結論
金融系らしくスマートな印象を受ける内容で、株主に対する誠実さは十分。ただ、リスクテイクが大きい印象で、株主に対してサービスしすぎな気もする。戦略的には新生銀行のTOBを契機にバイオベンチャー等から撤退し、事業領域である金融系のイノベーター的地位をどんどん深化していく事が望ましいのではないかと考える。
目次
前置き
SBIホールディングスは調査予定にありませんでしたが、読者様にリクエストされたため分析します。SBIホールディングスは昨年新生銀行へのTOBなどで話題になっていますから、そのあたりも含めて見ていく必要があるのかと思います。
正直、金融系のグループは専門用語が多く、評価がかなり難しいのであまり深い分析はできないと思いますが、とりあえずやってみます。分散投資を考える上では少しづつでも勉強しておくべき業種には違いないので。。
事業概要
まずはSBIホールディングスの事業についてです。
冒頭から子会社299社、持分法適用会社が40社と分析者の心を折ってくる会社数です。
その中でも一応事業の系統を3つに分けているようです。
- 金融サービス事業
- アセットマネジメント事業
- バイオ&ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業
上の二つはSBIらしい気がしますが、3つ目はあまり知りません。バイオとかメディカルとかはかなりリスキーな分野のイメージですが、SBIグループはそちらへの展開も目論んでいたのですね。。
ただ、そうするとSBIグループは自らの事業領域をどのように定義しているのか。
方針をチェックしてみます。
事業領域を限定しているのは「金融」だけで、バイオ系に投資する事を限定する方針はなさそうです。となるとビジネスの大雑把な構成としては、金融サービスとアセットマネジメントで稼いだお金を、成長産業であるバイオ系につぎ込んで時代の中核産業を育てようとしている、というイメージかな、と。
しかし・・・やっぱり経営方針を見ているとその会社の性格とかが出てる気がします。非常に若々しくてチャレンジングですが、一方で金融関係らしい倫理観も感じられる方針、理念です。一つ一つが良く考えられている感があります。
欲を言えば企業文化の4つのDNAと、5つの理念、3つの価値の話は、私が社員ならしゃらくさい気はします。どれを考えの基準に据えればいいのかな、と。企業の文化/体質/方針というのは、基本的に社員に対してどうあってほしいかを示しているわけですが、ポイントを絞った言葉をせいぜい3つの言葉くらいにまとめてもらわないと社員が腑に落として実践するのは厳しいのではないかと。。
具体的には経営理念の上3つだけに絞った方が良いのではないかな、と。倫理的価値観と社会的責任、セルフエボリューションとイノベーター、クリエーターは目指すところの意味合いが重複してる気がします。倫理的価値観を追求すれば社会的責任はついてくる筈ですし、セルフエボリューションはイノベーター、クリエーターであり続けるにはなくてはならないものです。下の2つはいまいち具体性に欠けて意図がボけている気が。。
基本となる考え方はシンプルで具体的なほど組織にとって効果的ではないかと。
言葉ごときでと思われるかもですが、あにはからんやバベルの塔ができなかった理由は言葉の乱れであるとは。
全ての地は、同じ言葉と同じ言語を用いていた。東の方から移動した人々は、シンアルの地の平原に至り、そこに住みついた。そして、「さあ、煉瓦を作ろう。火で焼こう」と言い合った。彼らは石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを用いた。そして、言った、「さあ、我々の街と塔を作ろう。塔の先が天に届くほどの。あらゆる地に散って、消え去ることのないように、我々の為に名をあげよう」。主は、人の子らが作ろうとしていた街と塔とを見ようとしてお下りになり、そして仰せられた、「なるほど、彼らは一つの民で、同じ言葉を話している。この業は彼らの行いの始まりだが、おそらくこのこともやり遂げられないこともあるまい。それなら、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」。主はそこから全ての地に人を散らされたので。彼らは街づくりを取りやめた。その為に、この街はバベルと名付けられた。主がそこで、全地の言葉を乱し、そこから人を全地に散らされたからである。
