結論
定量分析で見れば優秀。されど性質的な部分に謎が多く、油断ならない異邦人、という印象。
目次
事業概要
まずはネクソンの事業についてです。
ネクソンの事業はPCオンラインゲーム及びモバイルゲームの制作・開発、配信に関連した事業です。私は最近のゲームに疎いのですが、メイプルストーリーならCMで見たことがあります。
代表的なタイトル3つに共通する配信地域は韓国です。昔テレビか何かで見ましたが、韓国ではオンラインゲームが凄く人気で、中毒になる人も多いとか。
私の場合はオンラインゲームと聞くと、韓国のグラビティ社が開発したラグナロクオンラインというゲームが連想されます。私が学生の頃に周囲では友達の間で流行っていて、私も友達に勧められて始めたことがあります。
毎日深夜までやった結果、学校登校中に畑に落ちていた木くずをアイテムとして拾おうとして我に返り、「これはヤバい」と思ってやめた覚えがあります。やめられてよかった。
それだけビジネスとして強力という事になりますが、ゲームによっては依存性が強く、行き過ぎると規制などに引っかかる可能性もあるので、その辺りは事業の性質上避けられないリスクとして認識しておいた方が良いと思います。
事業上のリスクでもその点は触れてます。
セグメントの状況
同社は報告セグメントを地域で分けており、韓国がメインのようです。
日本:87.1億円(3.4%、利益率▲40.1%)
韓国:2,225.9億円(89.6%、利益率50.4%)
中国:28.2億円(1.1%、利益率55.2%)
北米:169.1億円(6.7%、利益率▲32.7%)
その他:20.0億円(0.1%、利益率▲47.8%)
メインの売上は韓国で、ほぼ韓国相手で稼いでいます。
逆に日本、北米、その他は大幅な赤字です。
特徴として、利益率の高い韓国、中国はPCオンラインが多く、赤字の大きい日本、北米はモバイルの割合が多いです。売上高の金額から見ても、ネクソンの基幹事業はPCオンライン事業で、モバイル事業は先行投資段階の事業と思われます。
業績推移
利益率の推移は35.7%⇒25.7%⇒29.8%⇒46.3%⇒49.1%
利益率は平均して高いですが、安定はしていません。
ゲーム自体の流行り廃りの早さなのでしょうが、連続して名作を生み出せるような力が確認できなければ、企業体質として不安が残ります。
経営方針
目標とする経営指標は「売上収益及び営業利益」という絶対値評価です。
一般的なビジネスであれば、あまり絶対値評価の設定は望ましくないです。何故なら、絶対値評価だと、功を焦る社員が付加価値率を下げてでも絶対値を伸ばそうと考えるリスクがあるからです。
ただ、ネクソンのようなオンラインゲーム業界の場合は少し事情が違うと思います。
オンラインゲームのコストは開発費が最初に大きく出て、以降の維持費はそれほど多くありません。こういったビジネスは確かに売上や営業利益を伸ばせさえすれば付加価値率も上昇するため、正直問題ありません。
コンテンツを売るビジネスは価値あるものさえ作れば、売上は無限に増えていきますが、コストをかければ上手く売れるというわけではありません。非常にシンプルで低コストなのに人気が凄いゲームもあれば、高いコストをかけたのに売れないゲームもあります。
そこはひとえにゲーム制作者のセンスとアイディア次第なので、単純に売上と原価を紐づけて付加価値率を考えても意味は無いと思います。
よってことオンラインゲーム事業に関して言えば、この方針の立て方は「アリ」だと思います。
キャッシュフロー
一見するとフリーキャッシュフローの変動がひどく、投資キャッシュフローが管理できていないようにも見えますが、内訳を見ると、いずれも有価証券の購入やその他預金を増やしたことによるものだと分かります。
2018年~2019年
2016年~2017年
であれば、投資キャッシュフローは単純なキャッシュアウトではなく、現金に近い資産を着々と貯めているようです。キャッシュフローに関してはそれほど心配はいらないようです。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
手元資金はその他預金を合わせると5,109.7億円(71.1%)と、総資産の中でほとんどの部分を預金が占めています。のれんや有形、無形資産ももちろんありますが、元々がコンテンツ産業だけあって、大した影響はありません。
健全な資産欄だと思います。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債は22.3億円ほどありますが、現金同等物の額からみれば無視して問題ないレベルです。基本的に負債はそれを除けば一般的な営業負債であり、純資産額も6,199.9億円と、盤石の財務体質です。
大株主の状況&関連会社の関係
パッと見では特定の支配株主はおらずバラけているようにも見えますが、上の2社は同じ企業グループに属するため、実はほぼ過半数を韓国のNXC Corporationという企業が所有しています。
そもそも、韓国がメイン市場という点から何となく想像がつくと思いますが、ネクソンの始まりは韓国の会社です。
その後以下のような組織変遷をたどります。
日本にネクソンを設立した後で、元々あった韓国事業を持ち株会社?と事業会社とで分割し、最終的には韓国の事業会社をネクソン(日本)が子会社化してます。
資本関係から見れば、ネクソンはNexon Korea Corporationの親に当たるワケなのですが、セグメント売上を見ればわかる通り日本での売上は少なく、利益も赤字です。
従業員の状況を見ても明らかに韓国がほとんどです。
ちょっとこの組織編制や資本関係にどういった意図が含まれているのかは今のところ謎です。
分かったら追記します。
まとめ
ネクソンはちょっと謎めいた会社だな、という気がします。
オンラインゲームやモバイルゲームでの同業他社にガンホーがありますが、ガンホーはきちんと日本で売上を立てています。
つまり、ネクソンが日本で売上を立てられないのは、日本でオンラインゲームやモバイルゲームの市場が無いからではなく、ネクソンが日本市場にそれほど力を入れていないからではないかと。
しかしそうなるといよいよ何故元々は韓国にあった会社であるネクソンが日本進出を果たし、売上も大したこともない日本企業を韓国企業の親会社に据えたのか。。ちょっと経緯が分かりません。
キャッシュフローの潤沢さや、財務体質の盤石さ、利益率の高さなど、数値的にはかなり優秀な部類に入るネクソンですが、経営方針や組織編制など、質的な部分で良く分からない部分が多いです。質的な部分が理解できないというのは経営者が何を考えているのか分からないということなので、今後どのように成長していくのかも、未知数です。
今後の動向をフォローしていけたらな、と思います。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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