結論
財務優秀、利益体質微妙。
孫正義帝国をどげんかしてほしい。
目次
事業概要
まずはバリューコマースの事業についてです。
同社のメインビジネスは2つのようです。
①成果報酬型広告「アフィリエイト」
②ECソリューション事業
成果報酬型広告「アフィリエイト」は、ブログをやっている人なら結構ご存じの方が多いと思いますが、ASPサイトの運営です。つまり、インターネット上で広告を出したい会社と、ブログや優良サイトを持っている人を仲介する事業です。
ブログや優良サイトにバナーなどを貼り付けてもらい、誰かがバナーをクリックして売上実績が立ったら広告主から広告料を徴収し、ブログ、優良サイトの所有者に所定の宣伝料を支払い、仲介手数料を貰います。
ある程度の認知度になればかなり手堅いビジネスかと思います。
認知度についても一応確認しようと思います。
確認と言ってもGoogle検索で「ASPサイト」を検索するだけですが。。
「アフィリエイト広告サイト」おすすめ17選|評判が高いASPを紹介 | よかぽーと
トップに出てきた上記サイトによると・・・
ありましたね。しかも絶対に登録すべきASP認定です(やべ、ウチしてない)
へ~そうなんだ~という感じです。
今のご時世、特にこういうネット関係の事業はGoogle検索のキーワード上位に入ってこなければ、生き残れないと思います。Googleで出てこないサービスはそもそも認知されません。その点、バリューコマースは絶対登録すべき3社に入っているわけですから、十分優位な位置にいるように思います。
少なくともブログ始めた時にこの記事見たら私は、とりあえず登録しとこうかな~と思います。
次にECソリューション事業です。
ECソリューション事業はECサイト上でのマーケティングサポートをする事業みたいです。サービスツールとしてはCRMツール、クリック課金広告と代表する2つがあり、主にヤフーが管理しているオンラインモールのECサイトに対して提供しているようです。
バリューコマースはヤフーの親会社であるZホールディングス傘下の会社ですから、ヤフーとは兄弟会社、といった所でしょうか。
資本関係のある会社との取引は、競争が排除されており、競争力に信用ならないため、ECソリューション事業の業績はあまり信用しない方が良いかもしれません。
セグメント別
セグメント別を見てみます。
マーケティングソリューション事業:66.3%(利益率16.9%、売上成長110.8%)
ECソリューション事業:33.7%(利益率39.2%、売上成長160.5%)
売上の2/3がマーケティングソリューション事業ですね。
残りの1/3がECソリューション事業で利益率が40%に届きそうな水準です。
合わせてざっくり20%くらいの利益率といったイメージでしょうか。
ただ、前述の通りECソリューション事業は兄弟会社であるヤフーの事業に乗っかっている事業なので、まっとうな競争にさらされていない可能性もあります。
つまり、上位会社の方針次第で利益率が悪化するリスクも考慮する必要があると思います。
一応の競争にさらされているマーケティングソリューション事業程度の利益率(16.9%)くらいが同社の実力と考え、ECソリューション事業の利益はボーナス程度に捉えておくのが安全かもしれません。
業績推移
経常利益率の推移は9.9%⇒5.7%⇒13.4%⇒18.3%⇒19.4%
ずっと継続して利益率が良いわけではなく、ここ2年で少し伸びてます。
2年前のセグメント別を見てみるとわかります。
今のセグメント別と比較すると分かりますが、当時のCRM事業、今のECコマース事業が伸びている事で急速に利益率が向上しています。
ただ、先も書いた通り、この部分は兄弟会社ありきの取引であり、兄弟会社のおこぼれを貰っているだけという可能性も考えられます(あくまで可能性です)から、体質の良化として評価はできません。それを除いた利益率、或いは4、5年前の一桁利益率を実力と見ておいた方が、安全かと思います。
経営方針
経営指標は売上高と営業利益の増加率の向上、すなわち絶対値評価です。
というか、経営効率を重視しているのに何故売上高と営業利益の増加率なんでしょうか。経営効率を重視しているのなら、先ずは営業利益率やROEの向上に努めるのが普通です。なんというか、財務にあまり興味ない人がそれっぽい事言っている雰囲気を感じます。
キャッシュフロー
手元資金は十分ですが、投資キャッシュフローの推移が安定していません。営業キャッシュフロー以上に投資している年もあれば、逆にプラスになっている年もあり、ルールのようなものが感じられません。勿論投資というものは、一定のルールに沿っていれば成功できるというものではありません。しかし一定のルールを守れば、景気変動や予期せぬトラブルへのリスクヘッジになります。
自分が稼げるキャッシュ以上の投資をする経営者は、時として大きな利益を得ることがある一方で、ほとんどの場合は自滅します。