— 「創世記」11章1-9節
集団が一つの目標に向かって進もうとする時、核となる言葉は深くシンプルに限ります。SBIグループは大量のグループ会社を抱えたグループですから、より言葉が重要になるのではないか、と。
事業のリスク
煙草のパッケージを彷彿とさせる、リスク記載のオンパレードです。
<一般事業のリスクについて>22件
<金融サービス事業に係るリスク>15件(10件+5件)
<アセットマネジメント事業に係るリスク>8件
<バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業に係るリスク>4件
<暗号資産に関するリスク>4件
既存のセグメントに加え、暗号資産に関するリスクがありますね。暗号資産に関するリスクがあるという事は、暗号資産に関する事業に今後力を入れていく予定なのかな、と。私は仮想通貨やNFTの本質価値を未だ理解できないでいますが、SBIグループが暗号資産に取り組む方針自体は悪くないと思います。
今後ビットコインやNFTの価値などがどうなっていくのかは分かりませんが、その裏付けとなるブロックチェーン技術は、金融におけるもっともホットな技術に違いありません。ホットな技術という事はその技術関係の優秀な人材も集まりますし、そこから何らかの技術革新が生まれる可能性もあります。
インターネットという革新的技術を使った株取引をウリにばく進したSBIグループとしては、この分野に無関心なワケないと思います。バイオ系よりよっぽど「SBIらしい」分野かと。
セグメントの状況
SBIホールディングスは以下の3セグメントです。
- 金融サービス:3,117.2億円(59.3%、利益率27.5%)
- アセットマネジメント:2,083.3億円(39.6%、利益率40.7%)
- バイオ・メディカル他:56.3億円(10.7%、利益率▲153.4%)
バイオが派手に赤字出してますね。売上よりも赤字額の方が多いです。
金融サービスとアセットマネジメントは流石は金融系、と思わせる手堅い利益率ですが、金融関係で稼いだ一部分をバイオ・メディカルへの投資につぎ込んでいるわけですね。
SBIグループのトータルの利益から考えれば、バイオ・メディカルでの損失はそれほど大きくはないですし、この分野は先行投資とリスクが高いのが一般的です。しかしそれでも売上以上の損失を出しているのを見ると「SBIグループが挑戦する必要性は・・・?」感は否めません。今はまだ本業が高収益ですからそれほど問題視されませんが、本業が不調になった場合にどうなるかは分かりません。SBIの場合は特に金融関係ですから、本業が不調となる際は株式市場が傾いている時期のハズ。となれば仮に不調になった場合にバイオ・メディカル系の会社を処分しようとしても、二束三文になるのがオチです。もしこのセグメントから撤退するなら、今のように比較的市場が活況の時期が望ましいですが・・・今のところはSBI側にその動きはないのかな、と。
ただ一つ、可能性があるとすれば、最近SBIホールディングスは本業の金融分野の一環で新生銀行にTOBを仕掛けてますが、その際の答申の中で新生銀行が面白い指摘をしてました。
新生銀行経営陣の抗弁が妥当かどうかはさておき、この部分は「へ~そうなんだ」と。
調べてみると、銀行法第16条の2、第52条の23が根拠ではないかと推測。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/dai2/siryou/20071119/03.pdf
私は銀行法をガチ勉強したことないので、この法律の意図は良く分かりません。銀行は性質上、財務安全性が求められる事業ですから、形式的にでもリスキーな分野に進出するのを排除するためと推測しますが、その辺りは専門家がいればコメントプリーズ。。
SBIが新生銀行を取り込む事の狙いは、コア事業である金融の話であり、いかにもSBIらしい良くできたシナリオです。資料とかめっちゃ作り込んである印象なので、下準備とかをかなりしていたんじゃないかと。
