結論
成績優秀・・・と思いきや。特大ののれん爆弾を保持。早々に爆弾を処理してもらいたいものだが、処理するコストを考えるとそれほど業績も良くないかと。そもそも方針として処理しそうにないと予想。
目次
事業概要
まずはブロードリーフの事業についてです。
ブロードリーフの事業はITサービスとのことですが、主に自動車アフターマーケット(中古車販売事業者、整備事業者、部品事業者)を顧客とし、業務アプリケーションの開発などを行っているようです。「ブロードリーフといえばこれ」というものではなく、顧客のニーズに合わせたシステムを都度開発するスタイルではないかと。
クラウド、データ分析、データベース構築、様々な手段を使って顧客の経営をITで効率化する、というのがブロードリーフの目指す所なのかもしれませんが、目玉になる定番パッケージが無いと、いつまでもコスト削減ができませんし、顧客企業の下請け事業となってしまい、アドバンテージが取りにくいのではないかと。
また、事業の概要を読んでいると、説明が冗長で整理されていない印象です。
一般的に事業概要を読めばその会社が何をしたいのか、何を理想としているのかは、おおよそ見当がつくものだと思うのですが、ブロードリーフの概要を読んでも、ブロードリーフがどんな存在を目指しているのか、私には見えませんでした。
なので、そのもとになる理念を確認してみますと。
やはり、事業の方向性を示すには抽象的な理念です。
当ブログでは企業理念が適切かどうかを判断する境は、その企業が「やらない事」を定義できることだと考えています。
具体例を挙げると「当社はお客様に喜ばれる事業を行います」とかは、お客さんに喜ばれない事業は原理的にあり得ない(お客さんが喜んでなければ、だれがお金を払うのか)ので、あまり意味がありません。
良い例を挙げると、キーエンスの理念「最小の資本と人で最大の付加価値をあげる」とかは一見抽象的のようで実は、「やらない事」を絞れています。この理念に則ると、キーエンスは大きい資本が必要な産業(工場を持ったり、ビルを持ったり)や付加価値の低いビジネス(受託作業や転売など)はやれません。今のキーエンスのビジネスはまさに「最小の資本と人で最大の付加価値をあげる」事業と言えます。
それを踏まえてブロードリーフの理念「感謝と喜び」を考えてみます。
「感謝」は企業がすることというより人がすることで、会社が「やらない事」を示す事はありません。「喜び」は人によって違いますから、企業として「やらない事」を定義するのは困難です。
いずれも、企業としてというより個人の心の持ちようの話であり、社員が共有する事のできる企業の方向性を示す事は出来てない気がします。
こういった芯の部分が曖昧なため、事業の説明も今一つ焦点が見えない印象なのかな、と思います。
セグメントの状況
同社はITサービス事業の単一セグメントなので、セグメント別はありません。
代わりにビジネスの性質に応じて、プラットフォームとアプリケーションに分けて売上を公表しています。
説明を読む限りではアプリケーションはお客さんの言う通りに作る単発の売上で、プラットフォームはクラウドや保守といった、比較的継続性のある事業なのかな、と。
業績推移
利益率の推移は18.2%⇒15.6%⇒16.4%⇒19.3%⇒19.9%
利益率は十分優良です。
あまり特徴のあるサービスがあるようには見えないのですが、モノを持たないIT系事業の強みなのか。。この売上規模でこの利益率は立派だと思います。
経営方針
目標とする経営指標は「売上収益、営業利益、当期利益、プラットフォーム売上比率」です。
利益率ではなく絶対値での目標設定は、体質の悪化に繋がりやすいので、あまり望ましくないのかな、と。3か年計画の裏に利益率も考えているのかもしれませんが、絶対値で書いてしまうと、目標を達成したとしても体質が悪化する恐れがあります。
(例:売上が目標の倍になり、営業利益が目標通りなら、利益率は悪化する)
ただ、プラットフォーム売上比率はいいな、と思います。
プラットフォームとアプリケーションそれぞれの利益率は分かりませんが、一般的に受託型のアプリケーション作成は付加価値を生みにくいですし、一度売ったら終わりです。一方でプラットフォームは安定的な売上が見込めますし、顧客が継続使用する事で、顧客はブロードリーフに依存することになるため、アドバンテージも取りやすくなります。
プラットフォーマーを目指すという方向性は、ビジネスの質を良くする事に繋がりそうですから、良い目標なのではないかと思います。
キャッシュフロー
IT企業にしてはキャッシュフローが厳しい印象です。5年前と直近で赤字になってますし、投資キャッシュフローも妙に多い気がします。
