企業分析アナトールの株式投資

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【9436】沖縄セルラー電話

結論

沖縄の「有料の橋」に近い会社ではないかと。KDDI流、というか稲盛式の雰囲気を感じる数値管理は脱帽。長期で推移を追いかけながら、安値で拾っていきたい会社かと。

 

目次

 

前置き

沖縄セルラー電話は後の調査予定でしたが、読者様にリクエストされたため、前倒しで調査します。

 

事業概要

まずは沖縄セルラー電話の事業についてです。

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f:id:umimizukonoha:20210911001626p:plain沖縄セルラー電話の事業は電気通信事業です。

ぱっと見でまず気づくのはKDDIの子会社なのですね。

先日調べたGunosyもそうでしたが、KDDIは色んな所に出てきますね。

さすがは経営の神様、稲盛氏の生んだ会社KDDI

KDDIは最近、イーロン・マスク氏のスペースXと提携してます。

KDDIイーロン・マスク氏が率いる宇宙事業会社、米スペースXと提携する。同社の人工衛星を使った通信サービスに国内で乗り出す。地上設備の整備が難しい過疎地でも通話やネットサービスを使いやすくする。今後あらゆるモノがネットにつながるIoTに対応して全国をカバーすれば、老朽インフラの点検や災害監視、農業など多様な用途が広がる。米テスラの最高経営責任者(CEO)のマスク氏が率いるスペースXは多数の人工衛星を打ち上げ、通信に使う計画を進めている。2021年にも通信サービスを本格的に始めると表明済みだ。日本では同社とKDDIが9月中に実証実験を始め、22年にも商用化する・・・

テスラのCEOでもあるイーロン・マスク氏は良くも悪くも話題になりやすい方です。私は米国の会社はそんなに詳しくないのでイーロン・マスク氏の経営手腕は良く分からないですが、彼にまつわるニュースは保守的な大企業は関わるのを避けたがるようなニュースが多い印象です。そういう刺激的な人が経営する会社と提携するあたり、KDDIはやはり面白い会社だと思います。

Gunosyのような新興企業に投資している事からも、失敗してもあまり文句の出ないような当たり障りない事業ではなく、KDDI独自の哲学を持った投資や経営をしている雰囲気があると思います。

そんなKDDIが親会社となっている沖縄セルラー電話

当然ながらその社風はKDDIに似てくる筈。役員の方もKDDI出身が多いですから。

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基本的に当ブログは親子上場をあまりよしとしませんが、私は稲盛氏の倫理観と経営手腕を信頼しているため、これは逆に加点評価です。おそらく手堅い経営をしているのではないかな、と。

事業の内容はそこそこに、事業に関する法規制をザーっと書いてますね。

真面目か。

ただ、沖縄セルラー電話の場合、やっている事は明らかですから、ごちゃごちゃ書く必要は無いと思いますので、事業内容そのものが少ないのは合理的です。

セグメントの状況

沖縄セルラー電話は単一セグメントですから、セグメント別はありません。

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一応製品別は以下のような資料があります。

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携帯電話サービスは通信料でしょうし、端末の販売は携帯やスマホの販売かと。

その他って何かな、と経営者の分析を見ると。

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電気契約・・・という所で思い出したのが以下の記事。

KDDIが電力小売りを元々やっているっぽいんですよね。

当然KDDIの沖縄店的立ち位置の沖縄セルラーもやっている筈。

とすればこれが「その他」のメインに該当するのかな、と。

電力小売りはそれ単独でやるのは微妙なビジネスだと思います。しかし、携帯会社は既に店舗と販売網、カスタマーサポートサービスが存在する上、電話というライフラインを売る業種という意味では性質の近い業種ですから、電気小売りに参入するのはアリかと思います。コンビニが品数を増やすような意味で。。

しかも成長速度は契約数が前期比194.6%と倍になってます。中々ですね。

売上も相当に増えてます。

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そう考えると、沖縄セルラーは携帯電話系一本から電力小売りという新たな成長エンジンを得たわけですね。既存店舗を利用すれば投資は最小限に抑えられますから、これはちょっと期待できますね。

 

 

 

