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【3635】コーエーテクモホールディングス~有価証券報告書の読み方~

結論

現状で文句なしの優良企業。ただ、将来を左右する創業者一族の倫理観に不安あり。その問題さえ解決すれば世界に誇るエクセレント・カンパニーになれるのは必定かと。

 

目次

 

事業概要

まずはコーエーテクモホールディングスの事業についてです。

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コーエーテクモホールディングスはエンタテインメント事業、アミューズメント事業、不動産事業、その他事業の4つの事業を持つ会社です。

ただ、大方の人のイメージ通り、コーエーテクモはゲームで稼いでいるエンタテイメント事業がメインでしょう。アミューズメント事業と不動産事業やその他事業(ベンチャーキャピタル事業)はその延長戦上か、財テクの意図が強いものと思われます。

 

セグメントの状況

セグメント別の数値を見てみます。

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エンタテインメント事業:390.6億円(91.4%、利益率34.2%)

アミューズメント事業:28.6億円(6.7%、利益率18.1%)

不動産事業:6.7億円(1.6%、利益率29.7%)

その他事業:1.5億円(0.4%、利益率11.1%)

やはり9割はエンタテイメント事業が占めています。

このエンタテイメント事業は主にゲーム事業で、複数のブランドを保有しています。

参考:https://www.koeitecmo.co.jp/business/

シブサワ・コウ」・・・三国志信長の野望大航海時代

ω-Force」・・・三国無双、戦国無双無双OROCHI

Team NINJA」・・・仁王、DEAD OR ALIVE

「ガスト」・・・アトリエシリーズ

「ルビーパーティー」・・・ネオロマンス

「midas」・・・できたばっかりの新ブランド

 

ブランド名だけだとあまりピンときませんが、ゲームの名前は結構聞いた事がある人が多いのではないでしょうか。

 

信長の野望、三国無双、大航海時代によって私は日本と中国の歴史、および交易の歴史に興味を持ちました。考えてみると私の歴史に対する興味関心はコーエーテクモによって育まれたようなものです。

 

あと、アトリエシリーズは社会人になって、妙にハマりました。

(最近のアトリエシリーズはちょっと映像とかキャラとかが綺麗すぎたり、美少女アニメみたいな媚びたキャラ設定が私は好きじゃないんですが、マナケミアシリーズ以前は私にとっては滅茶苦茶ツボでした)

 

マナケミア

マナケミア ~学園の錬金術士たち~(通常版)

マナケミア ~学園の錬金術士たち~(通常版)

  • 発売日: 2007/06/21
  • メディア: Video Game
 

 アトリエシリーズ(イチオシ2つ)

ヴィオラートのアトリエ ~ グラムナートの錬金術師2 ~

ヴィオラートのアトリエ ~ グラムナートの錬金術師2 ~

  • 発売日: 2003/06/26
  • メディア: Video Game
 
リリーのアトリエ プラス ~ザールブルグの錬金術師3~
 

音楽がかなり自分好みなんですよね。。ドラクエも名曲ぞろいですけど、ゲームにとって音楽ってずっと聴いてないといけないものだから、かなり重要なファクターな気がします。

 

上記のブランドの中には無かったのですが、うちのブログで自作CD販売SHOPをしている伝説的ゲーム、「モンスターファーム2」もコーエーテクモです。

www.freelance-no-excelyasan.com

このゲームは本当にアツい。。

1999年発売なのに未だに仕様について研究している人たちがいますからね。20年経ってなお根強い人気を誇るのは異常です。近く、スマホ版が出るそうなんで、また人気が再燃しそうです。

www.4gamer.net

こういった印象に残るゲームを生み出す力が体質(ウォーレンバフェットが言う所の経済的なのれん)として備わっているのなら、コーエーテクモは今後も発展し続けるのではないかと思います。

 

私、面白くて絶対売れるゲームコンテンツの企画があるんで、コーエーテクモの社員さん、一緒に作ってくれませんかね・・・関係者の方、ご連絡をお待ちしてます

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は41.1%⇒41.1%⇒47.0%⇒47.0%⇒44.2% 

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凄い数値で安定しています。。キーエンスや全国保証のような例外を除けば、一般企業では最高レベルじゃないかと。。

やはり過去から凄いコンテンツを生み出してきただけの事はあります。

 

当期純利益に対して包括利益が結構増減しているように見えますが、おそらくこれはその他有価証券の評価額によって包括利益が増えたり減ったりしているのだと思います。

一応確認してみます。

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やはり内訳のほとんどはその他有価証券評価差額金です。

その他有価証券は基本的に長く持ち続ける目的の有価証券なのですが、包括利益ではそういった利益も含めて計算します。

その他有価証券評価差額金が大きい事をどう評価するかは、コーエーテクモの投資スタンスにもよります。

もし安定的な資金運用するために、十分な分散がなされたポートフォリオを組んでいるなら、この損益は無視しても問題ありません。

不景気になって、短期的に価値が下がってもまたどうせ市場が回復すれば価値は戻ります。それに一喜一憂しても仕方ありません。もしコーエーテクモがハイリスクな会社に集中投資していたらマズいですが、普通はあまり考えられません。

