロー成形機とその専用金型、付属機器及び部品の製造販売であり、かつ、これに付帯する事業です。
ペットボトル成形機とは面白いですね。
明らかに特定の分野に特化していて、尚且つ世界を相手に商売をしている雰囲気があるので、おそらく世界シェアも結構高いんじゃないかと推測。調べてみたら以下のような記事を発見。
工作機械などで、日本製に比べてはるかに安い中国製や韓国製の製品が次々と出現している。しかし、日本の工作機械メーカーは依然としてハイエンド(高価格帯)の工作機械の国内生産を続けているし、国内工場を増強する動きもある。「ハイエンド製品の精度を求める顧客が確実に存在する」(オークマ)ためだ。高度で難しいユーザーの要求を満たさなければならない装置製品においては、日本メーカーは高信頼性や高性能を実現していることに加えて、顧客からの信頼を勝ち得ている。
日精ASB機械のワンステップ式PETボトル成形機「ASB-70DPH」
例えば、日精エー・エス・ビー機械(日精ASB機械)のPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル成形機。複雑なボトル形状を成形できるワンステップ型の成形機では、同社は約70%の世界シェアを持つ。PETボトルの成形は、溶融樹脂を金型内に射出して単純な形状の中間体(プリフォーム)をつくり、さらにプリフォームを軸方向に延伸したり、圧縮エアの吹き込みで径方向に膨らませたりして目的の形状を得る。ワンステップ式はこの全工程を1台の機械の中で連続的に取り扱う仕組みで、プリフォーム成形と最終成形が完全に分かれる2ステップ式よりも生産スピードは劣るが、より複雑な形状のボトルが得られる。日精ASB機械が顧客の信頼を勝ち得ているのは、顧客の工場でボトル成形が軌道に乗るまで支援を続ける方針のためだ。「顧客が最終的に欲しいのは成形機ではなくPETボトルだ」(日精ASB機械)という考えのもと、技術者が国内外の顧客先に出向き、順調に成形できるようになるまで成形機を調整したり、顧客の技術者や作業者を指導したりする。それによって、日精ASB機械の技術者もだんだん腕を上げ、温湿度などの環境や工場のインフラが異なる世界各国で複雑なPET成形をものにできるようになった。
世界シェア7割は凄いですね。
ペットボトルはどこにでもある飲料容器の定番ですから、それを作るための機械であれば今後も安定した需要が見込まれます。
プラスチック容器とかボトル容器のような消耗品は差別化が難しく、量を売ることによるコスト勝負になりがちですから、直接生産している企業はあまり儲からないかもしれません。一般論から言って、買い手が儲かっていないマーケットは有望とは言い難いです。
ただ、大きなシェアをもっているというのであれば話は別です。シェアが大きいという事は同業他社に対して何らかの優位性を築いている可能性が高く、その優位性から値段を高く設定しても顧客が買ってくれる可能性が高いです。高い付加価値率が期待されます。
あと、個人的にインドに生産拠点を置いているというのも興味深いです。人件費や距離的な見地から中国や東南アジアに生産拠点を設ける企業が多いですが、同社はインドに生産拠点を置いているとのこと。
理由を調べるとこんな記事がありました。
https://www.works-i.com/works/item/w109-toku1.pdf
日精エー・エス・ビー機械は、1990年代半ばの円高を契機に、インドに生産拠点を作ることを決めた。インドを選んだ理由の1つは、インドの人材の質に対する期待だった。「私たちの仕事は形の決まった商品の大量生産ではありません。顧客から依頼があった段階で、ペットボトルの形状からともに考え、仕様を提案し、設計して作る。さらに、据え付け、アフターサポートまでを担うワンストップサービスです。それまで培ってきた“日本品質”の高さを守り、国内外の顧客の期待に応え続けるために、自律的にモノを考えて動ける人材が必要であり、そうした人材を採用し育てるには、インドが適していると考えました」とインド法人の前マネージング・ディレクター、現日本本社取締役の水内一良氏は話す。
インドは民主主義国家である。世界の情報が自由に入り、英語を準公用語としていることで、グローバルな感覚を持つ人が多い。自社で育った人材に、将来中東、アフリカ、ヨーロッパで事業を展開してほしい。そんなビジョンを持って、会長・青木大一氏は、地の利も含めて、インドへの進出を決めたのである。
狙いはインドの人材と、戦略的事業展開ですね。
少し前にインド式計算法とかが流行りましたが、インドにはロジカルな人材が多く、IT分野の発展は目覚ましいという話を耳にします。