銀行持株会社の認可を得る事がSBIにとってどれだけのメリットがあるのかは疑問ですが、もし取りに行く価値があるなら、これを機にバイオ、不動産事業は撤退(売却)を考えるという判断はあり得る気がします。事業領域に即した認可の取得と、それに伴う不採算事業の撤退という意思決定ができるとすれば、一石二鳥の戦略なので当ブログの体質評価としては高評価です。
逆に今後も継続してバイオ・メディカル系に投資を続けるなら、SBIの事業領域がボヤけ続けることに加え、同社にとってはそれなりのコスト負担になりますから、相応の覚悟が必要ではないかと。
業績推移
利益率の推移は16.5%⇒21.3%⇒23.6%⇒17.9%⇒25.9%
持続的に結構な利益率です。
金融系のビジネスは基本的に利益率が高くなる傾向にあります。製造業のような設備投資や在庫を抱える必要がないため固定費が少なく済みますし、ベンチャー企業のように伸るか反るかのような勝負はあまりしません。特にここ5年はベースとなる証券市場が活況かつ大幅上昇しましたから、儲かるのは必然かと。
しかし、この業績がずっと続くと考えるのは不安です。証券市場が右肩上がりというのは原則としてあり得ません。お金を借りてまで株を買ったり、年100円の利益を得る権利に喜んで10,000円出すような人がわんさかいるようなマーケットがいつまでも続く筈は無く、企業の成長がそれに見合わない事が分かれば、彼らは必ず去ります。(今まさにマザーズなどで起きてますが)そして現実的に今の期待値(株価)に見合うような成長ができるような企業はそうそうないと思います。
彼らが気づいた時に起こる暴落とそれに伴う逆資産効果による経済の縮小がさらなる暴落を呼ぶ。そうなれば市場は上がっていた時間以上に停滞を余儀なくされます。少なくとも金融系はかなり苦しくなる筈です。
長期チャートで見た時に今回の好調な時期は2010年以降続いてますから、正直今の業績を基準に金融関係事業の力を測るのはリスキーかと。
実際、SBIの20年3月期の利益率は急減してますが、おそらくこれはコロナショック影響を受けての事で、21年3月期の好決算はその後の反発を反映したものではないかと推測されます。マーケットの変動に業績がリンクするのであれば、今の長期チャートの状況を見たら怖すぎます。
ダウの伸びに至っては、このペースで伸び続けたら直角になります。では実際の企業業績がそれに見合う速度で成長できるのか。できません。人類(マーケット)は長期視点ではアイディア次第でどこまでも成長していくとは思いますが、それほど短時間で進化しません。これだけ急げば反動が必ず来ます。となればどこかで調整が入ると考えるのが無難です。。
少なくとも、ここ数年の業績ベースでSBIホールディングスの体質を測ることはしない方が良いのではないかと。
財務指標
SBIホールディングスはROE10%以上と総還元性向40%のようです。
このあたりは金融系らしい、投資家のツボを抑えた指標を見ています。
指標の根拠とかも「考えてる」感が良く出てます。
このあたりは流石、ですね。
キャッシュフロー
ん・・・?なんかFCFが赤字ですね。。買収による連結範囲の拡大とかでC/Fがバグってるとかなら1年、2年は納得ですが5年間ずっと買収し続けてる、というのは流石に無いですよね。内訳を見てみます。
大きい所で見ると、営業CFは営業債権債務の増減、証券関連資産負債の増減、投資CFは投資有価証券、貸付です。リスク取りに行っている感じがします。しかも財務CFを見ると借入や社債など、ガンガン有利子負債を使ってます。
こういう攻めた金の使い方・・・ソフトバンクグループを彷彿とさせますね。
SBIはもともとソフトバンク系のベンチャーが分離したものですから、やり方が似てくるのかもしれませんが、私のような凡庸な経理マンから見ると、ストレスで胃が痛くなりそうな金の使い方です。5年間FCFがマイナスとかイケイケの不動産会社か、と。これに加えてバイオベンチャーを抱えるとか凄いですね。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現金及び同等物が8,027.0億円(11.1%)と、総資産に対してかなり少ない印象です。ただ、金融系事業の場合、顧客から預かったお金が資産と負債に両建てされて総資産が膨らんでいる可能性がありますから、総資産に対する割合が低いからと言って一概に危険とは言えません。