一応後でB/Sを見るときに明細は確認します。

 

 

経営方針

目標とする指標は売上高営業利益率30%以上です。

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指標自体が体質ベースでの評価になっており、しかも目標となる数値を具体的に定めています。そして、必ずしも達成できなくとも、ちゃんと高利益率を出し続けているというのも良いです。これだけの利益率は狙っても中々達成できるものではありません。

何よりも同社が良いのは同社の理念と狙っている経営指標がきちんと整合している事です。

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「世界No.1のエンタテインメント・コンテンツ・プロバイダー」となる事を最終的な目標とするなら、適切な指標は「EBITDA」でも「自己資本比率」でも「自己資本利益率」でもありません。付加価値率である「売上高営業利益率」です。

筋が通った実に良い方針です。

 

ただここで気づいたのは、私が出した経常利益率よりも営業利益率の方が低いです。

これはつまり、何らかの営業外取引で利益を得ているという事です。

見てみます。

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結構、投資有価証券で稼いでいるようです。過去5年間が全部営業利益率に対して優っているという事は、結構な額の投資有価証券を持ち、尚且つ利益を出しているという事になります。

こうなるといよいよ、投資有価証券の運用方針やポートフォリオの概略を知っておく必要があります。

 

 

 

キャッシュフロー

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フリーキャッシュフローは若干デコボコしています。

3年前と直近の年度の投資キャッシュフローが大きいです。この理由を確認します。

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3年前の投資キャッシュフローは投資有価証券の購入ですから、当ブログでいう「なんちゃってキャッシュアウト」なので、問題ないと考えます。

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しかし直近の投資は有形固定資産への投資のようです。

内容は新社屋及びライブハウス型ホールを作ったようです。

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141.6億とは豪儀です。

みなとみらいのコーエーテクモゲームス新社屋ビルはどんな建物なの? - [はまれぽ.com] 横浜 川崎 湘南 神奈川県の地域情報サイト

目的としては、よりクリエイティブな開発をするための開発拠点でしょうか。

保守派経理の私から言わせると、無駄遣いとも取れるこの投資なのですが、これまで数々の名作を生み、高い利益率を保ってきたコーエーがやると、そんなものなのかも、とも思えます。

結局ビジネスは結果を出したもん勝ちです。お金使ったとしても、それ以上に価値のあるものを生み出せるならそれで良いのです。

今後の業績によっては、この一手が単なる気のゆるみによる悪手にもなりますし、さらなる発展への布石にもなり得ます。

 

ずっと借金などする必要は無かったのに、直近は本社を作るために借金をしているようです。

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借金してまで作る価値のあるものだったのか、それを決めるのはこの新たな開発拠点から生まれるコンテンツにかかっているといえるでしょう。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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手元資金は128.9億円(8.7%)と全体から見ると薄そうなのですが、下に目をやると驚愕します。

投資有価証券713.5億円(48.3%)。資産の半分が投資有価証券です。

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内訳を見ても結構株式が多いです。

道理で営業外損益やその他投資有価証券評価差額金がPLや包括利益計算書に大きな影響を与えるわけです。これだけ大きければちょっとポートフォリオの価値が5%下がっただけでも影響が出ます。

 

事業リスクのところでもその部分には触れていて、きちんと組織として内規を定めて運用をしているようなので、経営者の独断で大量に投資するような愚は犯しそうにないのかな、と思います。

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運用目的の部署と管理部門を分けてけん制機能までつけているようです。

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ファンド運用みたいですね。個人的にはそんな難しい事を社員にやらせるくらいなら、インデックスファンドを継続して買った方がパフォーマンスが良いのでは?と思いますが。。とりあえず、それほどリスキーな運用はしていないと考えてよいと思います。

 

有形固定資産は407.4億円(27.6%)あります。しかしこれには当期追加された本社141.6億円が含まれています。元々はもっと少なかったことを考えると、やはりゲーム業界は必要な固定資産が少なく済む分、資金繰りがかなり楽なビジネスだと感じます。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債は130.0億円(8.8%)と本社を買うために借りていますが、現預金及び投資有価証券の金額を考えれば軽微です。昨年まではそれすら無い無借金でした。財務体質としては心配の必要はないと思います。

 

 

 

 

大株主の状況、役員の状況

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過半数を握る光優ホールディングスは、住所からしコーエーの創業者である襟川氏の資産管理会社と考えるのが妥当かと思います。創業者一族も個人で株を持っていますが、それらを全部足すと57.96%を占めます。意思決定は襟川一族が完全に掌握しています。

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創業者の経営に対する考え方を見る時、フェアであるかどうかはかなり重要な要素です。そして血縁を入社させるのはあまりフェアではありません。