業績推移

利益率の推移は18.7%⇒19.2%⇒19.6%⇒20.7%⇒19.6%

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安定事業の割に結構な利益率です。

これは沖縄というマーケットをがっちり掴んでいるからでしょうか。

ちょっと沖縄でのシェアを調べてみるとこういう記事がありました。

モバイル事業では、同社が提供するauUQモバイルの加入者数が73万に達して、県内シェアは50%を超えた。もう1つの柱であるFTTH事業も、県内光ファイバー導入世帯の約3分の1は同社の回線を使用している。全国でメガキャリア同士の激しい競争が繰り広げられているが、なぜ沖縄では同社1強なのか・・・

50%を超えるというのは中々ですね。

沖縄は人口の増えている県ですし、居住場所としてもかなり快適な所です。

1月くらいに沖縄に行ったことがあるんですけど、半袖で砂浜歩けましたからね。

この世の天国みたいでした。仕事とか引退したら冬だけでも沖縄で過ごしたい。

マーケットとしては繁栄し続ける可能性が高い地域ではないかと。

そこに集中投資してシェアを獲得しているというのは、ある意味バフェットの語る「有料の橋」の概念に近い気がします。沖縄限定ですから、そこを守るためなら思い切った手でも打てる。大手にとってはローカルとの闘いは厳しい上、得られる売上は沖縄内に限定されます。そう考えると大手企業はコスパが悪いため敬遠する市場な気がします。これは良い事業環境ではないかと。

よほどの失敗がなければこの「堀」は強そうです。

経営戦略の所にもモバイル事業のシェアが5割と記載がありますね。

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キャッシュフローを重視した高収益体質」というのも稲盛氏の考え方に近い感じがします。採算性をきっちり抑えてそうな所はKDDIJALの雰囲気に通じる所があります。

体質的にも好感が持てますね。

 

 

 

財務指標

グループの目標は営業収益、営業利益、当期純利益、フリーキャッシュフロー、それに加えて利用者動向としてサービスの純増数、ARPUですね。

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如何にもPLとキャッシュフロー重視な感じですね。これらの数値は言っているだけではなく、経営者の分析のところできっちり出してきています。

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f:id:umimizukonoha:20210911025318p:plain有言実行で良いと思います。

ただ、この辺りはここ10年ほど景気が良いので、いい成績は当然とも言えます。

景気悪化に陥った時、真っ先に警戒すべきはPLよりむしろ減損や貸倒といったBSの事案だったりします。指標のバランスを考えた時、BSに関する視点が欠けているため、BS周りのリスクは見ておく必要がありそうです。

 

 

 

キャッシュフロー

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お手本のようなFCFの推移ですね。大体投資CFを営業CFの8割以下くらいに抑えているイメージ。着実に稼ぎ、投資し、還元する。そして、注目すべきは営業CFと投資CFと財務CFを合計するとほぼゼロになる。稼いだ金を無駄に貯めず、見事に計算して使い切っている感じです。いかにも堅実な経営っぽいです。

投資の詳細を見てみます。

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なるほど。

投資は勿論あるのですが、同時に関係会社短期貸付金の支出と収入がありますね。

これはおそらく親会社であるKDDICMS(キャッシュマネジメントシステム)のような仕組みを持っているのではないかと。浮いたお金があったらKDDIに貸付、お金が足りなかったらKDDIから借入といったように、互いに資金を融通し合う仕組みの事です。

注記の所を見たらやはりKDDIとの金銭消費貸借契約ですね。

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銀行などを介した資金の融通とかは何かと大変なので、信頼のおける親会社相手で融通し合えるのはメリットが大きいと思います。

親子上場で親会社のCMSに組み込まれていると、親会社の方針次第でどうとでもなってしまい少し心配ですが、相手がKDDIならそんなに無体な事にはならないんじゃないかと。

沖縄セルラーの狙ったかのようなキャッシュフローは、ここで調整しているからだと思われます。さすがのキャッシュマネジメントですね。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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日本基準での固定配列法を見るのは久しぶりな気がします。電力・ガス会社同様ライフラインを担う企業は固定資産の重要性が高いため固定配列法なんでしょうね。

ただ、基本的に当ブログは流動資産から見ていきます。

現金及び同等物が31.0億円(2.8%)は少なめですが、先に記載の通り沖縄セルラーは余剰資金をKDDIに貸し付けていますから、関係会社短期貸付金295.1億円(26.3%)も現金同等物として扱うべきかと。合わせて326.1億円(29.1%)が現金同等物になるかと思います。固定資産の多い電話会社にしてみれば十分な水準です。

