結論
財務ピカイチ、創業夫妻の高潔さに敬礼
目次
事業概要
先ずはジェイエイシーリクルートメントの事業についてです。
事業内容は2つで人材紹介事業と、求人広告事業です。
人材紹介事業は企業と求職者の間にエージェントとして入り、企業に求職者を紹介し、採用決定した場合は成果報酬をもらうビジネスです。
求人広告事業は求人広告サイト「キャリアクロス」に求人広告を載せる事で広告掲載料を載せるビジネスです。
セグメント売上(業種ごとの売上)の状態も確認します。
国内人材紹介事業が9割、海外事業1割といった所でしょうか。
海外事業は事業説明の中にもありますが、例えば日系企業が海外に進出するにあたって人材を必要としたときに、現地の人材を紹介するという、国境を超えた人材サービスの提供を目指しているようですね。
もし実現するならかなり夢のある事業ですが、現状ではまだ海外事業は1割ですからこれからどうなるか、という所ですね。
業績推移
さすがはコンサル系ビジネス、といった所で、経常利益率は非常に高いですね。
経常利益率:31.5%⇒34.2%⇒33.2%⇒24.1%⇒25.2%
直近最も低い24.1%ですら、並の企業では及びもつきません。
キャッシュフロー
人材紹介ビジネスは固定資産なども必要なく、成約次第現金が入ってきますから当然と言えば当然ですが、キャッシュフローも実に潤沢です。
B/S(貸借対照表)
資産の半分は現金及び預金ですね。
有形固定資産はほぼなく、無形固定資産はソフトウェアです。ソフトウェアは人材情報のデータベース関係のシステムや、求人サイトキャリアクロス関係のものではないかと思います。
投資有価証券があるのは、内訳が見つからなかったのですが、連結対象にならない関係会社株式かもしれません。何にせよ異常なものではないと思います。
負債の方も有利子負債はゼロ、無借金経営です。
如何にもコンサル系の綺麗なバランスシートの見本のようです(汗)
業績数値について同社は間違いなく素晴らしい会社です。
こんな会社はなかなかありません。
ただ弊ブログでは業績数値が良い=体質が良いと断じる積りはありません。
投資であれ、就活・転職活動であれ、大事なのは過去ではなく未来です。
今後も持続的に成長し、信頼できる会社体質であるかを推測するのが狙いです。
大株主の状況
その時に少々気になったのが大株主の状況。
創業者である田崎忠良氏とその奥様ひろみさん、それに田崎氏が管理する財団を合わせると、ちょうど50%を持ってます。
意思決定を自由にできてしまうだけの権力(株数)。この自由をどのような形で使うかで、その会社の雰囲気というか体質は決まってきます。
大体支配してやりがちなのが、報酬額を高くすることです。
なので報酬の基準を見てみると。
報酬を決定するプロセスはかなりしっかり決めてあるようです。
フェアだと思います。
実際の報酬額も見てみます。
田崎ひろみさんは会長を務めていて億越えの報酬を受け取っているため、報酬が開示されています。逆に言えば創業者で既に相談役に退いている田崎忠良氏の報酬は億を超えていないという事です。
さらに言うと、人材派遣ビジネスを始めたのは、田崎忠良氏ですが、それを大きくしたのは奥様の田崎ひろみさんとのことです。
参考記事
https://forbesjapan.com/articles/detail/30562/2/1/1
とすれば、現在の会長という職位に創業者である田崎氏ではなく、奥さんのひろみさんが就いているのも、その能力に見合った役職を就けることができているのだと思います。
一方で、社長である松園氏はその経歴から言っても、田崎氏との直接の縁戚関係には無いと思われます。姻戚でもない松園氏が会長以上の報酬を受けていることからも、現在の報酬額はその活躍や立場に見合ったフェアなものであると推測できます。
同社の報酬制度はフェアな精神に基づいており、それはつまり創業者である田崎氏、ひろみさんの倫理観の高さを示す証であると考えます。
そんな方達が株を持っているのであれば、過半数を支配していても、それほど大きな問題にはならないと思います。
もう、この時点で企業体質がかなり良い気はするので、有価証券報告書を見る限り同社は凄く良い会社です。ただ一方で、まだ私は同社への投資を決断できずにいます。
その理由を書いて今回の分析を終えたいと思います。
人材紹介業界という業界に対する心配
人材紹介業界は実に割の良いビジネスだと思います。設備投資もいらないし、在庫を抱えるリスクもない。1件成約すればポンと数百万の売上があがる。儲かるビジネスの筆頭といっても過言ではありません。
私も転職した時はエージェントを使いましたが、経理に配属された時に、自分の紹介料を偶然見てしまったのですが、100万円以上かかってました。私がエージェントからしてもらったのは、一度の面接と何回かの連絡を取り合っただけですから、それだけで考えれば利幅の大きなビジネスだな~と感心した覚えがあります。
しかしそれは同時に参入障壁が低い上に、新規参入者が集まってきて競争が激化しやすい、という事です。
人材サービスのカオスマップがありました。
参照元:http://sales.goalist.co.jp/entry/2017/10/12/120000
ウヘ~という感じです。
それぞれの業界に特化したエージェントがギッシリです・・・。
私も以前、面白そうな転職エージェントの記事を書いたんですが、本当の本当に氷山の一角でした。
今、ジェイエイシーリクルートメントは外資に特化した求人という分野である程度の地位を確立しています。
「外資 転職」で検索すると出てくる比較サイトに2番目に出てきます。
外資系・グローバル企業の転職で活用すべきエージェント特集!好条件の非公開求人が満載
今は基本的にネットで検索してエージェントを探しますから、これだけ上位であれば、外資を志望する人はガンガン集まってくるはずです。だからこそ、これまで素晴らしい業績を出すことができるのでしょう。
しかし果たして、今後もそれを継続する事ができるのか、どういう形で成長を遂げるのかは未知数です。
上層部が高潔な意思を持ち、好業績を上げているのは間違いないですが、ビジネスは勿論それだけでは続くとは限りません。どういった形に今後ビジネス展開されていくのか。
景気が傾きつつある今こそ、その真価が問われると思います。
まとめ
この記事シリーズは有価証券報告書をメインに書いていますが、数値上あまりに問題が無い優良企業だと、逆にその会社のクセや雰囲気を感じ取れなくなります。同社はまさにそれです。財務上問題なく、損益にもケチのつけようがありません。
強いて言えば、従業員の人数の増え方が多い気がしますが・・・
人材コンサルという業種の性質上、人を増やさなければ拡大は見込めません。
今後どのような形で成長するのか、私が投資するしないに関わらず、田崎夫妻のような倫理観の高い方のビジネスが発展成長する事を切に願います(敬礼)
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
企業分析リンク
www.freelance-no-excelyasan.com