結論
コロナの毒状態でダメージを受けつつ、自らが生み出した巨大なモンスター(リスク資産)と対峙している状況。。
目次
前置き
これまで有価証券報告書しか見てなかったのですが、読者様より同社の直近短信のフォローも欲しいとリクエストを頂きましたので分析します。とはいえ多分、有価証券報告書よりは薄味で大したことは書けないと思います。
前の分析
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経営成績
寿スピリッツの経営成績についてです。
これは苦しいです。。74.4%減ってかなり厳しい。。
寿スピリッツに対する私の分析結果はあまり芳しくなかったのですが、これは同情せざるを得ない。。
こんな状況だったらどんな体質の会社だって大赤字になります。
売上が▲79.1億円で営業利益が▲39.6億円なら、変動費含めているとはいえ40億円くらいのコストカットはしているわけなので、このレベルで抑えられたならまだ御の字かもしれません。あらためて飲食系へのコロナの影響の怖さを感じます。
セグメント別
セグメントも見ます。
前年同期対比売上
シュクレイ:18.4%
ケイシイシイ:39.5%
寿製菓・但馬寿:24.6%
販売子会社:12.9%
九十九島グループ:30.0%
相当苦しいです。。
ここ5年ほどで売上が170%ほど伸びていましたから、当然その売上に対応するために投資などもしてきていたでしょうが、一気にそれが裏目る形になります。
売上の伸び、規模の拡大はリスクを増やすものである事を、ここまで端的に示す例も珍しい。。
B/S(貸借対照表)
資産の確認です。
現預金は53.3億円(23.2%)と3月末より29.6億円減りました。さすがに売上が落ちた分現金収入が減ってキャッシュアウトだけの状況なのでしょう。
とはいえ、投資や経費の削減によるキャッシュアウト抑制はこれから効いてくる筈です。単純に今回と同じく毎四半期ごとに30億づつ減る、などという事は無いと思います。
当座借越枠も倍にしてますから、すぐに資金繰りに窮する事は無いと思います。
どちらかというと、直近の懸念は膨らんでいるリスク資産の方です。
商品及び仕掛品、原材料の合計は15.9億円(6.9%)とそれなりに減っていますが、売上減に対応するほどではありません。
有形固定資産はまだ減損しておらず106.6億円あります。
二つ合わせて122.5億円のリスク資産がほぼ期末の金額で資産リストに名を連ねてます。
減損していない理由としては以下。
きっと緩やかに回復するであろう、という前提。
しかし、一般的に減損処理は価値が50%が見込めなくなった場合を契機の一つとして検討するのですが、寿スピリッツの売上減のスピードはその水準を余裕でぶっちぎってます。今後もこの傾向が続くようなら減損は避けられれないと思います。
その場合、120億のリスク資産が牙をむき、純資産が削り取られます。
加えて四半期の損失が11.6億円ですから、凄い勢いで純資産が減っていく可能性があります。
毒状態でダメージを受けつつ巨大なモンスターと対峙している状況です。
負債、純資産を見てみます。
今のところ借入金には頼らず、手元の資金でどうにかしています。当座借越も準備しているようですから、とりあえず借入金に頼る必要もないのかな、という印象です。
211.6億円の純資産が187.4億円(▲24.2億円)まで削られてしまってます。
で、ちょっとあれ?と思いました。
四半期の損失は11.6億円なのに24.2億円削れている。。12.6億円はどこに。。
配当でした。
この状況で配当を出すっていい度胸です。。
これは必ず生き残れるという自信の表れなのか、危機感が足りないだけなのか。。
助成金収入が6.2億円ありますが、配当に消えてる事になりますからね(汗)
まとめ
当分析のご依頼主からは資金がどれくらいで底をつくか、という事を聞かれていましたが、正直なんとも言えないです。
大幅な売上減によって間違いなくキャッシュインは大ダメージを受けるでしょうが、経営陣も馬鹿ではありませんから、同時に経費や投資をストップすると思います。ストップできる経費や投資がどれだけあるのかは、外部から見るのは限界があります。
1Qは止めきれなかった案件が多いでしょうから、ここからキャッシュアウト抑制が効いていくと考えれば、次の期も29.6億円現金が減る、というのはないと思います。となれば、キャッシュに関しては枠を広げた当座借越でどうにか凌げるのではないかと推測します。
(この推測ですらコロナ次第の不確定な状況ではありますが。。)
どちらかというとリスク資産が減損してどこまで企業価値が棄損するのか、という所が今のところ見えないのが怖いです。仮に全損したとしても十分な純資産を持っている寿スピリッツではありますが、現状はボディーブローのように損失が出てますから、債務超過状態になる可能性もゼロではありません。
寿スピリッツはコロナの毒状態でダメージを受けつつ、自らが生み出した巨大なモンスター(リスク資産)と対峙している状況です。
本記事は短信を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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