同社は少なくとも直近3年はフリーキャッシュフローが黒字ではありますが、その金額の振れ幅を見る限りでは、管理がされていないため、いつまた気まぐれでキャッシュフローが赤字になっても不思議はありません。体質としては良くないと言えます。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現預金は78.6億円(43.7%)と十分かと思います。
気になるのはやはりのれんと投資有価証券ですね。
のれんは直近でダイナテックという会社を買収しているため、12.7億円膨らんでいます。この分は純資産から差し引いて考えます。
一つ優れている事は、償却方法を5年間での均等償却にしているところですね。
(日本基準を採用している所では多いんですが、IFRSはしないですから)
のれんは日本の会計基準では1年~20年の間で償却する事が定められています。これはのれんという極めて主観的な数値に恣意性を介入させず、損益に反映させるという意味で非常に優れた考え方だと思います。
私はバランスシートに不確定なものが載せておくのは絶対に良くないと思うので、1年でさっさと償却した方が良いとも思いますが、のれんは税務上損金にするのが5年ですから、会計処理上もそちらと整合をとっているのでしょう。(ここで差が出ると繰延税金資産・負債という会計概念が出てきて色々面倒なんで、5年償却にしたくなる気持ちは経理として分かる)
投資有価証券ですが、投資事業有限責任組合出資金がほとんどですね。
個人的には事業に関係あるのかないのか分からない投資をしている会社には、投資したくないです。そもそも投資家が一企業に投資するのは、その企業の本業に投資しているのであって、ファンド運用が必要なら投資信託やベンチャーキャピタルを買うんですよね。
企業が財務健全性のために、定められたキャッシュフローを、営業上関係性のある企業の投資有価証券に回したり、インデックスファンドに投資したり、債券に投資したりする、というのは、会社運営上必要な場合も多いので問題はないと思います。
ただ、こういう投資事業有限責任組合ってそういう財務健全性の意図ではないと思うのです。そういう事は一企業ではやらないでほしいです。
どうしても経営者がやりたいなら、役員報酬や受け取った配当を使って自腹でやれば良いんじゃないかと思います。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債が無い無借金経営です。
純資産が113.3億円ですね。凄い優良財務基盤です。のれんや投資有価証券といったリスク資産を全部差し引いても余裕でおつりがきます。
よほどの事が無い限り危機的状況には陥らないと思います。
関係会社の状況
ソフトバンクグループ株式会社傘下の
ソフトバンクグループジャパン株式会社傘下の
ソフトバンク株式会社傘下の
汐留Zホールディングス株式会社傘下の
Zホールディングス株式会社傘下の会社です。
何を言っているのか分からないでしょうが、私も何を言っているのか分かりません。
孫正義閣下。
ARM売る前に、この中途半端な親子上場会社関係を全部精算して市場に売却してしまって金を吸い上げてください。多少税金はかかるのかもしれませんが、その方が市場原理が働いて傘下会社の体質強化が期待できますし、折角大金出して買ったARMを売らんでも良くなるかもしれません。
傘下会社経理が資料作成で瀕死してる姿が目に浮かぶので是非ご検討を(合掌)
まとめ
財務状態は健全です。ただ、業績数値が高付加価値率なのは、実力なのかヤフーのおこぼれを貰っているのか分からないため、体質的に優れているのかは分かりません。親子上場の会社が嫌なのはこういう所で、グループ間で利害関係が入り組んでいると、どこまでがその企業単独の実力で、どこまでがグループによるおこぼれを貰っているのか切り分けができないことです。
資本的に自立している会社であれば、経営者の考え方がそのまま会社の考え方になるため、ある意味分かりやすいです。優れた経営者かどうかは有価証券報告書を読んでいればなんとなく見当がつきますので。。
しかし、親会社がいる状況では経営者の考えが分かったところで、常に通るかなど分かりませんし、まっとうな事を言った所で、親会社の気が変わっただけでねじ伏せられてしまいます。
ましてや同社は巨大すぎる孫正義帝国の末端組織なので、そんな一部の体質を見たところで正直何も分かりはしません。というか、もはや孫氏ですら良く分かってないと思います。閣下がさっさとこの複雑な構造を精算して傘下を解き放つ事を切に願います。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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