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【3454】ファーストブラザーズ~有価証券報告書の読み方~

結論

日本版サブプライムローン問題の始まりを見ている気がする。トリガーはコモディティ(農産物)価格の上昇が一つの契機となるんじゃないかと予想。

 

目次

 

事業概要

まずはファーストブラザーズの事業についてです。

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ファーストブラザーズは不動産事業の会社です。

詳細としては以下3つです。

①投資運用事業・・・私募ファンド形式で不動産で資産運用をしてフィーを貰う

投資銀行事業・・・自己勘定で不動産を購入して価値を増やして収益をあげる

あとは不動産証券化スキームのアドバイスや資産のオフバランスなどのアドバイスも行っているようですが、これはあくまで上二つの延長上の軽微なものと思われます。

 

セグメントの状況

セグメント別の数値を見てみます。

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投資運用事業:1.8億円(0.9%、利益率34.0%)

投資銀行事業:197.4億円(99.1%、利益率21.5%)

ほぼ投資銀行事業の売上です。となれば同社の体質はこの事業さえ見えれば大体分かるわけです。

事業の説明のところでは

中長期的に安定収益が見込める優良な賃貸不動産を取得し、複数物件からなるポートフォリオとして保有します。ポートフォリオの個々の賃貸不動産は主として市場流通数が多い中小型案件から厳選投資し、様々な手法を駆使しして価値を向上させつつ保有する他、十分なリターンが見込める場合には新規の開発も行います。

とあるので、これをそのまま信じるならあくまで長期的展望の大家さん的ビジネスに見えます。大家さんビジネスであれば結構収益が安定するはずなので、財務的にはそれほど心配はありません。

ただ、単なる大家さんビジネスは資本利益率が悪くなるはずですから、当ブログの分析対象(ROE≧10%)にあがる事はありません。

どういう事なのか、数値を見ながら考えていきます。

 

 

業績推移

経常利益率の推移は58.3%⇒25.1%⇒16.3%⇒21.5%⇒14.2% 

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利益率の変動が大きいです。

不動産の売買が結構入っているのではないかと。

勿論、会社として「中長期」云々の話は嘘を言ってるわけではなく、基本的には自分で大家さんをやりつつ、ポートフォリオ内の物件の入れ替えを行っているだけだと思います。

ただ、これだけ利益率が変動するということは、売上のそれなりの割合を物件売上が占めている筈です。

どこまでが物件売上で、どこまでが大家さんとしての売上なのかを分けてくれるともう少し体質が分かるのでしょうが、短期間でこれだけの変動がある以上、あまり安定力には期待できない気がします。

 

ちなみに、一応そのあたりを経営陣も意識していて、賃貸収益は既にグループの販売費および一般管理費一定程度カバー可能な水準に達しております、とあります。

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「一定程度」という表現もちょっと気になりますが・・・

そもそも収益額以上に資産額が大きくなりすぎると、その質が本当に保たれているか心配です。賃貸収入が10億ある物件を200億円(利回り5%)で買ったとして、その物件の市場価値が100億円に下落したとしたら、その損失を取り戻すのに10年かかります。そういう事が不動産は多い気がします。

 

 

 

経営方針

目標とする指標は売上総利益、経常利益、株主資本といった絶対値評価です。

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絶対値評価はあんまり良くないと言いつつも、不動産販売の会社の場合、売れれば儲かる、売れなければ潰れるというDEAD or ALIVEの選択肢しかない気がするので、あんまり経営方針についてとやかく言っても仕方ないです。

ましてファーストブラザーズの従業員数は60人ほどです。

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数値統制が必要な規模とも言えません。

 

 

 

キャッシュフロー

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フリーキャッシュフローは見事に真っ赤です。

普通に考えたら在庫が増えたかのかな、と思うのですが、明細を見てみると

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在庫は勿論増えているのですが、その他の流動負債の増減額・・・?