インド人にはどんな特徴があるのか、一応見てみますか。
インド人の12の性格と特徴。日本人も見習うべき点はたくさんアリ! - せかいじゅうライフ-海外移住をもっと身近に世界で暮らす情報メディア-
1.時間にルーズ。とにかく慣れよう
2.嘘を平気でつく。親切心の場合もある
3. お金が大好き。お金は愛して敬意を示している
4. 非常にポジティブ
5. インド人は語学が得意
6. 人と人の距離が近い
7. お洒落意識
8. 階級意識が強い
9. 誤魔化す
10. 人の話を聞いていない
11. 多様性を受け入れる
12. 寛大
みんながみんなこの特徴に当てはまるわけではないでしょうが、記事の中の話とも結構合致するのであながち間違いではないのかな、と。
モノづくりのスタンスを教えるだけでも、その労力は半端なものではなかった。帽子をちゃんと被る。靴を履く。キレイに掃除する。遅刻をしない。「日本では当たり前のことがまったく通用しませんでした」(水内氏)。彼らの生活には、彼らなりのコンテクストがある。家のなかは妻がキレイに掃除していたとしても、家の外に一歩出れば、衛生的ではない場所はまだまだ多い。ムンバイはいつも気温が高く、ともすると靴や帽子は邪魔になる。道路事情が悪く、渋滞や事故が日常茶飯事だ。そんな彼らの社会や生活を理解したうえで話さなければ、単なる日本のやり方の押し付けになってしまう。
「なぜ帽子を被るのか、遅刻がいけないのかを現場に入って説いて回る。100回言ってもダメなら、もう100回言う。住環境が悪くて掃除の意味を理解できない、遅刻の問題が解消されないのであれば、引っ越ししてもらう。こちらが彼らの生きる社会の視界に立って、根気強く対応することが必要でした」(水内氏)人事制度は、インド独自に作った。高度な職務に就き、能力の高い人材ほど、インドは離職率が高くなる。リテンションのためには、成果をきちんと測り、頑張りには明確に報いる透明性の高い評価の仕組みが必要だった。そのために、インド社会のある種の“タブー”にも挑んだ。同社の従業員には、工場のワーカー、設計や製造技術を担うエンジニア、管理部門などがいる。従業員の学歴は、中学卒業後、ITIという専門学校の卒業者、高校卒業後に専門学校で学んだディプロマ取得者、大卒者に大別される。ITI人材は主に工場のワーカーとして働き、設計や製造技術はディプロマ取得者以上、さらに幹部人材となると、大卒者という明確な区分がある。そこにはインド社会ならではのコンテクストが存在し、それを無視することは、普通は“タブー”なのである。
「しかし、頑張っているITI人材を、ディプロマ取得のエンジニアのなかに組み入れ、最新の機械につけて仕事をさせたり、その逆もやりました。“頑張れば評価される”と理解させることが、彼らの意欲を引き出すためには必要でした」(水内氏)
学歴や職種にかかわらず、頑張れば賞与で報いたり、日本に送って研修を受けさせたり、ドイツの見本市に参加させたりもした。積極的にインド人に権限も与えた。このように評価された人材は、現場で光る。すると、それに追随するようにほかの従業員も頑張る。そんないいスパイラルが少しずつ出来上がっていった。
養成に苦労しているエピソードを読む限り、人材獲得という意味でインドが最善の選択だったのかは分かりません。ただ、インド人が国柄として多言語を使える人材が多く、多くの宗教があるため多様性に対して寛大、というのは間違いなく国際的な人材を育む土壌としては有望のように思います(少なくとも島国かつあまり外国人が多くない日本よりは)。同社のように世界に販売していく企業を担う人材を育てようと思った時、インドという選択肢は悪くない戦略のように思います。
また、地理的戦略として考えても、インドは自国が10億人超の巨大市場を抱える国家であると共に急成長する中国とも隣接し、さらに次代のフロンティアと呼ばれるアフリカ大陸とも比較的近い距離感にあります。
インド南西に広がるアラビア海はエジプト、メソポタミア、インダスといった三大古代文明の海洋貿易の舞台となった海で、古代の船でもモンスーンを利用して行き来されていたと聞きますから、アフリカは十分物流の射程圏内にあると考えられます(ソマリア海賊がいなければですが・・・)。
他の会社を見ていると、欧州とアフリカに進出する拠点は中東にしてる事が多い気がしますが、生産拠点と考えると中東よりもインドの方がベターかと。人口が多いので人の確保がしやすそうですし、単純に自国需要も多いでしょうから。
戦略としてインドに生産拠点を置くという意思決定は悪くないと思います。