営業債権は1兆1,839.0億円(16.4%)。一般的な事業会社では債権/収益×365日で滞留期間を出しますが、同社で算出すると798.5日。収益に対して債権が物凄く多い形になってます。理由を確認するために内訳を見てみます。
なるほど。営業債権は個人法人に対する与信、つまり貸付金のようです。
金銭の貸付は、貸付金額に関わらず金利分のみ収益計上となりますから、債権が収益に対して非常に多いのも納得です。利息は元本に対して数%が相場ですから、そりゃあ、一見すると何年も滞留しているかのように見えてしまいます。
貸付金の具体的な内訳としては
- 個人:5,120.3億円
- 法人:4,260.3億円
- その他:3,130.7億円
- 合計:1兆2,511.2億円
それに対する信用損失引当金は672.3億円(5.4%)ほど。
一般的な貸倒引当金は会計基準上も税法上も原則として実積貸倒率を基準に算定されます。この手の引当金は他に出しようがないので、信用損失引当金もおそらく同様の扱いではないかと。
No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定|国税庁
個々のリスク差はあるでしょうが、均してみれば5.4%が貸倒実績率なのかな、と。
これは一般的な売掛金貸倒率に比較すればかなり高いですが、債権の内訳を見れば格付けの低い法人や個人に対しても広く貸してますから、これくらいの率であれば良い方ではないかと。逆に言えば将来的に貸倒率が上昇するリスクを孕んでいる事になります。
貸付金が一兆円を超えているため、貸倒実績率が1%増でも100億円超の繰入損失に繋がるため、損益影響は馬鹿にできません。投資家は会計上の損益不確定情報として把握しておくべきかと。
証券業関連資産は3兆8,966.2億円(54.1%)と巨額になってますが、これについては冒頭に触れた「顧客から預かったお金が資産と負債に両建てされているもの」がかなり含まれていると思われます。会計ルール上、デリバティブ取引は両建てで表現したり、顧客からの預り金といった分は、SBI自身がどうこうできる資産ではないので、その分は企業分析では無視すべきかと。
負債を見ると証券業関連負債が3兆5,218.0億円(48.9%)となってますから、負債と相殺できる両建部分が総資産の半分くらいはあるんじゃないかと。そうなると、他の資産の総資産に対する割合は倍で理解した方が良さそうです。(例:先の営業債権は30.0%くらい)
あとは営業有価証券とその他の投資有価証券、それから持分法で会計処理されている投資の合計8,415.1億円(11.7%)も見ておきます。
その他の投資有価証券のあたりは、自分でリスクテイクしている筈ですから、この辺りも株式市場が暴落したり、景気が後退すれば評価減リスクにさらされる部分です。
ちなみにFVTPL、FVTOCIという用語を知らないためにお勉強。
IFRSにおける金融商品の考え方~金融資産の分類と会計処理~ | 現場コンサルタントによる「あるある」コラム|エイアイエムコンサルティング株式会社
へ~・・・知らなかったです。
日本基準の処理としては売買目的有価証券の評価損益とかは純損益に反映されますからFVTPL、その他有価証券の評価損益である評価差額金は包括利益の方に含まれるのでFVOCIというイメージですかね。。
ついでに資本性とか負債性の意味も書いてあります。
という事はその他有価証券の中身を和風に読み替えるとこういうイメージかな。
売買目的有価証券(っぽいもの):6,970.4億円
その他有価証券(株式っぽいもの):7.7億円
その他有価証券(社債っぽいもの):398.9億円
割合的には売買目的有価証券(っぽいもの)が多く、これは一般的にもリスク高めの資産ですが、さらにその内訳を見ると「観察不能な価格を含むインプット」であるレベル3のものが多いです。
となれば現在価値の信用はあまり高くなく、リスク高めと考えた方が良いかと。
