企業分析アナトールの株式投資

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【4666】パーク24~有価証券報告書の読み方~

結論

財務弱し、企業体質も疑問

 

目次

 

事業概要

先ずはパーク24の事業についてです。

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パーク24は持株会社で、その傘下には連結子会社94社、関係会社1社という大所帯です。しかし、やっている事はシンプルで、駐車場事業国内、駐車場事業海外、モビリティ事業の3つです。駐車場事業は国内外で分けているだけで、やっている事は同じですから、実質2つですね。

駐車場事業は、簡単に言えば土地の所有者から土地を借りて駐車場を作って人に貸したり、既にある駐車場を管理したり、自前で土地を買って駐車場を作って収入を得るビジネスですね。

一方でモビリティ事業はレンタカーやシェアカーのサービスで、駐車場事業の駐車場に車を常駐させて契約者に貸すビジネスですね。

 

セグメント売上(業種ごとの売上)の状態も確認します。

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駐車場事業が国内海外を合わせて全体の73%、モビリティ事業が27%を占めるようです。しかし駐車場事業は前年対比で3%ほどしか伸びていないのに対し、モビリティ事業は17%伸びています。規模が小さいという事もありますが、今後モビリティの割合が増えてくるかもしれません。

 

 

 

業績推移

業績を見てみると、ちょっと微妙です。

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一見売上高は右肩上がりなのですが、経常利益率で見てみると、10.3%⇒10.9%⇒8.7%⇒7.5%⇒6.8%と、どんどん下落しています。

これは売上成長こそしているものの、質が落ちてきている事を意味します。

理由の一つとして、以下が考えられます。

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同社は目標とする経営指標を経常利益成長率と述べています。
つまり同社の方針として、サービスの付加価値率ではなく、絶対額としての経常利益の成長、すなわち規模を基準においてしまっているのです。

これは実は結構マズい体質です。

具体的な例を挙げてみます。

もし私が営業マンだったとして、経常利益だけを会社が求めていたなら、ガンガンサービスの値を下げて薄利多売します。何故ならその方が良く売れますし、会社から求められている利益の絶対額を稼ぐ事ができるからです。

しかし、薄利のサービスで売上が伸びると、対応するための固定経費も増えます。

経常利益の絶対額が増えるのは良いが、それ以上に売り上げがどんどん伸びているので、利益率はどんどん下がる。

そんな時に一度何らかの理由で売上が落ちると、そうそう固定経費は削れませんから、会社は一気に赤字に転落します。

つまり、質ではなく量だけを求めると会社は体質が脆弱になるのです。

今まさにコロナショックで同社は赤字に転落していますが、その要因はこうした体質にあるのではないかと私は推測します。

 

 

 

キャッシュフロー

キャッシュフローの推移を見てみると、フリーキャッシュフローが結構ぎりぎりで、期によっては大幅に赤字を銀行から借り入れて補っていますね。

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一応投資活動によるキャッシュ・フローが定期預金や有価証券の購入という、なんちゃって投資ではないかを確認します。

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やはり有形固定資産の取得ですね。つまり、同社は紛れもなくフリーキャッシュフローがカツカツの状況にあります。

 

 

 

B/S(貸借対照表

今度は資産状況の確認です。

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資産の75%が固定資産です。

さらに固定資産の中の65%を占める有形固定資産は、すぐには費用化されず、固定費として毎年費用化される資産です。この費用は売上が上がろうが下がろうが確実に発生しますので、売上が下がった時などに都合よく削ることはできません。つまり、資産の中で有形固定資産の割合が高い会社は、不景気に弱い体質であると言えます。

また、無形固定資産「のれん」というものがあります。「のれん」は会計上「超過収益力」などと呼ばれたりしますが、現実として何か目に見えるものがあるわけではなく、ただ会計上の概念です。本当の意味での「超過収益力」である保証はどこにもありません。

よって、B/Sに「のれん」がある会社は、帳簿上にいつ損失になるか分からない、「のれん」という名の爆弾を抱えていると思った方が良いと思います。

ちなみにこの爆弾、374億円なのですが、今のパーク24の純資産は908億円です。

資産の評価減は直で純資産から消えますから、のれん爆弾が炸裂したら純資産の41%が消し飛びます。レバレッジの怖さはここにあります。

 

負債の方も有利子負債がかなり多いです。

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有利子負債を全部合わせると1,238億・・・現預金249億、営業キャッシュフローが450億ほどの会社が、です。投資キャッシュフローをゼロにしても返済に3年くらいかかります。借り換えを続ける自転車操業状態です。

ちなみに新株予約権社債とは、一定の条件で発行体の企業の株式に転換できる権利が付いた社債のことです。ただ、一定の条件を満たさない限りは有利子負債には違いありません。

 

 

 

まとめ

実をいうと、数字を見るまで私はパーク24の将来はかなり有望ではないかと思ってました。

レンタカーやシェアカーを使う時にネックになるのは、車を置いておく場所と、その場所に行くまでの移動手段です。従来のレンタカー屋さんは駅前や空港に店舗を構えて、電車や飛行機でやってきた人に車を貸したりするのが一般的でした。

しかし、今パーク24は駐車場業界でシェアがダントツのトップで、どこに行っても駐車場があり、貸す車を置くことができます。

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参考:https://gyokai-search.com/3-parking.html

そうなると、駐車場事業とモビリティ事業、二つの事業がうまく相乗効果を発揮でき、モビリティ事業が今後大きく発展するのではないか、と。

しかし・・・やはりちゃんと数値は見ておいた方が良いですね。

結論から言うと事業の将来性とか以前に、体質的に危うい会社です。

イケイケどんどんで成長したは良いが、効率度外視だったツケをここから返していく必要があるかもしれません。

もしかすると、今回のコロナショックは一時的なもので、早々に立ち上がるかもしれません。ただ、それ以前から利益率が悪化しているのは、体質的な問題です。その体質ゆえに貸借対照表のあちこちに危うい兆候が出てきてます。

利益率にフォーカスした取り組みや抜本的な体質改善をしなければ、これからもずっと苦しむことになるのではないかと思います。

 

 

 

補足:復活するための具体案 

ただ批判だけする評論家になるのもいかがなものかと思うので、現状を打開する具体案を出してみます。

①方針の変更

とにもかくにも、社員に対して利益体質を変化させる重要性を説かねばなりません。経常利益の増益幅ではなく、売上高経常利益率を一定の水準に定め、きちんと管理させるべきだと思います。

②事業のリストラと統合

冒頭に書いてありましたが、事実上たった二つの事業しかしていないのに、子会社が94社もあるのは明らかに異常です。維持管理するための管理コストも決して馬鹿にならないでしょうし、サービスの連携も取りにくい筈です。何よりマネジメントが全体像を把握できないと思います。

中には不要な事業、採算の合わない事業が必ずあると思うので、自前でやるべき事業と、他社サービスで代用できる事業を一旦すべて整理、統合すべきだと思います。

③不要な資産の削減、廃棄

今資産として計上されているものの中には、既に価値がなくなっているものもあるかもしれないので再点検します。既に価値が無いと思われるものをとっとと廃棄処理して損失計上します。そうすれば少なくとも法人税の支払いが減り、キャッシュアウトが減ります。

④資産の流動化、現金化検討

保有している有形固定資産に駐車場のような投資資産となり得る資産があるのなら、REITのように証券化する方法を検討します。そうすれば有形固定資産を現金化して負債を圧縮する事ができるし、将来的にはリスクが低く、利益率の高いコンサル系ビジネスへと転換する道も開けます。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

www.freelance-no-excelyasan.com