無形固定資産の取得と投資による支出です。
自社でソフトウェアを作っているわけですから、在庫である無形固定資産が積まれるのは仕方ないとして、「投資」が多いのは少し心配です。
折角稼いだキャッシュフローを企業の買収などに使ってしまっている可能性も考えられます。
沿革を見てみると子会社化とか持分法適用とか買収にかかる文言がちらほら。。
収益性を向上させる買収であれば問題はありませんが、一般的には本当に収益性の高い企業は買収を多用しません。
収益性の高い企業は足りない能力を買収する足し算よりむしろ、付加価値の低い事業を売却するか、アウトソーシングする引き算によって収益性を高めます。
買収によって成長している会社は、「のれん」のように後からドカンと損失が生じるリスクも抱えているため、注意が必要です。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
手元資金は30.3億円(9.6%)と、かなり少ないです。IT企業にしては珍しい。。
営業債権43.0億円(13.6%)とそこそこありますが、これは225.9億円の売上から見ればそれほど違和感のある数字ではないかな、と。妥当な水準だと思います。
無形資産69.0億円(21.8%)もありますが、ソフトウェアという名の在庫があるので仕方ないと言えば仕方ないです。
問題はのれんです。。118.0億円(37.2%)って多いでしょう。。
しかもブロードリーフの場合、IFRS基準を採用しているので、こののれんが帳簿に残ったままです。
のれんはその資産価値が極めてあやふやな存在です。一応IFRS基準では減損テストと呼ばれる価値が残っているかを測る必要がありますが、はっきり言って当てになりません。
裏付けとなる未来の収益なんて分かるワケないですし、そもそもその収益がのれんのお陰である証拠など存在し得ません。
日本基準ではそんなあやふやなものを認めず1年~20年の償却処理をしていますし税法では5年での償却をします。私は日本のやり方が正しいと思います。
しかし仮に5年で償却するとなると、118億円を5で割ると23.6億円です。
税引前利益は半減して、かなり利益率は低下します。
少なくとも今の時点では将来的に起きるであろう、のれんの減損を先送りにして利益を前借している状態ですので、実質的に同社は高利益率ではないと思います。
負債、純資産を見てみます。
有利子負債は16.9億円(5.3%)とIT企業にしては珍しい借金をしています。
理由は簡単で、のれんや無形固定資産といった、リスク資産が多いために、運転資金が少ないのです。無形固定資産は業務上仕方ないとして、のれんが多いのは買収のし過ぎです。折角稼いだキャッシュを買収に使ってしまっているのでお金に困っているのだと思います。
これは今の財務状況以上に、こんな状態になるまで買収している体質が危険だと思います。
232.2億円の純資産は、絶対値としては十分に手厚いものですが、裏には118.0億円ののれんがあります。もしこのまま買収を続け、のれんが膨らむようなことになれば、決して楽観できる状況ではありません。
まとめ
成績優秀と思いきや・・・巨大なのれん爆弾をかかえており、IFRS基準なので損益上は表れていないだけで、日本基準のように小出しに損失を出していく前提で考えるとそれほど良い成績ではないようです。いわば利益の前借状態かと。
キャッシュの使い方も、荒いと思います。折角稼いだものをかなりののれんが発生する買収に使ってしまい、ハイリスクな使い方をしているように見えます。
本来は買収の行き過ぎを抑えるのは、企業の理念に立ち返ることなのですが、ブロードリーフの理念には買収の行き過ぎを抑止するだけの具体性がありません。このままでは目先の企業業績を鵜呑みにして買収街道を突き進んで行ってしまうのではないかと。
立ち返るための原点からきちんと定義しなければ、早晩収拾がつかなくなるのではないか、と思います。
あとすみません、最近本業が忙しくなってきて、仕事から帰ってきて1日1社(3時間~4時間かかる)がキツくなって参りました。多分来年1月までヤバいです。質も酷いかもですが、今も書きながらたまに意識飛んでます。。
とはいえ、できるだけブログは毎日更新したいので、もうちょっとお手軽に書ける相場記事とかも入れて、緩急付けようと思います。
記事が薄味になるかもですが、兼業弱小ブロガーの体力の限界を御理解ください。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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