債権の金額は295.0億円(26.3%)で滞留は145日ほど。意外に長いですね。

確かに携帯端末などを売るとき分割払いする事があるので、その辺りが全体の滞留期間を長期化しているのかな、と。

有形固定資産は418.3億円(37.3%)とさすがに一番多いです。

内訳を見ておきましょう。

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子会社である沖縄通信ネットワークは主に市内線路設備を管理し、それ以外の設備は沖縄セルラーの資産のようです。特に指摘すべきところは思いつきませんね。

一応、次年度以降どんな投資を計画しているのかも見ておきます。

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ちょっと気になったセルラーフォレストビル建設投資。

不動産投資が目的であれば、本業から逸れたわき見運転となりそうな事案です。

【公式】沖縄セルラーフォレストビル|2021年11月 竣工予定

不動産事業は多角化経営の会社が始めやすいビジネスの典型なので、ちょっと警戒したくなりますが、ことこの案件に関してはそれほど心配する必要は無いのかな、と。

このセルラーフォレストビル自体は、アクセスも良さそうですし、沖縄という環境はかなりの強みだと思うので、テレワーク需要が出てきたりすると十分勝算は高そうな気がします。沖縄セルラーの理念は、「事業を通して、沖縄経済の発展に貢献する」というものですから、このセルラーフォレストビルについては確かに理念に適う事案のように思います。

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安定的な事業をしつつ、沖縄に必要と思われる新規事業を粛々と投資してる感じですね。沖縄セルラー電話に投資する事は、沖縄という県の未来そのものに投資するのと同義と言えるほど地域性に特化している気がします。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はゼロの無借金経営です。KDDIと資金融通してますから当然ですね。

純資産は943.8億円(84.1%)と高水準です。盤石ですね~。

 

 

 

従業員の状況、役員報酬

平均勤続年数も給与水準も結構高いですね。

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あ~・・・なんか私、猛烈にこの会社に転職したくなってきました。。

経理求人募集してないかな。。沖縄で働きたい。。


一方、役員はどうかと言うと・・・

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1人当たり平均21.7百万円ほどです。

そんなに高くないですね。KDDIの子会社という事もあって、あり得ないような金額設定は元々できない仕様なのでしょう。元々の会社の理念が沖縄という地域社会の発展ですから、普通の会社のようにガツガツ稼いでガツガツ報酬を出すというスタンスではないんじゃないかな、と。理念を鑑みれば十分な売上高利益率、キャッシュフローなど、実績を出していると思いますし。

 

 

 

大株主の状況

KDDI過半数を握っていますが、前述の通り私はKDDIの倫理観を信頼しているため、この辺りは問題なしと思います。

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株主還元

還元について具体的な方針は出してません。

ここの書き方は正直イマイチです。

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ただ、ここでは記載していないのですが、経営戦略の所で以下のように書いてます。

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40%超というのは悪くない率です。

堅実で純資産を蓄積する印象がある稲盛式経営の会社にしては、吐き出してくれている方なのかな、と思います。

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ROEが限りなく12%で安定していますから、多分この辺りも計算して純資産を配当で吐き出しているんじゃないかな・・・偶然じゃこんなに綺麗にならんでしょうから。すげー管理力です。。さすがの稲盛式。脱帽です。

 

 

 

まとめ

沖縄セルラー電話は、事業内容や事業環境にかなり強さを感じる内容でした。加えて稲盛風の徹底的に採算管理された感のある数値。これは信頼が置けます。

直近は電力小売りという新たな成長エンジンも加わったようですから、ここからまた業績が一伸びするのもあり得るんじゃないかな、と。

業績にとって無理のない範囲で、新規事業への挑戦も進めているようなので、沖縄経済が成長するほど、恩恵を受けられそうな気がします。沖縄の未来について楽観している方などは、長期的観点で保有するのもアリな気がします。短期売買の成否は購入株価にも寄るでしょうが、持ち続ける分には損がなさそうです。

というか、私もちょっとここに転職したくなってきました。以前沖縄に旅行に行ったときに、天国みたいな所だな~こんな所に住みたいな~と思っていたんですよね。。平均年収も悪くないですし。求人探してみるか。。

 

本記事は主に有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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