エクセル屋です。
育休はエクセル屋の活動とは直接関係ないんですけど、業務効率化と無関係ではないので、一人の育休経験者として意見を書きます。
日本人男性の育休取得率が低いのは「育休」という名前が悪いからだと思います。
私は実際に経験した人間の一人として、男性の育休取得が進まないのは
①収入が減るから
②業務整理ができていないから
③何となく取れる雰囲気ではない
の3つが大きいのではないかと思います。
中でも私の場合は③が最も大きかったです。
「一緒に働いている同僚に負担をかけて自分は休むのは申し訳ない」
「忙しい時に(忙しくない時なんてないけれど)休むなんて申し訳ない」
という気持ちがネックでした。
私の場合、私一人で育児と家事をやった方が良い家庭の事情があったので、退職するという選択肢を含めて検討し、会社辞めるくらいならまだ育休を取った方が、誰にとっても良いと思い、上司に早めに言いはしました。
ただ、そんな状況でも気持ちとしてはやはり罪悪感がありました。
でも育休に入っても、当然ながら育休当事者は全然「休み」じゃないのです。
炊事、洗濯、掃除、食器洗い、買い出し、授乳(ミルク)、離乳食、寝かしつけ、だっこ含むあやし、オムツ替えやその他の仕事を、赤子のストレスフルな鳴き声をBGMにして昼夜問わず毎日やってたら休めないです。
子供が大人しく寝ている間に家事などが片付けば(静かにやらないと子供が起きます)、休める時間ができますが、それは休憩時間のある会社員とて同じです。
寝る時間も無く働く人もいるでしょうが、子供によっては育児で眠れない事もあるという事ですから、どっちも相手次第です。
相手を変えたり、交渉できる余地がある分職場の方がフェアじゃないでしょうか。
こんなにキツイのに、何で育休に罪悪感があるんだ、と考えて思い至りました。
「育休」という名前が、まるで休んでいるように周囲に思われてしまうからです。
特に男性会社員にとって「育休」はまるで「有給休暇(略してゆうきゅう)」と同等のようなイメージを持たれているのです。(音も似てますし・・・)
「育児休業」の略で、業は休んでいるから育休でしょう、という理屈は分かります。
ただ、私は育休を取るのって「休みを取る」なんてネガティブなものではなく、「会社からの給料」や「自身のキャリアアップ」を一時的に放棄して、育児という国家の未来を左右する事業に参加する選択だと思うのです。
それが必要だから国はそれを支援する給付金を出したりするわけですから、育児は会社の仕事を「お休み」してやるのではなく、一時的に雇い主が会社から国へと変わり、自身の仕事が会社の業務から国家の未来を育む活動に変わっただけだと考えるべきだと思うんです。何でそれが育「休」なんでしょうか。
当事者からしてみれば、無給(少なくとも会社からは)でキャリアの空白生んで必死に家事育児をした挙句、周囲から「俺たちが割を食って働いている時にのうのうと休みやがって」なんてこと言われるくらいなら、黙々と仕事していた方が楽だと思うんです。
じゃあ、どんな名称が良いかという事なのですが、私は「育児部署(無給)への異動」や「社会的役割変更」というニュアンスが入った名称が良いと考えます。
英語圏では「育児休業」は「Maternity Leave」「Paternity Leave」のようです。(あくまで今の職場を去るだけで、「Maternity Holiday」や「Paternity Holiday」では無いのです)
英語圏の方が日本人の男性に比べて、育休取得に抵抗が無いのは、こういった些細な部分の印象、ニュアンスが影響しているのではないでしょうか。
なので私は、日本の男性育休取得率を上げたいのであれば、給付金の増額とかそんな事よりも、「育休」という名前を変更した方が、ずっと安上がりだと思います。
という事で、政治家の方々、特に育休取得を検討されていた小泉環境相。
名前変えただけで取得率を上げるとか、凄くセクシーじゃないでしょうか。
(馬鹿にしているわけでなく、私は何となくセクシーの意味が分かる気がします。問題はただ解決するのではなく、セクシーに解決しなければ持続しません。本質的な問題解決に美意識は不可欠だと思います)
政治家の方々、名称変更のご検討をお願いします。
最後に、身も蓋もないですが、育休の取得率を上げる事が会社の生産性向上に繋がるとは私は思いません。人事異動は業務上、実に非効率です。
私自身が取った育休についても、会社には人事調整や引継準備の時間を掛けてしまったと申し訳なく思っています。
ただ一方で、定年の引き上げ、核家族化、若年層の低所得化、発想の多様性を求めた女性の社会進出といった事情から、育児の担い手が減ってきているのも事実です。
今後状況がすすめば、私のように退職or育休で悩む社員も増えてくるでしょう。
そういうケースが増えた時、育休制度とそれを前提とした職場環境さえあれば、人材の流出の抑止に繋がります。人材採用のコストとリスクを考えれば、会社にとって決して損ではない筈です。
目先の生産性低下のために育休制度を頭から否定するのでなく、人間のライフスタイルの変化を見据えながら、育休制度の拡充をする姿勢こそが、時代を越えて生き残る会社の姿ではないでしょうか。