昨日に引き続きキーエンスの考察です。
このシリーズでは、漏れ伝わった「話」だけでキーエンスの在り様を推測し、それを通して複数回に渡り「会社のありたい姿」を考えてみたいと思ってます。
本日扱いたい話はこれです。
「高収益体質の理由は同社独特のコンサル営業にある」
FA業界の製品販売は代理店販売が一般的だ。対して同社の場合は、営業社員が顧客の生産現場へ直接乗り込み、職制(工場における管理職)にライン稼働率、不良品発生率などをヒアリングし、顧客の潜在課題を探って開発部門にフィードバックする。開発部門はその情報を元に「世界発、業界初」などの新製品を開発する。それを営業社員が業務改善提案として売り込むという流れだ。
【参照記事】
https://biz-journal.jp/2015/05/post_10144.html
ビジネスの本質
そもそもビジネスの本質とは一体何なのでしょうか。
人を雇う事でしょうか。
設備を集めて工場を稼働させる事でしょうか。
モノ・サービスを売ることでしょうか。
違います。
世の中の顧客の課題を解決して報酬を受ける事です。
人を雇う事も、工場を稼働する事も、モノを作る事もその「手段」に過ぎません。
マクドナルドは「安くて旨いハンバーガーを食べたい」という課題を最も最適な方法で解決するビジネスです。
アップルは「芸術的なまでに美しく機能的な製品が欲しい」という課題を最も最適な方法で解決するビジネスです。
ウォルマートは「日用品を最も安い価格で購入したい」という課題を最も最適な方法で解決するビジネスです。
顧客の問題を解決さえできれば、解決手段は社内の手法の問題であり、ビジネスの本質とは無関係なのです。
キーエンスのコンサル営業という発想
ビジネスの本質が、お客様から課題(ニーズ)を引き出し、それを解決する事である以上、コンサルティングというのは最も原始的なビジネスです。つまりコンサル営業という発想はまさにビジネスの本質だけを抽出した手法といえます。
キーエンスは分類上こそ製造業ですが、製造業という区分はあくまで解決手法でしかなく、真の目的が「顧客に価値を与える」事である事実を理解しています。
それが読み取れる理由の一つとして、製造業にも関わらず工場を持たない(ファブレス)の考え方があります。
昔、キーエンスの創業者である滝崎氏は「生産を外部に委託している事に不安はないか」という問いに対してこう答えたそうです。
「いいえ、設備投資をしたら、その設備を遊ばないようにしなければならない。そういう理由から本当に有名な会社が「キーエンスさん、仕事ないですか」と言ってこられることもあるんですよ。自分で設備を持つ方が大変ですね」
私がここで強調したいのは、「製造業だからモノを作る工場を持つ」という固定概念にとらわれず、設備投資のリスクを冷静に理解し、ファブレスという結論に至ったその姿勢です。
私はキーエンスがうまくいったからファブレス=正しいと断定する積りはありません。
もし、世界中の生産能力を合わせても、生産が追い付かないような状況だったなら、工場を持っている方が有利になる事もあるでしょう。(現代ではなかなかありませんが)
ただ、キーエンスが当時置かれていた状況においては、「顧客のニーズを掴み、設計図さえ引ければ、実際に作るのは外注でも問題ないレベル」という判断だったのでしょう。
「ファブレス」という一つの事実より、ビジネスの本質を見抜く洞察力とそれを粛々と実行できる胆力こそが、キーエンスの力の源泉であると私は推測します。
結論:効率化の第一歩はビジネス(業務)の本質は何かを考える事
我々の仕事もまた、自分達がしている仕事の本質が何なのかを問わねばなりません。
・自身のお客様が解決を求めている課題は何なのか。
・その課題の解決方法として、ゼロベースで考えた時、今の手法は適切なのか。
・今の手法が適切でないとすれば、理想の形は何なのか。
その問いを続けた先に、キーエンスの「非常識なまでの高収益体質」があるのではないでしょうか。
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