何が増えているんでしょうね。。B/Sの所でチェックしてみます。

 

そして赤字のフリーキャッシュフローを支える原資も確認してみます。

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順調に借入を増やしています。レバレッジが高そうです。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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手元資金は77.1億円(12.1%)とかなり薄いです。

そしてヤバいのは在庫です。507.0億円(79.4%)あります。

資産の8割が在庫です。

てか、売上200億の会社が500億の在庫を抱えるって。。

普通に考えたら絶対売れないと思います・・・

ただ一点、ファーストブラザーズは私募ファンドなどの運用をしていますから、現在のジャブジャブの金融緩和策で資金のやり場に困った金融機関とかが低率でも良いからバンバンREIT買ってたら、私募REITをバンバン作って、物件もバンバン売れる可能性はあります。

その時点でもはや過熱したバブルって気がするんですが。。

歴史の教訓として、バブルのピークは誰にも予想がつきません。もしかすると今後何年もこの状態が続くかもしれませんし、このジャブジャブによって物価が高騰して⇒金融引き締め⇒バタバタと不動産会社が倒れていくのかもしれません。

 

あと、キャッシュフローでその他流動資産が増えている件。

BSを見てみるとそんなに増えてません。という事は、当期買収をしたのではないかと。

会社を買収して他の会社とB/Sを合体させた結果、昨年と今年でB/Sの明細が違ってくるので、B/S勘定の増減と連結C/Fと合わなくなります。

という事で注記を見てみます。

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やはり、東日本不動産という会社をを買収したようです。

買収の詳細は以下です。

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東日本不動産は136.1億円の流動資産(おそらくは在庫)で売上高が6.6億円の売上ということで、在庫に対して売上が非常に少ないです。この場合、本物の大家業をやっていたのか、それとも全然売れない不良在庫を抱えていたのか、どちらかかと。

ただ、のれんが発生していないという事は純資産の額面通りの値段で取得しているという事です。

もし私が優良な136.1億円の在庫を持つ会社の株主だったら、純資産の額面通りの25億で売るのかな、という気はします。

仮に不良在庫だったとしても、私募REITなどを組成してバラまけばいくらでも捌けそうな気はしますが、どこで行き詰るのか若干不安です。

日本版サブプライムローン問題が起きそうで怖いです。。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債は419.6億円(65.7%)とかなりのハイレバレッジかけてます。。比率は昨日分析したビーロットよりもマシですが、金額は倍以上ですね。恐ろしい。。 

純資産は161.8億円と絶対値でみれば強いんですけど、在庫 507.0億が31.9%評価損になったら吹きとんでしまうんですよね。。

「優良物件」ばかりなら勿論そんな事はないのでしょうが。。

果たしてどうなのだろう。。

 

 

 

まとめ

なんというか・・・昨日のビーロットといい、今回のファーストブラザーズといい、このコロナ下で怖くないんでしょうか。

確かに今のご時世なら私募REITとかである程度在庫を捌けるのかもしれませんが、それだってもし今後物価高騰が起きたら、資金的に続けられるか分かりません。

特にコモディティ価格(特に農産物)が高騰するようなことになれば、政府は金融引き締めをせざるを得ません。

(実際、金は既に過去最高値を更新してます)

今は原油が諸々の事情で安く抑えられているので大きな問題になってませんが、もしこれで一気にコモディティ価格が上がったら、以下のようなシナリオになるのでは、と。

①政府の金融緩和(現在進行中)で投機マネーがコモディティ(農産物)に流入

②物価高騰で政府・日銀に世論の批判が集中

③政府・日銀、金融引き締めを行う

④融資引き上げ、金足らずの不動産会社倒産

⑤不動産が大量に抵当流れ、不動産価格暴落

REIT下落、私募REITの影響がどこにあるのかが分からない

金融危機(日本版サブプライムローン問題)

日本版サブプライムローン問題の完成です。

勿論、日本経済全体に対して、一社の影響がどれくらいあるのかは分かりませんが、こういった事を同社だけがやっているとは言い切れません。REITに関わる複数の会社が似たことをやっていると仮定すれば、考えられないシナリオではないのかな、と。

 

そんな事も考えられそうな環境下で、以下はファーストブラザーズの直近のB/Sですがさらに在庫が増えてます。

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手元の現金もかなり減ってきてます。

そして、富士ファシリティサービス株式会社を子会社化するそうです。

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一体どこまで攻める気なんでしょうか。。

保守派の経理マンにはホントに不動産会社の取る行動は理解不能です。。

こういう攻めの姿勢が、業界全体を支配しているのだとすれば、それはまさにバブルの証ではないかと。。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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