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【3733】ソフトウェア・サービス~有価証券報告書の読み方~

結論

事務所建設より従業員の給与を上げてあげて欲しいかな、と。少なくとも事務所建設は最優先事項ではないと思う。

 

目次

 

事業概要

まずはソフトウェア・サービスの事業についてです。

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ソフトウェア・サービスの事業は医療情報システムの開発・販売・導入です。

先ず社名が凄いと思います。今でこそソフトウェア・サービスなんて、ありきたりな名前のようですけど、それはMicrosoftWindowsが登場した以降の話で、Microsoftの設立は1975年です。日本であれば「ソフト」の名は「ソフトバンク」が有名ですが、ソフトバンクですら設立は1981年です。

ソフトウェア・サービスの設立は1969年で、巨大「ソフト」企業2社よりも前に登場しています。ソフトウェアの隆盛を予期してのこの名前であれば、創業者の先見の明は凄いと思います。

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このシンプルな事業概要説明と合わせて、かなり体質に期待できそうな気がします。

 

 

セグメントの状況

セグメントは医療情報システム事業のみのようです。

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売上高をソフトウェア、ハードウェア、保守サービスの3つに分類しているようです。

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しかし、企業名にソフトウェアを持ってくる割にハードウェアの売上が多いです。自前でハードウェアを作っているのであればまだ良いですが、仕入れて売るという卸売りのビジネスは利益率が低くなりがちです。

同社の場合は仕入先から仕入れて売っているようですから、利益率は低いでしょうし、その売上が半分を占めるのであれば、全体の利益率はあまり良くないかもしれません。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は18.8%⇒16.3%⇒18.2%⇒20.8%⇒17.5% 

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普通の事業であれば十分な利益率ではあるのですが、ソフトウェアの会社の基準で考えるとあまり高くありません。ちなみにこれ、もしかするとちょっとした事で利益率を爆上げできるんじゃないかな、という気がします。

ここ数年で、明豊ファシリティーズという会社は経常利益率がぐっと上がってます。これは勿論企業努力もあるのでしょうが、理由の一つにフィーだけを受け取る契約方式の売上を増やしたことがあります。

同社の仕事は企業さんの工事発注を代わりにマネジメントする事業なのですが、契約によっては工事の請負代を肩代わりしなければならず、売上が大きく膨らみ、売上高利益率が悪くなっていました。

これをあくまでアドバイスだけ行う契約にしてフィーだけを受け取る形にした結果、利益率は大幅に上がりました。

ソフトウェア・サービスのハードウェアの販売でそれができるかどうかは分からないですが、同社がやっている事が単なる斡旋ならば、やり方次第では斡旋手数料のみの売上計上できるのではないかと。(勿論、監査法人とは要相談ですが・・・)

これは単なる見せ方の問題ではありますが、利益率だけでソートする投資家もいますから、少なくとも株主の心証は良くなるのではないかと。

 

 

 

経営方針

目標とする経営指標は「売上高経常利益率」のようです。

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付加価値率を基準にするのは悪くないと思うのですが、現実としてあまり達成できていないように思います。単に目標に掲げるだけでは意味が無く、そこに至る方法も考える必要があると思うのですが、よほど具体的な戦略が無ければ目標との10%のギャップを埋める事はできません。

そもそも何故30%が適当だと思うのか、という部分も深堀して欲しい気がします。

また、上位3社以内の位置づけを維持、とありますが、選択と集中の観点から言えば一位を目指せないビジネスは撤退した方が良い、というのが一般的です。これは単なる精神論ではなく、論理的な帰結だと思います。

そもそも3位以内で良いというのは、経営側が自社のサービス、製品が何らかの理由で顧客にとって最善の選択にはならない(もしくは差別化できない)という事を認めている事になります。本来顧客に販売するのであれば、自社製品サービスが最も優良である事を示さなくては、顧客に対して不誠実になります。(他社のサービスが自社より優れているのであれば、他社のサービスを勧めるのが誠実な営業です)

勿論様々な事情で、今の段階でそれが難しい事はあるでしょう。

ただ、少なくとも経営サイドはいずれは1位になる気概でいなければ、顧客に対して不誠実なままです。

そう考えると、少なくとも「上位3社以内の位置づけを維持し」という目標設定はあまりに消極的ではないかと思います。

 

 

 

キャッシュフロー

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特徴的なのは5年前の営業キャッシュフローが赤字なのと、直近の投資キャッシュフローが赤字な事です。

 

5年前の営業キャッシュフローの赤字

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売上債権が増えた事と、法人税等の支払額によるキャッシュの減です。

利益額を考えれば、法人税の支払額にそれほど違和感はありません。

ただ、売上債権が増えるのは、売上が急激に伸びた時に多いのですが、同社の売上はそれほど伸びてません。

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一部の得意先が滞留しているのかな、と思って売掛金の相手先を見ても当然ながら医療法人相手のビジネスですから、突然滞留しそうにない相手ばかりです。

