結論
絶望的な怪物に敗北して瀕死の所を、博士に改造手術を施されて救われるが、実は博士も敵と同じくらいの怪物で気が付くと自分も怪物になっていた、という感じ。
目次
前置き
ジャストシステムは少し後の調査対象でしたが、読者様にリクエスト頂きましたので、先に分析します。
事業概要
まずはジャストシステムの事業についてです。
ジャストシステムはソフトウェアおよび関連サービスの企画と開発、提供を目的に事業を行っているようです。
というか、え・・・?事業の内容少な!とか思ったら。
なんだろう・・・一発で納得できた。
最強の合理企業の登場です。。
そりゃあ、この会社が大株主なら無駄な事は書けません。。
とはいえこれでは何をやっているのかが掴めないので、沿革を見ます。
「一太郎」の会社さんだったのですね。。凄く懐かしいです。。
私が10歳くらいの頃に初めてパソコンに触れたときはまだ「一太郎」があって、そこで物語書いたりして遊んでました。
でも、今思い返してもやはりOSソフトで圧倒的なシェアを取ったMicrosoftのWordには敵わないですよね。。当時のMicrosoftの強さは絶望的なレベルです。当時の印象は今のAppleやAmazon以上じゃないでしょうか。
Windowsによって一般人にパソコンを爆発的に普及させたMicrosoftはIT業界の創造主と言っても過言ではありません。そんなMicrosoftと企業領域がぶつかってしまったジャストシステムは不幸だったとしか言いようがないと思います。
一太郎の歴史は以下を参照
そんな会社が何故キーエンスの支配を受けているのか。。
Wikipedia先生でも2009年に業務提携を発表した、という事しか書いてません。
「業務提携した」という事は単なるキーエンスの資産運用の一環などではないのだろうな、と思います。おそらくキーエンスには何かしらの勝算があったんでしょう。
そして「あの」キーエンスが勝てると踏んだなら、かなりの高確率で勝ってしまうのでしょう。。2011年頃それに気づいていたのなら、私の資産は当時から少なくとも80倍になっていた筈です。
次にキーエンスが業績不振の会社と業務提携したら全乗っかりした方がいいかもしれません。。
そう考えると、Microsoft並みの絶望的強さを持つ会社があるとすればキーエンスですね。。こと事業の目利きという意味ではウォーレンバフェット並か、それ以上の信頼感です。
(バフェットには常に運用先を探さねばならないという不利な条件がありますし。。)
最小の資本と人で最大の付加価値をあげる事を目指す彼らは多分、勝てない勝負はしない。。つまり、彼らが動くならほぼ間違いなく最大戦果で勝つという事だと思います。。
キーエンスと事業提携してから、大量のソフトを発売しているようですが、特に目立つのは子供用の教育事業でしょうか。
しかし多分、この場合重要なのは商材というより、キーエンスという会社の異常体質がジャストシステムにおそらく移植されているという事でしょう。そうなるともはや商材が何かは問題ではない気がします。。
セグメントの状況
事業に対する熱や株主へのサービスを一切感じさせない冷徹な記載。。
まあ、らしいっちゃらしい。
業績推移
経常利益率の推移は23.7%⇒25.1%⇒22.5%⇒26.9%⇒35.9%
本家化物企業に比べれば大人しいですが、それでも優秀な数値です。
売上は右肩上がりなのですが、従業員はむしろ減っていっているという。
こういう所もホントに本家っぽい。。
売上が伸びる事と従業員数を増やすことは何の関係もない、とか言いそう。。
「少数精鋭」を語る会社結構ありますが、本当か?と思う事が多いです。
私は本当の少数精鋭の会社は従業員の定着率が高く、給与も多く、売上が伸びても全然従業員を増やす気配がない、こういう会社のことだと思います。
経営方針
目標とする指標は「従業員1人あたりの営業利益額」で、「売上高で2桁以上の成長」「最高益の更新」を合わせて目標に掲げています。
従業員1人当たり利益という指標で体質をキープしつつ、売上の2桁成長と最高益の更新という規模の成長を目指しています。おそらくこの目標設定はジャストシステムがまだまだ成長途上であるという認識からくるものではないかと思います。
キーエンスの規模でこんな目標設定は無理です。
逆に言えば、ジャストシステム自身が「俺たちはまだいける」と踏んでいるという事ではないかと思います。
キャッシュフロー
