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【4684】オービック~有価証券報告書の読み方~

結論

経営理論、業績、体質、全てにおいてスキが無いエクセレントカンパニー。創業者の野田夫妻はもはや偉人だと思う。

 

目次

 

前置き

オービックは少し先に分析予定でしたが、先日のオービックビジネスコンサルタント分析に関係があったため、前倒しで分析しておきます。

 

事業概要

まずはオービックの事業についてです。

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オービックの事業は統合基幹業務システムの製造販売、保守です。オービックビジネスコンサルティング(以下OBC)と同様シンプルなビジネスですが、システムインテグレーションとかオフィスオートメーションとか、やはり書き方が若干しゃらくさいです。無駄に横文字が多い気がする。。

しかし、OBCがあれだけの優良体質企業でしたから、関係する同社も高体質が期待できると思います。

 

セグメントの状況

同社はシステムインテグレーション事業(統合基幹業務システムの開発)、システムサポート(保守)、オフィスオートメーション(OA機器物販)の3つのセグメントに分かれています。

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システムインテグレーション:394.7億円(49.0%、利益率52.0%)

システムサポート:313.4億円(38.9%、利益率67.1%)

オフィスオートメーション:96.9億円(12.0%、利益率17.4%)

 

凄い利益率です。

オフィスオートメーションが若干足を引っ張っている感がありますが、それでも17.4%という並の優良企業レベルです。

これだけの逸材を知らずにいたというのはちょっと恥ずかしいですね、私。

YahooニュースやTwitterというのは、「予想外に」伸びた会社とか、「目立ったことをした」会社しか話題にならないのでこういう「淡々と、当たり前のように」信じられない好業績を叩き出している会社さんは意外に知れてない気がします。

地道に一社づつ調べていると、こういう発見ができるのは嬉しいですね。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は50.3%⇒52.5%⇒53.2%⇒56.5%⇒52.7% 

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OBCを超える凄い利益率です。。

というか、沿革からして、OBCの異常ともいえる優良体質はオービックから受け継がれたものなのでしょう。

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龍の親はやはり龍でしたね。本家の力ここにあり、といった感じです。

 

 

 

経営方針

目標とする指標は「自己資本利益率10%以上」という事で、達成している異常な付加価値率には触れてすらいません。もはや付加価値が高いのは当たり前、といった雰囲気です。

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OBCは付加価値率を重視し、実際に凄い利益率を達成していました。

ただ、先日の分析では、元々資金効率の観点が目標に無く、株主への還元等が少ないために自己資本利益率が低い点を同社の課題として挙げました。

オービックの場合は自己資本利益率にまで気を配っているようです。

実際、達成している自己資本利益率は一般的に十分な水準と言えます。

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個人的には自社株買いなどをすればまだまだ上げられるだろう、とは思いますが、文句を言えるほどの水準でもありません。

会社体質として死角なし、といった感じです。

 

OBCコアコンピタンスを設定していたのと同じように、オービックもまたその経営方針には特筆すべきところがあります。

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本質を掴んでいる会社だからこそ出てくる至言です。

解説は野暮なのでしませんが、こういう一言が出てくるあたり、経営陣の質の高さが伺えます。

 

 

 

キャッシュフロー

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OBCは投資キャッシュフローすらプラスで、設備投資は不要と断言していましたが、オービックでは投資のマイナスが3年続けて発生しています。

投資有価証券などの資産運用系のキャッシュフローのマイナスであれば、気にする必要は無いのですが、一応確認します。

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有形固定資産への投資ですから何かしら建物などを購入しているものと思われます。

設備投資の概要を見ると

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諸々のインフラ整備や本社用地の購入に使っているようです。という事は、IT系でキャッシュリッチではあるにせよ、OBCほど手元資金ばかりの帳簿、というわけではないのかもしれません。

とはいえ営業キャッシュフローからみれば余裕の投資額ですから、資金繰りに苦労するような体質ではありません。全く問題ないかと。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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手元資金は1,296.1億円(49.0%)と潤沢ではありますが、総資産の中で占める割合から見れば、IT業界では珍しくはありません。

もっとも、運用と思われる投資有価証券が605.0億円(22.9%)ありますから、手元資金と合わせて71.9%がほぼ現金同等物で占める優良帳簿であることに違いありません。

