企業分析アナトールの株式投資

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【6050】イー・ガーディアン

結論

財務安全性、資本効率、キャッシュフローと財務上は文句のつけようがない。経営は稲盛式の名に恥じない質。事業の将来性という意味では疑問な面もあるが、不況に対してどれくらい踏みとどまれるかを見た上で、株価が相当下がれば買いを検討したい会社だな、と。

 

目次

 

事業概要

まずはイー・ガーディアンの事業についてです。

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イー・ガーディアンの事業はインターネットセキュリティ事業です。

具体的には以下の4つ

  • ソーシャルサポート事業
  • ゲームサポート事業
  • アド・プロセス事業
  • その他事業

説明を読んでいると、事業がかなり原始的な印象。

投稿監視業務では、ソーシャルWEBサービスを運営する当社グループのクライアントに対して、当該企業の要望に応じて一般利用者から投稿されたコメント、画像、動画等が違法の可能性のある内容、個人情報、誹謗中傷を含む内容でないか、ソーシャルWEBサービスの評判、イメージ、ブランド等を損なう可能性がある内容ではないか、犯罪を誘引する内容ではないかをクライアントに代わって監視するサービスの提供を行っており、目視件数に応じて収入を得ております。

・・・

検索エンジンにて特定ワードで検索をかけ、ヒットした内容を目視します。該当の投稿(例えば、ネガティブなワードや商品に関する評判)を拾い出し、クライアントに報告いたします。

・・・

インターネットの広告媒体や複数店舗が出店するサイト・モールなどに掲載される広告・サイト上のテキスト・画像情報などに対して、景品表示法特定商取引法薬事法等の各種関連法規及び顧客の掲載基準に基づいて、その基準に違反していないかを審査する業務を行っております。

・・・

ソーシャルゲームをはじめとするソーシャルWEBサービス利用者からのメールや電話によるテクニカルサポート業務及び入退会などの問い合わせ対応等のヘルプデスク業務を行っており、対応件数に応じて収入を得ております。

・・・

インターネット上でのオンラインゲームを運営するクライアント向けにゲームマスター業務(※5)をはじめ、ゲーム内及びWEBサイト上の掲示板等の投稿監視業務、サーバ監視業務、ユーザーからの通報・問い合わせ対応業務など、オンラインゲームの運営をサポートする各種業務全般の提供を行っており、対応内容に応じて収入を得ております。

・・・

ソーシャルゲームスマートフォンのアプリ等に係るソフトウェア製品を対象に、事前にレビューを受けたテスト項目書に基づき、効率的に機種依存エラー(画像非表示、文字化け、レイアウト崩れ、文字切れなど)の問題を検証するため、基本的な動作チェックだけではなく、複合動作チェックまでを行っております。

事業としては目視チェック、動作チェック、審査、問い合わせ対応など、他のビジネスのあまり付加価値の高くない部分を一手に引き受けている印象です。

こういうビジネスは、1件1件の案件の付加価値が大きくないですからアルバイトとかパートの人とかを雇って人海戦術でやっているのではないかと。少なくとも社員に対して高い給与を払えるタイプのビジネスでは無さそうです。

一応、社員の給与を先に見ておきます。

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オペレーター(臨時従業員)の人数も凄いですが、従業員の勤続年数は短いですし、やはり年収はあまり高くありません。

単価が低いビジネスでも、それよりも低い労働単価で回転率をあげれば高収益が見込める可能性はあるのですが、当ブログの方針としてあまり推奨しません。

付加価値の低い業務というのは、最もイノベーションが起きやすく、そのビジネスが簡単に淘汰される可能性があります。

例えば目視での確認や審査や動作チェックといった作業はAIやRPAといった技術で今後無くなっていく可能性が高いです。こうした作業は人間がやるとどんなに頑張っても主観が入りますし、精度に問題が出ます。一定のルールに基づいた作業はこの先のイノベーションで生き残れるか疑問です。

さらに、労働者の給与が低いというのは、今後上げる必要が出てきたり、現状でブラックな働き方をしているリスクも懸念されます。特に現在のようなインフレ局面では労働者の労務単価は上げざるを得ないケースも増えてくるため、注意が必要です。