フリーキャッシュフローはデコボコですが、これは間違いなくキーエンスと同じく有価証券の購入でしょう。
5年前の投資キャッシュフロー
やはり。。完全にキーエンス体質です。
キーエンスという会社は恐ろしいほどの高収益を目指し、実現できている会社なのですが、同時に「永続する会社」を理想の一つに置いています。
そのため、現金が社外に流出する株主への還元を最小限にして、社内にお金を留め続け、運用したりしています。ジャストシステムもそういう部分を踏襲しているのでしょう。
なので基本的には自己資本利益率も低いです。
直近は増益の効果で20%とかなりの利益率ですが、ここから着実に純資産が増えていけば、配当や自社株買いなどの還元をしない同社は、自己資本利益率が悪化していきます。
正直、キーエンスが恐ろしく優良だと分かっていながら私が投資しないのは、この難点が原因です。会社の力としては申し分ないです。ただ投資効率から考えると、ベストな会社とは言い難いのかな、と。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
手元資金は換金性の高い有価証券を合わせて454.1億円(70.7%)です。十分でしょう。
システムの会社にしては固定資産63.4憶円(9.9%)が多いな、という印象です。キーエンスはファブレス(工場を持たない)会社で、固定資産を持たない合理的な会社です。
なので、そのDNAを受け継ぐジャストシステムが固定資産を持つのは違和感があります。なので主要な設備を見てみると。
徳島本社の土地建物がほとんどです。
徳島本社は創業の地ですからキーエンスが介入する前からずっと持っていただけだと思われます。現在ほとんど本社機能を移した東京本社はほとんど固定資産を持っていない事が分かります。
この東京本社の数値(建物は基本賃貸、固定資産はできるだけ持たない)が、今現在のジャストシステムの財務方針であると考えた方が良いと思います。いずれ徳島本社の土地建物も売却されるのではないかと推測します。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債はゼロ、安定の無借金経営です。
大株主の状況&役員の状況
キーエンスが当然大株主として載っていますが、50%は超えてませんから、議決権的には親会社ではありません。
ただ、役員のメンツを見るとほとんどキーエンスの人です。
ほぼ過半数の議決権と、役員に占めるキーエンス出身者の割合を考えると事実上ほとんどキーエンスの子会社と見ても良いと思います。
当ブログでは親子上場を批判しがちですが、その理由としては親会社がおかしな人材を押し付けてきたりするからです。
ただ、あのキーエンスがそんな非合理的な事をする気がしないので、ことこの親子上場に限っては、そんなにリスクはないんじゃないかな、と思います。
株主への還元
キーエンスの唯一といってよい問題点。それは株主還元の薄さです。
ジャストシステムもどうやら同じようです。
他は文句なしに合理的なのに配当政策はやたら内容が薄い気がします。
金額を決めた理由が一切書かれてません。
なんでそこだけ曖昧なんだ。。という。
まとめ
もうキーエンスが親会社という時点で体質は折り紙付き、という気がします。彼らが体質の悪い会社の株をいつまでも持ち続ける筈がない。そもそも買うわけがない。そういう会社です。ただ、注意したいのは体質=投資して儲かる、ではないという点です。
10年前のジャストシステムならともかく、今は相当ジャストシステムの株価は上昇していますし、純資産も膨らんできていますから、自己資本利益率も低くなりがちです。彼らの方針からして今後も自己資本利益率は重視しないと思います。そうなれば、今後も投資先として高パフォーマンスを維持できるのかは分かりません。
調べる中で、Microsoftという圧倒的な力を持つ怪物に敗北し、瀕死に陥ったジャストシステムがキーエンスという博士に改造され蘇るという、ちょっと胸が熱くなるエピソードが垣間見えました。
ただ、「あれ?でも改造され過ぎてもうDNA的にほぼ博士じゃない?というか博士の体質ほとんど怪物並じゃない?」と思うとちょっと面白い。
やっぱキーエンス、色んな意味で半端ない。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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