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【4441】トビラシステムズ~有価証券報告書の読み方~

結論

財務優秀、体質不明、発展途上。

理念は変えた方が良いと思う。

 

目次

 

前置き

当分析は読者様よりリクエスト頂いた案件です。

トビラシステムズ(4441)は2019年4月に東証マザーズに上場したばかりの企業で、取り巻く環境、業績や体質が安定していません。参考にできる過去の数値サンプルがない分、この分析は(いつもよりさらに)主観的かつ推測を交えなければならなくなっている事をあらかじめ ご了承ください。

 

事業概要

まずはトビラシステムズの事業についてです。

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事業は大きく分けて迷惑情報フィルタ事業とその他事業の2つです。
ただし、その他事業は積極的展開はしない、という事を言ってますので、基本的には迷惑情報フィルタがを見ておけば良いかと思います。

迷惑情報フィルタ事業は、簡単に言えば迷惑電話番号を様々な方法で収集し、データベース化することで、サービス契約している電話にかかってきた迷惑電話を阻止、または受信者に警告する仕組みのようです。

携帯電話の普及で、電話番号は今や住所以上に重要な個人情報ですから、こういった市場はかなり莫大で、まだまだ当面は成長余地はあるように感じます。

事業の将来性への不安

ただ、内容を読んでいてちょっと懸念されるのが、今後の通信手段の変化です。事業の概要を読んでいて思ったのは、トビラシステムズが持っている強みになる情報ってあくまで「電話番号」のデータベースなんですよね。。

でも、私個人は今電話で連絡する事って減ってます。知っている人や登録済みの事業者とは通話無料のLINEを使ってます。正直、電話で連絡来ても知らない番号だとすぐには取らないです。こちらからかけると通話料金も馬鹿にならないですし。。

そんな感じで時代の流れ的には通信手段は電話からLINEなどに変わりつつあるのかな、と。その時に果たして迷惑電話のデータベースがどれだけの強みになるのか、というのが少々疑問です。

そのため、トビラシステムズは危機感を持っており、一応新規事業の展開を視野に入れているようです。

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しかし少なくとも今の段階では、あまり電話番号データベースを応用できる新規事業は無いように感じます。リスク評価をするなら、ゼロから始めるベンチャー並みのリスクを抱えていると考えた方が安全な気がします。

 

企業理念・事業方針について

私は企業理念や事業方針は経営者の考えの深さを測る指標になると思っています。企業理念はその事業の魂、アイデンティティを示すものですから、会社の精神の本質をつきつつ、同時に他社と違う部分を際立たせるものである必要があります。

「私たちの生活 私たちの世界をよりよい未来につなぐトビラとなる」という企業理念は抽象的過ぎてイマイチかと。。理念というより社名の由来で良い気がします。

続く事業方針も「誰かがやらなければならないが、誰もが実現できていない社会的課題の解決を革新的なテクノロジーで実現すること」とありますが、これもまたアイデンティティを示すには漠然としている気がします。この標語はおそらくほとんどのIT企業に共通するものですし、いちいち書くまでもない気がします。

 

参考に、ビジョナリーカンパニーとして有名なソニーの前身である東京通信工業株式会社は設立時に以下のような趣旨書を作ったそうです。

Sony Japan | 設立趣意書

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読めば創業メンバーが企業経営について考え抜いている事が、直に伝わってこないでしょうか。全部読んで行けば何となくソニーの中核となる、他社にはない精神が見えるような気がします。長いといえばその通りですが、それでも考え抜かれているためか、無駄が無く、読んでいて苦ではありません。

 

おそらくトビラシステムズはまだ事業を絞り切れていない段階であり、会社として永久に追及し続けるに足る理想や課題を見つけきれていないのではないかと思います。だから理念を文字にしようとすると曖昧になってしまう。

でも、今の従業員人数、規模ならそもそも今の段階で理念を定めるメリットは少ないです。文字で伝えるより、直接社員に創業者、経営陣の考えを説いた方が早いです。半端な理念を掲げるくらいなら今はまだ文字にしない方が良いのでは、と思います。

 

 

セグメント別

セグメント別を見てみます。

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今後は迷惑情報フィルタ事業一本に絞ると考えて利益率を出すと、利益率は70.4%!凄い、とは思いますけど、事業が一本になると当然その事業だけで本社機能の費用を負担しなければならないので、本社機能の調整額を差し引いて算出します。

利益率は39.1%でした。それでも十分な水準ではあります。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は▲16.1%⇒4.2%⇒32.5%⇒26.4%⇒40.0% 

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ここ3年は軌道に乗っているようで、非常に良い利益率で来ています。

問題は今後もこの利益率を維持できるかどうかです。

2019年4月に上場し、資金調達を行っているようですが、この使途として、インフラ増強、事務所移転、新規採用など、固定費を増やす計画を立てています。

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それ以上に売上が増えるのであれば問題ないですが、売上はそれほど伸びず、固定費だけが増えれば当然体質は悪化します。今の段階では経営者がどういうスタンスでこれに立ち向かうのかは分かりません。成長を重視して短期的に利益が減ってもスピード重視でガンガン投資するのか、それとも着実に利益を重ねて純資産を積むのか。

同社の場合、実績が少ないため経営陣が大金を前にどんな行動をするのかが読めません。今後の動向に注目したいところです。

 

 

 

経営方針

経営指標は売上高と営業利益という絶対値評価です。

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評価指標としてはイマイチなんですが、今の規模で効率を求めても仕方ないか、とも思います。現段階ではガンガン絶対値を広げるのもアリと言えばアリかもです。

 

 

 

キャッシュフロー

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無茶なキャッシュの使い方はしていないな、という感じです。投資活動も無駄に使っている感じはしませんから、直近で増資によって手に入れた5億円近いキャッシュをどうやって使うのかな、という所です。

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B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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増資したばかりですから、現預金が10.0億円(76.2%)とかなりの率を占めてます。

後多いのは売掛金ですが、滞留日数は40.7日ほどで、健全な水準です。相手先も携帯電話大手がメインですから貸倒れる心配も少ないでしょう。

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負債、純資産を見てみます。

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有利子負債が0.4億円という事で、10.0億円の現預金を持つトビラシステムズから見ればスルーで良い水準です。

純資産が10.0億円です。他に特筆することはありません。

  

 

 

まとめ

現時点で財務状態は健全です。直近の業績も悪くありません。しかしトビラシステムズは資金を調達してこれからどうする、というまさに経営者の質を問われる正念場の時期です。

同ビジネスの市場の大きさや競争の激化の可能性についてなどは、過去の安定した実績が無いため、有価証券報告書を読むだけでは、予想がつかないというのが正直な所ですね。

経営者、企業の能力は、経営に対する考え方やそれに伴う過去の結果を照らし合わせる事でおおよそ読める気がしますが、成長中の企業や、過去実績の少ない会社だと、それこそ経営者の人格、リーダーシップ、市場の規模、動向といった部分を想像するしかありません。

キャッシュフローの手堅さとかから見て、何となく財務的に慎重で思慮深い印象も受けますが、企業理念や方針の作り方を見ると、ちゃんと深く考えているのかな、という不安は否めないです。。とはいえ若い経営者、若い会社はそれすら人を得て段々と良くなっていく可能性もありますから、やっぱり何とも言えません。

その辺りの分析は業界や事業に精通してたり、実際に経営者を良く知る方に譲ろうと思います。

ビジネスの骨格を見るだけの経理屋にできるのはここまでかな、と。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

企業分析リンク

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