結論
東海カーボン同様、やはり多少古さを感じる記述が多い。在庫が多いように感じる。やたらめったらと買収しない雰囲気は、悪くないですが、頭が固そうな会社だな、と思います。
目次
事業概要
まずは日本カーボンの事業についてです。
日本カーボンの事業は以下。
- 炭素製品関連
- 炭化ケイ素関連
- その他
の3つです。
先日見た東海カーボンより区分がざっくりしてます。
業績を見ます。
セグメントの状況
炭素製品関連:236.3億円(83.6%、利益率9.0%)
炭化けい素製品関連:22.2億円(7.8%、利益率24.0%)
その他:24.0億円(8.5%、利益率13.8%)
東海カーボンと同じく、主力である炭素製品関連は利益率が10%以下です。
当ブログの考え方としてはリストラクチャリングを検討すべき事業ですが、炭素製品関連の売上は8割以上ですから、なかなかそこまで割り切れる会社はないかと思います。
なぜ、低利益率や赤字が顧客、社員、株主にとって望ましくないのか。|フリーランスのエクセル屋さん|note
とはいえ、カーボン会社が一桁の利益率でしのぎを削り合うというのも、結局じり貧なんじゃないかな、と。思い切ってどこかライバル会社に主力事業を売り、その資金で高効率の事業に資本を投下するような度胸の据わった会社があると面白いんですが。。
経営方針も見てみます。
日本カーボンも東海カーボン同様中期経営計画を発表しています。。こういうのは同業者で横並びにやる事が多いです。他社がやっていて、他社が上手くいった場合、経営者の立場がないためです。
東海カーボンの分析で書いた通り、当ブログは原則として中期経営計画のように、長いスパンの計画に賛同しません。
業績推移
利益率の推移は▲2.5%⇒10.7%⇒34.4%⇒33.6%⇒13.4%
2018年、2019年は黒鉛電極の価格高騰の影響でしょうね。
東海カーボンで詳細は書いてますからそちらを参照ください。
カーボン業界は軒並みこの影響を受けているんでしょうね。。業績の動きが同じです。
財務指標
日本カーボンは方針において指標を明確にしていません。
ただ、東海カーボンは役員報酬の決め方のところでベースとなる指標を記載していたため、そちらを確認します。
報酬を決める際の指標は、短期的には純利益、売上・利益の伸長度、株主価値(配当+株価)で長期的には株価であるとのこと。
当ブログの方針では企業の価値を測る指標として、株価は不適切であると考えます。
以前、キーエンスの体質分析の時に書いた事がありますが、株価というのは所詮信用ならない市場での人気指標です。
コロナショック後、1年で株価が倍になる会社が相次いでいますが、それらの会社はたった1年で本当に倍の能力になったのでしょうか。そしてそれは経営者の力量でしょうか。 そんなはずがありません。業績は悪化してる会社がほとんどですし、株価の上昇と経営者の努力、力量は無関係です。
株価を経営者や従業員の評価基準に据える事は一見投資家フレンドリーに見せて、まったくの非合理であり、断固として反対である、というのが当ブログの考え方です。
日本カーボンの報酬制度(ひいては企業の方針)は株価を交えている時点で当ブログの方針とは相容れぬ考え方になります。
キャッシュフロー
東海カーボンに比べると、FCFが穏やかな印象です。
無茶な買収などをしているようには見えません。
一応直近のFCFが赤字になっているので詳細を確認しておきます。
営業CFが減ったのは純利益が少ないためです。これは黒鉛電極の価格が下がったことで昨年に比べれば売上が大幅に下がっているので当然です。
投資CF自体は有形固定資産の取得による支出ですから、やはり無茶な買収や財テクなどはなさそうです。一応どんなものに投資しているのかを確認します。
なんというか・・・FCFが赤字になっても普通に投資してますね。
前年、前々年のキャッシュインが多いので苦しくはならないですが、手堅い会社はキャッシュベースでもFCFが黒字になるように調整してなるべく借入などに頼らないようにするんですが、借入金などを利用するのが常態化している印象です。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現金及び預金が146.0億円(20.6%)と少な目です。
売上債権が92.3億円(13.0%)で滞留期間は125日で東海カーボンと比較すると少々長い印象です。ただ、扱う商品がメーカー相手ですから、これくらいの支払スパンでも違和感はないかな、と。一応注記欄では1年以内の償還予定になってますから、明らかにおかしなものはないかと。
棚卸資産は173.6億円(24.5%)で棚卸回転期間は322日 。これは相当長いですね。。東海カーボンよりはるかに長い印象です。なんでこんなに長いんだろう。。素直に読んだらこれ原材料から売れるまで1年近くかかる事になります。在庫管理改善したら、もっとキャッシュフローは相当良くなるんじゃないですかね・・・?
有形固定資産201.4億円(28.4%)も大きめではありますが、工場を持つ会社の割合としては思ったほど大きくないです。主要な設備を確認します。
日本カーボンでは製造は主に日本国内でやって、海外は販売設備系のようです。
そうなるとちょっと気になるのはやっぱり在庫の滞留日数ですね。
生産がほぼ日本に集中して、海外に展開している形ならば、それほど難しい商流とは思えません。地域ごとの売上高を見ても、大半は日本向けですし。
だとすると、もしかすると在庫の中で不良在庫が溜まり、資金繰りだけではなく、いずれ突然の評価損などの可能性も考えられるため、注意が必要です。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債は119.9億円(16.9%)と結構あります。
買収などを行っていないにも関わらず、この水準というのは、在庫や固定資産が占める割合が大きく、運転資金が苦しいのかな、と。
従業員の状況、役員報酬
勤続年数は長めで、給与水準は標準より良いですね。東海カーボンよりずっと良いです。勤続年数も長いので、投資家にとってはともかく、社員の待遇は良い会社なのかもしれません。
一方、役員はどうかと言うと・・・
取締役の一人当たり平均は55.7百万円です。結構多いですね。
取締役の人数を絞れており、従業員の給与も高いので、その対比で考えるなら良いですが、自己資本比率が62.2%でROEが4.06%というのは、株主に対して与えるリターンとしてはかなり少ないです。
対株主に関してはとても役員報酬として妥当ではないと思います。
大株主の状況
大株主の中には特別支配権を持つような株主はいません。
株主還元
配当性向ですらない、絶対額での決定ですね・・・。
いまいち金額を決定した根拠が分かりません。
以下が配当性向。
基本的に20%前後をウロウロしていますが、直近は利益が急減したため配当性向が急上昇しています。なんとなくの絶対額で決めている感が凄いです。
まとめ
カーボン業界がそういう雰囲気なのかもしれませんが、前回の東海カーボンと同じように考え方が古く固定化されている印象。在庫の滞留日数については理由が気になるところです。従業員の給与や役員報酬は東海カーボンより高いので、従業員として入るなら日本カーボンかな、と。あと、バンバン買収するようなイケイケどんどんな会社じゃなく、実直な印象があります。
本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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