結論
キャッシュフローの凹凸を解決すれば、世にも珍しい「優良な不動産会社」になれるかも。。
目次
事業概要
まずはディア・ライフの事業についてです。
ディア・ライフは不動産の会社です。
事業のタイプとしてはリアルエステート事業とセールスプロモーション事業の2種類があります。
リアルエステート事業
不動産の開発・企画、アセットデザイン&リセール(開発適地化)、収益不動産の投資・運用、不動産仲介等の不動産に関連したサービスを提供するソリューション業務
主に不動産業界において、分譲マンションモデルルームや賃貸マンションリーシング現場スタッフ等の販売支援職種や事務系職種をメインに人材派遣・紹介事業
セグメントの状況
リアルエステート事業:195.2億円(98.2%、利益率19.9%)
セールスプロモーション事業:3.5億円(1.8%、利益率13.7%)
ほぼリアルエステート事業ですね。
他の分析でも書いていますが、不動産業は資金繰りの苦しいビジネスである事が多いので単なる利益率では測れません。
特に不動産を自前で在庫に持つ販売業や、自分で企画から販売までやるデベロッパーなどは資金枯渇による黒字倒産件数が圧倒的で他業種の追随を許しません。
その辺りが分析の焦点になるかな、と思います。
業績推移
経常利益率の推移は19.8%⇒14.5%⇒12.1%⇒14.1%⇒17.2%
直近は利益率15%を超えていますが、安定しているとは言い難いようです。5年前に比べると売上が倍以上になっているという事は、在庫も結構積みあがっている可能性があります。その辺りはB/Sでリスク分析していきたいところです。
経営方針
同社は重視する財務指標としてROE、ROA及び自己資本比率を指定してます。
なんか・・・直近で見たサムティと似てる気が・・・
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実は結構、この辺りの文章の書き方とか指標って類似の業界の会社からパクッてくることがあります。私が前いた会社も半導体系だったんですけど、東京エレクトロンの文章の真似して書いてた記憶があります。。もしかすると指標も真似して、数値だけ置き換えているのかもしれません。
まぁ、ディア・ライフはサムティと違って規模としてそんなに大きくないので、そもそも指標管理はマストではないと思いますが。。
指標管理などしなくとも、社長が直接全員のケツを叩いて回れる規模です。
てか、この人数で売上が200億って凄いですね。。
キャッシュフロー
営業キャッシュフローに凹凸が多いです。
人間で言えば脈が止まったり動いたりを繰り返している状態です。売上の額以上に仕入れしたり、しなかったりが多いのだと思います。
ビンゴです。仕入れが大きすぎてキャッシュフローが赤字になってます。
そしてそれをフォローするために財務活動キャッシュフローで輸血してます。
毎年借り換えをして少しづつ増やし、新株発行によって純資産も増やしているようです。新株発行は借入よりは財務体質的に良いですが、発行条件によっては一株当たり純資産が希薄化される可能性があるため注意が必要です。
もし新株発行によって一株当たり純資産が希薄化されているとしたら、経営者は投資家に対して不誠実な可能性が高いです。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現預金は98.1億円(38.7%)と比率から見るとまあまあ余裕がある方かな、というところです。
販売用不動産、仕掛販売用不動産(つまり在庫)が136.3億円(53.8%)とやはり多いです。特に仕掛販売用不動産などは完成もまだしていない案件が85.7億円です。完成までに市況が悪化した場合、評価減のリスクも孕んでいます。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債は103.6億円(40.9%)です。
昨年、新株発行しているからか、思ったほどキツイ感じはしません。。
純資産が130.9億円ありますから、在庫が全損でもしない限り、債務超過に陥る事はないです。
従業員の状況
不動産事業は給料が良いです。
ただ、ディア・ライフは非常にやっている事がシンプルなため、資産明細が現金預金と棚卸資産だけで、9割を超えるため問題が整理されている印象です。現金余裕率も結構あり、有利子負債も資産全体に対してそこまで大きくありません。先日調べてみたサムティに比べれば、かなり優良だと思います。
(ただ規模が小さいだけ、という可能性がありますが)
ある程度抑えられた有利子負債、現金余裕率、リスク資産に対して十分な純資産額、たった数十人という人数で、200億円という売り上げをあげているという少数精鋭的性質から見ても、平均年収800万円という年収はまあ、妥当な金額かな、と思いました。
まとめ
ディア・ライフはキャッシュフローの問題さえクリアできれば体質だけなら優良そうな印象を受けました。財務に長けた人の言葉を重視し、営業キャッシュフロー内までで仕入れを抑える事ができるなら、優良体質な会社になりそうな気配がします。
サムティのように自分でREITの運用会社をグループに抱えている会社は自前の物件をREITとして個人投資家に売れるルートを持っている点(倫理的な問題はさておき)や、規模が大きくて潰しにくい点などが考慮されます。
まだ規模が小さく、そういったよりどころの弱いディア・ライフは自前の営業キャッシュフローを強固にする必要があると思います。
キャッシュフローの凹凸さえ改善されれば、もし私が先日分析したサムティとディア・ライフどちらに投資するかと聞かれれば、迷わずディア・ライフを選ぶと思います。
結局、不動産会社は元々の利益率は良いので、キャッシュの問題をどう解消するかが重要で、そのあたりで経営者の力量や会社の性質が決まってくる気がします。
ディア・ライフはあと一歩知恵を絞り、キャッシュフローの問題を解決し、業界では珍しい「優良体質な不動産会社」を目指して頂きたいな、と思います。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
企業分析リンク
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