どういう方針でビジネスをやっているのかもチェックしてみます。

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う~ん。。ちょっと方針がフワフワしている印象です。

例えば社員がこれを読んで自社がどこに向かっているのか分かるのかな、と。

セキュリティソフト専業の企業が「We guard all」なら、分からなくは無いのです。凄いセキュリティソフトを開発するのかな、とか思えます。

ただ同社のような本業が人海戦術のビジネスモデルで、この膨大なネット空間に対して「We guard all」は社員が1万人いても不可能なんじゃないかな、と。

もしかして研究開発で何か研究しているのかな、と思って見てみますと。

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50百万円弱をWEBセキュリティ製品開発に費やしているようです。

なるほど開発分野としては方針に沿っていますが、開発費や社員の労務費単価から考えて、同社に革新的な開発を期待するのは現実的ではない気がします。

現状のビジネスの性質としてはマンパワーに依存した、人海戦術系のビジネスという印象です。

 

セグメントの状況

イー・ガーディアンの事業は、インターネットセキュリティの単一セグメントです。

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2019年度はセグメントを掲示板投稿監視事業と呼んでいたのを、インターネットセキュリティ事業に変更してますね。これは事業領域を今後も拡大する意思の表れなのかな、と。

方針にも記載がありますし。

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事業領域の拡大は評価が難しいもので、企業の信念とかコア事業の考え方がしっかりしていて、そこに沿った事業拡大は好ましいのですが、ここまで読んだ中ではイー・ガーディアンのコアは良く分からないな、と。仮にコアが無い状態で事業を拡大すると、事業グループとしてのリスクとなる事が多いので注意が必要です。

ちなみに業績分析の所でサービス別売上が載ってたので書いておきます。

ソーシャルサポート:34.0億円(前年比37.4%増)

ゲームサポート:24.9億円(前年比1.1%減)

アド・プロセス:10.1億円(前年比20.2%増)

その他:9.5億円(前年比34.7%増)

ソーシャルサポートは動画領域の投稿監視とかが伸びているみたいです。確かにコロナ禍も相まってYouTuber人気が凄いですからね。

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アド・プロセスとその他の事業の伸びは、これが続くものなのか、それとも一時的なものなのか良く分かりません。

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方向性としては人海戦術にせざるを得ない作業を開拓、引き受けして、比較的安い賃金でマンパワーをかけて対処する感じなのかな、と。

 

 

 

業績推移

利益率の推移は14.5%⇒16.6%⇒17.8%⇒18.4%⇒17.6%

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売上は大きく伸びており、それに伴い利益率も向上しています。

この利益率はビジネスの印象に比べるとかなり良いです。

数値を見ていて思いましたが、人材派遣系のPLに似ている気がします。考えてみると、このビジネスは本質的に特定の分野に特化した人材派遣に近いのかな、と。自前でビジネスをするというより、他社のビジネスの付加価値の低い部分を請け負って作業するイメージ。

人材派遣系のビジネスもそうですが、こういうのって競争力強化とか差別化が難しいビジネスで、景気の動向に業績が結構ふれそうな気がします。実際ここ数年でグーンと業績が伸びてますが、不景気になった時にどこまで下がるかが気になります。

同社の場合は契約社員が多そうなので、売上が下がってもその辺りの人件費を切って固定費を抑えたりと対応はできそうですけど・・・あんまりあからさまな事をやるのも外聞が悪いのでその辺りを上手くやれるのかは経営者の手腕が問われるだろうな、と。

不景気にどんな対応を取るのかを見ないと、経営者の手腕は見えない気がします。

 

 

 

財務指標

指標は特定の指標を見ている感じはしません。

通り一辺倒のことしか書いてません。

確かにビジネスの構造自体はシンプルで、仕事の受注をより多くして、人を安く、多く集めれば収益が伸びるので複雑な分析はあまり意味が無い気がします。

在庫・固定資産は必要ないでしょうから、分かりやすいといえば分かりやすいビジネスモデルですね。

 

 

 

