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【4825】ウェザーニューズ~有価証券報告書の読み方~

結論

「受験突破の秘訣」とか、「効率的な勉強」の本とかばかり読んで勉強しない受験生。とりあえず具体的な体質目標を立てる所から始めた方が良いのではないかと。。

 

目次

 

前置き

ウェザーニューズは、調査リストに入ってませんが、読者様よりリクエストを頂きましたので分析します。 昔えらく優良体質だった気がしましたが、調査リストに入ってこないという事は業績が低迷してきているのかもしれません。

 

事業概要

まずはウェザーニューズの事業についてです。

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44の事業は割愛します。読みたい方はEDINETでご覧ください。

 

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う~ん、正直、かなり読みにくいです。

横文字が多いですし、その説明いる?という内容がかなりあります。一番上のカラー絵で大体事業概要は分かるので他はいらない気がします。

特に「ビジネスの仕組みについて」などは価値共創型ビジネスデザイン、トールゲート型ビジネスモデル、グローバルビジネスモデルと分類してますが、それぞれどういう分類なのかは読まないと分かりませんし、そもそも誰のため、何のために分類しているのか分かりません。。

例えばこの分類が収益性の体質を分類したもので、分析するのに必要な区分というなら分かります。しかし同社は単一セグメントなので、この分類はセグメント分析をするためのものですらありません。

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意味もなく造語を作り、複雑な説明をしようとするのは、良くない傾向です。

 

44の事業についても同様です。あまりに細かくて掲載から省きましたが、44の事業を一つ一つ説明してますが、もう少しまとめてほしいです。

事業を細かく分類してユニットに分ける事自体は悪くないと思います。

京セラの創業者稲盛氏が提唱するアメーバ経営のように、事業を独自採算にすることは社員の積極性や責任感を育む良い手法だと私も思います。

ただ、その手法を取っているからといって、組織をそのまま有価証券報告書に書くのは、利害関係者に対していかにも配慮に欠けます。

わざわざ、組織体系を変えろとか、ユニットをまとめた事業部を作れとか言う積りはありません。ただ、有価証券報告書で説明するのであれば、これを読む利害関係者の立場に立ち、自身の頭を整理した上でシンプルな説明にして頂きたいです。

 

冒頭からいきなりダメ出ししてますが、こういう点は結構重要だと思ってます。事業説明を読むと、経営者が自身の事業をどう見ているか、頭の中をきちんと整理できているかが見えます。

ウェザーニューズは整理できてない部類かと。

分類をしてみたり、複雑な説明をしてみたりするのは経営陣が思考をシンプルにできていない兆候です。分類の仕方も、コンサルティング会社とかMBA保有者が好みそうなカッコいい分類なのがまた不安です。そういう分類をしたがる輩はやたらとカッコいいニューワードや小難しい理屈を並べますが、周囲が誰もついてこれません。

当然です。

みんな自分の仕事しているので「理解」に時間をかけるほど暇じゃないです。

理念や方針同様、事業説明もシンプルにできないならない方が良いかと。

 

ざっくりですが私が読んだビジネスイメージをまとめます。

(間違ってたら訂正しますが、とりあえず今回はこの前提でいきます)
ウェザーニーズは自然現象のデータを顧客やサポーターと共に収集、分析し、相手や状況に適したコンテンツに加工して提供する会社です。
気象情報は私たちの生活の中で欠かせない情報です。傘を持っていくかどうかの判断、洗濯物を外で干すか中で干すか、癖毛の人は湿気が強い場合は髪型のセットの時間を確保する必要があります。個人ですらこういった細かな意思決定が必要となります。

まして事業をしている企業にとっては、気象情報は死活問題です。工事、建設業は雨や雪が降ると工事が遅れますし、漁師は悪天候に襲われたら命すら落としかねません。

ウェザーニュースは気象情報を分析した結果を、個人や法人のニーズに合った形で配信して報酬を得るビジネスです。

 

気象予報の歴史

気象情報は様々な意思決定に影響を与える情報のため、元々はその情報を予報できるのは国だけでした。気象予報というものの歴史をざっくりまとめます。

参考:予報業務許可事業者 - Wikipedia

戦前

中央気象台、道府県のような公的機関、国しかできない

戦後、気象業務法の制定後(1953年~)

地域に特有の産業を支援したりするための予報業務については地方自治体や民間企業が行うことができる予報業務許可制度が誕生。(一般向け予報は不可)

気象業務法改正後(1993年~)

一般向け予報業務についても、現象の予想を伴う予報業務許可の審査を実施できるようにするための制度が整えられた⇒予報業務許可事業者の技術的能力を簡易かつ客観的に証明・確認できるようにするために、現象の予想を担当する技術者の資格として導入されたのが、気象予報士制度

 

ウェザーニューズはこの気象業務法でいう所の予報業務許可事業者にあたり、気象庁長官の許可を受けて気象情報分析等の事業を行っています。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は24.9%⇒22.1%⇒19.4%⇒15.7%⇒11.3% 

