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【3665】エニグモ~有価証券報告書の読み方~

結論

成績優秀、財務盤石、将来性も十分。

才気あふれる若者のような会社。理想を明確にして追求する事で、偉大な企業となる事を切に願う。

 

目次

 

 

事業概要

まずはエニグモの事業についてです。

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エニグモの事業はアマゾンや楽天などと同じようにマーケットプレイスの提供です。「BUYMA」という主にファッションに強いマーケットプレイスのようです。

BUYMAが面白いのは、同社が「パーソナルショッパー」と呼ぶ海外在住の一般のパートナーが、BUYMA上で海外の珍しいアイテムを紹介している点です。

パーソナルショッパーは自身で在庫を持つわけではなく、良いと思ったアイテムを紹介して、注文が入ったら購入して発送する。これなら海外駐在している人などは、面白いアイテムを見つける度に紹介して、受注が入ったら買い付けるだけですから、ノーリスクのお小遣い稼ぎができそうです。

私も海外駐在になったら考えてみますかね。。

 

セグメントの状況

同社はソーシャルコマース事業の単一セグメントですが地域ごとの売上を載せています。

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日本:44.1億円(72.3%)

米国:6.1億円(10.0%)

その他:10.8億円(17.6%) 

基本的には日本国内メインのビジネスのようです。日本に住んでいる海外ブランドの商品を欲しい人がBUYMAを通して海外に住むパーソナルショッパーさんに買い付けを頼み、エニグモは仲介手数料を貰う、というビジネスモデルかと。

エニグモ自身は在庫を抱えるわけではなく、持っているのはWEBサイトだけで、収入も手数料ですから、知名度が上がって損益分岐点を突破すればかなり利益率の良いビジネスになりそうです。

勿論、そうなると入ってきたお金をどう使うか、という経営陣の考え方をきちんとチェックしておく必要があります。

 

 

 

業績推移

利益率の推移は7.6%⇒42.5%⇒34.6%⇒40.6%⇒44.0% 

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5年前に損益分岐点をぶっちぎったんでしょうか。急激な成長です。

これが持続できるとしたら恐ろしいほどの優良体質です。

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若干従業員数が増えてきているのは気になりますが、スピードは緩やかかな、という印象です。あからさまに規模を追い求めるイケイケどんどんタイプではないかな、と。

 

 

 

経営方針

目標とする経営指標は「売上収益及び営業利益」という絶対値評価です。

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一般的なビジネスであれば、あまり絶対値評価の設定は望ましくないです。何故なら、絶対値評価だと、功を焦る社員が付加価値率を下げてでも絶対値を伸ばそうと考えるリスクがあるからです。

ただ、エニグモのように変動費が少ないビジネスの場合、売上も営業利益も伸びれば伸びた分だけ利益率の向上に繋がります。なので絶対値を追った所で体質悪化には繋がりません。 本業の事業領域を守る限りは、この指標でも問題ないと思います。

注意したいのは、本業以外のビジネスに参入したり性質の違う収益を求める場合です。例えば自前で在庫を持って販売を始めたりすると、売上や営業利益は増えますが、利益率は減りますし、不良在庫のリスクが出ていきます。

他業種やコスト体質の違うビジネススタイルに移行する場合、現状の指標のままでは体質的リスクを抱えることになる気がします。

 

 

 

キャッシュフロー

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基本的には潤沢なフリーキャッシュフローです。ただ、3年前にガクンと少なくなっているので、一応理由を確認します。

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法人税の支払です。

2016年1月期まで結構な赤字で、2017年1月期から一気に黒字転換したので繰越欠損金を使い切って一気に税金の支払が増えたんじゃないかと。

これは赤字から黒字になった会社は避けようのないキャッシュアウトですから、問題ないと思います。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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これは凄いです。

手元資金は81.9億円(92.7%)と、総資産の中でほとんどの部分を預金が占めています。有形固定資産よりも敷金及び保証金が多い所を見ると、オフィスなども賃貸契約をしているようです。主要な設備の状況を確認すると、データセンターの建物は賃貸だそうです。

