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【4733】オービックビジネスコンサルタント~有価証券報告書の読み方~

結論

キーエンス2号。経営体質、財務体質が完璧。「無用の富の蓄積者」で終わらず、資金効率まで考えられる偉大な企業となってほしい。

 

目次

 

前置き

読者様より「奉行通信」の会社を分析してほしいというリクエストを受けたため、4733オービックビジネスコンサルタントを分析します。

事業概要

まずはオービックビジネスコンサルタントの事業についてです。

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オービックビジネスコンサルタントの主な事業は、いわゆる「奉行」シリーズの開発と販売です。財務とかに興味なくても、このCMは見たことがある人はいるのではないかと。


OBC『勘定奉行 奉行VERP』 CM 2008/02

あの歌舞伎役者の出るCMでお馴染みの「奉行」シリーズです。

残念ながら私が入った会社はどちらとも「奉行」シリーズではなかったので、その使い心地とかは良く分からないですが、中小企業や中堅の企業では「奉行」シリーズはかなりのシェアを持っていると聞きます。

あれだけインパクトのあるCMを打っていればさもありなん、という気がします。

事業の内容の書き方は「ビジネスソリューションテクノロジー」とか「ITソリューションテクノロジー」とかはっきりしない書き方しててしゃらくさいですが、事業の内容は非常にシンプルで、財務会計のシステムを開発し、企業に売り、保守をする、それだけです。そしてシンプルな事業ほどツボにはまると儲かるものです。

簿記を興味を待つ前の私ですら印象に残るようなCMを打っているくらいですから、知名度は相当なものだと思います。この知名度がそのまま売上に繋がり、かつシンプルな事業体質であれば、かなり儲かっているのではないかと。

 

セグメントの状況

同社は単一セグメントですから、セグメント別の情報はありません。

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セグメントを単一セグメントとしている理由を明記してくれるのは親切で良いのですが、説明に「ソリューション」が多い気がします。。読みにくい・・・。

セグメント別は無いですが、製品及びサービスごとの売上を載せてくれています。

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売上の58.9%が保守サービス分というのは良い傾向かと思います。

プロダクトの売れ行きは時期によって色々でしょうが、保守サービスは将来的にも安定した売上が見込めます。

 

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は47.7%⇒47.2%⇒47.6%⇒47.6%⇒46.7% 

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凄い利益率です。。

こんな異常な利益率の会社を見落としていたとは・・・ホントに優良企業というのは案外あるものです。

会計ソフトは最近Freeeとかが良く聞かれますから、昔からずっと聞かれる「勘定奉行」なんてもうオワコンかな、とか思っていましたが、少なくとも業績は全然大丈夫ですね。恐れ入りました。

 

 

 

経営方針

目標とする指標は営業利益率、経常利益率の付加価値率です。

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しかしこの経営指標の記述。。かなりの余裕を感じます。

あれだけの利益率を達成していれば、確かに今更目標を定めてコツコツ体質改善をする必要はないと思います。現状のまま継続して理念の追求をしていけば、十分体質を維持できるのではないかと思われます。優秀過ぎてちょっと憎たらしいです。

 

あと、同社が凄いな、と思うのはここです。

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同社のコアコンピタンスを明確にしています。

コアコンピタンスというのは、ある企業の活動分野において「競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」の事です。

意外にこれを明確に定義できる会社は少ないです。

これが分かっている企業というのは、その部分に対して経営資源を集中できるため、無駄が無く、その内容について圧倒的な競争力を持ちます。

しかもかなり内容が具体的で、これを読めばきちんと同社が「何をすべきでないのか」まで良く分かります。

正直、文句のつけようが無いですね。

この時点でキーエンス並のビジネス体質の完成度を感じます。

 

 

 

キャッシュフロー

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圧倒的なキャッシュフローの余裕・・・分析するのが馬鹿らしくなります。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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手元資金は1,067億円(74.5%)ってどういうことですか。。

おまけに運用と思われる投資有価証券が252.7億円(17.7%)あります。

合わせて92.2%がほとんど現金同等物です。

これはもはや財布です。他の何を分析しても重箱の隅をつつくようなものです。

こと安全性という意味で、同社以上の会社が世界中探しても他にあるんでしょうか。。

 