キャッシュフロー

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営業CFは良い感じに伸びてます。

ビジネスモデルからするとほとんど投資は無さそうですが、それなりにあります。

直近の内訳を見てみます。

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直近は有形固定資産の投資と差入保証金が増えているという事は、新たな事務所でも開設したんですかね。見てみましょう。

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どこなのかはここでは具体的に載ってないので、業績の解説を見てみると、動画市場の拡大に対する生産体制強化のため、新宿サテライト及び広島センターの2拠点を開設とのこと。

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ついでに前年の子会社株式の取得についても書いてありますね。グレスアベイルというクラウド型セキュリティ系らしいです。研究開発のアレですね。

戦略としては動画業界など、マンパワーの必要な業務を請け負うのをコアとしつつ、コアで稼いだお金をセキュリティの観点からクラウド型セキュリティなどの分野にも少しづつ投資していく、というスタンスですかね。投資額も営業CFから見れば十分許容範囲内な気がするので、無茶な印象は無いです。

経営の意思決定としては妥当な気がします。方針にも沿ってる感じがしますね。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現金及び同等物が34.8億円(61.7%)と十分な水準です。

売上債権の金額は9.8億円(17.4%)で滞留は45日ほどです。問題ありません。

有形固定資産は5.2億円(9.2%)で全然許容範囲ですね。

内容は日本全国にある事務所です。

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地味にあれ?と思ったのが、連結BSの土地が1.5億なんですけど、主要な設備投資の中の子会社の土地は2億なんですよね・・・。なんでなんだろ??連結の時に特殊な処理してんのかな・・・?こういう結果になる会計処理に心当たりがないですね。

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EGテスティングサービスは2019年に組織体系がごちゃごちゃしているので、その辺りの影響なのかな、という気もしますが、ハッキリとは分かりやせん。。

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全体からすれば大きな額ではないのでスルーで良いと思いますが、仕事柄数値が整合してないのが気持ち悪いので、理由が分かったら追記します。

のれんが1.6億(2.8%)ほどありますが、全体から見れば軽微ですね。先のグレスアベイルの買収分かな、と。

資産欄は極めてリスクの少ないBSですね。

 

負債、純資産を見てみます。

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直近では有利子負債はゼロになってますが、昨年までは0.8億円と多少借りてます。なんとも中途半端な額を借りてるから違和感ありますが、単体決算のBS見てみたら有利子負債ゼロだったので、これは多分昨年から連結対象になったグレスアベイルの借入でしょうね。会社としては借入とかはしないのが原則なんじゃないかと。当期で子会社になったグレスアベイルも一瞬で有利子負債を完済している所からも、銀行借入とかはしないポリシーなんでしょうね。キャッシュフローもあんまりムダ金使っている印象がなかったので、金周りはキッチリしている印象があります。

珍しいと思ったのは役員株式給付引当金という勘定ですね。

注記を見るとおそらく以下が関係しているのかな、と。

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退職時に交付されるという性質から役員退職慰労引当金の株式版なのかな、と。

任期内でも売却可能なストックオプションよりも長期的な視点で良いですね。

金額にも寄りますが、こういう長期的な給付の仕方ならストックオプションも悪くないかもしれません。

純資産は43.3億円(76.7%)とかなり高水準で堅実な印象です。

 

 

 

従業員の状況、役員報酬

従業員の状況は先に見ているので割愛します。

一方、役員はどうかと言うと・・・

f:id:umimizukonoha:20211008015045p:plain1人当たり平均37.4百万円ほどです。結構貰ってますね。。

創業家とかだとちょい嫌味ですが、役員の顔ぶれ見ると創業者とはちょっと違う印象です。

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内部取締役の三人はいずれも独特の経歴を持ってて創業家とかでは無さそうです。

調べてみると社長の高谷氏は創業者でこそないのですが、実質的なオーナー社長のようです。

ネットの投稿監視国内最大手の企業であるイー・ガーディアン。現在ではカスタマーサポートやゲームサポート、加えて最先端の技術である人工知能型画像認識システムを使って様々な違法画像の検出も行っている。社長の高谷康久氏は同社を2010年に上場させたのだが、それまでには思いもよらぬ道のりがあった。

