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【3804】システムディ~有価証券報告書の読み方~

結論

船頭多くして会議は踊る、といった印象。質的な課題を一つづつ潰して今後の本質的飛躍に期待したいところ。

 

目次

 

事業概要

まずはシステムディの事業についてです。

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システムディの事業は業種特化・業務特化の自社開発ソフトの提供です。

業種特化のターゲットは大別すると3タイプくらいかな、と。

①大学、専門学校、小中高校といった教育機関

ウェルネスアミューズメント施設などの民間企業

地方自治体・公益法人

こうしてみると業種に特化しているのはパッケージソフトそのものの話であって、システムディという会社自体の顧客はあまり絞り込んでいる感じはせず、結構幅広い印象です。

 

業務特化については規定管理システム、契約書管理システムなど、今流行っているペーパーレスやハンコレス系のシステムをやっているようです。

 

業種特化、業務特化をするという考え方は良いと思います。

汎用性の高い、八方美人的システムは顧客が多く魅力的ではありますが、一方でエッジが無く、顧客に絶対欲しいという気持ちを与えるのは困難です。ターゲットのペルソナを絞り込み、「この人に対する商品」というイメージを作れれば販売しやすくなります。商品戦略としては正しいのではないかな、と。

ただ一方で、システムディという会社全体としては、やっている事を絞れている感じがしません。様々なソフトがある現代、ソフトウェア開発といってもそれだけでは漠然とし過ぎている感があります。システムディという会社は一体どういうコンセプトで何を達成したいのかな、という主張がここからは見えにくいです。

 

セグメントの状況

システムディはセグメントをソフトウェア事業とその他事業に分けています。

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ソフトウェア事業:35.4億円(99.3%、利益率22.6%)

その他事業:0.3億円(0.7%、利益率59.4%)

ソフトウェア事業がほとんどですからその他事業はほとんど影響なしと考えてしまって良いと思います。

利益率22.6%という数値は一見して悪くないのですが、ここには調整額のところに入っている全社費用が含まれていません。システムディはソフトウェア事業がほとんどなので、ソフトウェア事業は全社費用を含めて考えるべきかと思います。

全社費用を含めて考えると、利益率は14.7%と、ちょっと心もとない数値です。

セグメント別を出すのであれば、システムディのような会社は、市場ごとに分けて出すべきではないかと思います。そうでなければ会社としてどこの分野に注力し、どこの分野から撤退するなど、会社としての戦略が立てられません。

サービスの種類による分類はしているのですが、正直ここから何を読み取ればいいのか分かりません。ふうん・・・で終わってします気がします。

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効率的な資源配分は経営の基本ですが、奥義でもあります。

そういった部分の分析や戦略立案がなされていないため、会社としての印象がボヤけてしまっているのではないかと。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は5.6%⇒6.0%⇒9.1%⇒11.4%⇒15.1% 

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ここ数年で利益率が上向いています。

それ自体は喜ばしい傾向ではあるんですが、結局セグメント別の情報が無いと何が理由なのかイマイチ分かりません。どのシステムが利益率が良くどれくらい売れているため、今の利益率になっているという、それなりの根拠があると思うのですが、そのあたりが見えません。

経営者による業績の分析などを見ても、定性的情報は記載されているのですが、定量的な情報が不足しています。

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これだけ読んでもやはりふうん・・・で終わってしまいます。

 

 

 

経営方針

システムディは経常利益率20%を経営指標に置いています。

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経営指標が絶対値でない点や具体的な数値を出している点は良いと思うのですが、やはりそこに至る方法が効率の改善、外注費の削減というのは、経営のスタンスとしては物足りない気がします。

効率改善、経費削減はどちらかというと現場の人間が心がけるべきことで、いちいち経営層が投資家に向けて語る話ではありません。

経営層はもっと戦略的な部分、つまり会社としてどんな姿勢で、どの分野に、どんなアプローチをかけるのかを、論理的に語るべきで、それこそが経営層の本来の役割ではないかと。

 

中長期的戦略として、今後も新規領域におけるパッケージソフトビジネスの展開を進めるという事ですが、今のまま会社としての強みとなる分野がハッキリせず、どこが儲かっているかも分からない状況をそのままに新規領域に進んでも、規模だけが拡大して経営資源が分散してしまい、体質が弱くなるだけではないかと。

 

 

 

キャッシュフロー

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ここ3年は利益率も良くなっているので、フリーキャッシュフローも順調です。

ただ、システムディはソフトウェア会社の割に投資キャッシュフローが多めの気がするため、内容を見ます。

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前年は何やら有形固定資産を買って、直近は買収をしているようです。

前年の有報を見てみると有形固定資産の購入は土地・建物の取得やパソコン購入です。

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パソコンは業種上やむを得ないとして、土地・建物も買ってます。これもあまり良くない印象です。現在のビジネスのトレンドはアセットレス経営で、実際、高収益企業はできるだけモノを持たない方針の会社が多いです。

モノを持つ事には以下のようなデメリットがあります。

①維持費がかかる

②税金がかかる

(資産税だけでなく、固定資産は経費化に時間がかかるため法人税もかかる)

③将来の価値下落リスク(減損リスク)を背負う

かつての日本のようにモノの価値が上がり続けていた時代であれば、モノを持つ経営もアリと言えばアリですが、今のように状況が刻々と変化する時代に、お金が固定されてしまうモノを持つという選択は合理的とは言えないと思います。

折角アセットレス経営のしやすいソフトウェアという業種にも関わらず、わざわざ土地建物を買おうとするというのは、経営層がインフレ期の価値観を未だに引きずっている可能性があります。

 