インドは投資銀行ゴールドマン・サックスの経済学者であるジム・オニール氏によって書かれた2001年11月30日の投資家向けレポート『Building Better Global Economic BRICs』でBRICSの一角、成長期待著しい国として取り上げられました。今でこそ私のような一般人でもその将来性に注目するようになりましたが、日精エー・エス・ビー機械が進出したのは1990年代。この時期からインドに目をつけ、大きな投資をしているというのは、先見の明があるように感じます。
これは体質として期待できます。
事業のリスク
ペットボトル業界の特徴と自社のビジネスリスクを具体的かつ明確に書いてます。投資家にとって抑えておきたいポイントがよく整理されているので、マネジメントの高い質が伺えます。さすがはワールドクラス企業、といった印象です。
海外売上89.8%とほぼ9割というのは立派ですが、分析者としては痛し痒しだったりします。日本企業は円建の財務諸表を作成するわけですが、その際海外売上は期中平均レートで換算され、円高になると海外売上の価値が下がってその期の損益が悪化して見えたりします。本当は各国通貨上で採算の取れる値段できちっと商売していれば案ずる必要はないのですが、円建の連結財務諸表で実態を表現しようとすると無理が出てきます。
企業会計原則では会計が適切に企業の実態を表現するために必要な前提として「3つの会計公準」を挙げています。その中に「貨幣的測定の公準」があり、要するに企業の経済活動を測定するのに「金額(日本においては「円」)」を使うという公準です。
国際的な企業になると、その企業活動が単一の通貨で行われなくなり、この公準を満たせなくなります。複数通貨での活動を一つの貨幣に換算した場合、企業努力と為替変動の影響の分離が非常に困難になるため、会計数値による企業実態の把握が難しくなるわけです。
日本という国は人が住める土地面積が少ないですし、人口も減少傾向のため、内需を拡大しようと思っても自ずと限界が来ます。国際的にモノが売れる企業というのは日本にとっていわば希望の星であり、投資家にとっては非常に望ましい投資先です。ただ、海外売上が増えれば増えるほど、会計数値ではその実態が掴みにくいという意味で、分析者にとっては痛し痒しの会社なのです。。
個人的にはこの辺りは重要性の高い現地法人がある会社などは付属資料として現地通貨建のP/L、B/Sを添付するとかで補うようになってくれないかな、と思っておりますが・・・作成が義務付けられて資料が多くなりすぎるのも、実務側としては嫌なので悩ましいです(;^ω^)
一応業績は関係会社の所に載ってるんですけど、「円建」なんですよね。
数値を抑えながら実態を把握するのが企業分析の基本とはいえ、会計理論に限界がある以上、特にこういった会社はデジタル(数字)に頼り切らずアナログ(経営者の考え方や印象値)で理解する必要があるかと。
セグメントの状況
日精エー・エス・ビー機械は単一事業ではありますが、米州、欧州、南・西アジア、東アジアという4つの地域を本社や子会社がそれぞれ担当しているようです。この各地域をセグメントとしてグループでの意思決定を行うとのことですから、その業績も見ておきましょう。
米州:119.6億円(18.3%、利益率16.4%)
欧州:74.5億円(11.4%、利益率13.2%)
南・西アジア:193.7億円(29.6%、利益率8.5%)
東アジア:266.0億円(40.7%、利益率28.9%)
※内部売上含む
割合としては東・南・西アジアで売上の7割を占めているようです。
生産拠点が日本とインドの二拠点ですから、アジアの内部売上が多いのは納得です。日本、インドでモノを作って欧米に売却しているのかと。
ただ、利益率は日本とインドで随分違います。
先の為替での影響もあるとは思いますが、他に理由として考えられるのは以下かと。
①インドの生産性が悪く、日本の生産性が良い
②コロナ禍による影響(インドは酷いらしいので・・・)
③何らかの投資額や経費が重荷になっている
その辺りを考えるために過去2021年以前のセグメント別を見ていきます。
2020年9月期
米州:81.8億円(17.4%、利益率15.4%)
欧州:57.9億円(12.3%、利益率13.1%)
南・西アジア:136.2億円(29.0%、利益率4.3%)
東アジア:194.1億円(41.3%、利益率20.6%)
2019年9月期
米州:66.6億円(14.5%、利益率11.5%)
欧州:54.7億円(11.9%、利益率15.9%)
南・西アジア:161.2億円(35.1%、利益率9.0%)
東アジア:177.3億円(38.6%、利益率20.1%)
これ以前になると、セグメントに内部売上が無くなるので割愛
