空運業の3社(JAL、ANA、SFJ)の株価が暴落しています。
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【スターフライヤー】[9206]株価/株式 日経会社情報DIGITAL | 日経電子版
コロナウイルスの影響がいつまで続くか分からない現段階では、空運という業種は旅客、貨物共にメインの事業が相当のダメージを受ける銘柄ですから暴落は当然です。
そもそも、空運会社は差別化が難しいコモディティ銘柄というイメージが強かったため、私はこれまで敬遠していましたが、以下の記事を見て「おっ」と思いました。
コロナウイルスのような疫病の発生は人知の及ぶ所ではなく、経営陣に非はありません。しかし、原因がなんであれこういった事象が起きた以上、会社はリストラ等痛みを伴うコストの削減を検討せねばなりません。
その時に経営陣が
「俺たち(経営陣)のせいじゃないし。コロナじゃしょうがないよね」
となるか
「原因が何であれ、社員だけに負担を強いるわけにはいかない」
となるかでは経営陣の誠実さにかなり開きがあります。そして、経営陣が誠実であるかどうかは投資をする上でかなり重要なファクターです。それだけでも十分投資する価値があるのではないかと考え、今回の記事で注目したJALをメインに据え、空運3社を比較分析してみました。
結論を先に言えば、「値段は考える必要があるが、JALは有望」というものです。
以下で私が判断した根拠を説明します。なお、根拠資料は有価証券報告書から私が抜粋したり手作成した数値です。大筋では合っているとは思いますが、部分的に間違っている可能性もあるため、引用したり過度に信用はしないでください。
数値による分析(有価証券報告書より)
売上高経常利益率は、その会社がどれだけの付加価値を生んでいるのかを示します。それが継続的に同業他社に対して高いというのは、例えば「適切なコスト管理・削減ができている」とか、「高い値段を払っても良い満足度がある」といった競争優位を秘めている可能性が高いです。
一方で自己資本利益率は、自己資本に対する利益額の率ですから、ざっくりその会社の成長速度を示します。私の感覚としては10%以上であればなかなか、20%以上なら優秀というイメージです。この数値はある程度安定していなければ信用できません。JALは継続して10%を越えてますから十分優秀な水準であると思われます。ちなみにSFJの数値は平均してもかなり高いですが、乱高下しているのが少し怖いですね。。自己資本が小さいのが理由だとは思いますが・・・今回はJALが目当てなので深堀は避けます。
有利子負債率というのは、総資産に対する有利子負債(社債や借入金といった利子のある負債)の割合です。(2年分しか出してませんが)見てみるとJALは有利子負債を少なく絞っている事が分かります。
ちなみに、似た指標で自己資本比率(純資産/総資産)を重視する方もいますが、買掛金や未払金といったものは営業慣習上仕方ないものを有利子負債と一緒くたにすると、財務健全性を正しく表さないと思うので、私はあまり重視してません。
空運業というのは、基本的に売上が現金として入ってくる事が多いですが、一方で旅客機などの大型投資などが多いため、投資を差し引いても安定してキャッシュが残る体質かどうか、というのは重要な観点です。その点JALはよくできているかなと思います。
ちなみに、先ほどANAの有利子負債は多かったと思いますが、それは上記のようにFCFが安定して残る体質ができておらず、繋ぎの融資が必要となっているからと考えられます。
従業員数は念のため、です。あんまりバブリーに人を採用しすぎると、育成やらなんやらが間に合わないため、他社に比較してもあまり増やし過ぎていない事を確認します。増えてきてはいますが、他社に比較しても圧倒的に増えている水準ではないので、市場として人手が足りなくなっていると推測されます。
上記が私の数値的観点であり、少なくとも私が考えられる範囲では、JALはきちんと実績を出している優秀な会社であると考えられます。
主観(感覚)に基づく分析
有価証券報告書は単なる定期報告と思われる方もいると思いますが、私はそうは思いません。数値以外にもその体質は現れます。優秀な会社は通り一辺倒な内容ではなく、自社の状況について深く分析し、分かりやすくかみ砕いた内容を載せてきます。ここでは私が読んでいて気付いた「イイネPoint」を指摘していきます。
イイネPoint①:JAL株と日経平均株価との比較をわざわざ載せている。
自社の株価を日経平均のパフォーマンスと比較するという行為は実に理に適っています。私達投資家には、常に日経平均のインデックス投信を買うという選択肢があります。この方法であれば、一社の固有リスクを負う必要はありません。ただ、有価証券報告書を見る人というのは、既にJALの固有リスクを負っているか、リスクを負う事を検討している人になります。ならば、JALに投資する事で固有リスクを負った分、インデックス以上にリターンが生じている(或は生じていない)証明を出すのは、至極親切な行為であり、投資家への誠意が見受けられます。こういったものは他ではあまり見た事ないです。
イイネPoint②:効率を意識した数値目標を立てている
経営方針の財務の部分ですが営業利益率10%以上、投資利益率9%以上と具体的な数値を言っています。大抵の会社の経営者は抽象的にぼかした目標を書くか、或は「最高売上高」とか「販売数量」といった目標を立てます。そうしたはっきりとしない目標や、逆に絶対値的な指標は、結果が芳しくなければ景気や市況云々でどうとでも言い訳できますが、効率の観点を入れた「率」はその会社の体質を表すため、言い訳できません。つまり、「どんな環境であっても、コミットした体質に見合った成果を出す」という意思表明といえます。これまた経営者の誠実さを示すものです。
イイネPoint③:「事業等のリスク」の内容が良くまとまっている
事業等のリスクというのは、大抵業界で同じなのですが、JALはそれを8つのリスクに集約されており非常に読みやすいです。ANAは同じ業界にも関わらず22項目あります。
勿論細かく分けるのと、まとめて書くのではどちらが良いかは意見が分かれる所ですが、ANAの事業等のリスクをひとつづつ読んでいるとタバコのパッケージの「吸うと死にます」的フレーズを思い出します。吸って欲しいのか、欲しくないのか。
他にもJALの有価証券報告書には、他の会社には無い誠実さが見え隠れしてます。これまであまり読んだ事が無いという方は、是非EDINETで有価証券報告書を見てみて下さい。いくつも読んでいけば、数値以外でも様々な面が見えてくると思います。
まとめ
空運株は現在かなり厳しい状況にあります。コロナウイルスがいつ収まるかもわからず、世界中で被害が拡大していってます。そんな状況では経済活動は滞り、ヒトとモノの行き来は途絶えます。荷を運ぶ空運会社は相当な経済的な痛手を被るでしょう。ただ一方で、人類がコロナウイルスに勝利、もしくは抵抗できるようになり、経済を立て直す時に必ず必要なのもまた空運です。今回の分析の限りにおいては、私はJALには今回の混乱でも乗り越えてくれる力があるのではないかと期待します。
本記事の結論は「値段は考える必要があるが、JALは有望」というものですが、これはあくまで私の考えであり、投資を推奨するものではありません。たとえ損失が生じても当方では責任を負いかねる為、投資はあくまで自己責任でお願いいたします。
私自身は値段を見つつ明日買い場を探そうと思います。
家庭の資産運用枠で購入したら別途記事を書きます。