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売上が伸びているのに利益が減って、明らかに体質が悪化してきています。あからさまに業績が悪くなってますが、あの分かりにくい事業説明と合わせると何となく納得してしまいます。業績が下がってきたから経営陣が浮足立って迷走を始めたのか、経営陣が迷走を始めたから業績が下がってきたのか。。

卵が先か鶏が先か論争になるので止めますが、今の時点で体質はかなり良くない気がします。

 

 

 

経営方針

当ブログでは、会社の考え方を探るために経営指標に何を採用しているか、その経営指標に対してどれだけ実現しているかで、経営の質を判断します。

 

しかし・・・ここまで四十数社見てきて初めてです。

ウェザーニューズは数値的目標を立ててないっぽいです。

(交通気象の部分に売上目標と取れる部分はあるが、隻数であって財務数値ではない)

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凄いです。これだけ書いているのにほとんど内容が頭に入ってきません。

何をしようとしているのか分かりません。

 

方針で数値的な指標を定めるのは、非常に重要な事です。

シンプルな例をあげてみます。大学受験を目指して勉強している受験生がいます。

目指している大学は一冊300ページの問題集を2周するくらい解けば大体受かるという漠然としたイメージがあります。ならば、受験生がまずすべきことは、300ページ×2=600ページを受験までの日数で割ってみる事です。そうすれば1日にすべきページの目安が分かります。後は毎日その目安通りにこなしていけば力は自然についてきます。

この大学合格という目標が経営理念で、一日当たりのページ数に当たるのが企業の経営指標です。どれだけ素晴らしい勉強手法を説いたところで、目指すべき目標とそこに至る道のりが数値的に描けないなら、自分が前に進んでいるのかすら分からなくなります。

ウェザーニューズは受験突破の秘訣とか、効率的な勉強の本とかばかり読んで、勉強しない受験生的な印象です。とりあえず具体的に指標を立てる所から始めた方が良いのではないかと。。

 

 

 

キャッシュフロー

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現預金は十分、フリーキャッシュフローも潤沢です。設備投資などもあまり不要なビジネスのようです。資金繰りに問題は無さそうです。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現預金は76.0億円(48.2%)と手厚いです。

売掛金は28.9億円(18.3%)と目立ちますが、滞留日数としては61.8日で2か月分ですから、問題ない水準だと思います。

有形・無形固定資産が30.6億円(19.5%)ありますが、資産全体に対する割合から見れば大したリスクにはならないと思います。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債ゼロの無借金経営です。これだけの規模の会社でこの財務状態は素晴らしいです。資産側もリスクのある資産はほとんど無かったので、突発的に大きな痛手を被る可能性はほぼないと言って良いと思います。

 

 

 

役員の状況

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2018年以降から売上が伸びる一方であからさまに利益が減っているので、2018年のちょい前くらいに経営者が変わったのかな、と思ったのですが、2006年からずっと草間氏が経営全般を見てらっしゃいます。

私が冒頭で分かりにくいとした事業説明も、まだ利益率の良かった2017年以前から変わっていませんでした。

となると、経営陣や会社の考え方が変わって業績が悪化したのではなさそうです。

これまでは、数値目標を設定する必要もなく高い利益率で順調に推移していたが、事業環境が変化するか、場当たり的な施策で業績が悪くなった。

しかし、そもそもこれまで業績指標のようなものは定めていないため、それについて誰も文句を言わない、という所かと推測します。

 

 

 

まとめ

財務体質は健全で凄く優良です。

ただ、直近の利益率の低下や経営方針の抽象的かつ細かい説明などを見ていると、これまでの利益率はビジネスモデルや業界に恵まれただけのまぐれだったのでは、と感じました。

私は経営者の最も重要な仕事は、目標を立て、その目標を数値に落とし込み、社員が進むべき道を示すことだと思います。そこさえしっかり立てられれば、社員は粛々と仕事をこなすだけで、着実に成果はあがっていきますし、たとえ上手くいかなかったとしても、トップが指標でその進捗を把握できますから、早期に対策を講じる事ができます。

しかし有価証券報告書の記述を読んだ印象としては、経営陣は社員に対してそういったマネジメントができているのか、微妙です。

経営者の分析のところでも、「こういう理由で利益が減った」というだけの報告ですから、利益率の悪化に対して悪びれる様子が見えません。f:id:umimizukonoha:20200806011750p:plain

もし適切な指標を定めている会社であれば、先ず何故悪化したのかを分析して原因を判明して、対策案を記載するでしょう。しかし、ウェザーニューズは少なくとも有価証券報告書上ではそういった姿勢が欠けています。

もしかしたら将来的に事業環境が変わる事でウェザーニューズはまた高い利益率に戻るのかもしれませんが、私はウェザーニューズには自力で業績を戻す力は無く、あまり当てにならないのではないかな、という気がします。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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