欧米は生産設備を持たない販売会社っぽいので、コロナ禍であっても安定した利益率です。一方で2020年9月期のコロナ影響時に南・西アジアは利益率を随分落としています。工場は固定費の塊ですから、売上や操業度が落ちれば当然利益率に響きます。コロナ影響は確実に打撃だったようです。
しかし、コロナ影響の無い2019年9月期であっても南・西アジアの利益率は東アジアに比べるとやはり見劣りします。東アジア(日本)が内部売上で利益をかなり乗っけている可能性も考えられますが、移転価格税制上、あまり無茶な利益は乗せられない筈なんですよね。。
となるとやはりインドの生産性に課題があるのか、或いはインドの投資経費が影響しているのかもしれません。
経営者の解説を見てみます。
インドへの投資を継続してやっているとのこと。
主要な設備を見てみましょう。
確かに簿価ベースで日本の倍くらいの固定資産がありますね。
それにも関わらず内部売上を含めた売上は東アジア(日本)の方が多いわけですから、ROICのような対資産利益の観点からすればインドの生産性が低いと考えるのが妥当かと。
しかし、以下の内容を見ると今後も投資を継続する様子です。
ガンガン投資する予定のようです。
となれば当面は新規投資による減価償却費が膨らむでしょうから、売上がよほど伸びない限り、南・西アジアセグメントの利益率はしばらくは厳しくなるのではないかと。
生産は品質やロジスティクスの関係もあるので、表面的な数値だけで測るべきではなく、一概に言えることではないのですが、事実として投資している割にリターンが生まれていないわけなので、これが過剰投資の悪手となるリスクは考えておく必要はあると思います。
業績推移
利益率の推移は23.7%⇒19.0%⇒16.0%⇒17.1%⇒26.7%
売上高利益率に結構波があります。
為替レートの影響もあるでしょうが、推移を見るに平均的に20%弱の利益率を稼げるだけの競争力は持っているように思います。ニッチな分野でトップシェアを稼げる企業ですからこれくらいの利益率はあって然るべきかと思います。
この業績がどのような考えに基づいて生まれたのかを見ていきます。
財務指標
日精エー・エス・ビー機械の指標は利益の絶対額増加、売上高利益率の向上のようです。
先に記載の通り、グローバルカンパニーは為替影響のために思ったような数値管理ができず、指標設定は困難です。ただ、指標の特性から見たチョイスとしては個人的には好ましくないかと。
これだけの規模の会社で、しかもB/Sが膨らみやすい製造業ですから、財務指標でB/S対比利益の観点も含めるべきかと思います。事業リスクで在庫の滞留について言及しているため、B/S圧縮に対して決して無関心ではないのでしょうが、指標管理しなければ目的地が見えません。具体的にいえば、ROICもしくはROEによる評価、意思決定を重視すべきではないかと。
投資はその費用化に数年~数十年かかるため、PL指標のみではそのリスクを十分に警戒できません。現状の財務指標を見る限り、インドへの過剰投資にブレーキをかけることはできないと思います。インドへの過剰投資リスクなどはROICなどを指標に考えれば、少なくとも投資の妥当性は再検討する余地はあるのではないかと。
キャッシュフロー
投資活動に波があるのも気になりますが、一番気になるのは4年前の営業CFが赤字という事ですね。当時のCF計算書を見てみます。
投資有価証券の売却益と在庫の増です。
投資有価証券の方はさておき、在庫の増は何なのでしょうね。。
経営者の説明を見てみますが、具体的には書いてません。
たな卸資産が増加した背景は見あたりませんでした。もし意識して管理してるならこのあたりは理由を説明して然るべきかと。
B/Sを意識する指標が無かった点や、インドへの投資をガンガン行っている点、さらに設備投資の金額に波がある点も含めて考えると、資金やB/S管理がマネジメントから重視されていないように感じます。ここは安定感なく危うい部分に見えます。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現金及び同等物が203.9億円(31.7%)と工場持ちの製造業として十分な割合かと。
売上債権は68.4億円(10.6%)で滞留日数は70日。ここは問題ない水準です。
在庫は178.0億円(27.7%)、在庫滞留は336日。長いですね・・・。生産のリードタイムが長いのか、販売部隊が在庫を持ちたがるタイプなのか、或いは物流管理に問題があるのか。原材料と仕掛品が多い所を見ると生産のリードタイムが長い可能性が高いです。ただそれよりも、第一の問題はこの在庫水準についてそれらしい理由説明が見当たらないことかと。これでは何か理由があるのか、単にマネジメントが問題視できてないのかすら分かりません。外部の投資家はその辺りの事情を知らない以上、管理できてない可能性も警戒すべきかと。