こうして見ると資産項目は比較的リスクの高そうな資産を抱えている印象です。攻めたポートフォリオは、歴史ある金融業界の中では新進気鋭の部類に入るSBIらしいといえばらしいですが、信用の重要度が桁外れな金融業界にあって、これができるのは凄いと思います。ただ、どこかで躓いた時には何が起きるか分からない怖さがあります。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債は1兆3,941.4億円(19.3%)とそれほど多く感じませんが、先ほど指摘の通り、資産負債の両建となっている勘定を除くと考えると実質的には総資本の40%近い有利子負債があるイメージかと。抱える資産リストの内容とこの有利子負債を考えるとやはり攻めた財務です。
純資産は7,171.0億円(9.9%)。倍にしても純資産比率は20%。純資産の倍くらいの有利子負債を持っているというのはなかなか。。
B/Sリスクは結構高めのように感じますね。。
従業員の状況、役員報酬
うーん・・・勤続年数がかなり短いですね。
金融とかベンチャー系はもともと転職する人が多い傾向にありますが、それを差し引いてもかなり短めではないかと。金融業界は多少離職率が高いものの給与が良くて安定している印象ですが、給与が高いかというと、金融業界にしては並みな印象です。SBIはかなり知名度のある企業ですから意外です。
一方、役員はどうかと言うと・・・
取締役の平均は73百万円と従業員給与と結構な乖離があります。
しかも北尾氏が2.4億円、川島氏1.5億円、髙村氏1.2億円と取締役の中でもかなり偏りがあります。報酬額が妥当であれば権限移譲が進んでおらず責任の割振りに偏りがありますし、責任は割り振られているのに報酬が偏っているなら倫理的に危険です。報酬の決定も北尾氏に委任されている書きぶりですから、露骨なワンマン文化がありそうな気がします。
当ブログの方針として、ワンマンの会社は基本的に評価が低くなります。ワンマン企業はトップが健康で正しい判断をする限りは大きく伸びる可能性がありますが、トップがいなくなった途端ダメになったり、おかしな方向に暴走した場合が怖いです。
全体的なリスクテイク方針は北尾氏の方針なのかもしれませんが、今は大丈夫でも北尾氏がいなくなった際、会社としてうまくマネジメントできるのか、大幅な方針転換が起こるのかなど、不安が多いです。ガバナンス的にはあまり評価できないです。
大株主の状況
目立つのはやはり北尾氏ですね。
1.64%というのは比率として微々たるものではありますが、他に特定の大株主はいませんし、報酬の所を見る限り意思決定権は完全に北尾氏が掌握している雰囲気ですから、他に大株主から横やりを入れられる可能性は無さそうです。ガバナンス上の懸念は北尾氏に集中してしまっているワンマン体制だけかと。
しかし北尾氏は世間の認知度もかなり高い経営者ですから、ワンマン体制に問題があったとしてもご本人がそれを認知しなければ、周囲が体制を覆すのは至難でしょうね。。
株主還元
財務指標の所でも触れてましたが、方針は配当性向40%が下限とのことです。
実際の性向は以下。
配当性向だけで凄い額出してます。
この辺りもソフトバンクグループやガンホーの自社株買いに近い意図を感じますね。不要なお金を株主に還元する事で純資産を減らしてROEを引き上げる、という。株主からすれば、かなりありがたい会社です。
ただ、連結ベースでの自己資本利益率を見てみると。
あれだけの還元方針を採り、借入を大量にして財務レバレッジをかけてこの水準というのは、負っているリスクに見合うのか微妙な気がします。
私なら少なくともバイオとかに手を出す前に、その金を財務健全化に回すと思います。
まとめ
金融系らしくスマートな印象を受ける内容で、株主に対する誠実さは十分。ただ、リスクテイクが大きい印象で、株主に対してサービスしすぎな気もする。戦略的には新生銀行のTOBを契機にバイオベンチャー等から撤退し、事業領域である金融系のイノベーター的地位をどんどん深化していく事が望ましいのではないかと考える。あと、従業員と取締役の格差や、北尾氏のワンマンっぽい雰囲気も感じるので、ガバナンスを今後どうするのかも懸念事項と思われる。
本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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