創業者の長女である取締役の襟川芽衣氏は入社時から監査役、3年後には取締役になっています。それ以前に何をしていたのかは分かりませんが、この経歴だけ見れば明らかに特別扱いされています。

実力を周囲に認められるためには、入れるとしてもひとつのプロジェクトマネージャーなど、リスクの低いポジションで試してから次のステップに進めさせるべきです。そのステップをすっ飛ばしていきなり役員クラスから始めたりしたら、今は過去の遺産で大丈夫でも、将来、大塚家具のように迷走する未来が待っているのではないかと懸念されます。。

 

 

 

従業員給与と役員報酬、それに関連当事者取引

コーエーテクモの業績はかなり優良で、数値上から見ればかなりのものです。

しかし、その割には従業員給与はそれほどでもありません。

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これはコーエーテクモホールディングス単独の従業員ではありますが、基本的には傘下の会社もこれより下がる事はあれど上がるとは考えにくいです。つまり最高でもこれくらいの給与と考えると、ブラックではないにしても多くはありません。

優良な企業体質に給料が見合ってないと思います。

 

一方で役員報酬は襟川夫妻がそれぞれ億越えです。

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襟川恵子氏の役職は「名誉会長」で襟川洋一氏も「会長」です。

名誉会長は勿論、会長という役職は一般的に「後見」的な意味合いが強く、実務は社長が取り仕切ります。つまり本来それほど報酬を得るべき役職ではありません。

にも関わらず会長は社長以上の報酬を受け取り「名誉会長」という何をしているのかいまいち分からない役職に億以上の報酬を払う。

これは非上場企業ならともかく、上場企業でこれをやるのは、倫理的に問題です。

 

さらに襟川氏が持っている別会社とも取引がある模様

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こういった関連当事者の取引で見えないように利益を吸い上げる創業家は結構多いです。なのでフェアな創業者はこういった取引も一切しません。

 

総合的に見て、創業者一族のモラルがかなりの不安要素です。

 

 

 

まとめ

先ず、コーエーテクモホールディングスは過去生み出してきたコンテンツの価値や、現在の業績や財務体質、すべての条件がパーフェクトと言ってよいほどの優良企業です。

ですが、コーポレートガバナンスが頂けません。

創業者一族の印象がかなり悪いです。これだけの会社を作り上げた創業者の功績は大きく、相応の報酬は受け取って当然です。 直近の年間純利益が153億円の会社を作り上げた人が年10憶貰ったって誰も文句を言う筋合いはありません。

ただ、それが上場企業であれば話は別です。

上場という制度は

①企業の知名度を上げる

②資本調達を容易にする

③創業者達が将来の利益を先取りして換金できる

というメリットと引き換えに、「投資家と将来の利益を分かち合う責任」があります。

上場する以上は、企業を創業した事の見返りは配当や時価総額の向上だけで十分享受できる筈です。多額の役員報酬を貰ったり、親族を役員に入れて、自分たちだけが儲けたいのであれば、そもそも上場などすべきではありません。

その辺りは人によって考えが分かれる部分なので、制度によっては縛れません。だからこそ創業者一族の倫理観が如実に表れます。

今までは社員の頑張りや創業者のセンスなどによって良いコンテンツを生み出してきたのかもしれませんが、こういった倫理観の中で運営を続けて、果たして社内の士気は保てるのでしょうか。

特に、明らかな優遇を受け、必要なステップをすっ飛ばして役員入りした創業者一族が後を継いだとして、本当に優れたマネジメントができるものでしょうか。

長い目で見るとこれはボディーブローのように効いてくるんじゃないかと。

 

ちなみに、世界一のコングロマリット企業バークシャー・ハザウェイを築き、世界有数の大富豪であるウォーレンバフェットの役員報酬はずっと10万ドルだそうです。彼はあくまで会社を大きくすることで自分の資産を増やし、バークシャー・ハザウェイに投資した投資家と一緒にその資産を増やしました。

さらに彼は子供たちにバークシャー・ハザウェイの運営には一切関わらせず、遺産の99%を子供には渡さず、死後はビル&メリンダ・ゲイツ財団(友人であるマイクロソフト創業者ビル・ゲイツの慈善団体)に寄付する事を宣言しています。

彼ほどの倫理感を貫く必要は無いにしても、上場企業という立場と、自らの受け取る報酬の妥当性についてはきちんと考えてもらいたいな、と思います。

 

個人的には、名誉会長と会長の報酬を半分くらいにして、従業員給与の平均を900万円以上に引き上げるくらいで丁度いいんじゃないかと思います。

あと、襟川芽衣氏は自分で新しいプロジェクトを立ち上げて、マネージャーとして実績をあげる所から始めて頂きたいです。親の七光りでないならそこからでも十分上がれる筈。自分の力で上がれないなら経営をしても周りを巻き込んで不幸になるだけかと。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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