結論
財務は良い。ただし将来の展望は見えない。
目次
事業概要
先ずはアイティメディアの事業についてです。
う~ん・・・私の頭ではちょっと理解できないかも・・・一番上のニュースや技術解説記事等をユーザーに提供する事業というのはよくわかります。記事を目当てに来たお客さんに広告を見てもらって広告料を稼ぐというのは、ネット企業のオーソドックスな稼ぎ方だと思います。
ただ、その後のリードジェネレーション事業あたりからちょっと分かりにくいです。。
具体的なメディア・サービスを見ながら整理してみると・・・
リードジェン事業というのは、以下の流れと推測
(どっかから「違う」という指摘が入ったら直します)
①特定の分野(マーケティング、情報システム等)の記事を書く
②特定の記事を定期購読したいと思うユーザーに会員登録してもらう
③特定の分野の記事ができたらユーザーに配信する⇒ユーザー読む
④特定の分野でモノを売りたい会社の製品をユーザーに提案
⑤モノを売りたい会社から広告料を貰う
結局、広告ビジネスでは・・・?
リードジェン事業は見込み客の情報を獲得すると言いますけど、そもそもメディア広告って見込み客を捕まえるためにやっているものだと思うんですよね。。
メディア広告事業とリードジェン事業、敢えてそこ分ける必要があるのか・・・どうにも難しい言葉を使って煙にまかれている感があります・・・。
複雑な説明をする会社は、個人的にあまり信用しません。
難しい言葉を並べて複雑にするのは、
1.格好をつけたい
2.騙そうとしている
3.そもそも自分でも整理、理解できていない
のどれかだと思います。
いずれにせよロクなものではないかと。。
セグメントはリードジェン事業(39.8%)、メディア広告事業(58.2%)、その他(5.0%)の3つです。
しかし、こうしてビジネスモデルを分析していると完全に新聞社のビジネスモデルですね。記事を書いて広告を打って、広告収入を得る。やり方やツールが変わっただけで、きっとビジネスの本質はあまり変わらないのでしょうね。。
業績推移
業績は売上としては伸びていますが、営業利益率は若干下降気味ですね。
営業利益率18.7%⇒15.9%⇒16.2%⇒14.0%
悪化するのも当然で、経営の方針として、そもそも効率についてはあまり考えていないようです。
同社が効率について考えないのは事業の性質上仕方ない面もあると思います。ネット上には毎日どんどんブロガーや数多の情報通が広告収入を狙って記事を量産していきます。その中で抜きんでた記事を書き続けるのは容易な事ではないですし、そもそも効率を重視しても、じゃあ効率ってどうやって上げるんだ?という感じです。
製造業や飲食店など、元々の改善ネタが多い業種であれば、効率を意識することで利益率を保つこともできるかもしれませんが、元々省ける無駄がなく、競争相手が無限大のビジネスでは、利益率を叫んでも意図的に保つのはかなり厳しい気がします。
シンプルなビジネスは強い時は圧倒的に強いのですが、改善しようと思っても元々のコストが低いので改善の手もない、というのが難しいです。経理としては活躍の場がほとんどありません。
キャッシュフロー
基本的に同社はキャッシュリッチですね。元々大きな設備投資のいらない事業ですから当然と言えば当然なのですが。
2016年だけ投資活動によるキャッシュフローが妙に出ているので見てみると、「キーマンズネット」(事業内容を参照)を買収したことによるもののようです。
2.4億円の「のれん爆弾」を抱えているのが少々気になります。。
B/S(貸借対照表)
次に資産状況の確認です。
とりあえず現金同等物が53.3%というのは比較的多いですね。キャッシュリッチはIT系の強みだと思います。
一方でやはり目立つのは「のれん爆弾」です。「キーマンズネット」ののれんは2.4億円で4.2億円ですから、他にも何らかの会社を買収していると思われます。そう考えると売り上げの伸びも本当に独力によるものなのか微妙な気がします。。
のれんは結局のところ「購入した会社の純資産と買収金額の差分」でしかなく、つまりは空っぽの未実現損失です。
なのでこの分は純資産から差し引かねばなりません。
とはいえ純資産は今のところ53.7億円ですから、のれん爆弾が炸裂しても大丈夫そうです。
有利子負債も長期を合わせても0.1億円ほどですから、財務体質としては随分余裕がある印象です。
関係会社の状況
ソフトバンクグループは支配権を握りながらも上場している会社が多いです。上場企業とはいえ、こういった会社のトップの任命権は上位会社にあるので、方針を自社だけで決定する事は困難です。この点は、投資をするにせよ就職するにせよ厄介です。どれだけその会社を知ったところで、上位企業の状況によって方針が左右されかねないからです。
一応上場企業として、独立性を保てるかどうか、少数株主(親会社以外の株主)が不利になるような取引が無いか、という点は証券取引所がチェックしている(と主張している)ものの、例えば人事交流という名目で、親会社で問題のある人材を押し付けられたりするケースも考えられます。(あくまで考えられる、というだけで、今招聘されている人材を批判する意図はありません、企業のリスクの問題です)
それは極めて主観的な問題なので、外部から防ぐ事はできません。
実際、現状では以下のお二人がSBGから招聘されているとの事。
お二人の能力云々を外部から推し量るのは困難ですが、社員からすればこういった親会社からのお目付け役の方がいるというだけでもモチベーションとしていかがなものかと思います。
私自身、子会社の社員だった経験がありますが、上司が親会社から来た人間で、過去の武勇伝と、特に理由のない自己決裁の海外出張の結果、貯まるマイレージで海外に行っている話(明らかな公私混合)ばかりの男でした。今後30年以上、親会社からこんな男達が派遣されてきて、部下として働かなければならないと思うと、いずれストレスで体を壊しそうなので転職しました。ちなみにその課はその男がいる間に半数以上の人員が入れ替わりました。
全てのケースがこんなことにはならないでしょうが、これを形式的に取り締まることが困難なのもまた事実です。
まとめ
現状、アイティメディアは健全な財務体質を持っていると思います。しかし利益率は悪化しつつあり、ビジネスの性質上、競合との差別化が困難な事業です。一般人でもやろうと思えば参入できてしまうほどに参入障壁も低いです。今のまま続けていても、高利益率体質となれる可能性は低い気がします。
さらに親子上場という体質的な問題もあります。
現状でどうこうなる事はないでしょうが、とはいえ未来の展望も見えない、というのが正直な感想です。
本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。
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