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売上対比で考えてもそんなに滞留している感は無いです。

むしろ滞留期間は短い方です。

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なのに売上債権が増えている、とすると辻褄が合わないな、と。

こういうキャッシュフローの動きの説明がつかない時、考えられるのは買収です。

会社を買収する事によって買収先の債権債務を合わせる事でキャッシュフローには奇妙な変動が起こります。

という事で注記を見てみるとビンゴでした。

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オー・エム・シィーという会社を買収しています。

会社を吸収すると財務諸表は変な動きをしますし、それまでの体質と少し変わってくるのでちょっと理解しにくくなります。

ただ、まあその後に営業キャッシュフローがきちんと入ってきているので、当時の営業キャッシュフローのマイナスは一時的なものと考えられ、体質的には問題ないと思います。

買収先としては類似の業種であり、手堅いものだと思いますし、負ののれんのおまけつきです。買収案件の質は悪くない方だと思います。

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直近の投資キャッシュフローの赤字

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有形固定資産の取得です。

内容は新東京支社の建設のようです。

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これは正直、かなりの悪手ではないかと。

当ブログはキャッシュフロー経営と安全性の観点から、固定資産や棚卸資産売掛金といった価値の不確実性の高い資産を増やすことを良しとしません。

事務所の建設はその中でも最たるものです。

デメリットはざっと考えても5つです。

第一に建設した所で建物は償却期間が長いので、経費に計上できる金額が少なく、法人税、固定資産税を払い続けなければなりません。

第二に経営環境の変化に応じて例えば事業所を移設するといった、柔軟な意思決定がしにくくなります。

第三に自前で維持管理をしなければならず、そのために本業とは無関係な人員を抱える必要が出てきます。

第四に自然災害による影響や、土地建物価格の下落リスクを常に抱えることになります。

第五に事務所からは目に見えるキャッシュフローが一切生まれません。

体質悪化は目に見えています。

この判断はちょっと。。うまくないのではないかな、と思います。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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手元資金は有価証券を合わせて57.2億円(22.6%)と、IT系にしては割合が低めですが、これはひとえに先の事務所建設によるものです。昨年時点では49.9%とIT企業らしい水準でした。

当期は事務所建設の建設仮勘定が91.7億ふえているため、固定資産が145.4憶円(57.4%)と昨年の24.4%から跳ね上がってます。

かなり足を踏み外した感があります。

今後、資金繰りにボディーブローのように効いてくるのではないかと。。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はゼロ、安定の無借金経営です。

純資産は十分ですからちょっとやそっとでは揺るがないでしょう。

 

 

 

大株主の状況&役員の状況

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ほとんど半分近くを創業者である宮崎氏とその財団基金が所有しているようです。意思決定権は創業者が握っていると考えてよいと思います。

とはいえ、役員の中に宮崎姓の方はいないようなので、親族を役員にするような、明らかな公私混同は見られないかな、と思います。

 

 

 

 

従業員の状況 

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創業が1969年の割には従業員の平均年齢が若く、勤続年数が短く、給与も業種の割に少ないです。ITでしかも医療系だったら給与ももっと多くして良いと思います。

従業員の取り扱いに関する情報があまり有報上では見つからなかったので、同社のHPを見てみると、創業スピリットというのがありました。

創業スピリット4 | 電子カルテ、医療情報システムの開発・販売 - (株)ソフトウェア・サービス

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う~ん・・・正直初任給として高い水準ではないですね。。

年俸制という事は残業代とか賞与込みでそれという事ですから。。

さらに読んでいくと

創業スピリット5 | 電子カルテ、医療情報システムの開発・販売 - (株)ソフトウェア・サービス

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人材の採用・育成を増強しているため本店・本社ビルも自己資金で建築したそうです。

私は人材の採用・育成を強化するのに本店・本社ビルの建設は無関係で、そのお金で年収を上げた方が、少なくとも今いる従業員は喜ぶし、勤続年数も伸びるんじゃないかな、と思います。

 

 

 

まとめ

何となく名前とかで期待値が高かったのですが、体質はあまり好きな感じではなかったです。目標としている利益率も達成できていませんし、あまり近づける具体案もないような印象です。給与が高いために利益率が低いのであれば、従業員に対する先行投資なのかな、と思えますが決して高い水準ではありません。

ここ10年で従業員をかなり増やしているようなので、平均勤続年数が引き下げられるのは致し方ないのですが、これだけ従業員を増やしてビジネスの質を保てるのかという点と、彼らがどんどん高齢化していくにつれて、モチベーションを保てるだけの給与を将来的に支払っていけるのかな、という気もします。

2011年~2015年

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2015年~2019年

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そう考えると今の利益率もあまり評価できる水準ではありません。

創業者の宮崎氏は日本IBM出身で、早い時期からソフトウェアに目をつけて起業したのはさすがだな、という感じなのですが、同社の給与水準や事務所建設の意思決定とかを見ると、その意思決定には疑問符が浮かびます。

財務が盤石なのでそうそう倒れはしないでしょうが、長年蓄積した資金の配分が事務所建設か、と思うと体質としてはあまり評価できない気がします。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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