直近の年の買収に関してはアプシスコーポレイションの株式を取得したもののようです。

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学校業務管理システムの会社という事で、既存のビジネスと同じ分野の買収です。隣の芝生が青く見えた事の異業種買収よりは良いですが、純資産が0.15億円ほどの会社を1.2億円で買っているため1.05億円ののれんが発生してます。

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本当にこののれん分の利益を回収し切れるのか、そもそも買収する必要があったのか、前提となる学校分野の収益性が分からないので何とも言えません。

会社全体からみればこののれんの額は大きくはないですが、一つのセグメントからすれば決して小さくは無い筈なので、きちんとセグメントとしての採算を見るべきでは、と思います。

 

キャッシュフロー自体は先に書いた通り問題ない水準ではありますが、投資キャッシュフローの使い方から、若干マネジメントの考え方が不安です。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現金及び預金7.1億円(17.3%)は結構少なめです。

IT系は比較的現金預金を積んでいる事が多いのでちょっと意外です。投資キャッシュフローの時に触れたように、モノに投資する経営陣なので、有形固定資産が多いためかもしれません。

一応フォローすると、現金を持たない事は一概に悪い事ではありません。

現金預金が多いというのは、有事の際の安全性という面では高評価ではありますが、一方で資金を効率的に扱えていない、とも取れます。

ただ、資産の部で最もリスクが低い資産は現預金であり、その比率が低いという事は、他のリスクの高い資産が多いという事です。つまり将来的に減損損失のリスクが高いという事ですから、その点は特に注意して見ておく必要があります。

受取手形売掛金も9.0億円(21.8%)で滞留期間は92日と大体3か月ほどです。一般的な水準でそれほど違和感はないです。ただ、投資その他の資産に破産更生債権等という項目があるため、過去に貸倒れも発生しているようです。

システムディの得意先は貸倒れそうにない教育機関や公的機関もありますが、最近コロナで大きな影響のあったウェルネス施設、アミューズメント施設もあるため、その辺りの支払がきちんとされないと、これから債権の回収期間が長くなり、貸倒というリスクも高くなってくるため、注意が必要です。

次に有形固定資産ですが、7.5億円(18.3%)と普通のIT企業とは違ってけっこうな割合を占めてます。原因は土地です。有形固定資産のうち6.0億円が土地で、この分は償却もされないので経費化されず、法人税と資産税を払い続けるため、資金繰りを苦しくする最大の要因です。しかも少子高齢化が進む日本においては価値が下落するリスクも高いため、将来的な減損リスクも孕んでいます。

先に書いた通りのれんも1.4億円抱えています。当ブログでは会計上ののれんという概念をそもそも信用しない方針なので、この分は純資産から差し引いて考えます。

ソフトウェア、ソフトウェア仮勘定も10.1億円(24.5%)と結構積まれてます。同社はソフトウェアの会社なので在庫にあたる部分で、3年ほどで費用化されます。

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つまり3年以内に売上で回収できれば良いですが、回収の見込みが立たない場合は減損損失のリスクがあるため、これもまた不確実性リスクの高い資産になります。

という事で、売上債権、有形固定資産、在庫(無形固定資産)、のれんの合計額28.0億円(67.9%)の部分は一般的に不確実性リスクの高い部分なので、貸方の純資産と見比べてリスクを判断した方が良いと思います。

 

最後に、上場企業ではあまり見かけない「保険積立金」3.6億円(8.8%)という勘定がありました。

私は仕事で見たことないですし、有報でも初めて見たし注記に説明を見つけられなかったので資産計上される保険積立金を調べてみると損害保険、長期平準定期保険、逓増定期保険あたりなのかな、と。

保険積立金とは?保険別に会計処理を解説!

ま~保険という金融商品の性質上、それほどリスクはない気がするので普通の積立金と思ってしまって良いと思います。

 

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債は2.8億円(6.8%)あります。土地を売却すればすぐに清算できてしまうのですが・・・多分やらないと思います。。資産リスクから見える資源配分方法から考えて、経営者は有り金は結構使ってしまうタイプの方ではないかと。

純資産が25.4億円(61.6%)それなりではあるのですが、不確実性リスクの高い資産リスト28.0億円を並べて考えると、盤石というほどではないかな、と思います。

 

 

 

役員の状況

ちょっと気になったのが役員の状況です。

先ず規模の割に役員の人数が13人は多い気がします。

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最高意思決定機関の人数が多いというのは地味に厄介です。

外部からではその内実を推し量る事しかできませんが、船頭多くして船進まず、になるケースが多いです。

取締役というのは全社としての方向性を決める人たちであり、会社としての全体最適を模索するのが仕事です。場合によっては全社ポリシーから、どこかの事業から撤退する、といった判断も必要になります。

なのにその役割の中に各事業部の代表が居並んでいては、当然撤退する事業の代表は異論を唱えます。

取締役会は多数決制ですから、人数が多くなると自らを守るために社内政治なども生まれやすくなります。そうなれば後はあちらを立てればこちらが立たず、会議は躍るばかりで一向に何も決まらない組織になってしまう可能性が高いです。


有報を読み進む中で、全社戦略的な部分が欠けているように感じたのは、こういった部分に原因があるのではないかと。各事業の集合というだけで、システムディという会社の全体最適を模索する機能が無いのかもしれません。

 

 

 

まとめ

システムディはここ数年で数値上、自己資本利益率が改善してきており、自己資本比率も良くなってきています。

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それ自体は素晴らしい事なのですが、バランスシートをつぶさに見ていくと、今の段階では決して盤石という水準ではなく、まだ改善していかねばならない課題は多そうな気がします。

今は先ず現状をセグメント別に分析し、会社としての課題を明確にする事と、そこに対して全社としてどうアプローチしていくのか、戦略を明確にし、粛々と実行していく仕組みづくりではないかと思います。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

 

企業分析リンク

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