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自前で有形固定資産を待たず、これだけ資産を綺麗な状態にしているので、財務的なリスクはかなり低いです。しかし逆にいえばこれだけの資金を意味もなく寝かしてしまっているわけなので、資金効率は悪く、今後この資金をどう使うのかによって同社の将来も決まってくるのではないかと思います。

  

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はゼロの無借金経営です。

負債には預かり金が7.1億円(8.1%)と結構ありますが、顧客からの一時的な預り金ですから利息等もなく、むしろ一時的に会社にキャッシュが回るという意味では、キャッシュフロー的には有利な負債になります。問題は無いと思います。

預り金を除けば貸方はほぼ純資産73.7億円(83.4%)です。実に健全です。

 

 

 

大株主の状況&関連会社の関係

筆頭株主ソニーです。

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ソニーって妙に新興優良企業の大株主になってますね。確かエムスリーの大株主でもありました。。あと、エムスリーを見出したソニーネットワークコミュニケーションズはその前に創業間もないDeNAにも出資していた模様。

ソニーネットワークコミュニケーションズ - Wikipedia

目利き力が凄いのか、投資額が半端ないのか。

いずれにせよ、流石は元祖ビジョナリーカンパニーです。。

しかし、筆頭株主ソニーですら24%程度ですので、会社全体の意思を掌握しているわけでもなく、創業者の須田氏も過半数を握っているわけではありません。そういう点では、親会社による人員の押し付けや、創業者の公私混同といった体質リスクは起きにくいのかな、という印象です。

 

 

 

資金の使途

全体的に見てやはり気になるのは、今後の資金の使い道です。

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ほとんど現金だけのような財務諸表にも関わらず、配当や自社株買いといった株主還元は考えていないようです。

それをしないでも十分に自己資本利益率は高いのですが、

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経営方針や配当政策を見る限り、基本的には無配で記念配当しかしていません。投資計画等を総合的に勘案し、と言いますが、投資キャッシュキャッシュフローを見る限り特に投資する事もなく、現預金が有り余っている様子を見ると、そもそもあまり資金効率や株主への還元方法については深く考えていない印象です。

今はまだ規模が小さいので自己資本利益率は高いですが、時間が経つにつれて自己資本が充実されてくると、自己資本利益率をあげるのが難しくなってきます。

こういった場合に陥りがちな失敗は、会社を買収して新規事業に手を出す事です。

実際、エニグモは過去からいくつかの事業に出資し、直近のロケットベンチャーというメディア事業への投資に関しては、2018年1月に4.3億円の減損損失を計上して連結から除外しています。

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会社に限らず個人でも、手元に現金があるとつい必要のないものを買ってしまうのはよくある事です。特に何とかして売上と利益を伸ばそうとしている企業経営者は、プレッシャーからついM&A仲介者の魅力的な話に手を伸ばしてしまう事があります。

ただ、元々持っている事業領域から離れた買収が上手くいくことはほとんどありません。

本当に素晴らしい企業は、あくまで理念に基づいた事業領域にとどまり、徹底的に理想を追及するために資金を集中投資し、余分な資金は投資家に還元するものです。

折角Buymaという凄い利益率を生み出すサービスを抱えているのですから、これに徹底的に投資するなり、余分な資金は株主に返還するなりして、是非体質、効率、利益、全てにおいて凄い会社になってほしいです。

 

 

 

まとめ

成績優秀、財務盤石、将来性も十分かと思います。

ただ、若い会社なので成長戦略や体質が練られていない不安があります。

才能に恵まれた若者が、才能に溺れて努力を怠り、くだらない事で散々時間を潰し、結局大した人間にならないという話はよく聞きます。

エニグモはまさに才気あふれる若者のような会社で、ここからまた飛躍するには、無駄に事業を広げるような事はせず、事業領域を限定して理想を明確にして追求する事で、傑出した企業に成長してほしいな、と思います。

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正直、今のミッションだとどんな事業にでも進出できてしまいそうで、脇道にそれそうな気がしてなりません。。もう少し具体的に、「何をやらないのか」が分かるようなミッションや方針を練ってはどうだろうか・・・と思ってしまいます。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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