やっぱ凄いです。

先ほどのキャッシュフローの所で触れた通り、2020年3月期で設備投資額が130億ほどあったため、有形固定資産578.5億円と、絶対値としては結構ありますが、総資産に占める割合が21.9%程度ですから、憂慮するほどの水準ではありません。

IT系のキャッシュの潤沢さは実に羨ましいです。

 

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はゼロ、無借金経営です。

90.1%が純資産。鉄壁の財務体質です。

 

 

 

大株主の状況&役員の状況

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筆頭株主はノダ・マネジメントです。創業者である野田順弘氏の資産管理会社と思われますが、この組織とご本人の所有株、奥様のみづきさんの株を合わせても25.35%とそこまで支配権を持っているわけではないようです。

 

役員の状況を見てみます。

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既に創業者である野田夫妻は会長と相談役という後見的な地位に退き、後継を育てる形に落ち着いているようです。他の役員を見ても野田姓は無いので、親族を役員に入れるような公私混同は見られません。

これは会社の体質として非常にポジティブです。

なんというか、ジェイエイシーリクルートメントの田崎夫妻を思い出します。ご夫妻で会社を創業された経緯も近いですし、公私混同せず深い見識を持っている感があります。

www.freelance-no-excelyasan.com

 

ちょっと野田氏のご意見の分かりそうな記事を探してみたのですが以下がありました。

president.jp

読んでみるとやっぱり凄い。。

凄い起業家、名経営者に共通するのは、何をおいても「人間」に対する洞察が深いです。

人心の機微に通じ、人に対する敬意を失わない。下の人間を力づくで従わせるのではなく、人心の流れに逆らわずそれとなく正す。

良い組織というのは「人間の性質」に対する深い理解が無ければ絶対に作れません。こういう方が作られた組織であればそれだけで信頼するのに十分だと思います。

 

 

 

従業員の状況&役員の報酬

OBCは体質の割に平均給与はそれほど高くないな、という印象でしたが、オービックはそれなりに高いです。オービックの体質の高さに見合うか、と聞かれるとまだ足りない気もしますが、少なくとも不当に少ないというレベルではないかと思います。

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結構貰ってますね・・・いいなぁ・・・

 

経営者の方はどうかというと、トップの橘氏は3.1億貰ってます。

 

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他の企業と比べると多めではありますが、オービックの異常ですらある優良体質考えれば無難な所かな、と。むしろこういった会社の経営者が貰わず誰がもらうのかと。

少なくとも私は異論ございません。

会長職の野田氏も億越えの報酬を貰っているようですが、社長より遥かに少ないです。創業者で大株主だったら会社を私物化して、何もしなくても多額の報酬を得る事も可能でしょうが、実務をやらない会長職が多く貰わない、というのは理にかなっています。

こういった所からも、野田氏の倫理観の高さが伺えます。

 

 

 

株主への還元 

経営の財務指標が自己資本利益率ですから、当然配当政策でも意識していて、その上で35%という配当性向を決めているようです。

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オービックの健全性を鑑みれば、まだまだ還元余地はあるとは思いますが、手元現金が資産の50%というのはIT企業では決して異常というほどの水準ではありません。投資有価証券等の価値を考えれば、もっと還元しろ、とも思いますが、そこは経営者の匙加減と思える水準のギリギリをついている気がします。

株主が強硬に還元を主張すると、こいつ分かってないな・・・と思われそう。。

実に無駄が無く、論理的につけ入るスキがありません。。

 

 

 

まとめ

当ブログはあくまで有価証券報告書を元に、体質を推測するブログです。

その中には往々にして主観的でわけの分からない解釈や指摘も入っていると思いますが、オービックに関しては問題点に関する指摘らしい指摘が一切できません。本当にスキがありません。

あらゆる点について考察されて、ビジネスが作り上げられている気配を感じます。

ソニー、ホンダ、パナソニックキーエンスなどを作り上げた創業者達はもはや歴史に名が残る偉人だと私は思っていますが、今のオービックの企業体質を見ていると、野田夫妻もまたそれに列せられるべき方々ではなかろうかと思います。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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