あなたが大企業の管理職だったとして、ベンチャー企業の一部門を買って経営しないかと持ちかけられたらどうするだろうか。尻込みしてしまうだろうか、それとも思い切って買うだろうか。高谷康久氏の決断は「買う」だった。

その打診があったのは、高谷氏が京セラで課長として勤めていた時のことだ。高谷氏は京セラとKDDIが共同設立したデータセンターの立ち上げや携帯コンテンツの EZweb の作成、そのコンテンツプロバイダーとの折衝に携わっていた。

「取引先の会社の経営者の方から、コンテンツ事業を売却する予定なのだが、相手先の会社がサイトのチェックや監視をする事業は買わないので引き継がないかと声をかけられたんです」

高谷氏は密かに起業への憧れがあることをその経営者に話していたというが、普通なら売却先として声をかけるのは法人が多い。まだサラリーマンだった高谷氏個人に声をかけるのだから、よほどベンチャーの経営者としての素質を見込まれたのだろう。

大手企業の課長からMBOで上場ですか・・・夢がありますね。。

というか京セラ、という所でピンと来ました。

この手堅い経営は稲盛流経営ですね。。優良企業は稲盛流多いな。。

もはや稲盛流は経営保証のブランド化ができそうですね。。

 

 

 

大株主の状況

社長である高谷氏が7.74%を保有しています。

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高谷氏が実質的なオーナー経営者という事ですが、割合としてそれほど持っているわけではないです。そうなると気になるのは創業家なんですが、沿革を見ると夏目三法氏が創業との事。

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どんな方なのかと調べてみると色んなIT関係の事業を立ち上げている連続起業家ですね。この方が高谷氏にイー・ガーディアンの前身企業を売却したわけですね。。

夏目三法 - Wikipedia

連続起業家であまり一社の経営に固執しそうにないタイプなので、現イー・ガーディアンの経営に関わりそうにないな、という印象です。

ガバナンスリスクになることはないかと。

ただ、個人的に「うえ?」と思ったのは以下。

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フリーアナウンサー夏目三久さんのお父さんなんですね。

夏目三久さん、怒り新党の時から育ち良さそうな人だな~とは思ってましたが、お父さん有名な実業家だったんですね。なんか納得。

 

 

 

株主還元

還元については明確な指針が無いようです。

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しかし、稲盛経営なら多分還元もキッチリ考えているのだろうな、と。

ROEと配当性向を見てみます。

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配当性向はそんなに高くないですが、業績が順調に伸びているのでROEが非常に高水準ですね。20%超を5年続けるというのは中々凄いです。配当性向が変わらずとも、利益が増えている筈なので株主の手元に来る配当も順調に伸びている筈です。

これだけのROEであれば内部投資に使っている、というのも信用に足ります。

高い純資産比率、安全性の高い資産リスト、安定のフリーキャッシュフローという安定性の上での高ROEですから、財務上は文句のつけようがありません。

 

 

 

まとめ

財務安全性、資本効率、キャッシュフローと財務上は文句のつけようがないです。経営は稲盛式の名に恥じない質だと思います。事業の将来性という意味では疑問な面もありますが、株価が相当下がり、不況に対してどれくらい踏みとどまれるかを見れば、買いを検討したい会社だな、と。

一点、読者の方に注意いただきたいのは、当ブログは数値を読み解く手がかりとして事業内容は読んだり、持っている知識で事業リスクを指摘したりはするんですけど、正直その部分は当てにはならないです。私は単に財務数値をある程度読めるというだけで、その業界に精通しているわけではないですから、業界特有の性質分析とか先行きとかはあまり当てにしないでください。これはどんな分析でもそうですが、未来の予想ほど当てにならないものはないです。

あくまで当ブログの趣旨は過去の数値の動きから経営者の質や企業の質を推し量る事で、虎の子のお小遣い運用を任せるに足る優秀な経営者、企業さんを探そう、というものです。

業界の先行きとかが分かるくらいならむしろ私自身が起業してますからね。。

その点はご了承ください。

 

本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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