負債、純資産を見てみます。

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当然ながら有利子負債はゼロ、無借金経営です。

負債は基本的に営業上の負債で、82.8%が純資産。なんじゃこりゃあ。。

 

 

 

大株主の状況&役員の状況

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筆頭株主オービック(4684)です。

同社の名前から分かる通り、オービックビジネスコンサルタントは基幹業務システムを手掛けるオービックから派生しているようです。オービックが諸々のシステムを包括するシステムに対して、オービックビジネスコンサルタント財務会計の「奉行」シリーズに特化している、という位置づけでしょうか。

オービックが36.16%の株を持っていますが、親子上場というレベルではなく、創業者である和田夫妻が合わせて37.71%とオービックを上回る株を持っているため、誰かの一存で左右されるようなリスクもなさそうです。

 

役員の状況を見てみます。

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オービックの会長でもある野田氏が会長を務めていますが、非常勤と書かれている事から、実質的な権限は社長、副社長の和田夫妻にあるようですから、オービックからの独立性は守られると考えてよいかと。

 

 

 

従業員の状況&役員の報酬

これだけ優良ですから、さぞかし貰っているんだろうな、と思ったのですが

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意外に普通です。

十分多いとは思うのですが、キーエンスやショーボンドHDといった、優良体質の会社に比べると、少なめかな、という印象です。もっと上げてもいい気がします。

 

ただ、決して経営者の方も贅沢しているわけではなく、5人で3億弱ですから、ひとりあたり6000万円いかないくらいです。

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大した利益も出さず、体質も良くない企業の経営者が億単位の報酬を受ける事もあるので、それに比べると報酬としては控えめで、経営者の倫理観は高いように感じます。

 

 

 

株主への還元 

ここまで良いところしか無かったので、個人的に嫌だと思う部分を書きます。

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財務堅すぎです。

これ以上留保貯めてどうするんですか。。既に同社は金が余り過ぎて9割以上の資産が現金同等物のレベルです。それでも37.7%の配当性向しか出さないというのは明らかに行き過ぎです。

還元をしないために自己資本利益率は以下の通りずっと一桁です。

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これは資本効率が悪いです。

将来の投資に使うため、というのは分かりますが、現実に研究開発費に使っているのは30億弱、その他への投資を多く見積もっても年間50億あれば十分でしょう。

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今手元にある現金1,067億円だけでも使い切るのに21年かかる計算です。

これは賢明や堅実を通り越して、単に思考停止しているだけではないかと。

自分の会社で稼いだ利益ですから、吐き出す事を強要するのは気が引けますが、もう少し、還元に力を入れることで、お金を社会に回す事も考えてもらえないかな、という気がします。

 

 

 

まとめ

結論としては、キーエンス2号ですね。経営体質、財務体質が完璧です。分析するのが馬鹿らしくなるレベルです。

こと経営に関しては、私ごときが言える事はなさそうです。

しかし、キーエンスに対しても言える事ですが、内部留保を重視するために、自己資本利益率が非常に低いです。勿論堅実な事は企業経営者の素養として重要なポイントですし、ある程度の内部留保を持っておくのは当然です。ただ、それも度を超すと悪徳になり得ると私は思います。

 

鉄鋼王にして慈善家のアンドリュー・カーネギーは以下の著書でこのように説いてます。 

富の福音

富の福音

 

「富める者は、母なる大地の中に眠る前に、自分の持っているものをすべて売り、その富を、貧しい人々のために役立つ最も有益な事業に使用すべきである。そうすれば、無用の富の蓄積者として一生を終えることはない」

 

オービックビジネスコンサルタントが稼いだ利益は勿論同社に帰属するものですし、誰もそれをため込むことを咎めることはできません。

しかし、富とは常に回転させ、有効利用する事で初めて人々の生活を向上させ、世の中を良くする事ができます。もし自社で有効な使い道がないのであれば、一定の留保を除いて投資家に還元し、世の中に流した方が良いと私は思います。

同社が無用の富の蓄積者で終わらず、資本の効率にまで目の行き届いた素晴らしい企業となることを切に願います。 

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

www.freelance-no-excelyasan.com