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【7164】全国保証~有価証券報告書の読み方~

結論

トップの能力は不明、ただ、それを補ってあまりあるビジネスモデルの優秀さ

 

目次

 

事業概要

先ずは全国保証の事業についてです。

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~中略~

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淡々とした語り口で、結構分かりやすく説明してくれていると思います。一番下に用語解説までつけてくれるのも、素人にはありがたいです。読者の事を考えてくれた誠実な対応だと思います。
事業内容はざっくり言ってしまうと、私のような庶民が不動産を購入するためにローンを組む時、全国保証の審査に合格して保証料を払えば連帯保証してくれるビジネスです。

マイホームを買う時、銀行でローンを組みますが、銀行側は滞納されたり貸倒になると困るので、滞納した時に代わりに払ってくれる連帯保証人を求めます。

しかし、ほとんどの人は家族であっても連帯保証人などにはなりたくないです。

そこで全国保証が審査して問題ないと判断すれば、全国保証が連帯保証人になります、という事です。

通常通り返済が行われていれば、全国保証には保証料だけが振り込まれ続け、返済が滞った場合は延滞者に対するフォローや、法的手続きに則って物件の売却などをして回収したりします。

私はこういう与信審査や滞納フォローといった仕事は銀行が自分でやっていると思っていたのですが、全国保証のような専業業者がやっていることもあるようです。同社の取引先は地銀や信金といった比較的規模の小さい所が相手のようなので、メガバンクは自前、中小金融機関は代行してもらう、という構図ではないかと思います。

 

 

 

業績推移

業績は凄いです。

右肩上がりというのも勿論凄いですが、何よりその利益率。

81.7%⇒82.4%⇒80.7%⇒80.7%⇒81.4%

営業収益の実に8割が利益という厚さ。驚異的です。

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保険会社とかもそうなのですが、金融系の会社って本当に稼ぎやすい体質を持ってます。先に保証料を受け取って、運用等をして利益を稼ぐ上、審査基準を厳しく保てさえすれば貸倒がほとんどないため、ほぼ全額利益になる仕組み。在庫も固定資産も必要ないからキャッシュも潤沢。実に稼ぎやすい仕組みです。

よって、こういう会社の今後の業績を考える上で見るべきポイントはかなり絞られてきます。全国保証に関しては私は以下2つくらいかな、と思ってます。

①営業収益の伸び

②審査基準、滞納率の推移

それぞれを考えていきます。

 

①営業収益の伸び

同社は目標とする経営指標として、保証債務残高および新規保証実行件数を挙げています。

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大きな会社は必ず経営指標として効率的観点を入れるべき、というのが私の持論なので、私はここに延滞率の最小化を入れるべきであると思います。

新規保証実行件数だけが目標だったら、審査基準を下げれば達成できてしまうと思うからです。経営陣が新規保証実行件数だけをノルマ設定してごり押ししてきたら、あり得ない事ではないと思います。それは長期的観点から見て体質の弱体化につながるリスクがあります。方針としてその点に触れていないのは若干不満足です。

とはいえ、同社のビジネスモデルは元々かなり強固ですし、経営指標に書いていないからといって、審査基準を下げているという証拠もありません。

審査受付件数と実行件数の推移が載っていたので、実行件数/受付件数で率を出してみると29.2%⇒26.1%⇒24.0%でした。

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勿論、件数だけでは断言できませんが、ここだけ見ればむしろ審査通過率が厳しくなっていっているようにも見えるので、少なくとも現段階ではそれほど心配はいらないかもしれません。

適正な審査基準の元、新規保証実行件数を増やす事は経営指標として正しいと思います。

②審査基準、滞納率の推移

実際に現段階で保証債務として残っている金額から、滞納している金額を割ってやれば、滞納率が分かります。

以下が保証債務残高の推移です。

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以下が延滞ないし回収が必要になった金額です。

2017年:42,055百万円(保証債務対比:0.39%)

2018年:42,845百万円(保証債務対比:0.36%)

2019年:44,273百万円(保証債務対比:0.35%)

 

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滞納率は低いと思います。私は金融のプロではないので断言はできませんが、個人的にはかなりの安全圏ではないかと思います。そもそも滞納=即損失ですらないので。

勿論、ここ数年は結構安定した景気が続いていたことも要因にはなっているとは思いますが、この数値なら多少悪化してもクリティカルな問題にはならない気がします。

保証会社と聞いて一番に懸念したのは、以前「かぼちゃの馬車」で問題になったアパートローンでしたが、同社はほとんどアパートローンの保証をしていないですね。

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ほぼ住宅ローンなので、厳格な審査基準を設けて手堅い所を集めているのかな、という心証です。

 

 

 

キャッシュフロー

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2015年、2019年とフリーキャッシュフローが赤字ですので、内訳を見てみます。

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やはり、投資有価証券取得による「なんちゃってフリーキャッシュフロー赤字」です。
保証会社は設備投資などないでしょうから当然と言えば当然ですが、キャッシュフローは健康そのものです。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産のうち、換金可能な現金及び預金、有価証券、その他投資有価証券の合計が実に90.2%を占めてます。在庫やのれんといった不確定要素の高い資産が無いので、突発的な減損損失などを恐れる必要はほぼないと思われます。

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負債に関しては無借金(有利子負債なし)経営です。

長期前受収益という、要は保証料を先に受け取っている分を負債として計上していますが、これはビジネスの特質からくるものですから、同社のように現金を大量に持っている会社であれば何も恐れる必要はありません。

むしろ巨額の前受金を受け取れる体質というのは、資金繰り上かなり有利であると言えます。

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豆知識:自己資本比率

ちなみに、会社の財務体質を見る指標の一つに自己資本比率という指標があります。

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算出式は自己資本比率=純資産(自己資本)/総資産です。

総資産の中で純資産(自己資本)が占める割合なので、これが高いほど安全という判断がされます。つまり財務体質を見るための指標なのですが、私はこの指標は見ません。

理由は今回の全国保証のような会社があるためです。

国保証は先ほど書いた通り、無借金(有利子負債なし)経営で財務上かなり優秀であるにもかかわらず、長期前受収益という負債のためで自己資本比率は低水準です。

国保証の抱えている負債のほとんどは商慣行上避けられない負債で、長期前受収益に至っては資金繰上有利な負債です。自己資本比率はそういった個別の負債の特性を無視して、負債を良くないものとして一括りにしている指標のため、実際の体質を見る上であまり参考にならないのです。

 

 

 

ストックオプション制度

 

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国保証はストックオプション制を採用しています。私はストックオプション反対派の人間なので、経営陣への評価としてはマイナスです。

経営陣の方々、ご存じかもしれませんがお宅の会社は十分優秀なので、変な制度使わないで株は普通に市場から買ってください。その方が株主に対してフェアですし、きっと会社の事務コストも減ります。

 

 

 

まとめ

国保証は実に優れたビジネスモデルで、稼げる企業の典型といった感じでした。財務的にもビジネスの体質としても申し分ないと思います。下手な銀行よりよっぽど先行きの明るい企業であると思います。

ただ、あまりに優れたビジネスモデル過ぎて、経営者の特質や考え方、社内の雰囲気が見えにくい気はしました。つまり、よほど愚鈍な経営者でない限り、問題が起こらないであろう会社。それは仕組みとして優れた証なのですが、同時にそこで働く人にとっては、自分が機械のようになって辛く感じることもあるかもしれません。

投資先としてはこういう会社が望ましいんですけど、働き手としてはどうなんでしょうね。。そのあたりはさすがに数値だけではなんとも。。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

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