有形固定資産は151.4億円(26.6%)で主要な設備は先ほども言及しましたが以下です。
よくよく見ると従業員数もインドの方が圧倒的に多いですね。多すぎな気も。。
この人数比で内部売上含む売上は南・西アジアセグメント(インド)よりも東アジアセグメント(日本)の方が多いってどういう事なのだろう。セグメント別は営業利益ベースだから子会社配当とかを入れているわけないですし。。分からん。
本当に生産効率の問題だけなのか、見落としている要素があるのか・・・。少なくとも掲載されている内容では何ともいえません。。とにかく在庫の事もありますし、特にインドの生産―物流の周辺数値に違和感があるとしか。。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債は130.4億円(20.3%)で、結構借りてます。
資産リストを見る限り、現預金も十分あるので問題ないといえば無いのですが、在庫と有形固定資産を圧縮すればそもそも無借金でも行けるのでは、と思います。
損益項目だけで見ているマネジメントですと、こういった部分に今後もメスが入る事は無い気がします。今後もこの状況が続くなら、例えばどこかのタイミングで在庫や有形固定資産の減損損失が入り利益が吹っ飛ぶ、という事にもなりかねないため、投資家は注意が必要です。
純資産は379.0億円(59.0%)と無難な所です。在庫削減と有利子負債の相殺でまだ引き上げられそうな気はします。
従業員の状況、役員報酬
日精エー・エス・ビー機械本社の勤続年数及び給与水準は製造業の中でも悪くない水準かと思います。ただ、やはりインドの人数が気になります。こんなに要るのだろうか、と。他と人数差がありすぎます。
在庫の問題やインドの利益率があまり芳しくない点、そしてこの突出した人員数、全ての暗雲がインドに紐づく気がするのですが、さらにここから設備投資を増やすというのは、果たして戦略として正しいのか・・・ちょっと不安です。
一方、役員はどうかと言うと・・・
取締役1人当たり平均29.6百万円ほどです。規模などから考えても無難な水準かと。
大株主の状況
ほぼ親会社であるエー・エス・ビーインコーポレーテッド株式会社は会長である青木大一氏が設立した会社ですから、おそらく自分の持ち株を移管した資産管理会社と推測されます。となると会長と同性の青木高太氏、元太氏は創業家と思われるため、この合計である45.63%は創業家が意思決定権を掌握していることになります。
事実上のファミリーカンパニーかと。
COOが同性ではない宮坂氏のため、徹底した同族企業というわけではないかもですが、取締役には会長である青木大一氏の長男である高太氏が居て、入社6年目で取締役に就任、2008年-2016年は社長を務めてますから、明らかに血統で優遇されていた感はあります。
現在でも同族のお二人が株式の過半数近くを握り、役員をやっているので、創業家の持つ力はかなり大きいと思われます。これは上場企業としてはリスク要因かと思われます。インドへの集中投資はこういった所の意向もあるのかな、と。だとすれば異論も挟める人もいないでしょうから、今後も方向転換は見込まれないかと。
株主還元
配当政策を最重要経営課題の一つとしている割に、具体的な目標設定は無いようです。
実際の配当性向を見てみます。
同社の場合は資金的には借金をしている状態でもあり、資金的に余裕があるわけではないので、この配当性向でも頑張ってはいる気がします。
ROEも見てみると結構変動してますが、平均して規模の割に高くない印象です。このあたりはB/Sの削減と借金の返済、自社株買いなどで資本を圧縮する施策がほとんど念頭に無い事がネックのような気がします。
まとめ
内容として質が高く見える部分が多く、流石はグローバルカンパニーというところ。インド投資の先見の明や大胆な投資を行い、実際に高い海外シェアを取っている実績は凄い。しかし一方でB/Sに対してあまり頓着していない印象も受け、在庫の滞留も気になる。いずれの課題もインドに繋がっているように感じるが、今後もインドに対して設備投資を続ける方針なのは、経営、戦略の質として一抹の不安が残る。
本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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